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【重要】直交表を繰返し使う場合の分散分析がわかる

実験計画法

「直交表実験を繰り返して使う場合、分散分析はどうやればいいの?」、「直交表を繰り返して使う場合の注意点は何?」など、疑問に思いませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

直交表を繰返し使う場合の分散分析がわかる

直交表を繰返し使う場合の分散分析がわかる

  • ➀データの構造式から分散分析を理解する
  • ②直交表を繰返し使う場合の注意点がわかる
  • ③直交表L27の事例

記事の信頼性

記事を書いている私は、実験計画法に磨きをかけていますので、わかりやすく解説します。

➀データの構造式から分散分析を理解する

直交表を繰返し使う場合のデータの構造式

どんな実験計画法も、データの構造式から本質を理解しましょう。

あとで、3因子の直交表L27を使った事例を解説します。3因子のデータの構造式を考えます。直交表を1回だけ使う場合と、繰返し使う場合でデータの構造式が少し変わります。

直交表を1回だけ使う場合
xijk=μ+αi+ βj+ γk
+(αβ)ij+ (αγ)ik+ (βγ)jk+ εijk
機械的に書き出せますね。

直交表を繰返し使う場合
xijkl=μ+αi+ βj+ γk
+(αβ)ij+ (αγ)ik+ (βγ)jk+ ε(1)ijk
+ ε(2)ijkl
と繰返しの分の残差ε(2)ijklが追加され、添字がijkからijklに増えます。

残差の分散の期待値を計算

各平均の式をまとめます。残差が2種類あるので分割法に似た式になります。
関連記事に書いていますので、参考ください。

\(\bar{x_{i・‥}}=μ+α_i+\bar{ε_{(1)i・・}}+\bar{ε_{(2)i・・・}}\)
\(\bar{x_{・j・・}}=μ+β_j+\bar{ε_{(1)・j・}}+\bar{ε_{(2)・j・・ }}\)
\(\bar{x_{‥k・}}=μ+γ_k+\bar{ε_{(1)・・k}}+\bar{ε_{(2)・・k・}}\)
\(\bar{x_{ij・・}}\)=μ+\(α_i\)+\(β_j\)+\((αβ)_{ij}\)+\bar{ε_{(1)ij・}}+\(\bar{ε_{(2)ij・・}}\)
\(\bar{x_{i・k・}}\)=μ+\(α_i\)+\(γ_k\)+\((αγ)_{ik}\)+\bar{ε_{(1)i・k}}+\(\bar{ε_{(2)i・k・}}\)
\(\bar{x_{・jk・}}\)=μ+\(β_j\)+\(γ_k\)+\((βγ)_{jk}\)+\bar{ε_{(1)・jk}}+\(\bar{ε_{(2)・jk・}}\)
\(\bar{x_{ijk・}}\)=μ+\(α_i\)+\(β_j\)+\(γ_k\)
+\((αβ)_{ij}\)+\((βγ)_{jk}\)+\((αγ)_{ik}\)
+\(ε_{(1)ijk}\)+\(\bar{ε_{(2)ijk・}}\)
\(\bar{\bar{x}}\)=μ+\(\bar{ε(1)}\)+\(\bar{\bar{ε(2)}}\)

\(\bar{x_{i・・・}}\) \(\bar{x_{・j・・}}\) \(\bar{x_{・・k・}}\) \(\bar{x_{ij・・}}\) \(\bar{x_{i・k・}}\) \(\bar{x_{・jk・}}\) \(\bar{x_{ijk・}}\) \(x_{ijkl}\) \(\bar{\bar{x}}\)
SA 1 -1
SB 1 -1
SC 1 -1
SA×B -1 -1 1 1
SA×C -1 -1 1 1
SB×C -1 -1 1 1
Se(1) 1 1 1 -1 -1 -1 1 -1
Se(2) -1 1
ST(計) 1 -1

残差ε(1)、ε(2)の平方和の期待値

残差ε(1)
E[\(S_{ε(1)}\)=E[\(\sum_{i=1}^{a}\sum_{j=1}^{b}\sum_{k=1}^{c}\sum_{l=1}^{d}\)
\((\bar{x_{ijk・}}-\bar{x_{ij・・}}-\bar{x_{i・k・}}-\bar{x_{・jk・}}\)
\(\bar{x_{i・・・}}+\bar{x_{・j・・}}+\bar{x_{・・k・}}-\bar{\bar{x}})^2\)]

= E[\(\sum_{i=1}^{a}\sum_{j=1}^{b}\sum_{k=1}^{c}\sum_{l=1}^{d}\)
\(((\bar{ε_{(1)ijk・}}-\bar{ε_{(1)ij・・}}-\bar{ε_{(1)i・k・}}-\bar{ε_{(1)・jk・}}\)
+\(\bar{ε_{(1)i・・・}}+\bar{ε_{(1)・j・・}}+\bar{ε_{(1)・・k・}}-\bar{\bar{ε_{(1)}}})\)
+\((\bar{ε_{(2)ijk・}}-\bar{ε_{(2)ij・・}}-\bar{ε_{(2)i・k・}}-\bar{ε_{(2)・jk・}}\)
+\(\bar{ε_{(2)i・・・}}+\bar{ε_{(2)・j・・}}+\bar{ε_{(2)・・k・}}-\bar{\bar{ε_{(2)}}}))^2\)]

残差ε(2)
E[\(S_{ε(2)}\)=E[\(\sum_{i=1}^{a}\sum_{j=1}^{b}\sum_{k=1}^{c}\sum_{l=1}^{d}\)
\((x_{ijkl}-\bar{x_{ijk・}})^2\)]

=E[\(\sum_{i=1}^{a}\sum_{j=1}^{b}\sum_{k=1}^{c}\sum_{l=1}^{d}\)
\((ε_{(2)ijkl}-\bar{ε_{(2)ijk・}})^2\)]

E[\(S_{ε(1)}]\)の導出は、関連記事に書いていますので、参考ください。

結果は、
E[\(S_{ε(1)}\)]=d(a-1)(b-1)(c-1)\(σ_{e(1)}^2\)+(a-1)(b-1)(c-1)\(σ_{e(2)}^2\)
関連記事に無いものは、\(\sum_{l=1}^{d}\)をd倍とした点です。

E[\(S_{ε(2)}\)]の導出は、次のように変形して求めます。
\((ε_{(2)ijkl}-\bar{\bar{ε_{(2)}}})\)=\((ε_{(2)ijkl}-\bar{\bar{ε_{(2) ijk・}}})\)+\((\bar{ε_{(2)ijk・}}-\bar{ε_{(2)}})\)

\(ε_{(2)ijkl}-\bar{\bar{ε_{(2)}}}\)と\(\bar{ε_{(2) ijk・}}-\bar{\bar{ε_{(2)}}}\)は次のように分散を定義します。
\(σ_{e(2)}^2\)=E[\(\frac{\sum_{i=1}^{a}\sum_{j=1}^{b}\sum_{k=1}^{c}\sum_{l=1}^{d}(ε_{(2)ijkl}-\bar{\bar{ε_{(2)}}})^2}{abcd-1}\)]
\(\frac{σ_{e(2)}^2}{d}\)=E[\(\frac{\sum_{i=1}^{a}\sum_{j=1}^{b}\sum_{k=1}^{c}(\bar{ε_{(2)ijk・}}-\bar{\bar{ε}})^2}{abc-1}\)]

よって、
E[\(S_{ε(2)}\)]=abc(d-1)\(σ_{e(2)}^2\)

分散分析表をまとめる

データの構造式
xijkl=μ+αi+ βj+ γk
+(αβ)ij+ (αγ)ik+ (βγ)jk+ ε(1)ijk
+ ε(2)ijkl
の分散分析をまとめます。

φ E[V]
A a-1 \(σ_{e(2)}\)+d\(σ_{e(1)}\)+bcd\(σ_A\)
B b-1 \(σ_{e(2)}\)+d\(σ_{e(1)}\)+acd\(σ_B\)
C c-1 \(σ_{e(2)}\)+d\(σ_{e(1)}\)+abd\(σ_C\)
A×B (a-1)(b-1) \(σ_{e(2)}\)+d\(σ_{e(1)}\)+cd\(σ_{A×B}\)
A×C (a-1)(c-1) \(σ_{e(2)}\)+d\(σ_{e(1)}\)+bd\(σ_{A×C}\)
B×C (b-1)(c-1) \(σ_{e(2)}\)+d\(σ_{e(1)}\)+ad\(σ_{B×C}\)
e(1) (a-1)(b-1)(C-1) \(σ_{e(2)}\)+d\(σ_{e(1)}\)
e(2) abc(d-1) \(σ_{e(2)}\)
T abcd-1

<

h2>データの構造式から直交表活用の注意点がわかる

直交表全列の平方和の総和≦総平方和

直交表の列をすべてみると、3因子の場合は、A,B,C,A×B,A×C,B×C,e(≡A×B×C)の7種類です。

つまり、e(2)は直交表からはみ出ることになり、直交表全列の平方和の総和は全体の平方和の総和になりません

直交表全列の平方和の総和をST’とします。
ST’= S A + SB + S C + S A×B + S A×C + S B×C + S e(1))
ですが、
ST= ST’+ S e(2))
となります。

つまり、
ST’≦ ST
に注意しましょう。なお、S e(2))=0なら、両者は一致します。
S e(2))=0とは、繰返しによるデータのズレが無いことですから、同じデータを繰り返した場合が考えられます。

下表にまとめます。黄色枠が直交表からはみ出る部分です。

直交表 φ
A a-1
B b-1
C c-1
A×B (a-1)(b-1)
A×C (a-1)(c-1)
B×C (b-1)(c-1)
e(1) (a-1)(b-1)(C-1)
T'(ABC)計 abc-1
e(2) × abc(d-1)
T(ABCD)計 × abcd-1

よって、ST’は直交表または直交表以外から導出
STは直交表以外から導出
する必要があります。

ST’の個別の求め方

直交表の全列の平方和を総和すれば導出できますが、直接求めることも可能です。

T’はABCと表記し、TはABCDと表記しました。
つまり、
ST’= SABC (SA×B×Cでは無い)
ST= SABCD (SA×B×C×Dでは無い)
です。

具体的な計算を解説します。

L27の事例

直交表L27にて、3回繰り返した場合の分散分析をしましょう。平方和ST’の導出も解説します。

直交表L27を使って実験

データを用意します。

行/列 x1 x2 x3
1 14 20 22 56
2 24 21 17 62
3 23 22 26 71
4 27 23 19 69
5 25 22 27 74
6 19 14 20 53
7 14 19 10 43
8 16 18 27 61
9 19 24 31 74
10 22 20 26 68
11 27 26 15 68
12 28 22 16 66
13 12 23 29 64
14 24 23 10 57
15 26 14 12 52
16 19 21 27 67
17 24 19 24 67
18 20 24 33 77
19 15 24 33 72
20 10 27 30 67
21 20 15 30 65
22 19 22 29 70
23 19 15 19 53
24 29 25 19 73
25 12 30 28 70
26 27 23 10 60
27 20 27 30 77
554 583 619 1756

直交表に割当てます。

行/列 1 2 ・・・ 13 データ1 データ2 データ3
1 1 1 ・・・ 1 14 20 22
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
27 3 3 ・・・ 2 20 27 30
成分 a ・・・ a 計554 計583 計619
b ・・・ 2b
・・・ 2c

各列の総和と平方和を算出します。

成分 効果 1の総和 2の総和 3の総和 合計 平方和S
1 a A 563 586 607 1756 35.88
2 b B 595 565 596 1756 22.99
3 a b A×B 596 605 555 1756 52.62
4 a 2b A×B 569 611 576 1756 37.51
5 c C 579 569 608 1756 30.39
6 a c A×C 543 611 602 1756 101.06
7 a 2c A×C 575 604 577 1756 19.43
8 b c B×C 562 628 566 1756 101.43
9 a b c B×C 574 580 602 1756 16.09
10 a 2b 2c e(1) 567 600 589 1756 20.91
11 b 2c e(1) 608 555 593 1756 55.28
12 a 2b c e(1) 611 555 590 1756 59.28
13 a 2b 2c e(1) 586 557 613 1756 58.09

なお、全列の平方和の総和は
35.88+22.99+…+58.09=610.99

総和Tの平方和と残差e(2)の平方和の導出

総平方和ST,直交表の総平方和ST’と残差e(2)の平方和Se(2)を導出します。

STの導出

平方和の定義どおり、
ST =(各データの2乗の和)-(データの和の2乗)/データ数
で求めます。(右辺)第2項はよく修正項CTとして使われます。
ST=142+202+…+222-CT
CT=17562/81=38068.37
ST=40730-38068.37=2661.65

ST’の導出

本記事で初めての平方和ですが、直交表から
ST’= SABC
とわかります。
ABCについては各回のデータについて、繰返し3回分の合計について、平方和を導出すればよいです。
ST’=\(\frac{\sum_{ijk}^{abc}(x_{ijk1}+…+x_{ijkl})^2}{3(=繰返し回数)}\)-CT
とします。
ST’=\frac{(14+20+22)^2+(24+21+17)^2+…(20+27+30)^2}{3}\)-CT
=38679.33-38068.35=610.99
全列の平方和の総和と一致します。

Se(2)の導出

STとSTの差分となります。
Se(2)= ST– ST
=2661.65-610.99=2050.67
となります。

分散分析の結果

結果をまとめます。直交表L27を活用しながら、STとSe(2)は独自で導出する点に注意が必要です。

自由度φ 平方和S 平均平方V F値
A a-1 2 35.88 17.94 VA/Ve(1) 0.929
B b-1 2 22.99 11.49 VB/Ve(1) 0.596
C c-1 2 30.39 15.19 VC/Ve(1) 0.787
A×B (a-1)(b-1) 4 90.12 22.53 VA×B/Ve(1) 1.167
A×C (a-1)(c-1) 4 120.49 30.12 VA×C/Ve(1) 1.561
B×C (b-1)(c-1) 4 156.72 39.18 VB×C/Ve(1) 2.03
e(1) (a-1)(b-1)(c-1) 8 154.39 19.29 Ve(1)/Ve(2) 0.508
T’ abc-1 26 610.99
e(2) abc(d-1) 54 2050.67 37.98
T’ abcd-1 80 2661.65

まとめ

直交表を繰り返し使う場合の分散分析について解説しました。

  • ➀データの構造式から分散分析を理解する
  • ②直交表を繰返し使う場合の注意点がわかる
  • ③直交表L27の事例


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