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R管理図で範囲Rの平均差の検定ができる

管理図

「R管理図で範囲Rの平均の差を検定せよと聞かれたけど、どうやって解くかわからない」、などと困っていませんか?

こういう期待に答えます。

本記事のテーマ

R管理図で範囲Rの平均差の検定ができる
  • ①範囲Rの平均差の検定事例
  • ②2つの母平均差の検定で解く
  • ③(参考)特殊な表を使ってF検定で解く
教科書やサイトの内容をそのまま暗記せず、自分で考えてみよう。疑問がわけば、新発見につながる!

記事の信頼性

記事を書いている私は、管理図の係数表、群内変動・群間変動の解き方に疑問が残りました。そこで、管理図の理論を研究しました。その成果をブログで解説します。

①範囲Rの平均差の検定事例

事例問題

次の問いを考えます。管理図から検定・推定につなぐ重要な応用問題としてとらえてください。良問です。

演習問題

A,Bの部品を用意する。コインを投げて表面が出ればA,裏面が出ればBを、各5回とり、部品のある品質特性値をデータに記録する。5回データを1つの群として、計25群のデータを測定した。その結果、次の表の結果となった。
(1)25群全体における\(\bar{X}\)-R管理図を作成せよ。
(2)A群だけ、B群だけの\(\bar{X}\)-R管理図をそれぞれ作成せよ。
(3)A,Bの2つのR管理図において、管理状態である場合、\(\bar{R_A}\), \(\bar{R_B}\)に有意な差があるかどうか検定せよ。有意水準は5%としてよい。
x1 x2 x3 x4 x5 \(\bar{x}\) R A/B
1 4 2 5 4 2 3.4 3 B
2 0 0 3 3 3 1.8 3 B
3 2 1 2 5 0 2 5 B
4 4 1 3 3 2 2.6 3 B
5 2 -1 2 1 2 1.2 3 A
6 -1 2 1 -1 2 0.6 3 A
7 1 0 0 3 -1 0.6 4 A
8 1 4 3 0 4 2.4 4 B
9 2 4 1 2 1 2 3 B
10 3 2 1 6 3 3 5 B
11 -1 -3 0 4 0 0 7 A
12 2 0 2 0 2 1.2 2 A
13 1 1 0 0 -2 0 3 A
14 -1 -2 1 3 1 0.4 5 A
15 3 2 -1 1 3 1.6 4 A
16 1 -1 2 1 0 0.6 3 A
17 1 1 1 0 3 1.2 3 A
18 2 4 2 0 3 2.2 4 B
19 -1 -1 2 0 2 0.4 3 A
20 3 0 0 2 3 1.6 3 A
21 0 0 0 1 2 0.6 2 B
22 -1 0 -4 0 -1 -1.2 4 A
23 1 -1 -1 1 0 0 2 A
24 3 2 4 3 1 2.6 3 B
25 0 2 0 -2 3 0.6 5 A
平均 1.26 3.56

(1)(2)は基本問題で、(3)が本記事のメイン問題となります。

\(\bar{X}\)-R管理図を作成

(i)AB全体の場合
(ii)Aだけの場合
(iii)Bだけの場合
の3通りについて、管理図をそれぞれ作成します。

●\(\bar{X}\)管理図について、
◎\(\bar{\bar{X}}\)=1.256
◎\(\bar{R}\)=3.56
◎LCL=\(\bar{\bar{X}}\)-\(A_2\)×\(\bar{R}\)
=1.256-0.577×3.56=-0.798
◎UCL=\(\bar{\bar{X}}\)+\(A_2\)×\(\bar{R}\)
=1.256+0.577×3.56=3.31

管理図

●R管理図について、
◎\(\bar{R}\)=3.56
◎LCL=0(なし) (n > 6より)
◎UCL=\(D_4\)×\(\bar{R}\)
=2.114×3.56=7.53

R管理図

●\(\bar{X}\)管理図について、
◎\(\bar{\bar{X_A}}\)=0.59
◎\(\bar{R_A}\)=3.6
◎LCL=\(\bar{\bar{X_A}}\)-\(A_2\)×\(\bar{R_A}\)
=0.59-0.577×3.6=-1.49
◎UCL=\(\bar{\bar{X_A}}\)+\(A_2\)×\(\bar{R_A}\)
=0.59+0.577×3.6=2.66

Xbar管理図

●R管理図について、
◎\(\bar{R_A}\)=3.6
◎LCL=0(なし) (n > 6より)
◎UCL=\(D_4\)×\(\bar{R}\)
=2.114×3.6=7.61

R管理図

●\(\bar{X_B}\)管理図について、
◎\(\bar{\bar{X_B}}\)=2.26
◎\(\bar{R_B}\)=3.5
◎LCL=\(\bar{\bar{X_B}}\)-\(A_2\)×\(\bar{R_B}\)
=2.26-0.577×3.5=0.24
◎UCL=\(\bar{\bar{X_B}}\)+\(A_2\)×\(\bar{R_B}\)
=2.26+0.577×3.5=4.28

Xbar管理図

●R管理図について、
◎\(\bar{R_B}\)=3.5
◎LCL=0(なし) (n > 6より)
◎UCL=\(D_4\)×\(\bar{R_B}\)
=2.114×3.5=7.40

R管理図

管理図をまとめると、A,Bの違いが見やすくなります。

Xbar管理図R管理図

AとBの違いを検定しましょう。

②2つの母平均差の検定で解く

検定統計量

2つの母平均差の検定をする場合の検定統計量は、
t=\(\frac{\bar{R_B}-\bar{R_A}}{\sqrt{\frac{V_1}{n_1}}+\frac{V_2}{n_2}}\)
ですね。おなじみの式です。なお、
tはt分布、自由度φ=\(n_1\)+\(n_2\)-1とします。

検定統計量を計算

各値を算出します。
●範囲:\(\bar{R_A}\)=3.6
●範囲:\(\bar{R_B}\)=3.5
●分散:\(\bar{V_A}\)=2.38
●分散:\(\bar{V_B}\)=2.23
●自由度:\(\bar{n_A}\)=15
●自由度:\(\bar{n_B}\)=10

これを検定統計量に代入します。
t=\(\frac{\bar{R_A}-\bar{R_B}}{\sqrt{\frac{V_1}{n_1}}+\frac{V_2}{n_2}}\)
=\(\frac{3.6-3.5}{\sqrt{\frac{184.187}{15}}+\frac{113.62}{10}}\)
=0.34

検定結果

●t(φ、α)=t(15+10-1,0.05)=2.06
と比較すると
t=0.34 > 2.06
より、有意差が無いと言えます。

以上より、管理図から有意差を検定する検定問題の応用パターンを解説しました。
でも、これだけだと、別に記事にすることはありません。

管理図の古書を見ると、特殊な表からF検定する方法も解説があります。これも解説します。
平均差の検定なので、試験・業務に使う場合はt分布で検定してください。

③(参考)特殊な表を使ってF検定で解く

古書の紹介

1960年出版の「品質管理教程 管理図」P226,P285をベースに解説します。

古書の良い点は、理論がしっかりと解説している点。現在の参考書は解き方だけ解説しており、「なぜ?」と疑問に思っても、解説がないのが難点。
古書の良くない点は、考えて読むと「おかしいのではないか?」、「近似式の導出」の2点が多く、現在の我々にとって重要ではないことも書いている。
過去から現在に至り専門家が何度も改訂しているため、内容精度は高くなっているが、その分、ベースとなる理論の記述が時代とともに無くなっていっている。

そのため、QCプラネッツでは、古書の優れた理論をわかりやすく解説し、今の時代に合った内容に解説しています。

古書の解法を紹介します。

古書の解法

次の6点で解いていきます。

  1. \(\frac{\bar{R_A}}{c_A}\)=\(V_A\) (不偏分散)なる\(c_A\)を特殊な表から導出
  2. \(c_A\)は群の大きさnと点の数kから決まる特殊な表から求める
  3. \(V_A\) (不偏分散)を計算
  4. 自由度\(φ_A\)を群の大きさnと点の数kから決まる特殊な表から求める
  5. Bについても同様に計算して、\(V_B\),\(φ_B\)を計算
  6. \(V_A\)と\(V_B\)の比からF検定を実施

群の大きさnと点の数kから決まる特殊な表

これも、古書「森口繁一 品質管理(1953) P282」に書いていますが、導出方法はわかりません。なので、今はこの解法を推奨しません。

特殊な表は下表にまとめます。

n/k 1 2 3 4 5 10 15 20 25 30 k > 5
2 φ 1 1.9 2.8 3.7 4.6 9 13.4 17.8 22.2 26.5 0.876k+0.25
c 1.41 1.28 1.23 1.21 1.19 1.16 1.15 1.14 1.14 1.14 1.128+0.32/k
3 φ 2 3.8 5.7 7.5 9.3 18.4 27.5 36.6 45.6 54.7 1.815k+0.25
c 1.91 1.81 1.77 1.75 1.74 1.72 1.71 1.7 1.7 1.7 1.693+0.23/k
4 φ 2.9 5.7 8.4 11.2 13.9 27.6 41.3 55 68.7 82.4 2.738k+0.25
c 2.24 2.15 2.12 2.11 2.1 2.08 2.07 2.06 2.06 2.06 2.059+0.19/k
5 φ 3.8 7.5 11.1 14.7 18.4 36.5 54.6 72.7 90.8 108.9 3.623k+0.25
c 2.48 2.4 2.38 2.37 2.36 2.34 2.33 2.33 2.33 2.33 2.326+0.161/k
6 φ 4.7 9.2 13.6 18.1 22.6 44.9 67.2 89.6 111.9 134.2 4.466k+0.25
c 2.67 2.6 2.58 2.57 2.56 2.55 2.54 2.54 2.54 2.54 2.534+0.14/k
7 φ 5.5 10.8 16 21.3 26.6 52.9 79.3 105.6 131.9 158.3 5.267k+0.25
c 2.83 2.77 2.75 2.74 2.73 2.72 2.71 2.71 2.71 2.71 2.704+0.13/k
8 φ 6.3 12.3 18.3 24.4 30.4 60.6 90.7 120.9 151 181.2 6.031k+0.25
c 2.96 2.91 2.89 2.88 2.87 2.86 2.85 2.85 2.85 2.85 2.847+0.12/k
9 φ 7 13.8 20.5 27.3 34 67.8 101.6 135.3 169.2 203 6.759k+0.25
c 3.08 3.02 3.01 3 2.99 2.98 2.98 2.98 2.97 2.97 2.97+0.11/k
10 φ 7.7 15.1 22.6 30.1 37.5 74.8 112 149.3 186.6 223.8 7.453k+0.25
c 3.18 3.13 3.11 3.1 3.1 3.09 3.08 3.08 3.08 3.08 3.078+0.1/k

F検定で解く

古書の解法で解いてみましょう。
次の6点で解いていきます。

  1. \(\frac{\bar{R_A}}{c_A}\)=\(V_A\) (不偏分散)なる\(c_A\)を特殊な表から導出
  2. \(c_A\)は群の大きさnと点の数kから決まる特殊な表から求める
  3. \(V_A\) (不偏分散)を計算
  4. 自由度\(φ_A\)を群の大きさnと点の数kから決まる特殊な表から求める
  5. Bについても同様に計算して、\(V_B\),\(φ_B\)を計算
  6. \(V_A\)と\(V_B\)の比からF検定を実施

●各値は
●範囲:\(\bar{R_A}\)=3.6
●範囲:\(\bar{R_B}\)=3.5
●\(\bar{C_A}\)=2.33 (n=5,k=15のcの値)
●\(\bar{C_B}\)=2.34 (n=5,k=10のcの値)
●自由度:\(φ_A\)=54.6 (n=5,k=15のφの値)
●自由度:\(φ_B\)=36.5 (n=5,k=10のφの値)
●分散:\(\bar{V_A}\)=\((\frac{\bar{R_A}}{c_A})^2\)
=\((\frac{3.6}{2.33})^2\)
=2.39
●分散:\(\bar{V_B}\)=\((\frac{\bar{R_B}}{c_B})^2\)
=\((\frac{3.5}{2.34})^2\)
=2.24

よって、F検定は
F(\(φ_A\),\(φ_B\),α)= \(\bar{V_A}\)/\(\bar{V_B}\)
=1.07
なお、F(\(φ_A\),\(φ_B\),α)= F(54.6,36.5,0.05)ですが、
自由度は自然数なので、F検定表から近い値を使います。
それは、F(60,40,0.05)=1.64
を使います。

●F=1.07 > 1.64
より、有意差は無いという結果がでます。

t分布で計算した母平均の差の検定と同じ結果になりましたね。

特殊な表から不偏分散と自由度を求めるわけですが、表の導出は当時考えて作られたものです。しかし、理論的に正しいかどうかは証明できないため、推奨しません。ただし、過去の良い事例を遺すことは大事なので、本記事で紹介しました。

いくつかの解法を使って比較すると理解が深まりますね。

まとめ

R管理図で、平均差を検定する方法を解説しました。

  • ①範囲Rの平均差の検定事例
  • ②2つの母平均差の検定で解く
  • ③(参考)特殊な表を使ってF検定で解く


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