【本記事限定】計数値データにR管理図やs管理図が必要な場合がある
「R管理図はなぜ計量値しかないのかがわからない」、「Xbar管理図はR管理図やs管理図を併用するのに、なんで、np管理図、p管理図、c管理図、u管理図は併用しないのかがわからない」と困っていませんか?
こういう期待に答えます。
本記事のテーマ
- ①管理図の分類は計量値、計数値で分けるのが一般的
- ②計数値になぜR管理図やs管理図が無いのか?
- ③群内データの分析が必要なら、計数値でもR管理図やs管理図は必要
- ④管理図の分類方法は群内データの分析要否で分けても良い
記事の信頼性
記事を書いている私は、管理図の係数表、群内変動・群間変動の解き方に疑問が残りました。そこで、管理図の理論を研究しました。その成果をブログで解説します。
●Youtube動画でも解説しています。ご確認ください。
①管理図の分類は計量値、計数値で分けるのが一般的
教科書の分類方法
教科書では、一般的に、データが計量値、計数値のどちらか、計数値の場合は属する確率分布によって区分されます。
ー | 確率分布 | データ | 平均 | 幅 |
計量値 | 正規分布 | 長さ、重さなど | X管理図 | R管理図 |
\(\bar{X}\)管理図 | s管理図 | |||
計数値 | 二項分布 | 率 | p管理図 | × |
個数 | np管理図 | × | ||
ポアソン分布 | 欠点数 | c管理図 | × | |
単位当たりの欠点数 | u管理図 | × |
当たり前を疑ってみよう!
上の表のオレンジ枠をみると、
計数値データは、平均に関する管理図はあるが、幅(範囲や標準偏差)についての管理図は無いことがわかります。
なぜでしょうか?
②計数値になぜR管理図やs管理図が無いのか?
個数や率は群間だけの値になりやすいから
ここで、計量値データを用意します。
●全データ30個用意し、ある計量値データとしましょう。長さ、重さ、時間とか何でもOK。
●1つのグループに6データを用意して、5グループのデータを取る。
表にすると下のような感じです。
Xij | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ?? |
1 | 20 | 22 | 18 | 16 | 19 | |
2 | 15 | 17 | 19 | 17 | 22 | |
3 | 24 | 16 | 19 | 22 | 19 | |
4 | 21 | 18 | 24 | 22 | 20 | |
5 | 16 | 20 | 16 | 15 | 18 | |
6 | 21 | 16 | 17 | 23 | 18 |
ここで、上表の黄色枠で何か、「まとめたデータ」をとるはずですが、何をとりますか?
「平均値」と「標準偏差(または範囲)」が思いつくでしょう。
「平均値」と「範囲」を追加した表を再度書きます。
Xij | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | Xbar | R |
1 | 20 | 22 | 18 | 16 | 19 | 19 | 6 |
2 | 15 | 17 | 19 | 17 | 22 | 18 | 7 |
3 | 24 | 16 | 19 | 22 | 19 | 20 | 8 |
4 | 21 | 18 | 24 | 22 | 20 | 21 | 6 |
5 | 16 | 20 | 16 | 15 | 18 | 17 | 5 |
6 | 21 | 16 | 17 | 23 | 18 | 19 | 7 |
この表から\(\bar{X}\)管理図とR管理図ができますね。
●\(\bar{X}\)管理図
●R管理図
次に元の計量値データにおいて、平均以上なら「良0」,未満なら「不良1」と判定しましょう。
その結果のデータは次の表に変わります。
Xij | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | Xbar | R |
1 | 20 | 22 | 18 | 16 | 19 | 19 | 6 |
2 | 15 | 17 | 19 | 17 | 22 | 18 | 7 |
3 | 24 | 16 | 19 | 22 | 19 | 20 | 8 |
4 | 21 | 18 | 24 | 22 | 20 | 21 | 6 |
5 | 16 | 20 | 16 | 15 | 18 | 17 | 5 |
6 | 21 | 16 | 17 | 23 | 18 | 19 | 7 |
↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ |
Xij | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 合計 | 平均 |
1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 3 | 0.6 |
2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 | 4 | 0.8 |
3 | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 | 3 | 0.6 |
4 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0.2 |
5 | 1 | 0 | 1 | 1 | 1 | 4 | 0.8 |
6 | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 | 3 | 0.6 |
計数値データとして変化した表をみると、
縦列の合計値と平均は意味があるけど、
横列の0,1,の値の並びに意味はない
ことがわかります。
実際に計数値データにした場合、欲しいデータは、群番号と、各群の合計値だけですね。
Xij | 合計 | 率 |
1 | 3 | 0.6 |
2 | 4 | 0.8 |
3 | 3 | 0.6 |
4 | 1 | 0.2 |
5 | 4 | 0.8 |
6 | 3 | 0.6 |
よって、
合計値なら、np管理図、c管理図、
平均値なら、p管理図、u管理図
の1つの管理図だけ作るわけです。
●np管理図
群内データに意味が無いから管理図は1種類しかないなら、
意味のある群内データなら、計数値データでも管理図は平均と幅の2種類が必要ではないか?
と考えて下さい。
計数値データもでR管理図やs管理図が必要な場合もあります。その例を見ましょう。
③群内データの分析が必要なら、計数値でもR管理図やs管理図は必要
先ほど、計量値データをある基準で0,1分けして、計数値データに変えました。なお、次のような計数値データがあったら、どんな管理図で管理しますか?
Xij | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 合計 |
1 | 3 | 8 | 3 | 6 | 6 | 26 |
2 | 2 | 8 | 0 | 3 | 0 | 13 |
3 | 1 | 1 | 4 | 5 | 6 | 17 |
4 | 7 | 8 | 8 | 8 | 6 | 37 |
5 | 4 | 6 | 4 | 4 | 0 | 18 |
6 | 5 | 8 | 7 | 8 | 2 | 30 |
Xijの値はすべて不良個数としましょう。群内にも群間にも個別の不良個数が分かっている場合です。
群内データ(横列)、群間(縦列)にデータ分布に意味がありますね。
この場合、どんな管理図を使いますか?
1つは、計量値と同じように、\(\bar{X}\)-R管理図使うか。
もう1つは、計数値データなので、np管理図と管理図を組み合わせたパターンでしょう。
④管理図の分類方法は群内データの分析要否で分けても良い
管理図の分類方法は、計量値データか計数値データかどうか以外にもあることに気づくはずです。本記事では、群内データ分布に意味があるかどうか?でも分類することができます。
例えば下表のような分類もできます。QCプラネッツ独自の分類方法です。
– | – | 群内データ分布 に意味がある |
群内データ分布 に意味が無い |
平均 | X管理図 | ● | ● |
\(\bar{X}\)管理図 | ● | ● | |
p管理図 | ● | ● | |
np管理図 | ● | ● | |
c管理図 | ● | ● | |
u管理図 | ● | ● | |
幅 | R管理図 | ● | × |
s管理図 | ● | × |
計数値データ、計量値データの区分に関係なく、幅を調べる必要がある場合は、R管理図やs管理図を使う必要があることが分かります。
皆さんも考えたら、いろいろな管理図の分類方法ができるはずです。
まとめ
管理図の分類方法は教科書以外にもあり、計数値データでもR管理図を使う場面があることを解説しました。
- ①管理図の分類は計量値、計数値で分けるのが一般的
- ②計数値になぜR管理図やs管理図が無いのか?
- ③群内データの分析が必要なら、計数値でもR管理図やs管理図は必要
- ④管理図の分類方法は群内データの分析要否で分けても良い
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