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カイ2乗管理図がわかる

管理図

「カイ2乗管理図って何?」と困っていませんか? マニアックすぎて困ってない? でもあるんです!紹介しますね。

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

カイ2乗管理図がわかる
カイ2乗管理図なんて聞いたことが無い!

と思いますが、あることはあります。折角なので解説します!必見ですよ!

  • ①カイ2乗管理図とは
  • ②カイ2乗管理図の描き方
  • ③カイ2乗管理図のメリット、デメリット

記事の信頼性

記事を書いている私は、管理図の係数表、群内変動・群間変動の解き方に疑問が残りました。そこで、管理図の理論を研究しました。その成果をブログで解説します。

①カイ2乗管理図とは

カイ2乗管理図がなぜ必要?

元々はp管理図やnp管理図で不良品、良品を管理しますが、「良か不良か」の2択しかありません。

中には、2択以上の複数選択をした管理図を作りたいニーズもあるでしょう。これをかなえるために作られたのが、カイ2乗管理図です。

カイ2乗管理図の数理

いろいろ疑問に思うでしょう。1つずつ解説します。

疑問1:カイ2乗の式使うの?
疑問2:中心、管理限界のCL,LCL,UCLはどう決めるの?

カイ2乗の式使うの?

適合性の検定のようにカイ2乗式を使います。

次の式を使います。
●\(χ^2\)=\(\sum \frac{(実測値―期待値)^2}{期待値}\)

具体的に4つの階級がある場合は、
●\(χ^2\)=\(\frac{(r_A-\bar{r_A})^2}{\bar{r_A}}\)+\(\frac{(r_B-\bar{r_B})^2}{\bar{r_B}}\)
+\(\frac{(r_C-\bar{r_C})^2}{\bar{r_C}}\)+\(\frac{(r_D-\bar{r_D})^2}{\bar{r_D}}\)
となります。

中心、管理限界のCL,LCL,UCLはどう決めるの?

カイ2乗分布の
●0.5点がCL、
●1-0.0027点がLCL、
●0.0027点をUCL
とします。
0.0027は正規分布の3σの点です。

χ2乗分布と確率について下図のとおりです。

カイ2乗分布

χ2乗分布表にて、自由度と確率点をみれば、χ2の値がわかります。
ただし、0.0027点や、1-0.0027点はχ2乗分布表では読み取れません。

Excelの関数を使って導出します。
●CHISQ.INV.RT(確率,自由度)で計算してくれます。
確率が1-0.0027で自由度が3の場合は、
●CHISQ.INV.RT(1-0.0027, 3)=0.047
となります。ほぼ0ですね。

まとめると、

カイ2乗分布の
●CL⇒Excel でCHISQ.INV.RT(0.5, 自由度)の値
●LCL⇒Excel でCHISQ.INV.RT(1-0.0027, 自由度)の値
●UCL⇒Excel でCHISQ.INV.RT(0.0027, 自由度)の値
とします。
0.0027は正規分布の3σの点です。

②カイ2乗管理図の描き方

データの用意

カイ2乗管理図と比較のためのpn管理図を作成します。

データは次の表のとおりです。

1級 2級 3級 χ2
1 174 10 16 0.89
2 173 8 19 0.5
3 175 9 16 1.05
4 170 14 16 2.4
5 174 6 20 1.69
6 173 6 21 1.7
7 164 11 25 1.56
8 169 13 18 1.11
9 165 15 20 2.65
10 163 8 29 4.74
合計 1700 100 200 2000
平均 170 10 20 200

作る管理図

●4つの管理図を作ります。

●1級だけのnp管理図
●2級だけのnp管理図
●3級だけのnp管理図
●1級、2級、3級をまとめたカイ2乗管理図

np管理図を作る

●1級だけのnp管理図
●2級だけのnp管理図
●3級だけのnp管理図

●必要な値をそれぞれ求めます。表にまとめます。

1級 2級 3級
平方和S 186 92 160
分散V 20.67 10.22 17.78
標準偏差s 4.54 3.2 4.21
平均CL 170 10 20
LCL 156.38 0.40 7.37
UCL 183.62 19.6 32.63

●np管理図を描きましょう。

np管理図(1級)

np管理図

np管理図(2級)

np管理図

np管理図(3級)

np管理図

カイ2乗管理図を作る

●1級、2級、3級をまとめたカイ2乗管理図

必要な値を求める。

●必要な値をそれぞれ求めます。表にまとめます。

まず、自由度は 1級、2級,3級の3つから1つ引いた、2です。
自由度2のカイ2乗分布を考えます。

●次に、データから各群のχ2を計算します。
例えば、群1の場合、
データが、174,10,16で、
それぞれの平均が170,10,20
です。

●\(χ^2\)=\(\frac{(r_A-\bar{r_A})^2}{\bar{r_A}}\)+\(\frac{(r_B-\bar{r_B})^2}{\bar{r_B}}\)
+\(\frac{(r_C-\bar{r_C})^2}{\bar{r_C}}\)
=\(\frac{(174-170)^2}{170}\)+\(\frac{(10-10)^2}{10}\)+\(\frac{(16-20)^2}{20}\)
=0.89
となります。
同様に群1から群10まで計算します。

●自由度2のχ2乗分布からLCL,CL,UCLを求めます。
◎LCL=CHISQ.INV.RT(1-0.0027,2)=0.0054
◎CL=CHISQ.INV.RT(0.5,2)=1.38
◎UCL=CHISQ.INV.RT(0.0027,2)=11.83
となります。

●結果を下表にまとめます。

χ2 LCL CL UCL
1 0.89 0.01 1.39 11.83
2 0.5 0.01 1.39 11.83
3 1.05 0.01 1.39 11.83
4 2.4 0.01 1.39 11.83
5 1.69 0.01 1.39 11.83
6 1.7 0.01 1.39 11.83
7 1.56 0.01 1.39 11.83
8 1.11 0.01 1.39 11.83
9 2.65 0.01 1.39 11.83
10 4.74 0.01 1.39 11.83

●カイ2乗管理図を描きましょう。

カイ2乗管理図
np管理図とカイ2乗管理図を比較してどちらも工程異常はないことがわかりました。np管

③カイ2乗管理図のメリット、デメリット

カイ2乗管理図のメリット

複合条件をまとめたデータで管理図が作れること。

くらいでしょうか?

カイ2乗管理図のデメリット

(i)カイ2乗管理図のLCL,CL,UCLの定義の妥当性が怪しい。つまり、
●CL⇒Excel でCHISQ.INV.RT(0.5, 自由度)の値
●LCL⇒Excel でCHISQ.INV.RT(1-0.0027, 自由度)の値
●UCL⇒Excel でCHISQ.INV.RT(0.0027, 自由度)の値
は妥当なのか?よく吟味する必要があります。
(ii)個別に作ったnp管理図で十分となると、カイ2乗管理図の出番はなさそう。

以上から、デメリットの方が多いため、有名にならないマニアックな管理図になってしまったかもしれません。

カイ2乗管理図からχ2乗分布、適合性の検定、pn管理図を複合した応用事例として勉強できたので、カイ2乗管理図を学ぶ価値はあります!

まとめ

カイ2乗管理図について、解説しました。

  • ①カイ2乗管理図とは
  • ②カイ2乗管理図の描き方
  • ③カイ2乗管理図のメリット、デメリット


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