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【信頼性工学】ガンマ分布がわかる

信頼性工学

「ガンマ分布が難しくて、よくわからない」と困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

【信頼性工学】ガンマ分布がわかる
  • ①確率密度関数を導出するモデルを理解する
  • ➁ガンマ分布とは
  • ➂故障率λの計算
  • ➃ガンマ分布の期待値と分散の計算
  • ➄故障率曲線との関係
信頼性工学は数学を駆使する!
数学も身につけよう!

①確率密度関数を導出するモデルを理解する

故障率は指数分布だけではない

特に信頼性工学の入門を解説している教科書やサイトは、

信頼性工学=指数分布

とインプットされがちです。

でも、ちゃうで!(違うよ!)

故障分布に合わせた確率密度関数を作る

例えば、寿命試験結果が以下のヒストグラムになったとします。

信頼性工学

この図よく見ると、

正規分布型ですよね!

なのに、

指数分布型の確率密度関数を導出する教科書がほとんど
でも、ちゃうで!(違うよ!)
それぞれの分布にあった確率密度関数を使って、寿命予測や故障率を計算しよう!

分布の種類

よく使う、確率密度関数で良いです。

  1. 一様分布
  2. 指数分布
  3. 正規分布
  4. ワイブル分布
  5. ガンマ分布

ワイブル分布とガンマ分布は無理矢理感がありますが、信頼性工学でよく使います。

大事なのは、

分布関数で練習したら、あなたが使いやすい分布関数で信頼性を解析すればOK

例えば、2次関数とかでも使ってもいいと思います。

信頼性工学≠指数分布 をインプットしてください。

では、個々の分布関数を見ていきます。

➁ガンマ分布とは

ガンマ分布の確率密度関数の考え方

ガンマ分布とは、

関数\(f(t)\)=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
を見てもさっぱりわからない。
指数分布関数\(f(t)=e^{-λt}\)の¥(n¥)回の畳み込み積分から
(\(t=t_1 + t_2 +…+ t_n\)から)
からガンマ分布を導出すると考えるとわかりやすい。

ガンマ分布と指数分布の違いがよくわかる図

ガンマ分布は指数分布から作るので、指数分布に属すると考えてよいです。
では、ガンマ分布と指数分布の使い分け方が気になります。わかりやすく図で描くと次の通りです。

ガウス分布

要は、

①OK!、NG!の2択なら指数分布
➁NGまでにいくつゲートがある場合ならガウス分布
のイメージで区別する。

ガウス分布の使用例としては、
金属の亀裂の数から故障判定を使う場合とかがあります。
●時刻t1で○○個亀裂があれば、少しヤバいけど故障ではない
●時刻t1+t2で△△個亀裂があれば、そろそろヤバいかもでも、もう少し使用許可する
●時刻t1+t2+…+tnで★★個亀裂があれば、アカン!ヤバい! 故障や!とする
という感じです。

ガンマ分布の確率密度関数の導出

ガンマ分布の確率密度関数は
\(f(t)\)=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
です。導出できますか?

下の問いで確認しましょう。

例題

ある時刻\(t_i\) (\(i=1,…,n\))は指数分布関数\(f(t)=λe^{-λt}\)に従う。
この場合、時刻\(t=t_1 +t_2+…+t_n\)における確率密度関数は
\(f(t)\)=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
であることを、畳み込み積分と数学的帰納法を使って導出せよ。

解法

解法は関連記事で解説しています。ご覧ください。数学的帰納法で意外と簡単に証明できます。

ガンマ分布がよくわかる
ガンマ分布が導出できますか?本記事では、直接、関数の式を見るのは危険なガンマ分布を指数分布からわかりやすく導出し、期待値・分散も途中過程を端折らず解説します。信頼性工学で必須なガンマ分布なので、必読な記事です。

なお、ガウス分布のグラフはこんな感じです。
(λ=1)

ガウス分布

信頼度\(R(x)\)と不信頼度\(F(x)\)の関係

これ混同しがちなので、きちっと整理しましょう。

信頼度はReliabilityと英語で書くので、信頼度\(R(x)\)と書きます。
不信頼度は失敗のFailureを英語で使って、不信頼度(故障度) \(F(x)\)と書きます。

そして大事な関係式があります。簡単です!

\(R(x)\)+ \(F(x)\)=1
\(\displaystyle \frac{dR(x)}{dx} \)=-\(\displaystyle \frac{dF(x)}{dx} \)
(\(\)R(x)=1-\(F(x)\)の式を両辺\(x\)で微分)

また、

\(f(x)=\displaystyle \frac{dF(x)}{dx} \)=-\(\displaystyle \frac{dR(x)}{dx} \)

も成り立ちます。よく使いますが、頭が混乱しやすいので整理して理解しましょう。

➂故障率λの計算

故障率とは、\(f(x)\)と\(R(x)\)との比で計算します。ガンマ分布の場合、

機械的に
\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)をします。

このあとの導出結果も、関連記事で解説しています。

ガンマ分布がよくわかる
ガンマ分布が導出できますか?本記事では、直接、関数の式を見るのは危険なガンマ分布を指数分布からわかりやすく導出し、期待値・分散も途中過程を端折らず解説します。信頼性工学で必須なガンマ分布なので、必読な記事です。

分布関数\(F(t)\)

関連記事から結果を書くと、

\(F(t)\)=\( \frac{λ^n}{(n-1)!}\sum_{k=0}^{n-1} \frac{n!}{(n-(k+1))!} \frac{1}{λ^{k-1}} t^{n-(k-1)} e^{-λt}\)

結果は出たけど、よくわからない式ですね。。。

機械的に
\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)をします。

\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)
=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
/ \( \frac{λ^n}{(n-1)!}\sum_{k=0}^{n-1} \frac{n!}{(n-(k+1))!} \frac{1}{λ^{k-1}} t^{n-(k-1)} e^{-λt}\)

\(λ(t)\)によって、故障率曲線の特徴が3つに分けられます。これはあとで解説します。

➃確率密度関数の平均と分散の計算

ガンマ関数は名脇役!

先に書いて復習しましょう。関連記事でも解説しています。ご確認下さい。

ガンマ関数がよくわかる(その2_大学数学編)
ガンマ関数がさらっと解けますか?本記事では、ガンマ関数の性質とベータ関数との関係式を高校数学を駆使してわかりやすく解説しています。ガンマ関数に慣れずに苦戦している人は必読です。

大事なのは、

\(Γ(s)= \displaystyle \int_{0}^{∞} x^{s-1}e^{-x} dx\)=\((s-1)!\)
\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x^{s-1}e^{-x} dx\)の形が出たらガンマ関数に持ち込むことが大事!

期待値E[\(x\)]の計算

期待値E[\(x\)]は
期待値E[\(x\)]=\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x f(x) dx\)
です。積分範囲は正になるので、[0,∞]でOKです。

以下、関連記事で導出経過を解説しています。ご覧ください。

ガンマ分布がよくわかる
ガンマ分布が導出できますか?本記事では、直接、関数の式を見るのは危険なガンマ分布を指数分布からわかりやすく導出し、期待値・分散も途中過程を端折らず解説します。信頼性工学で必須なガンマ分布なので、必読な記事です。

分散の計算

分散も計算が大変そうですが、期待値が計算できたら、意外と簡単にできます。

分散V[\(x\)]の計算

分散V[\(x\)]は
分散V[\(x\)]= E[\(x^2\)]- E[\(x\)]2
で計算します。

以下、関連記事で導出経過を解説しています。ご覧ください。

ガンマ分布がよくわかる
ガンマ分布が導出できますか?本記事では、直接、関数の式を見るのは危険なガンマ分布を指数分布からわかりやすく導出し、期待値・分散も途中過程を端折らず解説します。信頼性工学で必須なガンマ分布なので、必読な記事です。

できましたね!

以上、まとめると、

ガンマ分布の期待値と分散は、
●期待値E[\(x\)]=\(\frac{n}{λ}\)
●分散V[\(x\)]=\(\frac{n}{λ^2}\)
随分すっきりしますね。
ガンマ分布は信頼性工学で頻出ですが、意外と期待値と分散の計算は難しいです。よく読んで解けるようになりましょう。

➄故障率曲線との関係

故障率λの計算

➂で計算した通り、ガンマ分布の場合、

\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)
=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
/ \( \frac{λ^n}{(n-1)!}\sum_{k=0}^{n-1} \frac{n!}{(n-(k+1))!} \frac{1}{λ^{k-1}} t^{n-(k-1)} e^{-λt}\)

結果は出たけど、よくわからない式ですね。。。
この場合は、\(λ\),\(n\)に具体的な値を入れて、\(λ(t)\)の様子をグラフで可視化した方がよいでしょう。

具体的に\(n\)=3くらいで見てみましょう。

\(λ(t)\)の具体例

【例題】
ガウス分布で\(n=3\)のときの故障率\(λ(t)\)を導出し、概形を図示せよ。

やってみましょう

●\(f(t)\)は、
\(f(t)\)=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
=\(\frac{λ^3 t^{3-1}}{(3-1)!} e^{-λt}\)
=\(\frac{1}{2} λ^3 t^2 e^{-λt}\)

次に
●\(F(t)\)は部分積分の練習で求めると、
\(F(t)\)=\(\displaystyle \int_{t}^{∞} f(t) dt\)
=\(\left[ -(\frac{1}{2} λ^3 t^2 + λt+1) e^{-λt} \right]_t^∞ \)
=\((\frac{1}{2} λ^3 t^2 + λt+1) e^{-λt}\)

よって、\(λ(t)\)は
\(λ(t)\)= \(f(t)\)/ \(F(t)\)
=\(\frac{λ^3 t^2}{λ^2 t^2 +2λt +2}\)
=(式1)

となります。グラフでは下図になります。

信頼性工学

また、(式1)の分母分子に\(t^2\)で割ると、
(式1)
=\(\frac{λ^3}{λ^2 +2λ/t +2/^2}\)
より\(t\)⇒∞にすると、(式1)⇒\(λ\)に収束します。

なので、ガウス分布の\(λ(t)\)は\(λ\)と見て、故障モードごとに分類すればよいとわかります!

ここで、定数\(λ\)の値によって、故障率曲線の特徴が3つに分けられます。

  1. \(λ\) < 1 ⇒ 初期故障期(DFR)
  2. \(λ\) = 1 ⇒ 偶発故障期(CFR)
  3. \(λ\) > 1 ⇒ 摩耗故障期(IFR)

バスタブ曲線との関係を考えましょう。

信頼性工学
公式を丸暗記せず、式を理解して故障の時間的関係を学んでいきましょう。

まとめ

「【信頼性工学】ガンマ分布がわかる」を解説しました。

  • ①確率密度関数を導出するモデルを理解する
  • ➁ガンマ分布とは
  • ➂故障率λの計算
  • ➃ガンマ分布の期待値と分散の計算
  • ➄故障率曲線との関係


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