【簡単】AQL(合格品質水準)がすぐわかる
「AQL(合格品質水準)が何なのか、わからない」、「AQL(合格品質水準)はどの値にすればよいか、わからない」など困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①AQL(合格品質水準)はOC曲線でいうp0である
- ②なみ検査のAQLはOC曲線のp0でよい
- ③ゆるい検査、きつい検査のAQLはOC曲線のp0に補正した値となる
JISや教科書に明記していないので、答えられないはずです。
本記事では、明快に答えられるよう解説します。
自分で抜取検査の理論を理解して、抜取検査を先に自分で設計して、必要な値をJISや教科書を使うようにしたいです。
●You tube動画でも解説しています。ご確認ください。
①AQL(合格品質水準)はOC曲線でいうp0である
結論
ロットの合格率L(p)が1-α(α:第1種の誤り)となるときの
不良率p0のことである
自信もって、AQL=p0でOKです。
その理由を、詳細に解説します!
AQLの定義がJISや教科書に詳細に書いているが、どの値なのかが結局わからない
- 工程平均として満足だと考えられる品質の上限(教科書の定義)
- 継続して連続のロットが抜取検査に提出されるときに、許容される工程平均の上限の品質水準(JISZ9015-1 3.1.26)
確かに、AQLの定義が詳細に書いています。けど、
①手持ちのデータや値でいうと、どれがAQLなのかわからない!
②仮に工程平均を満足する値があったとして、その値を使ってよい理由がはっきりしない。(JISに書いているからOKとしか説明できない。
自分の理論でAQLを定義したい!ですよね。抜取検査はOC曲線ですべて考えるのだから、
OC曲線でいうとどの値なのかをはっきりさせたい!
はずです。
AQL(合格品質水準)はOC曲線のp0でよい
結論
ロットの合格率L(p)が1-α(α:第1種の誤り)となるときの
不良率p0のことである
自信もって、AQL=p0でOKです。
実際に計算して、JISの主抜取表と比較してみればわかりますので、計算してみましょう。
②なみ検査のAQLはOC曲線のp0でよい
OC曲線からp0を導出
なみ検査の1回抜取方式で、実際にOC曲線から、AQLと合格判定個数を求めてみましょう。
OC曲線から抜取表を作る方法
①サンプル数n,合格判定数c、からOC曲線を描いて、
ロットの合格率L(p)が1-α(α:第1種の誤り =0.05)となるp0を求めます。
②次に合格品質水準AQLとp0の大小を下図のように比較します。
●p0 ≤ AQL なら、合格判定個数c⇒c+1に増やす。
●p0 > AQL なら、合格判定個数cは変えない
この方法で、各AQLにおける、合格判定数c(これが合格判定個数Acになります)を求め、この結果を抜取表と比較します。
OC曲線の描き方については、関連記事があります。Excel VBAでOC曲線が作れます。
●2回抜取方式(ポアソン分布)のOC曲線が描ける
●2回抜取方式(二項分布)のOC曲線が描ける
●2回抜取方式のOC曲線(二項分布とポアソン分布)をプログラムで描こう
OC曲線から抜取表を作成
サンプル数n=20において、各AQLとAcの関係について、
●自分で作った結果
●JISZ9015-1の主抜取表
を比較します。
AQL(%) | 自分で 導出 |
JISZ 9015Z-1 |
AQL(%) | 自分で 導出 |
JISZ 9015Z-1 |
0.01 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 |
0.015 | 0 | 0 | 1.5 | 1 | 1 |
0.025 | 0 | 0 | 2.5 | 2 | 1 |
0.04 | 0 | 0 | 4 | 2 | 2 |
0.065 | 0 | 0 | 6.5 | 3 | 3 |
0.1 | 0 | 0 | 10 | 4 | 5 |
0.15 | 0 | 0 | 15 | 6 | 7 |
0.25 | 0 | 0 | 25 | 8 | 10 |
0.4 | 1 | 0 | 40 | 12 | 14 |
0.65 | 1 | 0 | 65 | 16 | 21 |
関連記事にも同じ表を載せています。
●調整型抜取検査のなみ検査の主抜取表がわかる
自分で求めた値と、JISZ9015-1 なみ検査(1回抜取方式)を比較します。結構、一致しています。
結論
ロットの合格率L(p)が1-α(α:第1種の誤り)となるときの
不良率p0のことである
自信もって、AQL=p0でOKです。
③ゆるい検査、きつい検査のAQLはOC曲線のp0に補正した値となる
ゆるい検査、きつい検査も、なみ検査と同じ結論になりますが、1点注意が必要です。
ただし、補正すればAQLが1点で決まる。
OC曲線でなみ検査、ゆるい検査、きつい検査を比較
同じAQL,同じ合格判定個数Acで、なみ検査、ゆるい検査、きつい検査のOC曲線を描いてみます。
検査 | サンプル数n | 合格判定個数Ac | AQL(%) |
なみ検査 | 20 | 3 | 6.5 |
ゆるい検査 | 13 | 3 | 6.5 |
きつい検査 | 32 | 3 | 6.5 |
同じAQL,同じ合格判定個数Acでは、サンプル数nがなみ検査、ゆるい検査、きつい検査で異なります。
OC曲線を見ると、ロットの合格率L(p)が1-α(α:第1種の誤り)となるときの不良率p0は、1点で集まっていないことがわかります。
OC曲線では、合格判定数cを固定して、サンプル数nが変わると曲線の形は変わります。OC曲線の基本です。
ゆるい検査、きつい検査のOC曲線を補正する
ただし、補正すればAQLが1点で決まる。
つまり、グラフの左側にあった、きつい検査を右側にずらし、
グラフの右側にあった、ゆるい検査を左側にずらすと、
なみ検査の曲線に近づきます。
補正した3つの曲線が1つに集まったときの、p0をAQLとすればよいのです。下図にイメージ図を描きます。
図はわかりやすいのですが、数学的には問題ないのか?が気になりますので、式でも追跡します。
ロット合格率L(p)の公式を書きます。
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr p^r (1-p)^{n-r}\) (なみ検査)
JISの主抜取表をよく見ると、ゆるい検査ときつい検査は、なみ検査に比べて、AQLの列が1つずれています。つまり、これを補正式として代入します。
ロット合格率L(p)
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr p^r (1-p)^{n-r}\) (なみ検査)
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (ゆるい検査) (0 < m < 1)
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (きつい検査) (m > 1)
補正変数mは、主抜取表のAQLの1列のずれを考慮して、標準数\(10^{0.2}\)を入れてみます。
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (なみ検査) (m=1)
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (ゆるい検査) (m=\(10^{-0.2}\))
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (きつい検査) (m=\(10^{0.2}\))
すると、補正した3つの曲線が1つに集まります。
結論
ロットの合格率L(p)が1-α(α:第1種の誤り)となるときの
不良率p0のことである
自信もって、AQL=p0でOKです。
以上から、自信もって、AQL=p0でOKとして活用ください。
まとめ
調整型抜取検査にて、AQL(合格品質水準)の定義について解説しました。
- ①AQL(合格品質水準)はOC曲線でいうp0である
- ②なみ検査のAQLはOC曲線のp0でよい
- ③ゆるい検査、きつい検査のAQLはOC曲線のp0に補正した値となる
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