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JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で下限規格値が既知の抜取方式

抜取検査

「計量抜取検査(標準偏差既知) (JISZ9003)がよくわからない」、「サンプル数n,合格判定係数kはどうやって求めるの?」など困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で下限規格値が既知の抜取方式がわかる

JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で下限規格値が既知の抜取方式がわかる

  • ①下限規格値と合格判定値についての関係式を導出
  • ②サンプル数nと合格判定係数kを導出
  • ③演習問題
  • ④OC曲線を描く

上限規格値については、関連記事で確認ください。

JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で上限規格値が既知の抜取方式
JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で上限規格値が既知の抜取方式について解説します。サンプル数n、合格判定個数k、上限合格判定値の導出やOC曲線の描き方を解説します。計量抜取検査をマスターしたい方は必見です。

①下限規格値と合格判定値についての関係式を導出

関係式を導出するためのモデル図を作成

次のような計量抜取検査を考えます。

あるロットが正規分布に従っている。下限規格値L以下である確率はpとする。この確率pについて、
● p ≤ p0の不良率をもつロットは合格
● p > p1の不良率をもつロットは不合格
とする。前者はできるだけ合格させたいが、後者はできるだけ不合格にさせたいような抜取検査を考えたい。

モデル図を下図のように作ります。
このモデル図がしっかり作りこむことが意外と重要です。よく眺めてください。

計量抜取検査

できるだけ合格させたいp0はα=0.05(生産者危険)
できるだけ不合格にさせたいp1はβ=0.1(消費者危険)
の確率になるような抜取方式を検討します。

関係式を導出

モデル図から次の式が導かれます。見たらわかりますね。
計量抜取検査の理論は、モデル図から式を導出します

①\(σ_{\bar{x}}\)=\(\frac{σ}{\sqrt{n}}\)

②下限規格値Lの関係式を作ります。
●\(μ_0\)=L+\(K_{p0}σ\)
●\(μ_1\)=L+\(K_{p1}σ\)

③合格判定値\(\bar{X_L}\)の関係式を作ります。
●μを使う場合
・\(\bar{X_L}\)=\(μ_0\)-\(K_{α}σ_{\bar{x}}\)
・\(\bar{X_L}\)=\(μ_1\)+\(K_{β}σ_{\bar{x}}\)

●Lを使う場合
・\(\bar{X_L}\)=L+\(K_{p0}σ\)-\(K_{α}σ_{\bar{x}}\)
・\(\bar{X_L}\)=L+\(K_{p1}σ\)+\(K_{β}σ_{\bar{x}}\)

②サンプル数nと合格判定係数kを導出

関係式からサンプル数nと合格判定係数kを導出します。

サンプル数nを導出

ただし、わかっている値で表現します。
わかっている値は
\(K_{α}\)
\(K_{β}\)
\(K_{p0}\)
\(K_{p1}\)
です。

●Lを使う場合
・\(\bar{X_L}\)=L+\(K_{p0}σ\)-\(K_{α} σ_{\bar{x}}\)
・\(\bar{X_L}\)=L+\(K_{p1}σ\)+\(K_{β} σ_{\bar{x}}\)
の2式を引きます。

0=0+\(K_{p0}σ\)-\(K_{p1}σ\)-\(K_{α}σ_{\bar{x}}\)-\(K_{β}σ_{\bar{x}}\)
(\(K_{p0}-K_{p1}\))σ=(\(K_{α}+K_{β}\))\(σ_{\bar{x}}\)

この式に、\(σ_{\bar{x}}\)=\(\frac{σ}{\sqrt{n}}\)を代入します。
(\(K_{p0}-K_{p1}\))σ=(\(K_{α}+K_{β}\))\(\frac{σ}{\sqrt{n}}\)
両辺をσで割って,2乗します。
n=\((\frac{K_{α}+K_{β}}{K_{p0}-K_{p1}})^2\)

合格判定係数kを導出

初登場のkですが、
・\(\bar{X_L}\)=L+kσ
と置きます。

\(\bar{X_L}\)は
・\(\bar{X_L}\)=L+\(K_{p0}σ\)-\(K_{α} σ_{\bar{x}}\)
= L+\(K_{p0}σ\)-\(K_{α} \frac{σ}{\sqrt{n}}\)
ですから、
k=\(K_{p0}\)-\(K_{α} \frac{1}{\sqrt{n}}\)
です。

なお、OC曲線を描くために、β,p1を使った関係式も導出します。
・\(\bar{X_L}\)=L+\(K_{p1}σ\)+\(K_{β} σ_{\bar{x}}\)
= L+\(K_{p1}σ\)+\(K_{β} \frac{σ}{\sqrt{n}}\)
ですから、
k=\(K_{p1}\)+\(K_{β} \frac{1}{\sqrt{n}}\)
です。

nは先ほど導出しました、
n=\((\frac{K_{α}+K_{β}}{K_{p0}-K_{p1}})^2\)
を、
\(\sqrt{n}\)=\(\frac{K_{α}+K_{β}}{K_{p0}-K_{p1}}\)
とします。

k=\(K_{p0}\)-\(K_{α} \frac{1}{\sqrt{n}}\)
=\(K_{p0}\)-\(K_{α} \frac{ K_{p0}-K_{p1}}{ K_{α}+K_{β}}\)
よって、
k=\(\frac{K_{p0}K_{β}+K_{p1}K_{α}}{ K_{α}+K_{β}}\)
となります。

③演習問題

不良率p0,p1と上で求めた、サンプル数nと合格判定係数kを使って、計量抜取検査のOC曲線が描けます。その前に演習問題を出して考えましょう。

【演習問題】
 あるプラスチック板の厚さの下限規格値が3.3mmとする。厚さが3.3mm未満のものが1%以下のロットはなるべく検査で合格させたいが、5%以上もあるロットはなるべく検査で不合格としたい。厚さの値は標準偏差σ=0.2mmの正規分布に従うとする。このとき、第1種の誤りであるα=0.002,第2種の誤りであるβ=0.10とした場合の抜取方式を決めよ。

うん、難しそう。。。でも1つずつ見ていきましょう。

まず、検査は抜取検査をやろうとしていますね。
次に、扱う変数は厚さという計量値を検査しようとしていますね。
最後に、下限規格値が決まっていますね。

サンプル数nと、合格判定係数kを導出した公式から求めましょう。

まず、確率から\(K_{α}\)、\(K_{β}\)、\(K_{p0}\)、\(K_{p1}\)
がわかります。正規分布表を活用します。

\(K_{α}\)=2.878 (α=0.002のときのK値)
\(K_{β}\)=1.282(β=0.10のときのK値)

\(K_{p0}\)=2.326(p0=0.01のときのK値)
\(K_{p1}\)=1.645(p1=0.05のときのK値)

正規分布表に苦手意識があれば関連記事で復習しましょう。

【簡単】正規分布は怖くない!正規分布表や確率計算の求め方がすぐわかる
「正規分布とは何か?」、「正規分布の難解な式が理解できない」、「正規分布表の意味がわからない」など困っていませんか?本記事では、教科書やwebサイトより正規分布の基本やポイントをわかりやすく解説します。最も重要な正規分布を理解したい方は必見です。

サンプル数nは
n=\((\frac{K_{α}+K_{β}}{K_{p0}-K_{p1}})^2\)
= n=\((\frac{2.878+1.282}{2.326-1.645})^2\)
=37.3≒38
と計算できます。

合格判定係数kは
k=\(\frac{K_{p0}K_{β}+K_{p1}K_{α}}{ K_{α}+K_{β}}\)
=\(\frac{2.326×1.282+1.645×2.878}{ 2.878+1.282}\)
=1.855

ちなみに、下限合格判定値\(\bar{X_L}\)は、
\(\bar{X_L}\)=L+kσ
=3.3+1.855×0.2=3.67

まとめると
(n,k)=(38,1.86)の値で、
平均値が3.67以上ならロット合格、未満ならロット不合格
となります。

④OC曲線を描く

上の演習問題の結果をOC曲線で描きます。

OC曲線を描くための準備

なお、OC曲線を描くために、k,β,p1の関係式を再度書きます。
k=\(K_{p1}\)+\(K_{β} \frac{1}{\sqrt{n}}\)
変形して
(k-\(K_{p1}\))\(\sqrt{n}\)=\(K_{β}\)

ここで、p1,βを一般化して、
p1⇒p
β⇒L(p)
に変えます。慣れないとここの変化は無理矢理感がありますけど。

(k-\(K_{p}\))\(\sqrt{n}\)=\(K_{L(p)}\)

L(p)の作り方

  1. 不良率pを変数として0から値を振る。
  2. pから正規分布表を使って\(K_{p}\)に変換する。
  3. サンプル数n,合格判定係数kを代入し、\(K_{L(p)}\)を計算する。
  4. \(K_{L(p)}\)を満たす確率L(p)を求める。
  5. pとL(p)の関係からOC曲線を描く。

では、実際にやってみましょう。表にまとめます。

p Kp k-Kp (k-Kp)\(\sqrt{n}\)
=\(K_{L(P)}\)
L(p)
0.01 2.33 -0.47 -2.91 1
0.02 2.05 -0.2 -1.23 0.89
0.03 1.88 -0.03 -0.16 0.56
0.04 1.75 0.1 0.64 0.26
0.05 1.64 0.21 1.3 0.1
0.06 1.55 0.3 1.85 0.03
0.07 1.48 0.38 2.34 0.01
0.08 1.41 0.45 2.77 0

ここで、表の計算式をExcelの式を使って表現しています。
Kp=ABS(NORM.INV(pの値,0,1))
L(p)=1-(NORM.DIST(\(K_{L(p)}\)の値,0,1,TRUE))

OC曲線を描く

OC曲線です。計数抜取検査と似たような曲線になります。

OC曲線

計量抜取検査は式変形が多いですが、慣れましょう。

まとめ

JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で下限規格値が既知の抜取方式について、サンプル数n、合格判定個数k、下限合格判定値の導出やOC曲線の描き方を解説しました。

  • ①下限規格値と合格判定値についての関係式を導出
  • ②サンプル数nと合格判定係数kを導出
  • ③演習問題
  • ④OC曲線を描く


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