ガンマ分布がよくわかる
「ガンマ分布が難しくて、よくわからない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①ガンマ分布の確率密度関数の作り方
- ➁ガンマ分布の分布関数の求め方
- ➂ガンマ分布の期待値と分散の導出
①ガンマ分布の確率密度関数の作り方
いきなり式を見るな!
\(f(t)\)=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
となってしまうので、いきなり見るのは目に危険です。
指数分布からガンマ分布を導出する!
指数分布の確率密度関数\(f(t)\)は
\(f(t)\)=\(λe^{-λt}\)
いや!いや!これくらいはイケるでしょう!
不安でしたら関連記事でさらにわかりやすく解説しています。
畳み込み積分がよくわかる(指数分布と指数分布) 畳み込み積分が計算できますか?本記事では畳み込み積分のイメージを高校数学を使ってわかりやすく解説し、さらに指数分布どうしを組み合わせた畳み込み積分の計算を途中経過を一切端折らずに解説しています。 畳み込み積分の計算ができず困っている方は必見です。 |
指数分布からガンマ分布を導出しよう!
(\(t=t_1 + t_2 +…+ t_n\)から)
からガンマ分布を導出すると考えるとわかりやすい。
なので、指数分布関数からガンマ分布を導出しましょう。
指数分布とガンマ分布との違いは信頼性工学のところで解説します。
下の問いで確認しましょう。
例題
この場合、時刻\(t=t_1 +t_2+…+t_n\)における確率密度関数は
\(f_n(t)\)=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
であることを、畳み込み積分と数学的帰納法を使って導出せよ。
解法
数学的帰納法で証明していきましょう。
(i)\(n=1\)のとき、
\(f_1 (t)\)=\(\frac{λ^1 t^{1-1}}{(1-1)!} e^{-λt}\)
=\(λ e^{-λt}\)
より成立。指数分布の確率密度関数そのものですね。
(ii)\(n=k\)のとき、
\(f_k (t)\)=\(\frac{λ^k t^{k-1}}{(k-1)!} e^{-λt}\)
と仮定すると、
(iii)\(n=k+1\)のとき、
\(f_{k+1} (t)\)=\( \displaystyle \int_{0}^{t} f_k (τ) f_1 (t-τ) dτ\)
=\( \displaystyle \int_{0}^{t}\frac{λ^k τ^{k-1}}{(k-1)!} e^{-λt}・λ e^{-λ(t-τ)} dτ\)
=\( \frac{λ^{k+1}}{(k-1)!} e^{-λt} \displaystyle \int_{0}^{t} τ^{k-1} dτ \)
=\( \frac{λ^{k+1}}{(k-1)!} e^{-λt} \left[ \frac{τ^k}{k} \right]_0^t \)
=\(\frac{λ^{k+1} t^k}{k!} e^{-λt}\)
より\(n=k+1\)のときも成立。
よって、すべての自然数\(n\)において、
\(f_n(t)\)=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
が成り立ち、ガンマ分布の確率密度関数である。
できましたね!
➁ガンマ分布の分布関数の求め方
分布関数は確率密度関数の原始関数
原始関数を求めましょう。
\(F(t)\)= \(\displaystyle \int_{0}^{∞} \frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}dt\)
ガチでできます!やってみます!
QCプラネッツはガチで突き進みます!
部分積分から漸化式で導出
部分的に、
\(\displaystyle \int_{0}^{∞} t^{n-1} e^{-λt} dt\)を積分しましょう。
係数の\(\frac{λ^n}{(n-1)!}\)は最後にかけます。
\(I_n\)=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} t^{n-1} e^{-λt} dt\)と定義します。
部分積分すると、
\(\frac{1}{λ} t^{n-1} e^{-λt}\)=\(I_n\)-\(\frac{n-1}{λ}I_{n-1}\)
ここで、\(\frac{n-1}{λ}I_{n-1}\)を消すために、\(n\)をどんどん下げて1まで持って行きます。
すると、
(1)\(\frac{1}{λ} t^{n-1} e^{-λt}\)=\(I_n\)-\(\frac{n-1}{λ}I_{n-1}\)
(2) \(\frac{n-1}{λ^2} t^{n-2} e^{-λt}\)=\(\frac{n-1}{λ}(I_{n-1}\)-\(\frac{n-2}{λ^2}I_{n-2}\)
…
(n-1) \(\frac{(n-1)!}{λ^{n-1}} t e^{-λt}\)=\(\frac{2}{λ^{n-2}} I_2\)-\(\frac{1}{λ^{n-1}}I_{1}\)
となります。
(1)+(2)+…(n-1)すると、
\(I_n\)=\(\sum_{k=0}^{n-1} \frac{n!}{(n-(k+1))!} \frac{1}{λ^{k-1}} t^{n-(k-1)} e^{-λt}\)
両辺に\(\frac{λ^n}{(n-1)!}\)をかけると、分布関数\(F(t)\)がでます。
よって、
\(F(t)\)=\( \frac{λ^n}{(n-1)!}\sum_{k=0}^{n-1} \frac{n!}{(n-(k+1))!} \frac{1}{λ^{k-1}} t^{n-(k-1)} e^{-λt}\)
信頼性工学で故障率\(λ(t)\)を求める時に必要なので、計算しました。
➂ガンマ分布の期待値と分散の導出
ガンマ関数は名脇役!
先に書いて復習しましょう。関連記事でも解説しています。ご確認下さい。
ガンマ関数がよくわかる(その2_大学数学編) ガンマ関数がさらっと解けますか?本記事では、ガンマ関数の性質とベータ関数との関係式を高校数学を駆使してわかりやすく解説しています。ガンマ関数に慣れずに苦戦している人は必読です。 |
大事なのは、
期待値E[\(x\)]の計算
期待値E[\(x\)]は
期待値E[\(x\)]=\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x f(x) dx\)
です。積分範囲は正になるので、[0,∞]でOKです。
さて、問題なのが、\(f(x)\)
\(f(x)\)=\(\frac{λ^n x^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λx}\)
に\(x\)をかけて積分するのが大変! っていうか積分できるの?
やってみましょう。
●E[\(x\)]=\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x f(x) dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x f(x) dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x \frac{λ^n x^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λx} dx\)
=(式1)
係数を∫の前に出して、ガンマ関数に持ち込みます。
(式1)
=\( \frac{λ^n}{(n-1)!} \displaystyle \int_{0}^{∞} x^n e^{-λx} dx\)
=\( \frac{λ^n}{(n-1)!} \frac{Γ(n+1)}{λ^{n+1}}\)
=\( \frac{λ^n}{(n-1)!} \frac{n!}{λ^{n+1}}\)
=\(\frac{n}{λ}\)
ここで、
\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x^n e^{-λx} dx\)
において、\(t=λx\)とおいて、
●\(dt=λdx\)
●\(x^n=(\frac{t}{λ})^n\)
を使っています。
できましたね!
まとめると、ずいぶんすっきりしますが、
期待値E[\(x\)]=\(\frac{n}{λ}\)
分散の計算
分散も計算が大変そうですが、期待値が計算できたら、意外と簡単にできます。
期待値E[\(x^2\)]の計算
期待値E[\(x^2\)]は
\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x^2 f(x) dx\)
です。
●E[\(x\)]=\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x^2 f(x) dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 f(x) dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 \frac{λ^n x^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λx} dx\)
=(式1)
係数を∫の前に出して、ガンマ関数に持ち込みます。
(式1)
=\( \frac{λ^n}{(n-1)!} \displaystyle \int_{0}^{∞} x^{n+1} e^{-λx} dx\)
=\( \frac{λ^n}{(n-1)!} \frac{Γ(n+2)}{λ^{n+2}}\)
=\( \frac{λ^n}{(n-1)!} \frac{n!}{λ^{n+1}}\)
=\(\frac{n(n+1)}{λ^2}\)
ここで、
\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x^{n+1} e^{-λx} dx\)
において、\(t=λx\)とおいて、
●\(dt=λdx\)
●\(x^n=(\frac{t}{λ})^n\)
を使っています。
分散V[\(x\)]の計算
分散V[\(x\)]は
分散V[\(x\)]= E[\(x^2\)]- E[\(x\)]2
より、
V[\(x\)]= E[\(x^2\)]- E[\(x\)]
=\(\frac{n(n+1)}{λ^2}\)-\((\frac{n}{λ})^2\)
=\(\frac{n}{λ^2}\)
となります。
できましたね!
以上、まとめると、
●期待値E[\(x\)]=\(\frac{n}{λ}\)
●分散V[\(x\)]=\(\frac{n}{λ^2}\)
随分すっきりしますね。
ガンマ分布の導出方法をわかりやすく解説しました。
まとめ
「ガンマ分布がわかる」を解説しました。
- ①ガンマ分布の確率密度関数の作り方
- ➁ガンマ分布の分布関数の求め方
- ➂ガンマ分布の期待値と分散の導出
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119