ISO9001 2015 6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定 がわかる

ISO9001_2015_6_3_品質目標

QCプラネッツのISO9001 2015関連ブログを多くの方に読んでいただき、とてもうれしいです。ブログの内容をさらにパワーアップして更新しました。

本記事のテーマ

ISO9001 2015 6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定
  • ①ISO9001要求事項、JISハンドブックISO9001の解説
  • ②品質目標の具体的な書き方
  • ③品質監査でチェックされるポイント

品質目標って何?

組織、部門、担当者が、各期にやるべきことを書いたものです。
品質目標を達成すれば組織全体の品質が高まり、トップが示す品質方針につながります。

品質目標で目標を立てる前に、

  1. 品質方針を決める
  2. 品質方針をトップマネジメントから発信してもらう
  3. 品質方針と整合する目標を考える

が必要です。

①ISO9001要求事項、JISハンドブックの解説

ISO9001 2015の要求事項、JISのハンドブックを読みましょう。

ISO9001要求事項

6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定
6.2.1 組織は,品質マネジメントシステムに必要な,関連する機能,階層及びプロセスにおいて,品質目標を確立しなければならない。
品質目標は,次の事項を満たさなければならない。
a) 品質方針と整合している。
b) 測定可能である。
c) 適用される要求事項を考慮に入れる。
d) 製品及びサービスの適合,並びに顧客満足の向上に関連している。
e) 監視する。
f) 伝達する。
g) 必要に応じて,更新する。
組織は,品質目標に関する文書化した情報を維持しなければならない。

6.2.2 組織は,品質目標をどのように達成するかについて計画するとき,次の事項を決定しなければならない。
a) 実施事項
b) 必要な資源
c) 責任者
d) 実施事項の完了時期
e) 結果の評価方法

わかりやすく解説しますね。

JISハンドブックの解説

次のように規定されています。

  1. JIS Q9001品質マネジメントシステム-要求事項
  2. JIS Q9002 品質マネジメントシステム-JIS Q 9001の適用に関する指針

それぞれを読んだ印象をまとめます。

JIS 名称 単元 感想
JIS Q9001 品質マネジメントシステム
-要求事項
6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定 ISO9001 2015 5.2
と同じ内容
JIS Q9002 品質マネジメントシステム
-JIS Q 9001の適用に関する指針
6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定 より詳細な説明

JIS Q9002に書いている重要なポイント

重要なポイント

●品質目標は、

  1. 品質方針と整合すること
  2. 測定可能な指標で評価すること
  3. ちょっとしんどいけど頑張れば達成できるレベルを目標にすること
  4. 品質目標の達成に向けた進捗を監視すること
  5. 必要に応じて更新すること

それぞれ解説します。

●品質方針と整合すること
⇒整合していないと、組織が目指すところがブレます。品質目標と品質方針はセットで都度考えなおすことが大事です。。

●測定可能な指標で評価すること
⇒必ず 「10件、100%」などの数字で評価します。ISOの評価基準の基本です。客観性をもつ評価である必要があります。

●ちょっとしんどいけど頑張れば達成できるレベルを目標にすること
⇒簡単でも、無理な目標でもダメで、少し上のレベルにしましょう。

●品質目標の達成に向けた進捗を監視すること
⇒目標は半年、3カ月、毎月のどれかの間隔で、進捗フォローしましょう。やりっぱなしはだと、目標達成のために期末に成果が集中しがちで、組織内に品質の作りこみが浸透しません。

●必要に応じて更新すること
⇒期の途中で目標値を更新するのはOKです。正当な理由があることが前提です。また、更新を面倒と思わず、都度組織の目指すところを考えながら目標を維持しましょう。

なお、JIS Q9002には、品質目標に必要な要素を、SMARTに書いています。さすが!

SMART

単語 意味
S Specific 具体的
M Measurable 測定可能
A Achievable 達成可能
R Relevant 関連のある
T Time-bound 期間が限定

②品質目標の具体的な書き方

品質目標の書き方の順序

  1. 品質方針と整合した目標を作る
  2. 品質目標を達成するための具体的な施策を作ること
  3. 具体的な施策の達成基準を数字で作成すること
  4. ある一定期間ごとに品質目標の達成状況を監視すること
  5. 期末の結果を評価すること
  6. 次年度の目標を考えること

大事なことは、

品質管理、品質企画担当、事務局、管理職は特に、多数決で品質目標や品質方針を決める傾向が強い。毎年、同じ業務を繰り返すメンバーになると形骸化した目標運営になってしまう。

ここで、

改革や改善と少ししんどい目標を提示すると、マンネリ化したチームメンバーが多数決で却下することが多い。そうならないよう、組織の目標や目指すゴールを少し上のところにもっていくよう心がけること

品質部門のあるあるですね。ベテランが大勢いると現状維持の多数決になるパターンです。これでは組織全体が継続的改善へ進まなくなります!

(1)品質方針と整合した目標を作る

あなたの会社、組織のトップから今年度の品質方針を指示してきました。

品質方針
1 顧客満足
2 法令遵守
3 品質向上
4 技術力向上

ちょっと淡泊な内容です。実際はもう少し肉付けした文章ですが、まとめると上の4項目だったとしましょう。

トップから、「品質目標を策定して」っと指示がきたら、どうやって品質目標を作るかを次に解説します。

(2)品質目標を達成するための具体的な施策を作ること

何度も書きますが、

  1. 品質方針と整合した目標を作る
  2. 品質目標を達成するための具体的な施策を作ること

品質方針と整合して、達成できる具体的な施策を考えていきます。1つの品質方針に対して、複数の目標とそれに応じた具体的施策を考えればよいでしょう。

例えば、次のように作ったとしましょう。

品質方針 品質目標
1 顧客満足 顧客からの情報収集
クレーム対策強化
2 法令遵守 確実な法令遵守
コンプライアンス意識向上
3 品質向上 品質コスト削減
品質マネジメントシステム向上
4 技術力向上 人材育成強化
技術標準の情報共有加速

品質方針に対して、複数の目標を立てて、品質方針と整合しているかをチェックします。上の表から見ると大丈夫ですね。

次に具体的な施策を追加します。

品質方針 品質目標 施策
1 顧客満足 顧客からの情報収集 顧客アンケート強化
クレーム対策強化 クレーム分析と対策推進
2 法令遵守 確実な法令遵守 諸官庁届出
コンプライアンス意識向上 コンプライアンス教育
3 品質向上 品質コスト削減 品質コスト低減強化
品質マネジメントシステム向上 内部監査の確実な実施
4 技術力向上 人材育成強化 資格取得強化
技術標準の情報共有加速 社内標準規定作成

品質方針、品質目標、施策の整合性と、施策が測定可能なものであることを確認します。

(3)具体的な施策の達成基準を数字で作成すること

具体的な数値目標を入れてみましょう。ちょっとしんどいけど達成可能な値にしましょう。

品質方針 品質目標 施策 評価基準P
1 顧客満足 顧客からの
情報収集
顧客アンケート強化 アンケート回収率
90%以上
クレーム対策強化 クレーム分析と
対策推進
クレーム数
5件/月以下
2 法令遵守 確実な
法令遵守
諸官庁届出 実施率100%
コンプライアンス
意識向上
コンプライアンス
教育
実施率100%
3 品質向上 品質コスト
削減
品質コスト
低減強化
品質コスト
3億円削減
品質マネジメント
システム向上
内部監査の
確実な実施
実施率100%
4 技術力
向上
人材育成
強化
資格取得
強化
年間資格
取得10人
技術標準の
情報共有加速
社内標準
規定作成
規定50件
作成

(4)ある一定期間ごとに品質目標の達成状況を監視すること

例えば、半年ごとに結果をまとめて、評価・監視しましょう。次のような結果が得られました。

品質目標 施策 評価基準P 達成状況D
上期 下期 年間
1 顧客からの
情報収集
顧客アンケ
ート強化
アンケート
回収率
90%以上
133%
(60/45)
78%
(35/45)
106%
(95/90)
クレーム
対策強化
クレーム
分析と対策
推進
クレーム数
5件/月以下
4.5/5 6.5/5 5.5/5
2 確実な
法令遵守
諸官庁
届出
実施率
100%
100%
(80/80)
100%
(43/43)
100%
(123/123)
コンプライ
アンス
意識向上
コンプライ
アンス
教育
実施率
100%
48%
(96人/200人)
120%
(240人/200人)
84%
(336人/400人)
3 品質コスト
削減
品質コスト
低減強化
品質コスト
3億円削減
2.6億/1.5億 1.4億/1.5億 4億/3億
品質マネジメントシステム向上 内部監査の
確実な実施
実施率100%
部門数
100%
(20/20)
100%
(20/20)
4 人材育成強化 資格取得強化 年間資格
取得10人
5人/5人 6人/5人 11人/10人
技術標準の
情報共有加速
社内標準
規定作成
規定50件
作成
6件/25件 28件/25件 34件/50件

(5) 期末の結果を評価すること

結果を評価します。
●100%以上なら⇒◎
●100%なら⇒〇
●100%未満なら⇒×

品質目標 施策 評価基準P 達成状況D 評価C
上期 下期 年間
1 顧客からの
情報収集
顧客アンケ
ート強化
アンケート
回収率
90%以上
133%
(60/45)
78%
(35/45)
106%
(95/90)
クレーム
対策強化
クレーム
分析と対策
推進
クレーム数
5件/月以下
4.5/5 6.5/5 5.5/5 ×
2 確実な
法令遵守
諸官庁
届出
実施率
100%
100%
(80/80)
100%
(43/43)
100%
(123/123)
コンプライ
アンス
意識向上
コンプライ
アンス
教育
実施率
100%
48%
(96人/200人)
120%
(240人/200人)
84%
(336人/400人)
×
3 品質コスト
削減
品質コスト
低減強化
品質コスト
3億円削減
2.6億/1.5億 1.4億/1.5億 4億/3億 ×
品質マネジメントシステム向上 内部監査の
確実な実施
実施率100%
部門数
100%
(20/20)
100%
(20/20)
4 人材育成強化 資格取得強化 年間資格
取得10人
5人/5人 6人/5人 11人/10人
技術標準の
情報共有加速
社内標準
規定作成
規定50件
作成
6件/25件 28件/25件 34件/50件 ×

(6)次年度の目標を考えること

1年間の実績を評価して次年度の目標を考えます。

  1. 目標を継続するか?中止するか?完了するか?
  2. 目標値を更新するか?継続するか?

大事なのは、

  1. 組織を取り巻く内部・外部の環境や課題の変化に対して、目標内容を考えること。
  2. 少しずつ目標値を変える(継続的改善)こと

一通り、品質目標の作り方を解説しました。

【さらに大事!】新たな品質目標の立て方

数年、品質目標でPDCAを回し、組織が安定して来たら、次なる品質目標の項目をどう決めようか?と悩みませんか?

しかも、
●組織の課題が解決でき
●定量評価できるもの
って意外とない。。。

品質目標の運営、集計、分析、報告が主体業務となるが、
そこで終わってはいけない!

新たな課題を見つけて目標化するには、

組織内で、意外とある「ダメダメ」、「担当者間のはざまでおこりうるヌケ漏れ」、「万年改善が見込めないもの」など、新たな課題の種を見つけることに注力しましょう!これをやる品質管理技術者は意外といない。なぜなら、嫌われる業務だから

相手の課題を見つけることは、相手の嫌なところを見つけて、定量化する目標にすることです。

短期的には、ライン部門から嫌われるものを新たな品質目標にしましょう。長期的に改善していけば、皆から感謝されます。これ、やってみたらよくわかる!(by QCプラネッツ)

このあたりの苦労話は、ISO審査でも大盛り上がりするネタです。苦労話はISOの好物です。

③品質監査でチェックされるポイント

品質マネジメントシステムが成熟した組織を品質監査する場合、品質マネジメントシステムの上流である品質目標を一番重視して監査します。

品質目標

先ほどの結果を図にします。

品質目標

よくまとまった品質目標ですね。項目、施策、数値、PDCAの評価が1枚の紙ですべて情報が網羅されています。

組織・部門の経営・品質状況は品質目標1枚をみればすぐわかるようになっていることが重要です。

なので、監査の重要なポイントとして、しっかり質疑されます。

表を埋めるのではなく、自分の組織の経営・品質戦略をよく考えて落とし込んでください。

次に、品質目標のどこが監査されるかを解説します。

品質目標で監査されるポイント

下図の赤枠に質疑例を書きました。いっぱい突っ込まれるのが分かります。

ここで、監査の半分弱の時間が費やされます。ここで抽出した課題や監査で疑問に思ったことを理解して、個別の要求事項を監査していくからです。

品質目標

ポイントは、

  1. 施策・評価基準の内容や数字は品質目標や品質方針と整合しているか?
  2. 目標は達成か?未達か?そして、その理由は?
  3. 期毎の数値にムラやばらつきがあれば、その理由は?あわてて達成させようとしていないか?
  4. 前年度から大きく実績値が変化したら、それはなぜか?
  5. 次年度をとりまく組織の内部・外部の環境や課題に整合した目標になっているか?
  6. 次年度への目標変更はするか、しないか、その理由は?

たくさん聞かれますが、その質疑の中で、
●品質マネジメントシステムが機能しているか?
●責任者が説明責任を果たしているか(自分の言葉で説明できるか)
●組織に必要なリソース・要素が十分あるか?機能しているか?
を確認していきます。

品質目標は奥が深いので、よく自分の組織のことを考えて内容を埋めていってください。

ここまで、読んで理解できたら、品質のかなりのプロのレベルになっています。

まとめ

ISO9001 2015 6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定をわかりやすく解説しました。

  • ①ISO9001要求事項、JISハンドブックISO9001の解説
  • ②品質目標の具体的な書き方
  • ③品質監査でチェックされるポイント
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