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累積ハザード法がよくわかるし、自分で作れる!

信頼性工学

「累積ハザード法がよくわからない」、と困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

累積ハザード法がよくわかるし、自分で作れる!
  • ①ワイブル確率紙と累積ハザード法の違いを理解する
  • ➁指数分布を確率紙で考える
  • ➂カプランマイヤー法、ワイブル確率紙、累積ハザード法の違いを理解する(その2へ)
累積ハザード法も自分でグラフ描いてフィッティングできます

①ワイブル確率紙と累積ハザード法の違いを理解する

累積ハザード法とは

「累積ハザード法」単体で説明されることが多いですが、

ワイブル確率紙と累積ハザード法の違いが最後までわからないはずなので、違いがわかるように最初から書きます。
累積ハザード法とは、未故障データ(打切りデータ)を打切りデータとして扱ってよい手法

ワイブル確率紙と累積ハザード法の違いを理解する

ワイブル確率紙と累積ハザード法の違いは、教科書的には、

ワイブル確率紙とは、未故障データ(打切りデータ)を故障データとみなして扱う手法(打切りデータそのものは扱えない)
累積ハザード法とは、未故障データ(打切りデータ)を打切りデータとして扱ってよい手法(打切りデータそのもの扱える)

QCプラネッツ、個人的には、どちらでも差はないとみています。
フィッティングして求める手法であり、精度もそれほど高いものでもないからです。
モデルで故障時間を推定しても、本当にその時間で故障するかなんてわからんし、おまじない程度です。

大事なのは、違いを理解することです!理解せずにやり方だけ知っているとならないよう注意しましょう。

➁累積ハザード法の使い方がわかる

ハザード関数、累積ハザード関数とは

信頼度\(R(t)\)を
●\(R(t)\)=\(exp(-\displaystyle \int_{0}^{t} λ(t)dt)\)
ここで、
●\(R(t)\)=\(exp(-H(t)\)
\(H(t)\)=\( \displaystyle \int_{0}^{t} λ(t)dt \)
とおくと、

●\(λ(t)dt \)をハザード関数
●\(H(t)\)=\( \displaystyle \int_{0}^{t} λ(t)dt \)を累積ハザード関数
と定義します。

累積ハザードでは、実データをもとに、ハザード関数、累積ハザード関数を使います。
実際は、

●\(λ(t)dt \)=\(\frac{(t_i,t_i+Δt)における故障数}{t_iの直前における未故障データ数}\)
●\(H(t)\)=\( \sum_{i=1}^{l} \frac{(t_i,t_i+Δt)における故障数}{t_iの直前における未故障データ数}\)
とて計算します。

【ここを理解せよ!】ハザード関数、累積ハザード関数を使う理由

ここで、大事なのは、

●\(λ(t)dt \)をハザード関数
●\(H(t)\)=\( \displaystyle \int_{0}^{t} λ(t)dt \)を累積ハザード関数
は、未故障データ(打切りデータ)を打切りデータとして扱ってよい手法(打切りデータそのもの扱える)ことです。
これがわからないと、何でワイブル確率紙じゃダメなの?と理解できない!
ここを教科書では説明していない!

【ここを理解せよ!】ハザード関数、累積ハザード関数を使う理由

関連記事の「カプランマイヤー法」という全く別の手法の解説にヒントがあります。

カプランマイヤー法が理解できる(その2)
信頼性工学で「打切りデータ」を扱う際、カプランマイヤー法を使いますが、カプランマイヤーの式は導出できますか? 本記事では、公式暗記しがちなカプランマイヤーの式を丁寧に導出します。信頼性工学を学ぶ人は必読です。

ハザード関数がポイント!

●ハザード関数
\(λ(t)\)= \( \displaystyle \lim_{Δt \to 0} \frac{1}{Δt}\)\((Pr(t \leq T \leq t+Δt|T \geq t)) \)

ここで、2つの独立した確率分布T,Uを用意します。
●T:生存時間確率分布(打切りなし)
●U:打切り時間確率分布(打切りあり)

「打切りデータ」も考慮できるポイントは、
条件付き確率で、打切りなしの確率Tに、打切りなしの確率Uの式を分母分子に掛け算して整理すると、合成することができる!
つまり、 打切りあり、なしを区別しても合成してハザード関数が扱える性質を活かして、累積ハザード法を使っている点を理解しましょう。

実例を使って累積ハザード法の使い方をマスターする

では、データを用意します。

サンプル番号 1 2 3 4 5
時間t 800(○) 350(×) 730(×) 1770(○) 390(×)
サンプル番号 6 7 8 9 10
時間t 110(○) 100(×) 160(×) 940(×) 320(×)
サンプル番号 11 12 13 14 15
時間t 40(×) 190(×) 590(×) 1260(○) 420(×)
サンプル番号 16 17 18 19 20
時間t 250(×) 490(×) 1060(○) 290(×) 630(○)

累積ハザード法を使って、信頼度関数を作ってみましょう。ただし、上の○×は
○:故障無しで打切り有データ
×:故障有りデータ
として、打切り有無両方のケースを含むとします。

累積ハザード法を使って、信頼度関数を作る

下ごしらえをします。

  1. 不良率λを計算するために、逆順位K=n-i+1を計算
  2. 不良率λは、逆順位Kの逆数
  3. 累積ハザードHiを計算
サンプル
番号
(A)
順位i
(B)
逆順位
K=n-i+1
(n=20)
(C)
時間ti
(D)
打切り
有無
○⇒0
×⇒1
不良率hi
1/(逆順位) ×100%
(E)
累積ハザード値Hi
∑hi
(F)
11 1 20 40 0 0/20 0/20=0
7 2 19 100 1 1/19 0/20+1/19=0.053
6 3 18 110 1 1/18 0/20+1/19+1/18=0.108
8 4 17 160 0 0/17 =0.108
12 5 16 190 1 1/16 =0.171
16 6 15 250 0 0/15 =0.171
19 7 14 290 1 1/14 =0.242
10 8 13 320 1 1/13 =0.319
2 9 12 350 1 1/12 =0.402
5 10 11 390 1 1/11 =0.493
15 11 10 420 1 1/10 =0.593
17 12 9 490 1 1/9 =0.704
13 13 8 590 1 1/8 =0.829
20 14 7 630 0 0/7 =0.829
3 15 6 730 1 1/6 =0.996
1 16 5 800 1 1/5 =1.196
9 17 4 940 1 1/4 =1.446
18 18 3 1060 0 0/3 =1.446
14 19 2 1260 1 1/2 =1.946
4 20 1 1770 0 0/1 0/20+1/19+1/18+…+1/2+0/1=1.946

どの確率分布にフィッティングするか?

今回は、ワイブル分布にフィッティングさせます!

ワイブル分布は、
\(R(t)\)=\(exp^{-H(t)}\)
\(H(t)\)=\((\frac{t}{η})^m\)
ですね。

で、\(H(t)\)と\(t\)の値は、上の表からすでに計算ができています。
これを直線で定数\(η\)、\(m\)の値を求めるので、
\(H(t)\)=\((\frac{t}{η})^m\)を直線化します。

両辺を対数logで取ると、
\(log(H(t))\)=\(m(logt-logη)\)
●\(Y\)=\(log(H(t))\)
●\(X\)=\(logt\)
●\(n\)=\(-m(logη)\)
として、直線で定数\(η\)、\(m\)の値を求めましょう。

グラフに必要な表を作るため、上の表の\(t\),\(H(t)\)に対数logを取った値をいれます。

順位i
(B)
t H(t) log(t) log(H(t)
1 800 0 3.689
2 350 0.053 4.606 -2.945
3 730 0.108 4.701 -2.224
4 1770 0.108 5.076 -2.224
5 390 0.171 5.248 -1.768
6 110 0.171 5.522 -1.768
7 100 0.242 5.67 -1.418
8 160 0.319 5.769 -1.143
9 940 0.402 5.859 -0.91
10 320 0.493 5.967 -0.707
11 40 0.593 6.041 -0.522
12 190 0.704 6.195 -0.35
13 590 0.829 6.381 -0.187
14 1260 0.829 6.446 -0.187
15 420 0.996 6.594 -0.004
16 250 1.196 6.685 0.179
17 490 1.446 6.847 0.369
18 1060 1.446 6.967 0.369
19 290 1.946 7.14 0.666
20 630 1.946 7.48 0.666

ここから、\(X=log(t)\)、\(Y=log(H(t)\)
として、直線を描きます。

累積ハザード法

両辺を対数logで取ると、
●\(m\)=0.7965
・\(n\)=-5.44=\(-m(logη)\)より
●\(η\)=924.4
となります。

累積ハザード法も確率紙があるが、手法を理解する方が大事

ちなみに、累積ハザード法も確率紙があります。

累積ハザード法

ただ、

解き方を理解すれば、確率紙は不要。
計算機がない時代は重宝されたが、今は自力で解ける!

➂カプランマイヤー法、ワイブル確率紙、累積ハザード法の違いを理解する(その2へ)

慣れると気づくこの疑問

さて、累積ハザード法を理解すると、絶対気づくこの疑問!

ワイブル確率紙、累積ハザード法の違いは何?

累積ハザード法

図見ると、見た目同じだけど

さらに、累積ハザード法を理解すると、絶対気づくこの疑問!

打切り有無ってカプランマイヤー法もあるけど、累積ハザード法の違いは何?

となるはず。

次の関連記事で解説!

では、次に参りましょう。

まとめ

「累積ハザード法がよくわかるし、自分で作れる!」を解説しました。

  • ①ワイブル確率紙と累積ハザード法の違いを理解する
  • ➁指数分布を確率紙で考える
  • ➂カプランマイヤー法、ワイブル確率紙、累積ハザード法の違いを理解する


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