QCプラネッツのISO9001 2015関連ブログを多くの方に読んでいただき、とてもうれしいです。ブログの内容をさらにパワーアップして更新しました。
★ 本記事のテーマ
- ①要求事項
- ②マネジメントレビューのインプット
- ③マネジメントレビューのアウトプット
- ④マネジメントレビューの活かし方
①要求事項
ISO9001要求事項
9.3.1 一般
トップマネジメントは,組織の品質マネジメントシステムが,引き続き,適切,妥当かつ有効で更に組織の戦略的な方向性と一致していることを確実にするために,あらかじめ定めた間隔で,品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。
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9.3.2 マネジメントレビューへのインプット
マネジメントレビューは,次の事項を考慮して計画し,実施しなければならない。
a) 前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況
b) 品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化
c) 次に示す傾向を含めた,品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報
1) 顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック
2) 品質目標が満たされている程度
3) プロセスのパフォーマンス,並びに製品及びサービスの適合
4) 不適合及び是正処置
5) 監視及び測定の結果
6) 監査結果
7) 外部提供者のパフォーマンス
d) 資源の妥当性
e) リスク及び機会への取組みの有効性(6.1参照)
f) 改善の機会
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9.3.3 マネジメントレビューからのアウトプット マネジメントレビューからのアウトプットには,次の事項に関する決定及び処置を含めなければならない。
a) 改善の機会
b) 品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性
c) 資源の必要性
組織は,マネジメントレビューの結果の証拠として,文書化した情報を保持しなければならない。
マネジメントレビュー
実際レビューに関わると、気になるのが次の4点
- 誰に報告するのか?
- 開催頻度は?
- どうやって報告するのか?
- いろいろ指示事項が来たらどうするのか?
個別に回答すると、
- 報告の相手は、経営陣(社長、事業部長など)
- 開催頻度は、半期か年に1回程度
- 品質部門の長(管理責任者)が今年度の指示事項や品質活動を報告(インプット)
- 指示事項は、経営陣がその場で指示した内容をまとめて次年度の活動に盛り込む
トップマネジメントから始まって、
トップマネジメントに終わる。
トップへ返すのがマネジメントレビュー
一定期間のPDCAサイクルが1回転し、次のサイクルへ回る通過点がマネジメントレビュー。
実際やると、形式的な儀式に近いものでもあります。経営陣は品質は最後の砦として重要言っていますが、多忙ですので。
②マネジメントレビューのインプット
インプットはISO9001 要求事項どおりまとめる
形式的な儀式としてやってもよいですが、ISO9001認証審査(外部審査)で、「ISO9001 2015 9.3要求事項どおりまとめろ」と改善の指示が出ましたので、要求事項どおりまとめるとよいでしょう。
インプット情報の作り方と実態(本音)
要求事項にはインプットを以下のように書くように指示されますが、何を書きましょうかね?
b) 品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化
c) 次に示す傾向を含めた,品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報
1) 顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック
2) 品質目標が満たされている程度
3) プロセスのパフォーマンス,並びに製品及びサービスの適合
4) 不適合及び是正処置
5) 監視及び測定の結果
6) 監査結果
7) 外部提供者のパフォーマンス
d) 資源の妥当性
e) リスク及び機会への取組みの有効性(6.1参照)
f) 改善の機会
1つずつ見ましょう。ポイントは、
●要求事項に対する具体的な活動、
●インプット情報に書いておきたいこと
の2点です。
★ a) 前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況
●具体的な活動:経営陣からのアウトプット(指示事項)に対する結果
●入れるべき情報:ちゃんとやったよ!と報告したい。「できませんでした」はQMS的にも上を怒らせる意味でもまずい!。できないなら、できない正当な理由を入れ、できるための条件と施策と完了目標年月を入れる。
ここはパワポ1枚ですが、作る方はレビュー直前まで胃が痛いですね。自信持って報告するネタが無いのが常なので(笑)。毎年同じ事業活動していたら、そんなに変わらんし、そんな大きな変革に結果なんて出てこないよ!ですよね。
でも、
普段見ていない、気にかけていないところに課題はないか?と探しさないと課題は見つからない。
課題は皆平等に与えられるものではない!
最近、強く思います。品質課題は見える人は見え、見えない人は見えません。実力差がはっきりしますね。これをマネジメントレビューのインプットとすべきであり、経営陣もここが聞きたいはず。
★ b) 品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化
●外部の課題、内部の課題については、関連記事「ISO9001 2015 4.1 組織及びその状況の理解 がわかる」で、解説しています。
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ISO9001 2015 4.1 組織及びその状況の理解 がわかるを説明できますか? 本記事では「内部の課題と外部の課題とは何か?」、「内部の課題と外部の課題はどのように考えればよいか?」、「実務や品質監査で要求されることは何か?」を実務経験をもとにわかりやすく解説します。ISO9001 に関わる方は必読です。 |
●マネジメントレビューにおける、外部及び内部の課題の変化に注目します。
●外部の課題:自分たちでコントロールできない課題
(3C,5F,SWOT分析)
●内部の課題:自分の組織内でコントロールできる課題
(SWOT分析)
で、注意が必要なのが、変化なので、
外部の課題、内部課題に変化があるものに限定
結構難しいので、事例を挙げます。
・法改正、規格改訂が間近にあるもの
・コロナ禍の影響
・戦禍、物価高、為替
・AI,DXなどの新技術
など
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●内部の課題の変化の事例
・疫病、戦禍、為替などによる納入製品のQCDの影響
・高齢化による大量退職者
・DXによるデジタル人材の強化
など
事例に挙げた、外部の課題、内部課題に変化に対して、品質マネジメントシステムをどう回したのかをまとめて、トップへ報告します。
外部の課題、内部課題に変化の特定は、マネジメントレビューのとりまとめができる人に任せましょう。皆で決めるとブレます。
★ c) 次に示す傾向を含めた,品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報
ここは、いろいろな組織内の品質活動結果を入れていけばOKです。
1) 顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック
顧客満足度が分かる指標(アンケート、苦情など)をもとにまとめましょう。
2) 品質目標が満たされている程度
品質目標については、関連記事「ISO9001 2015 6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定 がわかる」で、解説しています。
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ISO9001 2015 6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定 が説明できますか? 本記事では「品質目標の書き方」、「品質目標で監査質疑されるポイント」を実務経験をもとにわかりやすく解説します。ISO9001 に関わる方は必読です。 |
各組織、部門の品質目標、計画、実績をまとめて評価しましょう。
3) プロセスのパフォーマンス,並びに製品及びサービスの適合
4) 不適合及び是正処置
5) 監視及び測定の結果
6) 監査結果
4つまとめてよいです。品質目標の中に、計画・実績・評価をいれて管理すれば、1枚の品質目標に結果評価ができます。
7) 外部提供者のパフォーマンス
購買、外注の実績評価とか、第2者監査の実施結果を評価します。
★ d) 資源の妥当性
妥当かを調べる資源って何がある?
どうやって妥当性を評価する?
上層部に報告できるネタがあるか?
毎年悩みます。
★資源は、「ヒト、モノ」なので、
●ヒト:人数、力量、年齢構成、数年後の構成などからネタを持ってくる
●モノ:施設、設備、環境などから課題となりそうなネタを持ってくる
★妥当性はどうやって見るか?
定性、定量評価があるデータがあるもの、あるいは普段とっていないが、マネジメントレビューのために別途データを作る(作れる)もので何とかまとめたい
定量的評価できるもの
難しいですが、これを見つける訓練をすれば見えない課題が見えてきます。
★ e) リスク及び機会への取組みの有効性 と f) 改善の機会
これは、内部監査や外部審査などの、審査の結果で改善を指摘された内容をまとめればよいです。内容、改善終息する日、横展開の必要性をまとめればOKですね。
あと、この資料頑張って作ると、作成者は平社員でも報告したくなるんですよね。資料に愛着があるので、でも、ここでキツイ現実をお伝えします。
すでに経営陣やトップは知っているし、情報が別ルートから来ている。
逆に「知らんかった!」だと、それは重要な情報が上に上がらないので、コミュニケーション不足な組織といえます。
品質部門から経営陣に活動通じてわかったことや、次なる課題は何か?どれくらい汗をかいて改善し、次のテーマを見つけたかを示す場とすると組織力がより強化されます。
レビュー資料作成の実態
マネジメントレビューをしっかり作りこむと結構大変なことを伝えました。
当然、
●時間がかかるし、
●担当者がたくさん必要
●あーでもない、こーでもない、誤字脱字まで見て来る管理職だと永久に終わらない
●所詮社内資料なのに、人件費がかかりすぎる資料 経営陣は知らんのかな?
社内の雰囲気や空気によって手間がかかりすぎたり、できる管理職なら、うまく対応してコンパクトにまとめる場合もあります。
一番困ることは、
③マネジメントレビューのアウトプット
資料作成でみんな疲れている
疲れ切って作った資料で報告当日を迎えます。資料作成担当としても同席しますが、「疲れたから、あとはどうにでもなれ~」と他人事です。
マネジメントレビューでしっかり聞いておくべきところ
- a) 改善の機会⇒改善すべき点、もっと良くしろ!と指示された場合
- b) 品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性⇒根本的に品質のやり方を変えたいと言われない限り、変更する場合はありません。
- c) 資源の必要性⇒リソース増強やシステム導入の話ですが、品質の報告なので、これもあまり指示されません。
基本は、a) 改善の機会 だけ意識してレビューを聞いておきましょう。
- ●その年に起きた大きなトラブルの再発防止、未然防止の策
- ●品質に大きな問題が無かった場合は、評価分析結果のさらなる調査
- ●次年度の品質改善や品質コスト低減につながる新たな策を考えること
- ●経営陣がその場で思いついた指示事項より、日ごろから発信していること
- ●次年度の品質方針や品質目標の新テーマにつながるヒント
などの指示が大体きます。
マネジメントレビューを体験してわかるこ
たった1,2時間のレビューですが、とても準備が大変です。体験してわかることをお伝えします。
- 資料はインプットが目的。品質部門が期内で頑張ったことを発表するのではない。(勘違いしている品質部門担当が必ずいます。)
- 本来は発表者が発表資料を作るべき。
- トップが指示しやすいようシンプルにまとめる。
- トップへ報告する部門長の力量が問われる。
- トップの指示が最も重要。インプット資料作成で疲弊させてはならない。
- トップが的確に指示できるよう、重要ポイントをインプットする。資料はてんこ盛りにしないこと。
- マネジメントレビューにかかる時間、費用を考慮し、費用対効果で価値を出すこと。資料作成に課のメンバー使って1カ月以上かけないこと。
マネジメントレビューの実態を読んでいただきましたが、マネジメントレビュー以外の「あるある」がいっぱいあったと思います。
④マネジメントレビューの活かし方
マネジメントレビューの運営について指導するようになり、そこで気づいたことをまとめます。
- マネジメントレビューの成功は経営陣との日頃のコミュニケーション密度で決まる
- マネジメントレビューの時期になったら始めるのではなく、毎月や毎四半期などの一定期間でマネジメントレビューの各要求事項の進捗度合いを測ることが大事。
- 上に見せるデータは基本2次データである。真実を写す1次データを日頃集めておくべき。
- 品質管理部門だけでなくライン部門との良いコミュニケーションを常にこころがけ、課題を見つけ、解決していく地道な活動が重要。
- どうしても目の前になるものが全てと信じてしまいがち。上司も同じ傾向になる。見えないものを見つけ、実現させることが本来の品質の仕事。PDCAサイクルを回しながら実現するための通過点がマネジメントレビューである
いかがでしょうか?
かなり高いレベルを書いていますが、これに少しでも近づくことが大事です。
誰も知らないところに次なる目標がある。
そこを目指し、その結果を振り返るのがマネジメントレビュー
次のマネジメントレビューに向けて、継続的改善を進めましょう。
まとめ
ISO9001 2015 9_3 マネジメントレビュー をわかりやすく解説しました。
- ①要求事項
- ②マネジメントレビューのインプット
- ③マネジメントレビューのアウトプット
- ④マネジメントレビューの実状