ISO9001 2015 4.1 組織及びその状況の理解 がわかる
「ISO9001 4.1 組織及びその状況の理解って何?」、「普段から何に注意すればよいか?」、「品質監査で質疑されるかわからない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①ISO9001要求事項、JISハンドブックISO9001の解説
- ②内部の課題と外部の課題はマーケテイングから学ぶ
- ③内部の課題と外部の課題の事例
- ④品質監査で4.1がどのように質疑されるか?
①ISO9001要求事項、JISハンドブックの解説
最初に、自分の言葉でわかりやすく解釈するまえに、本家の解説を紹介します。難しいね~と思う程度でOKです。
ISO9001要求事項
4.1 組織及びその状況の理解
組織は,組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければならない。 組織は,これらの外部及び内部の課題に関する情報を監視し,レビューしなければならない。
注記1 課題には,検討の対象となる,好ましい要因又は状態,及び好ましくない要因又は状態が含まれ得る。
注記2 外部の状況の理解は,国際,国内,地方又は地域を問わず,法令,技術,競争,市場,文化,社会及び経済の環境から生じる課題を検討することによって容易になり得る。
注記3 内部の状況の理解は,組織の価値観,文化,知識及びパフォーマンスに関する課題を検討することによって容易になり得る。
4.1 組織及びその状況の理解 で大事なのは、
外部の課題と
内部の課題が
網羅的に抽出できるかどうか!
です。後で解説します。
JISハンドブックの解説
意外とたくさん規定されています。
- JIS Q9001品質マネジメントシステム-要求事項
- JIS Q9002 品質マネジメントシステム-JIS Q 9001の適用に関する指針
それぞれを読んだ印象をまとめます。
JIS | 名称 | 単元 | 感想 |
JIS Q9001 | 品質マネジメントシステム -要求事項 |
4.1 組織及びその状況の理解 | ISO9001 2015 4.1 と同じ内容 |
JIS Q9002 | 品質マネジメントシステム -JIS Q 9001の適用に関する指針 |
4.1 組織及びその状況の理解 | JIS Q9001 4.1 の補足 わかった感じにはなる。 |
JIS Q9002 品質マネジメントシステム-JIS Q 9001の適用に関する指針 4.1組織及びその状況の理解に書いている内容通り、自分の業務に当てはめると、確かに、外部の課題、内部の課題は書き出せます。
ISO,JISのとおり仕事するのではなく、自分で考えて仕事すべきです。そうなると理論を知る必要があります。ISO,JISに書いている外部の課題や内部の課題の項目はどこから来ているのか?を本記事で解説します。
②内部の課題と外部の課題はマーケテイングから学ぶ
技術屋でも品質屋でもマーケテイングは必須
4.1 組織及びその状況の理解 で大事なのは、
外部の課題と
内部の課題が
網羅的に抽出できるかどうか!
実は、外部の課題、内部の課題はマーケテイング用語なので、ISO9001に多くの関わる技術屋にとって、馴染みのない用語です。なので、何を課題としてよいか?が理論として体系化しないままに、ISOやJISに書いている内容をそのまま自分の仕事に当てはめていることがほとんどです。
品質管理業務をやっていて、品管のプロでも「外部の課題、内部の課題がちゃんとわからず、ISO,JISの書いている通りにやっている」人が多いです。
理解できるように、マーケテイング分野を解説します。
MBAです! でも、多くの人が「MBAなんて意味が無い」と言いますが、
言葉を知らないでコミュニケーション取ろうとするのと同じです。
MBAは知っていて損はありません。
なぜなら、技術、営業、品質といろいろな部門が会社にはありますが、それは手段にすぎず、これらの目的は経営や収益だからです。経営や収益のために、各部門で果たすべき役割があります。
技術屋、品質だから経営に関係無いでは済まされません。
言葉を知らないでコミュニケーション取ろうとするのと同じです。
MBAは知っていて損はありません。
内部の課題と外部の課題を理解するためのマーケテイングアイテム
3つ紹介します。
- 3C分析
- 5F(Five Force)分析
- SWOT分析
他にも分析手法がたくさんありますが、この3つあれば十分です。
3C分析
外部の課題を考えるときに活用します。
●3つのCはそれぞれ次の通りです。
- Customer(顧客のニーズ、市場規模、市場動向)
- Competitor(競合他社、競争の厳しさ)
- Company(自社の強み、弱み)
まず、
●Customerで、市場規模が拡充か縮小か、市場動向を調べ、顧客のニーズを確認します。
●Competitorで、競合他社の強さ、数、競争の厳しさを確認します。
●Companyは自社がそこで戦っていける強み、弱みを分析します。
外部の課題は、外なので、コントールが効かないものです。市場、競合、疫病、景気、法改正などの要因がCustomer、Competitor、Companyに対して、どう影響を与えるかを考えます。
考えた結果を上の図に当てはめると、綺麗に整理ができます。そこから、自社の戦略が見えてきます。
5F(Five Force)分析
外部の課題については3C分析だけでも十分ですが、さらに、新規参入、代替による脅威が気になる場合は5F分析も必要です。
例えば、IT業界のように新製品や代替品が次々に出て来る業界は5F分析は必須です。
まず、
●中心の「業界の脅威」にあなたの自社がいます。
●横のラインを見ます。「売り手の脅威」と「買い手の脅威」を見ます。
★売り手は、調達元です。本来は、売り手はあなたとって顧客ですが、強気なところもあります。
★買い手はあなたにとっての顧客です。顧客の強弱は容易に想像がつきますね。
次に、縦のラインを見ます
●「新規参入」がたくさんあるかどうかを確認します。参入が多いと競争激化します。
●さらに「代替品」の脅威も見ましょう。今まで、自社の製品が売れていたのに、他で代替されると自社の市場自体が無くなるリスクがあります。ガラケーからスマホに代わり、ガラケーが一瞬で廃れたのが良い事例です。
横、縦のラインを見て、自社が入る業界の競争がどれくらい厳しいかを確認しましょう。
競争のきつさが明確になり、どこから脅威が出るかもわかります。
その分析結果を外部の課題として抽出すればよいのです。
次に、内部の課題を確認しましょう。
SWOT分析
内部の課題を抽出する分析方法がSWOT分析です。
SWOTとは、
●S(Strength):自社の強み(内部の強み)
●W(Weakness):自社の弱み(内部の弱み)
●O(Opportunity):自社のチャンス・機会(外部からのチャンス)
●T(Threat):自社の脅威(外部からの脅威)
をそれぞれ分析します。
SとWについては、内部の強み・弱みを分析します。社内のことなので、コントロール可能な領域なので、経営陣に説明して、強み、弱みの課題を解消しましょう。
③内部の課題と外部の課題の事例
マーケテイング分析手法の3C,5F,SWOT分析をさっと解説しました。では、具体例を挙げて練習しましょう。
各分析において、別々の業界を例に分析例を解説します。なるべく、多業種の例を挙げてみましょう。何でも分析ができるからです。
あなたの仕事を取り巻く環境において、3C分析、5F分析、SWOT分析をやってみてください。正解不正解はありません、思考訓練です!
- 3C分析:品質管理プロ(QCプラネッツ本人)
- 5F分析:携帯電話(ガラケー全盛期)
- SWOT分析:製造業
3C分析の事例紹介
私自身を3C分析します。品質管理のブログを書き始めた経緯に、3C分析をやって、「勝てる!」と確信したからです。
●品質管理に関わる人がたくさんいる。
●技術を究めたいが、いつ事業撤退になるかわからない不安がある一方、品質管理はどの企業にもある。
●ライバルはシニア層が多く、時間が経てば継承されて自分が優位に立てる。
●品質は「技術×経験」というが、本当は、「技術×経営」です。経営がわからない技術屋が多く、それが人生経験に代用されているのです。MBAで経営が分かれば若くても品質管理はできます。
なので、QCプラネッツを作ると決意しました。
3C分析の図にすると、こんな感じです。
5F分析
ちょっと古い内容ですが、ガラケーの全盛期の外部環境について分析します。競争が激化する中、いつのまにかスマホに代わってしまいましたね。
●業界の脅威は国内メーカ各社の厳しい競争がありました。どの電機メーカも携帯が出ていました。
●売り手の脅威ですが、半導体業界はエンドユーザに届く最終製品より、材料・製造機械の方が収益性は高く、強気です。なので、売り手に圧力をかけて値下げすることは難しかったです。
●買い手の脅威は、携帯をエンドユーザに渡す側で、半国営企業ですから、相手も強気ですね。
5F分析の横のラインはどれも厳しい競争とわかります。
次に縦のラインをみましょう。
●新規参入の脅威ですが、携帯電話は海外勢も強く、参入障壁や制約がなかったため、競争が激化しました。
●代替品ですが、ガラケーが厳しい競争の中、スマホや登場し、世界を変えてしまいました。
厳しい競争に生き抜こうとした携帯メーカの各社はスマホという新しいものによって、撤退していきました。近い業界にいたので、強く印象に残っています。
5F分析の結果を図にすると次のようになります。
SWOT分析
製造業によくある、内部環境の分析をしてみましょう。内部の課題や内部環境だけを分析するフレームワークはないため、内外同時に分析するSWOT分析を使います。
例えば下図のような分析になります。
SWOTとは、
●S(Strength):自社の強み(内部の強み)
●W(Weakness):自社の弱み(内部の弱み)
●O(Opportunity):自社のチャンス・機会(外部からのチャンス)
●T(Threat):自社の脅威(外部からの脅威)
をそれぞれ分析する中で
特に、内部環境についての強みと弱みを列挙しましょう。
内部の課題ですから、
●人的リソースに課題はないか?
●資源に課題はないか?
●今は問題ないが、そのうち問題が顕在化することはないか?
を技術、営業、企画、管理などの各部門から課題を出してみましょう。
事例を挙げて分析方法を解説しました。
●課題・リスクを解決する施策
●チャンス・機会をものにする施策
を考える必要があります。
課題を洗い出し、それをどうするかを品質監査の始めの方で必ず質疑されます。
④品質監査で4.1がどのように質疑されるか?
品質監査(内部監査や外部審査)でよく質疑される流れを解説します。
監査する側は、決まった質疑をするのではなく、対象とする部門や組織の経営課題を抽出してからそれを解決するための施策や実績などを深く掘り下げて質疑していきます。
最初の経営課題を抽出するために4.1の要求事項が質疑されます。
質疑の流れ
- 製品分野、売上、収益について確認
- 事業継続に対するリスク・機会を確認
- リスク・機会の要因についてさらに質疑
「事業継続に対するリスク・機会を確認」になったら、事前に「内部の課題」、「外部の課題」を
3C分析,5F分析,SWOT分析を使って抽出した結果を監査員に回答しましょう。
リスク・機会を与える要因が、
●組織体制
●目標の見直し
●コミュニケーション
●人的資源
●その他資源
●社内の仕組み
などであれば、さらに個々のテーマを掘り下げながら、監査が続いていきます。
しっかり分析して、それを解決する道筋を力強く説明できるように日々考えることが重要です。
外部の課題と内部の課題を考える方法が十分、理解できましたね!
まとめ
ISO9001 2015 4.1 組織及びその状況の理解をわかりやすく解説しました。
- ①ISO9001要求事項、JISハンドブックISO9001の解説
- ②内部の課題と外部の課題はマーケテイングから学ぶ
- ③内部の課題と外部の課題の事例
- ④品質監査で4.1がどのように質疑されるか?
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119