減点数の管理図の作り方がわかる(ポアソン分布、分散の加法性)
「複数に区分された欠点数を評価する管理図が作れない」、などと困っていませんか?
こういう期待に答えます。
本記事のテーマ
- ①複数に区分された欠点数を評価したい場合
- ②ポアソン分布と分散の加法性
- ③複数に区分された欠点数を評価する管理図の作り方
記事の信頼性
記事を書いている私は、管理図の係数表、群内変動・群間変動の解き方に疑問が残りました。そこで、管理図の理論を研究しました。その成果をブログで解説します。
複数に区分された欠点数を評価したい場合
減点数のデータ
品質特性を調べるときに、「外観の傷などの欠点数」や「組立上の欠点」などを調べます。欠点の状態によって、いくつかの階級に分けて評価したい場合を考えます。
階級分けして評価する例
たとえば、
- 致命的欠点(使用不可、ユーザに悪影響)
- 重欠点(特性に欠陥があるが、修理可能)
- 軽欠点(動作に問題ないが、気になる程度)
- 微欠点(誤差範囲で問題無いレベル)
難しいですね。関西弁で書くと、
- 絶対アカン!
- ヤバい!
- ちょっと気になるけど!
- それくらい勘弁してよ!
などの、程度によって分けて評価することを考えます。基本的には、点数分けして区別するでしょう。
階級 | 点数 |
致命的欠点 | 100 |
重欠点 | 50 |
軽欠点 | 10 |
微欠点 | 2 |
●合格点は70点以下とかにして、ある製品の欠点数が
◎致命的欠点は0つ
◎重欠点は1つ
◎軽欠点は1つ
◎微欠点は3つ
あった場合、評価点数は、
100×0+50×1+10×1+2×3=66点と70点以下のなので、出荷OKとするとか評価できますね。
では、階級別に点数化された評価点を管理図で管理することを考えます。
ポアソン分布と分散の加法性
欠点数はポアソン分布を活用
管理図は、3種類ありますね。
変数 | 確率分布 | 管理図 | |
計量値 | 正規分布 | X,R,s | |
計数値 | 二項分布 | np,p | |
⇒ | 計数値 | ポアソン分布 | c,u |
本記事は、欠点数を扱うので、ポアソン分布をベースに考えます。
階級別の欠点数はポアソン分布と分散の加法性を活用
仮定条件を設定
●1つの製品に、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの4種の欠点の階級を考え、それぞれの階級にある欠点数はそれぞれ別々に以下のポアソン分布に従うと仮定します。
階級 | 評価点(A) | 欠点数(B) | 平均(C) | 点数合計(A×B) |
Ⅰ (致命的欠点) |
\(p_1\) (例:100)点 |
\(d_1\) (例:1個) |
\(m_1\) | \(p_1 d_1\) (例:100×1=100点) |
Ⅱ (重欠点) |
\(p_2\) (例:50)点 |
\(d_2\) (例:3個) |
\(m_2\) | \(p_2 d_2\) (例:50×3=150点) |
Ⅲ (軽欠点) |
\(p_3\) (例:10)点 |
\(d_3\) (例:5個) |
\(m_3\) | \(p_3 d_3\) (例:10×5=50点) |
Ⅳ (微欠点) |
\(p_4\) (例:2)点 |
\(d_4\) (例:10個) |
\(m_4\) | \(p_4 d_4\) (例:2×10=20点) |
– | – | 合計 | 合計 | \(p_1 d_1+…+p_4 d_4\) (例:320点) |
●上表の場合の製品の欠点数qは、
q=\(p_1 d_1\)+\(p_2 d_2\)+\(p_3 d_3\)+\(p_4 d_4\)
で具体例でいうと、
q=100×1+50×3+10×5+2×10=320
ですね。
欠点数合計の期待値、分散を導出
●欠点数合計qの期待値と分散を考えます。
●欠点数合計qの期待値\(μ_q\)=E[q]は、
\(μ_q\)=E[q]
= \(p_1\)E[\(d_1\)]+ \(p_2\)E[\(d_2\)]+ \(p_3\)E[\(d_3\)]+ \(p_4\)E[\(d_4\)]
=\(p_1\)\(m_1\)+ \(p_2\)\(m_2\)+ \(p_3\)\(m_3\)+ \(p_4\)\(d_4\)
になります。
欠点数dが変数になるので、E[\(d_i\)]⇒\(m_i\)と変形します。
●欠点数合計qの分散\(σ_q^2\)=V[q]は、
\(σ_q^2\)=V[q]
= \(p_1^2\)V[\(d_1\)]+ \(p_2^2\)V[\(d_2\)]+ \(p_3^2\)V[\(d_3\)]+ \(p_4^2\)V[\(d_4\)]
=\(p_1^2\)\(m_1\)+ \(p_2^2\)\(m_2\)+ \(p_3^2\)\(m_3\)+ \(p_4^2\)\(d_4\)
になります。
●期待値Eと分散Vの定義は、
E=\(\sum_{i} x_i f(x_i)\)
V=\(\sum_{i} x_i^2 f(x_i)\)
ですね。この定義どおり、立式するので、
期待値Eは\(p_i\)V[\(d_i\)]の和、
分散Vは\(p_i^2\)V[\(d_i\)]の和、
となります。
●ポアソン分布の期待値と分散は一致しますね。
つまり、平均が\(m_i\)なら、
期待値E =\(m_i\)V
分散V=\(m_i\)
と一致します。
●期待値E=\(p_1\)\(m_1\)+ \(p_2\)\(m_2\)+ \(p_3\)\(m_3\)+ \(p_4\)\(d_4\)
●分散V=\(p_1^2\)\(m_1\)+ \(p_2^2\)\(m_2\)+ \(p_3^2\)\(m_3\)+ \(p_4^2\)\(d_4\)
です。
減点数の管理図を作成
データ事例
次のデータを管理図に描きます。
欠点の階級 | 減点評価\(p_i\) | 欠点数\(d_i\) | 積\(p_i d_i\) | 積\(p_i^2 d_i\) |
Ⅰ | 100 | 235 | 23,500 | 2,350,000 |
Ⅱ | 50 | 2,585 | 129,250 | 6,462,500 |
Ⅲ | 10 | 7,126 | 71,260 | 712,600 |
Ⅳ | 2 | 13,602 | 27,204 | 54,408 |
– | 合計 | 23,548 | 251,214 | 9,579,508 |
管理図と管理限界の計算
1サンプルあたりの欠点数で評価します。c管理図を作成します。
まず、平均と管理限界を計算します。
欠点数合計の期待値、分散を導出
●期待値Eは
E=\(\sum_{i=1}^{4} p_i d_i\)/N
=251,214/20000=12.56
●分散Vは、サンプル数n=500を考慮して、
V=\(\sum_{i=1}^{4} \frac{p_i^2 d_i}{N}\)/n
=9,579,508/(20,000×500)=0.958
●標準偏差σは
σ=\(\sqrt{V}\)=0.979
管理図を作成
まとめると、
ここで1つ問題があります。⇒管理図がまだ描けない!
●例えば、月ごとの欠点数データを横軸にとって、管理すればよいでしょう。
次のような月ごとの欠点数データを取ります。
月 | 月ごとの欠点数A (サンプル数n=500あたり) |
1 | 11 |
2 | 14 |
3 | 13.5 |
4 | 11.5 |
5 | 10.8 |
6 | 12.5 |
7 | 13.4 |
8 | 15.4 |
9 | 14.5 |
10 | 11.5 |
11 | 12.5 |
12 | 14.1 |
このデータと、期待値と標準偏差を使って管理限界を入れた管理図を作成します。
ポアソン分布と分散の加法性を活用して管理図を作る応用事例になります。
まとめ
ポアソン分布と分散の加法性を活用して管理図を作る方法を解説しました。
- ①複数に区分された欠点数を評価したい場合
- ②ポアソン分布と分散の加法性
- ③複数に区分された欠点数を評価する管理図の作り方
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