抜取検査はすべてOC曲線をベースに考える
「抜取検査は何をベースに考えたらよいのか、わからず、丸暗記になってしまう。」「OC曲線はどうやって描けばいいの?」
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
抜取検査はすべてOC曲線をベースに考える
- ➀OC曲線の式の二項分布を理解する
- ②OC曲線でチェックする4つのパラメータ
- ③OC曲線からサンプル数、合否判定基準を決める
抜取検査の記事はすべてOC曲線をベースに説明しています。OC曲線の構成式と曲線について本記事でしっかり理解しましょう。
●You tubeの解説動画もご覧ください。
➀OC曲線の式の二項分布を理解する
二項分布を理解する
高校数学の確率がわかればOK!
組み合わせの問題です。
不良品はr個で、不良率はp
良品はn-r個で、良品率は(1-p)
n個のうちどのr個が不良なのか、組み合わせは nCr通り
です。
確率は
nCr\(p^r (1-p)^{n-r}\)
ですね。
これは、高校数学の確率の問題です。公式ではなく、理解して立式しましょう。
二項分布の式からOC曲線を作る
再度、確率の問題を出します。
不良個数が0個と1個の場合があります。加算します。
nC0\(p^0 (1-p)^{n-0}\)+nC1\(p^1 (1-p)^{n-1}\)
不良個数が1個以下でなく、もっとたくさんあった場合、例えば3個以下なら
(0個の場合の確率)+(1個の場合の確率)+ (2個の場合の確率)+ (3個の場合の確率)
の和を計算します。
OC曲線を作ってみよう!
確率の式 nCr\(p^r (1-p)^{n-r}\) からn=5,r=0,p=0~0.1(10%)について計算してみましょう。
P | y |
0 | 1 |
0.02 | 0.904 |
0.04 | 0.815 |
0.06 | 0.734 |
0.08 | 0.659 |
0.1 | 0.590 |
これをグラフにしたものがOC曲線です。
②OC曲線でチェックする4つのパラメータ
グラフ例を下図に描きます。
OC曲線の横軸と縦軸を理解する
OC曲線の縦軸が何か?すぐわかるか?
横軸は不良率pとすぐわかるはずです。しかし、縦軸は何か?わかりますか?慣れないと、すぐに忘れてしまいます。でも暗記せずに、式から理解しましょう。
確率の式に戻ります。二項分布(高校数学)⇒OC曲線と考えることが基本です。
nCr\(p^r (1-p)^{n-r}\)
nC0\(p^0 (1-p)^{n-0}\)+nC1\(p^1 (1-p)^{n-1}\)
ですね。不良個数についての確率と、不良個数以下の確率の総和を計算しています。
抜取検査では、ある不良個数の上限で検査の合否を決めます。
となります。
OC曲線でチェックする4つのパラメータ
重要な4つのパラメータ
下図と見ながら説明します。
α | 第1種の誤り,生産者危険,あわて者の誤り |
β | 第2種の誤り,消費者危険,ぶんやりものの誤り |
P0 | 合格率が1-αとなる確率 |
P1 | 合格率がβとなる確率 |
αは、良品なのに、不良品と判定する誤りで、
βは不良品なのに、良品と判定する誤りですね。
どちらも避けたいものです。
OC曲線にとって、第1種の誤りα、第2種の誤りβがどのように関わるかを次で解説します。
③OC曲線からサンプル数、合否判定基準を決める
サンプル数、合否判定基準の決め方
サンプル数、合否判定基準の決め方
- 第1種の誤りα、第2種の誤りβの値を決める(α=0.05,β=0.10が多い)
- 第1種の誤りα、第2種の誤りβとなる不良率p0,P1を決める(検査ごとに異なる)
- 2点(p0,1-α), (p1,β) を通るOC曲線を作り(n,c)を決定する
下図にまとめます。
サンプル数nと合否判定基準の不良個数を決める条件は、第1種の誤り、第2種の誤りを決めて、そこを通るOC曲線であることです。
なお、OC曲線は1つではなく複数できるはずです。その場合は、検査対象に合わせて(n,c)を決めればよいです。
教科書・JIS規格と本記事の違い
OC曲線(n,c)を決める⇒第1種の誤りα、第2種の誤りβを決める⇒両者の条件が合うまで値を調べる
(ii)本記事(QCプラネッツ)
第1種の誤りα、第2種の誤りβを決める⇒OC曲線(n,c)を決める⇒両者の条件が合うものを選ぶ
とα、βとn,cの決め方が教科書・JIS規格と本記事では逆です。
それは導出の目的が異なるからです。
わかりやすく数値を選ばせることですが、
(ii)本記事(QCプラネッツ)は
数値がそうなる理由を考え、理解すること
教科書やJIS規格に基づいて、抜取検査の基礎を習得すると、簡単に使いこなせます。しかし、実務で抜取検査するようになると、理由や背景を説明できる必要があります。説明力を習得するためには、理論を自分で考え抜くことが必要です。
QCプラネッツは、抜取検査を自力で考え、設計・計画できるよう、解説していきます。
まとめ
抜取検査のベースであるOC曲線について解説しました。OC曲線を構成する式の導出、式の意味を理解することが重要です。
- ➀OC曲線の式の二項分布を理解する
- ②OC曲線でチェックする4つのパラメータ
- ③OC曲線からサンプル数、合否判定基準を決める
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