ガンマ関数がよくわかる(その2_大学数学編)
「ガンマ関数がわからない!」、「ガンマ関数の導出方法や性質を数式で解けない!」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①ガンマ関数とは
- ➁ガンマ関数が分からないなら高校数学を復習しよう!
- ➂ガンマ関数の性質
- ➃ガンマ関数の性質の証明
- ➄ガンマ関数とベータ関数の関係
大人の数学ガンマ関数に挑もう!
●数十年前に受験生だった人も復習しましょう!
①ガンマ関数とは
ガンマ関数の式だけ紹介
こんな式ですね。ビビる必要はありません!
なんじゃこりゃ!ですが、大丈夫です!
➁ガンマ関数が分からないなら高校数学を復習しよう!
必ず、復習しておさえておきたいのが、3つ
- 数学的帰納法
- \( \displaystyle \lim_{x \to \infty} x e^{-x} = 0\)
- 部分積分から漸化式を作る流れ
さっと解けますか? 不安なら、関連記事でしっかり復習できますし、大学入試にも役立つ3問があります。
ガンマ関数がよくわかる(その1_高校数学復習編) ガンマ関数は使いこなせますか?いきなり大学の統計学とか学んで撃沈していませんか?本記事では、高校数学や大学受験問題に頻出な問題からガンマ関数の練習をします。ガンマ関数が分からない人は、必読です。 |
次の3問がさらっと解けますか? 難関大学の問題ですが、ガンマ関数の基礎が学べる良問です。関連記事で解説つきです。
(1) 関数\(f(x)\) = \(x^{n+1}e^{-x}\)の\(x\) ≥0 における最大値を求めよ。
(2) 極限\( \displaystyle \lim_{x \to \infty} x^n e^{-x} \)を求めよ。
(3) すべての自然数\(n\)に対して\( \displaystyle \lim_{x \to \infty} \displaystyle \int_{0}^{x} t^n e^{-t}dt \)=\(n!\)を示せ。
(2015 弘前大)
問2 極限\(I_m\)=\(\displaystyle \lim_{t \to \infty}\displaystyle \int_{0}^{t} x^m e^{-x}dx\) \(m=0,1,2,…)\)を求めよ。
(2001 東北大)
\(I_n(t)\)= \(\displaystyle \int_{0}^{t} x^n e^{-ax}dx\)と定める。(2008 大阪府大 改)
(1) \(e^{ax}\)=\(\sum_{k=0}^{∞} \frac{a^k}{k!} x^k \)と近似できることを用いて、
\(\displaystyle \lim_{t \to \infty} t^n e^{-at}\)=0を示せ。
(2) \(I_1(t)\)を求めよ。
(3) \(I_{n+1}(t)\)と\(I_n(t)\)の関係式を求めよ。
(4) \(J_n\)=\(\displaystyle \lim_{t \to \infty} I_n (t) \)とするとき、\(J_n\)を求めよ。
下準備をした上で、本題に入ります。
➂ガンマ関数の性質
ガンマ関数をざっくり理解する
基本は、
と1つ少ない階乗と思えばOK
ガンマ関数の性質
大事な性質が3つあります。正規分布の積分にもつながる大事な内容です。
- (i) \(s\) > 1のとき、\(Γ(s)\)=\((s-1)Γ(s-1)\)
- (ii) \(s\)が正の整数のとき、\(Γ(s)\)=\((s-1)!\)
- (iii)\(Γ(\frac{1}{2})\)=\(\sqrt{π}\)
(i)と(ii)は階乗の関係だから、すぐ理解できますが、(iii)は別格に難しく感じます。そもそも階乗は整数なのに\(\frac{1}{2}\)が入っているし、しかも、\(\sqrt{π}\)ってどこから来たん?って感じですよね!
➃ガンマ関数の性質の証明
ガンマ関数に慣れるために証明も入れておきます。なぞってください。良い練習になります!
(i) \(s\) > 1のとき、\(Γ(s)\)=\((s-1)Γ(s-1)\)
●\(Γ(s)= \displaystyle \int_{0}^{∞} x^{s-1}e^{-x} dx\)
●\(Γ(s-1)= \displaystyle \int_{0}^{∞} x^{s-2}e^{-x} dx\)
です。
部分積分しましょう。⇒が微分する方向として、
\(-x^{s-1} e^{-x}\)⇒\(x^{s-1} e^{-x} –(s-1)x^{s-2} e^{-x}\)
つまり、
\(\left[-x^{s-1} e^{-x} \right]_{0}^{∞}\)=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x^{s-1} e^{-x} dx\)―\(\displaystyle \int_{0}^{∞} (s-1)x^{s-2} e^{-x} dx\)
まとめると、
\(\left[-x^{s-1} e^{-x} \right]_{0}^{∞}\)=\(Γ(s)\)―\((s-1)Γ(s-1)\)
一方、(左辺)=0なので、
\(Γ(s)\)=\((s-1)Γ(s-1)\)が成り立つ。
関連記事でも部分積分をいっぱい練習していますので、不安なら関連記事で復習しましょう。
(ii) \(s\)が正の整数のとき、\(Γ(s)\)=\((s-1)!\)
これは簡単ですね。
\(Γ(s)\) = \((s-1)Γ(s-1)\)= \((s-1)(s-2)Γ(s-2)\)=…
= \((s-1)(s-2)…1Γ(1)\)
ここで、Γ(1)は
\(Γ(s)= \displaystyle \int_{0}^{∞} x^{1-1}e^{-x} dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} e^{-x} dx\)
=\(\left[-e^{-x} \right]_{0}^{∞}\)
=1
よって、
\(Γ(s)\) =\((s-1)(s-2)…1・1\)=\((s-1)!\)
(iii)\(Γ(\frac{1}{2})\)=\(\sqrt{π}\)
実は、ベータ関数との関係式が必要なので、あとで解説します。
➄ガンマ関数とベータ関数の関係
ガンマ関数とベータ関数の関係式が重要です。
ベータ関数とは
これも関連記事で解説しています。復習しましょう。
ベータ関数がよくわかる ベータ関数は自力で解けますか?本記事ではベータ関数の導出方法や性質、ガンマ関数との関係をわかりやすく解説します。大学の数学のような難解な説明は一切していません。、大学受験で頻出問題となるベータ関数は受験でも統計学でも重要です。受験生と統計学を学ぶ人は必読です。 |
ポイントは、
=\(\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}\)
関連記事ベータ関数がよくわかるでも解説しているとおり、次の式が成り立ちます。
証明
関連記事では、階乗!に注目して証明しています。
\(B(p,q)\)=\(\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}\)
\(Γ(p)=(p-1)!\)、\(Γ(q)=(q-1)!\)、\(Γ(p+q)=(p+q-1)!\)より
\(B(p,q)\)=\(\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}\)= \(\frac{Γ(p)Γ(q)}{Γ(p+q)} \)と
階乗「!」でみていけば公式が成り立つのが、わかりますね。
教科書は別の2重積分から変数変換して証明する方法が書いていますが、難しすぎです。簡単でもいいからできる解法で理解すればOKです。
ただし、上の簡略化した証明は、p,qが整数の場合については証明できますが、実数の場合までは証明していません。実数の場合も証明が必要でしたら、教科書を読み進めてください。
以下、勝手ですが、p,qが実数の場合でも使えるとして進めます。
Γ関数の性質(iii)\(Γ(\frac{1}{2})\)=\(\sqrt{π}\)
ではやってみましょう。
\(B(p,q)\)= \(\frac{Γ(p)Γ(q)}{Γ(p+q)} \)
に\(p=\frac{1}{2}\)、\(q=\frac{1}{2}\)を代入します。
\(B(\frac{1}{2},\frac{1}{2})\)= \(\frac{Γ(\frac{1}{2})Γ(\frac{1}{2})}{Γ(\frac{1}{2}+\frac{1}{2})} \)
ここで、\(Γ(\frac{1}{2}+\frac{1}{2})\)=\(Γ(1)\)=1です。
また、\(B(\frac{1}{2},\frac{1}{2})\)は、
\(B(\frac{1}{2},\frac{1}{2})= \displaystyle \int_{0}^{1} x^{\frac{1}{2}-1}(1-x)^{ \frac{1}{2}-1} dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{1}\frac{1}{\sqrt{x(1-x)}}dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{1}\frac{1}{\sqrt{(\frac{1}{2})^2-(x-\frac{1}{2})^2}}dx\) (平方完成)
=(式1)
ここで、 \(tx-\frac{1}{2}\)とおくと、
●\(x\):0⇒1が、\(t\):\(-\frac{1}{2}\)⇒\(\frac{1}{2}\)へ
●\(dt=dx\)より、(式1)に代入します。
(式1)
=\(\displaystyle \int_{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}} \frac{1}{\sqrt{(\frac{1}{2})^2-t^2}}dt\)
=(式2)
さらに、\(t=\frac{1}{2}sinθ\)とおくと、
●\(t\):\(-\frac{1}{2}\)⇒\(\frac{1}{2}\)が、\(θ\):\(-\frac{π}{2}\)⇒\(\frac{π}{2}\)へ
●\(dt=\frac{1}{2}cosθdθ\)より、(式2)に代入します。
(式2)
=\(\displaystyle \int_{-\frac{π}{2}}^{\frac{π}{2}} \frac{1}{\sqrt{(\frac{1}{2})^2-(\frac{1}{2} sinθ)^2}} \frac{1}{2} cosθ dθ\)
=\(\displaystyle \int_{-\frac{π}{2}}^{\frac{π}{2}} \frac{1}{\frac{1}{2} cosθ dθ} \frac{1}{2} cosθ dθ\)
=\(\displaystyle \int_{-\frac{π}{2}}^{\frac{π}{2}} dθ\)
=\(π\)
=(式3)
2回置換しましたが、何とか積分できました!まとめると、
\(B(\frac{1}{2},\frac{1}{2})\)= \(\frac{Γ(\frac{1}{2})Γ(\frac{1}{2})}{Γ(\frac{1}{2}+\frac{1}{2})} \)
\(π\)= \((Γ(\frac{1}{2}))^2・1\)
よって
\(Γ(\frac{1}{2})=\sqrt{π}\)
が出ました。
以上、ガンマ関数の性質についてまとめました。
まとめ
「ガンマ関数がよくわかる(その2_大学数学編)」を解説しました。
- ①ガンマ関数とは
- ➁ガンマ関数が分からないなら高校数学を復習しよう!
- ➂ガンマ関数の性質
- ➃ガンマ関数の性質の証明
- ➄ガンマ関数とベータ関数の関係
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119