t分布の確率密度関数の導出がよくわかる
「確率変数の変換が、わからない、解けない?」、「t分布、F分布の確率密度関数への導出がわからない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①2変数の確率変数の変換の基本をマスターする
- ➁ t分布の確率密度関数の導出
①2変数の確率変数の変換の基本をマスターする
確率変数の変換は高校数学でほぼイケます!大丈夫!
理解しないと、正規分布、t分布、χ2乗分布、F分布との関係が理解できないから困っている!
それは、
慣れてきたら、公式を見ましょう。
2変数の確率変数の変換の基本をマスターする
関連記事に2変数の確率変数の変換の求め方をわかりやすく解説しています。
【まとめ】2変数の確率変数の変換がよくわかる 2変数の確率変数の変換が計算できますか?本記事では,理解が難しい公式をそのまま使わずに,高校数学で十分解ける解法を解説します。今回は変換したいパターンをすべてを解説!教科書よりわかりやすく、 ほぼ高校数学でイケる方法で解説! t分布、F分布の確率密度関数を導出したい方は必読な記事です。 |
同じ1つの解法でイケますので、ご安心ください。
2変数の確率変数の変換の求め方
1変数の確率変数の変換方法と同様に決まった解法があります。
変数\(x,y\)を変数\(z,w\)に変換するとします。
- \(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す
- \(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する
- 2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)は
\(g(z,w)=f(x(z,w),y(z,w)|det J| \)で求まる。 - 実際は\(z,w\)のうち、どちらかは不要な変数なので、片方の変数で積分して、残りの変数についての周囲確率密度関数
(例えば \(g(z)= \displaystyle \int_{w_1}^{w_2} g(z,w)dw \))
を計算する。
ここで、注意点があります。
Jは
J=\(\begin{pmatrix}
\frac{\partial x}{ \partial z} & \frac{\partial x}{\partial w} \\
\frac{\partial y}{\partial z} & \frac{\partial y}{\partial w}
\end{pmatrix}\)
また、\(det J\)は行列式ヤコビアンといいますね。
A=\(\begin{pmatrix}
a & b \\
c & d
\end{pmatrix}\)
のとき、行列式ヤコビアン\(det A\)は、
\(det A=ad-bc\)
で計算できます。
計算力が求められる場合がありますが、基本は高校数学でイケます!
では、実践編に入ります。最初は簡単な式から行きます!
➁ t分布の確率密度関数の導出
QCプラネッツでは、5つの事例を関連記事で紹介していきます。ご確認ください。
- 簡単な関数の変換事例
- t分布の確率密度関数の導出
- F分布の確率密度関数の導出
- 1変数でZ=XY(積)の場合の変換方法
- 1変数でZ=X/Y(商)の場合の変換方法
今回は、その2「t分布の確率密度関数の導出」です。
(2) t分布の確率密度関数の導出
2つの確率変数\(X\),\(Y\)が独立で、\(X\)が自由度nの\(χ^2\)分布、\(Y\)が正規分布N(0,\(1^2\))に従うとき、\(Z\)=\(\frac{Y}{\sqrt{\frac{X}{n}}}\)で定義される確率変数\(Z\)の確率密度関数を求めよ。
まず、\(X,Y\)の確率密度関数を定義します。
\(f(x)=\frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})}x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}}\) (\(x\) ≥ 0)
\(g(y)=\frac{1}{2π}e^{-\frac{1}{2}y^2}\) (-∞ ≤ \(x\) ≤ ∞)
解いていきましょう。解法は、
- \(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す
- \(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する
- 2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)は
\(g(z,w)=f(x(z,w),y(z,w)|det J| \)で求まる。 - 実際は\(z,w\)のうち、どちらかは不要な変数なので、片方の変数で積分して、残りの変数についての周囲確率密度関数
(例えば \(g(z)= \displaystyle \int_{w_1}^{w_2} g(z,w)dw \))
を計算する。
ですから、1つずつ行きましょう。
(i)\(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す
ここで、変換する変数を定義します。
\(W\)=\(X\)
\(x=x(z,w),y=y(z,w)\)に直します。
\(x\)=\(w\)
\(y\)=\(z\sqrt{\frac{w}{n}}\)
(ii)\(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する
次に、ヤコビ行列から行列式ヤコビアンを求めます。
ヤコビ行列Jは
Jは
J=\(\begin{pmatrix}
\frac{\partial x}{ \partial z} & \frac{\partial x}{\partial w} \\
\frac{\partial y}{\partial z} & \frac{\partial y}{\partial w}
\end{pmatrix}\)
J=\(\begin{pmatrix}
0 & 1 \\
\sqrt{\frac{w}{n}}& \frac{1}{2\sqrt{w}}
\end{pmatrix}\)
次に行列式ヤコビアンは
\(det J\)=\(0・\frac{1}{2\sqrt{w}}\)-1・\(\sqrt{\frac{w}{n}}\)
=\(-\sqrt{\frac{w}{n}}\)
で計算できます。
ここまで大丈夫ですね!
(iii)2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)を導出
代入すると、
\(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)
=\(\frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})}w^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{w}{2}}\)\(\frac{1}{2π}e^{-\frac{1}{2}z^2\frac{w}{n}}dzdw\)
(|det J|=\(\frac{w}{n}\))
さらに変形していきます。
=\(\frac{1}{\sqrt{2nπ}}\frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})}w^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{w}{2}(1+\frac{z^2}{w})}dzdw\)
=\(p(z,w)\)
よって、同時確率密度関数\(p(z,w)\)は
\(p(z,w)= \frac{1}{\sqrt{2nπ}}\frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})}w^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{w}{2}(1+\frac{z^2}{w})}dzdw\)
と計算できます。
なお、ここから\(z\)または、\(w\)だけの周辺確率分布関数が必要なら、不要な変数について積分が必要となります。
今回は\(h(z)\)と\(z\)についての関数が欲しいので、\(p(z,w)\)について\(w\)で積分します。
\( h(z)=\displaystyle \int_{-∞}^{∞} p(z,w)dw \)
=\(\frac{1}{\sqrt{2nπ}}\frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})}\displaystyle \int_{0}^{∞}w^{\frac{n-1}{2}}e^{-\frac{w}{2}(1+\frac{z^2}{n})}dw \)
=(式1)
ここで、\(w=x\)はもともと\(x\) ≤ 0ですから、積分区間を[0,∞]に変えています。
次に、\(\displaystyle \int_{0}^{∞}w^{\frac{n-1}{2}}e^{-\frac{w}{2}(1+\frac{z^2}{n})}dw \)を計算します。よく見るとΓ関数にもっていけそうです。
一旦、次の積分を考えます。
\(\displaystyle \int_{0}^{∞}w^p e^{-aw}dw \)=(式2)
\(t=aw\)とすると、
\(w=\frac{t}{a}\),\(\frac{dt}{dw}=a\)となり、これを(式2)に代入します。
(式2)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞}(\frac{t}{a})^p e^{-t} (\frac{1}{a})dt\)
=\(\frac{1}{a^{p+1}}\displaystyle \int_{0}^{∞}t^p e^{-t}dt\)
=\(\frac{Γ(p+1)}{a^{p+1}}\)
=(式3)
ここで、Γ関数は
\(Γ(p+1)= \displaystyle \int_{0}^{∞}t^p e^{-t}dt\)\)
です。
(式1)に代入するため、(式3)の文字を置き換えます。
\(p=\frac{n-1}{2}\)
\(a=\frac{1}{2}(1+\frac{z^2}{n})\)
とおいて、(式1)に代入します。
(式1)
=\(\frac{1}{\sqrt{2nπ}}\frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})}\displaystyle \int_{0}^{∞}w^{\frac{n-1}{2}}e^{-\frac{w}{2}(1+\frac{z^2}{n})}dw \)
=\(\frac{1}{\sqrt{2nπ}}\frac{1}{2^{\frac{n}{2}Γ(\frac{n}{2})}}\)\(\frac{Γ(\frac{n+1}{2})}{(\frac{1}{2}(1+\frac{z^2}{n})^{\frac{n+1}{2}})}\)
=(式4)
さらに、Γの式が複数あるので、ベータ関数でまとめられないか?を見ましょう。
普通気が付かないのですが、よくみると
\(\sqrt{π}\)=Γ\((\frac{1}{2})\)
とわかります。これを(式4)に代入します。
(式4)
=\(\frac{1}{\sqrt{2nπ}}\frac{1}{2^{\frac{n}{2}Γ(\frac{n}{2})}}\)\(\frac{Γ(\frac{n+1}{2})}{(\frac{1}{2}(1+\frac{z^2}{n})^{\frac{n+1}{2}})}\)
=\(\frac{1}{\sqrt{π}}B(\frac{1}{2},\frac{n}{2})(1+\frac{z^2}{n})^{-\frac{n+1}{2}}\)
=(式5)
\(h(z)= \frac{1}{\sqrt{π}}B(\frac{1}{2},\frac{n}{2})(1+\frac{z^2}{n})^{-\frac{n+1}{2}}\)
となり、これが自由度nのt分布の確率密度関数となります。
いろいろな関数を使って、確率変数の変換を見て慣れていきましょう!
本記事の内容は、ほぼ高校数学で解けましたね!
まとめ
「2変数の確率変数の変換がよくわかる(t分布の確率密度関数の導出)」を解説しました。
- ①2変数の確率変数の変換の基本をマスターする
- ➁ t分布の確率密度関数の導出
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119