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管理図の平均値Xbarの差の検定ができる

管理図

「管理図で平均値Xbarの差を検定せよと聞かれたけど、どうやって解くかわからない」、などと困っていませんか?

こういう期待に答えます。

本記事のテーマ

管理図の平均値Xbarの差の検定ができる
2つの検定統計量を使って検定しますが、この2つの式は同値でもある点も解説します。
● t分布:t=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{\sqrt{\frac{V_A}{N_A}+\frac{V_B}{N_B}}}
● 正規分布: |\bar{X_A}-\bar{X_B}|A_2\bar{R} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}
  • ①平均値Xbarの差の検定事例
  • ②t分布を使った検定統計量で母平均差の検定で解く
  • ③正規分布と管理図係数を使った検定統計量で母平均差の検定で解く
  • ④t分布、正規分布から作った検定統計量は同値である証明
教科書やサイトの内容をそのまま暗記せず、自分で考えてみよう。疑問がわけば、新発見につながる!

記事の信頼性

記事を書いている私は、管理図の係数表、群内変動・群間変動の解き方に疑問が残りました。そこで、管理図の理論を研究しました。その成果をブログで解説します。

●Youtube動画でも解説しています。ご確認ください。

①平均値Xbarの差の検定事例

事例問題

次の問いを考えます。管理図から検定・推定につなぐ重要な応用問題としてとらえてください。良問です。

演習問題

A,Bの部品を用意する。コインを投げて表面が出ればA,裏面が出ればBを、各5回とり、部品のある品質特性値をデータに記録する。5回データを1つの群として、計25群のデータを測定した。その結果、次の表の結果となった。
(1)25群全体における\bar{X}-R管理図を作成せよ。
(2)A群だけ、B群だけの\bar{X}-R管理図をそれぞれ作成せよ。
(3)A,Bの2つの\bar{X}管理図において、管理状態である場合、\bar{X_A}, \bar{X_B}に有意な差があるかどうか検定せよ。有意水準は5%としてよい。
x1 x2 x3 x4 x5 \bar{x} R A/B
1 4 2 5 4 2 3.4 3 B
2 0 0 3 3 3 1.8 3 B
3 2 1 2 5 0 2 5 B
4 4 1 3 3 2 2.6 3 B
5 2 -1 2 1 2 1.2 3 A
6 -1 2 1 -1 2 0.6 3 A
7 1 0 0 3 -1 0.6 4 A
8 1 4 3 0 4 2.4 4 B
9 2 4 1 2 1 2 3 B
10 3 2 1 6 3 3 5 B
11 -1 -3 0 4 0 0 7 A
12 2 0 2 0 2 1.2 2 A
13 1 1 0 0 -2 0 3 A
14 -1 -2 1 3 1 0.4 5 A
15 3 2 -1 1 3 1.6 4 A
16 1 -1 2 1 0 0.6 3 A
17 1 1 1 0 3 1.2 3 A
18 2 4 2 0 3 2.2 4 B
19 -1 -1 2 0 2 0.4 3 A
20 3 0 0 2 3 1.6 3 A
21 0 0 0 1 2 0.6 2 B
22 -1 0 -4 0 -1 -1.2 4 A
23 1 -1 -1 1 0 0 2 A
24 3 2 4 3 1 2.6 3 B
25 0 2 0 -2 3 0.6 5 A
平均 1.26 3.56

(1)(2)は基本問題で、(3)が本記事のメイン問題となります。

\bar{X}-R管理図を作成

(i)AB全体の場合
(ii)Aだけの場合
(iii)Bだけの場合
の3通りについて、管理図をそれぞれ作成します。

\bar{X}管理図について、
\bar{\bar{X}}=1.256
\bar{R}=3.56
◎LCL=\bar{\bar{X}}-A_2×\bar{R}
=1.256-0.577×3.56=-0.798
◎UCL=\bar{\bar{X}}+A_2×\bar{R}
=1.256+0.577×3.56=3.31

管理図

●R管理図について、
\bar{R}=3.56
◎LCL=0(なし) (n > 6より)
◎UCL=D_4×\bar{R}
=2.114×3.56=7.53

R管理図

\bar{X}管理図について、
\bar{\bar{X_A}}=0.59
\bar{R_A}=3.6
◎LCL=\bar{\bar{X_A}}-A_2×\bar{R_A}
=0.59-0.577×3.6=-1.49
◎UCL=\bar{\bar{X_A}}+A_2×\bar{R_A}
=0.59+0.577×3.6=2.66

Xbar管理図

●R管理図について、
\bar{R_A}=3.6
◎LCL=0(なし) (n > 6より)
◎UCL=D_4×\bar{R}
=2.114×3.6=7.61

R管理図

\bar{X_B}管理図について、
\bar{\bar{X_B}}=2.26
\bar{R_B}=3.5
◎LCL=\bar{\bar{X_B}}-A_2×\bar{R_B}
=2.26-0.577×3.5=0.24
◎UCL=\bar{\bar{X_B}}+A_2×\bar{R_B}
=2.26+0.577×3.5=4.28

Xbar管理図

●R管理図について、
\bar{R_B}=3.5
◎LCL=0(なし) (n > 6より)
◎UCL=D_4×\bar{R_B}
=2.114×3.5=7.40

R管理図

管理図をまとめると、A,Bの違いが見やすくなります。

Xbar管理図

R管理図

AとBの違いを検定しましょう。

②t分布を使った検定統計量で母平均差の検定で解く

検定統計量

t分布を使った検定統計量で2つの母平均差の検定をする場合は、
t分布:t=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{\sqrt{\frac{V_A}{N_A}+\frac{V_B}{N_B}}}
ですね。おなじみの式です。なお、
tはt分布、自由度φ=N_A+N_B-1とします。

検定統計量を計算

各値を算出します。
●平均値:\bar{X_A}=0.59
●平均値:\bar{X_B}=2.26
●分散:\bar{V_A}=2.38
●分散:\bar{V_B}=2.23
●自由度:\bar{N_A}=75
●自由度:\bar{N_B}=50

これを検定統計量に代入します。
t=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{\sqrt{\frac{V_A}{N_A}+\frac{V_B}{N_B}}}
=\frac{|0.59-2.26|}{\sqrt{\frac{2.38}{15}+\frac{2.23}{10}}}
=7.56

検定結果

●t(φ、α)=t(75+50-1,0.05)=1.98
と比較すると
t=7.56 > 1.98
より、有意差があると言えます。

以上より、管理図から有意差を検定する検定問題の応用パターンを解説しました。
でも、これだけだと、別に記事にすることはありません。

管理図の古書を見ると、
正規分布から導出した式
|\bar{X_A}-\bar{X_B}|A_2\bar{R} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}
を使って求めることもできます。これも解説します。
試験・業務に使う場合はt分布で検定してよいでしょう。

③正規分布と管理図係数を使った検定統計量で母平均差の検定で解く

古書の紹介

1960年出版の「品質管理教程 管理図」P226,P287をベースに解説します。

古書の良い点は、理論がしっかりと解説している点。現在の参考書は解き方だけ解説しており、「なぜ?」と疑問に思っても、解説がないのが難点。
古書の良くない点は、考えて読むと「おかしいのではないか?」、「近似式の導出」の2点が多く、現在の我々にとって重要ではないことも書いている。
過去から現在に至り専門家が何度も改訂しているため、内容精度は高くなっているが、その分、ベースとなる理論の記述が時代とともに無くなっていっている。

そのため、QCプラネッツでは、古書の優れた理論をわかりやすく解説し、今の時代に合った内容に解説しています。

古書の解法を紹介します。
|\bar{X_A}-\bar{X_B}|A_2\bar{R} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}

正規分布から導出した検定統計量で解く

式は、
|\bar{X_A}-\bar{X_B}|A_2\bar{R} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}
です。

●各値は
●平均値:\bar{X_A}=0.59
●平均値:\bar{X_B}=2.26
●管理図係数:A_2=0.577
●範囲の平均:\bar{R}=\frac{k_A \bar{R_A}+k_B \bar{R_B}}{k_A+k_B}
=\frac{15×3.6+10×3.5}{15+10}=3.56
●群の数:\bar{k_A}=15
●群の数:\bar{k_B}=10

よって、検定は
●(左辺)=|\bar{X_A}-\bar{X_B}|=2.26-0.59=1.67
●(右辺)=0.577×3.56× \sqrt{\frac{1}{15}+\frac{1}{10}}=0.839

(左辺) > (右辺)が成り立つので、
有意差があると言えます。

t分布で計算した母平均の差の検定と同じ結果になりましたね。

④t分布、正規分布から作った検定統計量は同値である証明

この2つの式は同値でもある点も解説します。
● t分布:t=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{\sqrt{\frac{V_A}{N_A}+\frac{V_B}{N_B}}}
● 正規分布: |\bar{X_A}-\bar{X_B}|A_2\bar{R} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}

証明方法は、次の2つです。

  1. t分布を使った検定統計量から出発
  2. t分布から正規分布を使った検定統計量に変更

t分布を使った検定統計量から出発

まず、t分布を使った検定統計量を用意します。

●t=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{\sqrt{\frac{V_A}{N_A}+\frac{V_B}{N_B}}}

ここで、各値を定義します。
●Aの全自由度:\bar{N_A }=\bar{k_A }×\bar{n_A }
●Bの全自由度:\bar{N_B }=\bar{k_B }×\bar{n_B }
●群Aの数:\bar{k_A }
●群Bの数:\bar{k_B }
●群Aの群内自由度:\bar{n_A }
●群Bの群内自由度:\bar{n_B }
●分散A:\bar{V_A}
●分散B:\bar{V_B}

さらに、\bar{n_A }=\bar{n_B}=n、\bar{V_A}=\bar{V_B}=Vとすると、
t=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{\sqrt{\frac{V_A}{N_A}+\frac{V_B}{N_B}}}
=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{\sqrt{\frac{V}{n}} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}}
と変形できます。

また、
σ_A =σ_B =σとして、不偏分散\sqrt{V}=\frac{\bar{R}}{d_2}とできたら、t分布は正規分布に置き換えることができます。

t分布から正規分布を使った検定統計量に変更

t分布から正規分布の検定統計量の式に変えます。

●t=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{\sqrt{\frac{V}{n}} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}}

●u=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{ \frac{\bar{R}}{d_2 \sqrt{n}} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}}

ここで、uについては3σで検定するので、u=3を代入します。
●3=\frac{|\bar{X_A}-\bar{X_B}|}{ \frac{\bar{R}}{d_2 \sqrt{n}} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}}

両辺を整理します。
|\bar{X_A}-\bar{X_B}|=\frac{3\bar{R}}{d_2 \sqrt{n}} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}

管理図係数A_2は、
A_2=\frac{3}{d_2 \sqrt{n}}より、まとめると、
|\bar{X_A}-\bar{X_B}|= A_2 \bar{R} \sqrt{\frac{1}{k_A}+\frac{1}{k_B}}
から、検定統計量が一致することがわかりますね。

いくつかの解法を使って比較すると理解が深まりますね。

まとめ

管理図で、平均値Xbarの差を検定する方法を解説しました。

  • ①平均値Xbarの差の検定事例
  • ②t分布を使った検定統計量で母平均差の検定で解く
  • ③正規分布と管理図係数を使った検定統計量で母平均差の検定で解く
  • ④t分布、正規分布から作った検定統計量は同値である証明


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