2変数の確率変数の変換がよくわかる(1変数の積の場合)

統計学_2確率変数変換_Z=XY積

本記事のテーマ

2変数の確率変数の変換がよくわかる(Z=XY積の場合)
  • ①2変数の確率変数の変換の基本をマスターする
  • ➁ (導入)簡単な事例
  • ③ Z=XY積の場合(事例1)
  • ④ Z=XY積の場合(事例2)

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①2変数の確率変数の変換の基本をマスターする

確率変数の変換は高校数学でほぼイケます!大丈夫!

確率変数の変換は難しいけど、
理解しないと、正規分布、t分布、χ2乗分布、F分布との関係が理解できないから困っている!
確率変数の変換は高校数学でほぼイケます!大丈夫!
ただし、公式暗記より、実演でマスターしよう!

慣れてきたら、公式を見ましょう。

2変数の確率変数の変換の求め方

1変数の確率変数の変換方法と同様に決まった解法があります。

変数\(x,y\)を変数\(z,w\)に変換するとします。

  1. \(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す
  2. \(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する
  3. 2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)は
    \(g(z,w)=f(x(z,w),y(z,w)|det J| \)で求まる。
  4. 実際は\(z,w\)のうち、どちらかは不要な変数なので、片方の変数で積分して、残りの変数についての周囲確率密度関数
    (例えば \(g(z)= \displaystyle \int_{w_1}^{w_2} g(z,w)dw \))
    を計算する。

ここで、注意点があります。
Jは
J=\(\begin{pmatrix}
\frac{\partial x}{ \partial z} & \frac{\partial x}{\partial w} \\
\frac{\partial y}{\partial z} & \frac{\partial y}{\partial w}
\end{pmatrix}\)

また、\(det J\)は行列式ヤコビアンといいますね。

A=\(\begin{pmatrix}
a & b \\
c & d
\end{pmatrix}\)
のとき、行列式ヤコビアン\(det A\)は、
\(det A=ad-bc\)
で計算できます。

計算力が求められる場合がありますが、基本は高校数学でイケます!

では、実践編に入ります。最初は簡単な式から行きます!

➁ (導入)簡単な事例

(1) (導入)簡単な事例

【例題】
確率変数(\(X,Y\))の同時確率密度関数\(f(x,y)\)が
\(f(x,y)\)=\(\frac{1}{2}xy^2\) (0 ≤ \(x\) ≤ 2, 0 ≤ \(y\) ≤ 1)
に対して、確率変数\(Z,W\)を
\(Z=2X+Y\)
\(W=X-2Y\)
と定義した場合の、確率変数\(Z,W\)についての同時確率密度関数\(g(z,w)\)を求めよ。

解いていきましょう。解法は、

  1. \(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す
  2. \(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する
  3. 2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)は
    \(g(z,w)=f(x(z,w),y(z,w)|det J| \)で求まる。
  4. 実際は\(z,w\)のうち、どちらかは不要な変数なので、片方の変数で積分して、残りの変数についての周囲確率密度関数
    (例えば \(g(z)= \displaystyle \int_{w_1}^{w_2} g(z,w)dw \))
    を計算する。

ですから、1つずつ行きましょう。

(i)\(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す

\(x=x(z,w),y=y(z,w)\)に直します。
\(x\)=\(\frac{1}{5}(2z+w)\)
\(y\)=\(\frac{1}{5}(z-2w)\)
連立方程式から求められます。

(ii)\(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する

次に、ヤコビアン行列から行列式ヤコビアンを求めます。

\(det J\)=\(\frac{2}{5}・(-\frac{2}{5})\)-\(\frac{1}{5}・\frac{1}{5}\)
=\(-\frac{1}{5}\)
で計算できます。

(iii)2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)を導出

代入すると、

\(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)
=\(\frac{1}{2} × \frac{1}{5}(2z+w) ×\frac{1}{25}(z-2w)^2 ×|-\frac{1}{5}| dzdw\)
=\(\frac{1}{1250} (2z+w) (z-2w)^2 dzdw\)

よって、同時確率密度関数\(g(z,w)\)は
\(g(z,w)= \frac{1}{1250} (2z+w) (z-2w)^2 \)
と計算できます。

なお、ここから\(z\)または、\(w\)だけの周辺確率分布関数が必要なら、不要な変数について積分が必要となります。

今回の\(f(x,y)\)は簡単な式ですが、正規分布やχ2乗分布の確率分布関数でも同様の解法で変換していきます!

③ Z=XY積の場合(事例1)

(2) 1変数でZ=XY(積)の場合の変換方法

【例題】
2つの確率変数\(X\),\(Y\)が独立で、それぞれ一様分布U(0,1)に従うとき、確率変数\(Z\)を\(Z=XY\)とするときの、確率密度関数\(h(z)\)を求めよ。

やってみましょう。

まず、\(X,Y\)の確率密度関数を定義します。
\(f(x)=1\) (0 ≤ \(x\) ≤ 1)
\(g(y)=1\) (0 ≤ \(y\) ≤ 1)

解き方は、

  1. \(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す
  2. \(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する
  3. 2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)は
    \(g(z,w)=f(x(z,w),y(z,w)|det J| \)で求まる。
  4. 実際は\(z,w\)のうち、どちらかは不要な変数なので、片方の変数で積分して、残りの変数についての周囲確率密度関数
    (例えば \(g(z)= \displaystyle \int_{w_1}^{w_2} g(z,w)dw \))
    を計算する。

ですから、1つずつ行きましょう。

(i)\(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す

ここで、変換する変数を定義します。

\(Z\)=\(XY\)、\(W\)=\(Y\)とおく、つまり
\(Z\)=\(XW\)、\(W\)=\(Y\)とおきます。

\(x=x(z,w),y=y(z,w)\)に直します。
\(x\)=\(\frac{z}{w}\)
\(y\)=\(w\)

(ii)\(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する

次に、ヤコビ行列から行列式ヤコビアンを求めます。

ヤコビ行列Jは
Jは
J=\(\begin{pmatrix}
\frac{\partial x}{ \partial z} & \frac{\partial x}{\partial w} \\
\frac{\partial y}{\partial z} & \frac{\partial y}{\partial w}
\end{pmatrix}\)

J=\(\begin{pmatrix}
\frac{1}{w} & -\frac{z}{w^2} \\
0 & 1
\end{pmatrix}\)

次に行列式ヤコビアンは
\(det J\)=\(\frac{1}{w}・1-0・(-\frac{z}{w^2}) \)
=\(\frac{1}{w} \)
で計算できます。

ここまで大丈夫ですね!

(iii)2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)を導出

代入すると、

\(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)
\(f(x(z,w)\)=1, \(g(x(z,w)\)=1に注意して、
=\( 1・1 \frac{1}{w} dzdw\)
=\(p(z,w)dzdw\)
=(式1)

結構、スッキリしますね!

2変数\(z,w\)に関する同時確率密度関数\(p(z,w)dzdw\)が求まりました。
次に、zについての周囲確率密度関数を求めます。

なぜなら、\(w=y\)であり、\(w\)は不要な変数だから\(w\)で積分します。

ここで、注意なのが、

変数の範囲が限定されているため、積分区間は場合分けが必要
(0 ≤ \(x\) ≤ 1)
(0 ≤ \(y\) ≤ 1)

変数\(w\)については、以下の3つの場合分けが発生します。

●\( h(z)\)=0 (\(w\) ≤ 0) (積分区間が無い)
●\( h(z)=\displaystyle \int_{0}^{w} \frac{1}{w}dw \)=\(\left[log w \right]_{z}^{1}\)=\(-log z\)
●\( h(z)\)=0 (\(w\) ≥ 0) (積分区間が無い)

となります。ここが難しいですね!

1変数の積の変換は2変数の変換から計算できますね!

もう1つ事例を挙げます。次は、積分が困難なので、途中で終わる場合です。

④ Z=XY積の場合(事例2)

(3) 1変数でZ=XY(積)の場合の変換方法

【例題】
2つの確率変数\(X\),\(Y\)が独立で、それぞれ指数分布に従うとき、
\(f(x)=λe^{-λx} \)(0 ≤ \(x\))
\(g(y)=μe^{-μy} \)(0 ≤ \(y\))
確率変数\(Z\)を\(Z=XY\)とするときの、確率密度関数\(h(z)\)を求めよ。

やってみましょう。

解き方は、事例1と同じです。

  1. \(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す
  2. \(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する
  3. 2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)は
    \(g(z,w)=f(x(z,w),y(z,w)|det J| \)で求まる。
  4. 実際は\(z,w\)のうち、どちらかは不要な変数なので、片方の変数で積分して、残りの変数についての周囲確率密度関数
    (例えば \(g(z)= \displaystyle \int_{w_1}^{w_2} g(z,w)dw \))
    を計算する。

ですから、1つずつ行きましょう。

(i)\(x=x(z,w),y=(z,w)\)の式を\(z=z(x,y),w=w(x,y)\)の式に直す

ここで、変換する変数を定義します。

\(Z\)=\(XY\)、\(W\)=\(Y\)とおく、つまり
\(Z\)=\(XW\)、\(W\)=\(Y\)とおきます。

\(x=x(z,w),y=y(z,w)\)に直します。
\(x\)=\(\frac{z}{w}\)
\(y\)=\(w\)

(ii)\(f(x,y)dxdy\)=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)に変換する

次に、ヤコビ行列から行列式ヤコビアンを求めます。

ヤコビ行列Jは
Jは
J=\(\begin{pmatrix}
\frac{\partial x}{ \partial z} & \frac{\partial x}{\partial w} \\
\frac{\partial y}{\partial z} & \frac{\partial y}{\partial w}
\end{pmatrix}\)

J=\(\begin{pmatrix}
\frac{1}{w} & -\frac{1}{w^2} \\
0 & 1
\end{pmatrix}\)

次に行列式ヤコビアンは
\(det J\)=\(\frac{1}{w}・1-0・(-\frac{1}{w^2}) \)
=\(\frac{1}{w} \)
で計算できます。

ここまで大丈夫ですね!

(iii)2変数\(z,w\)の同時確率密度関数\(g(z,w)\)を導出

代入すると、

\(f(x,y)dxdy\)=\(λe^{-λx}・μe^{-μy}\)
=\(f(x(z,w),y(z,w)|det J| dzdw\)
=\(λμe^{-λ\frac{z}{w}}・e^{-μw} \frac{1}{w}dw\)
=(式1)

よって、2変数\(z,w\)に関する同時確率密度関数\(p(z,w)dzdw\)は、
\(p(z,w)dzdw\)=\(λμe^{-λ\frac{z}{w}}・e^{-μw} \frac{1}{w}\)

2変数\(z,w\)に関する同時確率密度関数\(p(z,w)dzdw\)が求まりました。
次に、zについての周囲確率密度関数を求めます。

なぜなら、\(w=y\)であり、\(w\)は不要な変数だから\(w\)で積分します。

ここで、注意なのが、

変数の範囲が限定されているため、積分区間は場合分けが必要
(0 ≤ \(x\))
(0 ≤ \(y\))

変数\(w\)については、以下2つの場合分けが発生します。

●\( h(z)\)=0 (\(w\) ≤ 0) (積分区間が無い)
●\( h(z)=\displaystyle \int_{0}^{∞} λμe^{-λ\frac{z}{w}}・e^{-μw} \frac{1}{w}dw \)

実は、この
\( h(z)=\displaystyle \int_{0}^{∞} λμe^{-λ\frac{z}{w}}・e^{-μw} \frac{1}{w}dw \)
の積分が非常に難しいです。なぜなら、

\(e^{-\frac{1}{w}}・e^{-w}\)の積分で、特に、\(e^{-\frac{1}{w}}\)が難しいです。

一旦ここで、保留しましょう。

指数関数の指数が分数で、分母に積分したい変数が入ると計算が一気に難しくなるので、あまりZ=XYのパターンは出ないと思ってよいでしょう。

うまく計算ができないパターンもブログとして掲載しますね。
教科書は、うまく計算ができる例だけしかないので、あたかもどんな関数でも変換ができるように錯覚しがちです。

とは、言っても、伝えたいことは

1変数の積の変換は2変数の変換から計算できますね!

いろいろな関数を使って、確率変数の変換を見て慣れていきましょう!

本記事の内容は、ほぼ高校数学で解けましたね!

まとめ

「2変数の確率変数の変換がよくわかる(Z=XY積の場合)」を解説しました。

  • ①2変数の確率変数の変換の基本をマスターする
  • ➁ (導入)簡単な事例
  • ③ Z=XY積の場合(事例1)
  • ④ Z=XY積の場合(事例2)

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