順序統計量(指数関数)がよくわかる
「順序統計量がさっぱりわからない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①順序統計量のイメージが理解できる
- ➁順序統計量(指数関数)が理解できる
- ➂順序統計量(指数関数)の期待値が計算できる
- ➃順序統計量(指数関数)の分散が計算できる
- ➄自分で解いてわかった面白い事実
①順序統計量のイメージが理解できる
順序統計量とは
順序統計量は意外と使われています。範囲R、R管理図、2点間距離の分布とかです。直観的にはわかりやすけど、数式で書くとめっちゃムズイのが順序統計量!
定義は、
これらを大きい順に並べたとき、\(k\)番目の確率変数を\(X_{(k)}\)と書くと、
\(X_{(1)}\) < \(X_{(2)}\) < \(X_{(k)}\) < … < \(X_{(n)}\)
に並ぶ統計量を基本統計量という。
定義は、そうなんだ!と言う感じですが、確率分布関数を見ると「なんじゃこりゃ」とムズくなります。
確率分布関数\(f_{(i)}(x)\)=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!} F(x)^{i-1}[1-F(x)]^{n-i}f(x)\)
順序統計量のイメージ
言葉の定義どおり、\(X_{(1)}\) < \(X_{(2)}\) < \(X_{(k)}\) < … < \(X_{(n)}\)
に並びます。
面白いのは、
図で理解しましょう! 下図をご覧ください。
もともと確率分布関数\(f_{(i)}(x)\)の式は1つですが、整数\(i\)を0から1ずつ増やして代入してできる確率分布関数の期待値を計算すると、期待値がちゃんと増加しているのがわかりますよね。
視覚的に順序統計量がイメージできたところで、実際に計算して、上図を作ってみましょう。
➁順序統計量(指数関数)が理解できる
まずは、一様分布の事例から読もう!
いきなり、指数関数の事例を読むと、苦戦します。なので、最初は、一様分布の事例から読んで欲しいです。関連記事を紹介します。
順序統計量の考え方がよくわかる 順序統計量を説明できますか? 本記事では難解な順序統計量をわかりやすく解説します。整式を使い、期待値が順序に従い増加することを視覚的に理解できます。順序統計量を理解したい方は必見です。 |
重要なポイント
関連記事から以下が重要ですね。
順序統計量(指数関数)が理解できる
次の場合を考えます。
\(f(x)=e^{-x}\) (0 ≤ x < ∞)
\(F(x)=1-e^{-x}\) (0 ≤ x < ∞)
(1)順序統計量の期待値 \(E(X_i)\)=\(\sum_{r=1}^{i}\frac{1}{n-r+1}\)
(2)順序統計量の分散 \(V(X_i)\)=\(\sum_{r=1}^{i}\frac{1}{(n-r+1)^2}\)
とても複雑な式になりますが、解いてみましょう。
確率分布関数\(f_{(i)}(x)\)
確率分布関数\(f_{(i)}(x)\)は
確率分布関数\(f_{(i)} (x)\)=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!} (1-e^{-x})^{i-1}[1-(1-e^{-x})]^{n-i} e^{-x}\)
=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!} (1-e^{-x})^{i-1} (e^{-x})^{n+1-i} \)
と素直に代入すればOKですね。
➂順序統計量(指数関数)の期待値が計算できる
期待値\(E(X_i)\)
期待値\(E(X_i)\)は定義通り、
\(E(X_i)\)=\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x f_{(i)}(x) dx\)
=\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x \frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\((1-e^{-x})^{i-1} (e^{-x})^{n+1-i} dx\)
=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x (1-e^{-x})^{i-1}\)\( (e^{-x})^{n+1-i} dx\)
=(式1)
(式1)の\( (1-e^{-x})^{i-1}\)を、二項定理を使って展開します。
\( (1-e^{-x})^{i-1}\)=\(\sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1} C_r 1^r (-e^{i-1-r})\)ですね。
(\((p+q)^n\)=\(\sum_{r=0}^{n} \)\({}_n C_r p^r q^{n-r}\)と同じことをやっています。)
(式1)
=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1} C_r 1^r (-e^{i-1-r}) (e^{-x})^{n+1-i} dx\)
=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1} C_r (-1)^{i-1-r} (e^{-x})^{n-r} dx\)
=(式2)
\( \displaystyle x e^{-nx} dx\)の計算
ここで、部分積分を実施します。⇒を微分する方向として、
\(-\frac{1}{n} x e^{-nx}\) ⇒\(x e^{-nx}\) -\(\frac{1}{n} e^{-nx}\)
\(-\frac{1}{n^2} e^{-nx}\)⇒\(\frac{1}{n} e^{-nx}\)
より、
\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x e^{-nx} dx\)=\(\left[ -\frac{1}{n} x e^{-nx} -\frac{1}{n^2} e^{-nx} \right]_{0}^{∞}\)=\(-\frac{1}{n^2}\)
となります。
n⇒n-rに変えて、(式2)に代入します。
(式2)
=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r (-1)^{i-1-r}\)\(\frac{1}{(n-r)^2}\)
よって、期待値\(E(X_i)\)は
\(E(X_i)\)= \(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r (-1)^{i-1-r}\)\(\frac{1}{(n-r)^2}\)
となります。
ところで、問題を見ると、
\(E(X_i)\)=\(\sum_{r=1}^{i}\frac{1}{n-r+1}\)
と全く違う式です。
でも、
図の通りです。
期待値を可視化
図のようになります。
面白い事に、順序が増えることに 1/nずつ期待値が増えていきます。
\(i=1\): \(\frac{1}{5}\)
\(i=2\): \(\frac{1}{5}+\frac{1}{4}\)
\(i=3\): \(\frac{1}{5}+\frac{1}{4}+\frac{1}{3}\)
\(i=4\): \(\frac{1}{5}+\frac{1}{4}+\frac{1}{3}+\frac{1}{2}\)
…
➃順序統計量(指数関数)の分散が計算できる
分散\(V(X_i)\)
まず期待値\(E(X_i^2)\)を求める必要がありますが、定義通り、
\(E(X_i^2)\)=\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 f_{(i)}(x) dx\)
=\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 \frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( (1-e^{-x})^{i-1} (e^{-x})^{n+1-i} dx\)
=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 \)\((1-e^{-x})^{i-1} (e^{-x})^{n+1-i} dx\)
=(式3)
(式3)の\( (1-e^{-x})^{i-1}\)を、二項定理を使って展開します。
\( (1-e^{-x})^{i-1}\)=\(\sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r 1^r (-e^{i-1-r})\)ですね。
(\((p+q)^n\)=\(\sum_{r=0}^{n} {}_{n}C_r p^r q^{n-r}\)と同じことをやっています。)
(式3)
=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r 1^r (-e^{i-1-r}) (e^{-x})^{n+1-i} dx\)
=\(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r (-1)^{i-1-r} (e^{-x})^{n-r} dx\)
=(式4)
\( \displaystyle x^2 e^{-nx} dx\)の計算
ここで、部分積分を実施します。⇒を微分する方向として、
\(-\frac{1}{n} x^2 e^{-nx}\) ⇒\(x^2 e^{-nx}\) -\(\frac{2}{n}x e^{-nx}\)
\(-\frac{2}{n^2}x e^{-nx}\)⇒\(\frac{2}{n}x e^{-nx}\)-\(\frac{2}{n^2} e^{-nx}\)
\(-\frac{2}{n^3}x e^{-nx}\)⇒\(\frac{2}{n^2} e^{-nx}\)
より、
\( \displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 e^{-nx} dx\)=\(\left[ -\frac{1}{n} x^2 e^{-nx} –\frac{2}{n^2}x e^{-nx}-\frac{2}{n^3}x e^{-nx} \right]_{0}^{∞}\)=\(-\frac{2}{n^3}\)
となります。
n⇒n-rに変えて、(式4)に代入します。
(式4)
=\(\frac{n!}{(i-1)!(n-i)!}\)\( \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r (-1)^{i-1-r}\)\(\frac{2}{(n-r)^3}\)
=(式5)
よって、分散\(V(X_i)\)は
(式5)- \(E(X_i)^2\)より、
\(V(X_i)\)
=\(\frac{n!}{(i-1)!(n-i)!}\)\( \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r (-1)^{i-1-r}\)\(\frac{2}{(n-r)^3}\)-
\((\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r (-1)^{i-1-r}\)\(\frac{1}{(n-r)^2})^2\)
=(式6)
となります。
訳わからない式になりました。
ところで、問題を見ると、
\(V(X_i)\)=\(\sum_{r=1}^{i}\frac{1}{(n-r+1)^2}\)
と全く違う式です。
でも、
図の通りです。
➄自分で解いてわかった面白い事実
全く式が違うのに計算結果は同じとなったこと
●期待値\(E(X_i)\)は
\(E(X_i)\)= \(\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r (-1)^{i-1-r}\)\(\frac{1}{(n-r)^2}\)
と
\(E(X_i)\)=\(\sum_{r=1}^{i}\frac{1}{n-r+1}\)
は同じ値になります。
●分散\(V(X_i)\)は
●\(V(X_i)\)
=\(\frac{n!}{(i-1)!(n-i)!}\)\( \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r (-1)^{i-1-r}\)\(\frac{2}{(n-r)^3}\)-
\((\frac{n!}{(i-1)!1!(n-i)!}\)\( \sum_{r=0}^{i-1} {}_{i-1}C_r (-1)^{i-1-r}\)\(\frac{1}{(n-r)^2})^2\)
と、
\(V(X_i)\)=\(\sum_{r=1}^{i}\frac{1}{(n-r+1)^2}\)
が同じ結果になります。
数学的に一致する証明はこれからしますが、面白い結果が得られました。自分で実際解いてみるといろんなことが発見できますね。
まとめ
「順序統計量(指数関数)がよくわかる」を解説しました。
- ①順序統計量のイメージが理解できる
- ➁順序統計量(指数関数)が理解できる
- ➂順序統計量(指数関数)の期待値が計算できる
- ➃順序統計量(指数関数)の分散が計算できる
- ➄自分で解いてわかった面白い事実
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119