同時確率分布の分散、共分散の導出がわかる(その2 連続系の場合)
「同時確率分布の分散、共分散の導出がわからない」、と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①【共通】2段サンプリングの分散公式を導出するために知っておくべき内容
- ➁【何度も復習しよう!】離散型確率分布の場合(その1で解説)
- ➂【何度も復習しよう!】連続型確率分布の場合
QC・統計に勝てるためのサンプリング問題集を販売します!
QC検定®1級、2級でサンプリングの問題で苦戦していませんか?本記事では、QC・統計に勝てるためのサンプリング問題集(20題)を紹介します。 |
サンプリングの分散公式への道ですが、徐々に難しくなっていきます。1つずつ理解してクリアーしましょう。
①【共通】2段サンプリングの分散公式を導出するために知っておくべき内容
2段サンプリングの分散の式
「2段サンプリングの分散」の式があります。
E(\(\bar{\bar{x}}\))=μ
V(\(\bar{\bar{x}}\))=\(\frac{M-m}{M-1}・\frac{σ_b^2}{m}\)+\(\frac{N-n}{N-1}・\frac{σ_w^2}{mn}\)
・\(m\):1次サンプルの大きさ
・\(n\):2次サンプルの大きさ
・\(σ_b^2\):1次単位間の特性xの分散
・\(σ_w^2\):1次単位内の特性xの分散
・M:1次単位の総数
・N:1次単位の大きさ
・\(\frac{M-m}{M-1},\frac{N-n}{N-1}\):有限修正項
となりますよね。
でも、
と困ってしまいますよね。QCプラネッツも苦労しました。
そこで、
という思いで、解説していきます。
2段サンプリングの分散の式に必要な内容
まとめると、以下を理解しておく必要があります。
- 条件付き確率
- 2変数の確率分布関数(同時確率質量関数)
- 同時確率分布の分散、共分散の導出
- 条件付き確率の期待値・分散
- 全分散の公式の導出
- 2段サンプリングの分散の公式導出
残念ながら、「Yes」です。
だから、「2段サンプリングの分散」の式を暗記して代入する問題だけ出ます。
だから、サンプリングの分散はみんな苦手なのです!
2段サンプリングの分散の式の丁寧な導出はQCプラネッツだけ
「だから、教科書やサイトに、2段サンプリングの分散の式を導出する内容が書いているはず」と懇願しても、残念、ありませんでした。
では、1つ1つ解説します。
本記事のテーマ(再掲)
第3弾として「同時確率分布の分散、共分散の導出」を解説します。
- 条件付き確率
- 2変数の確率分布関数(同時確率質量関数)
- 同時確率分布の分散、共分散の導出
- 条件付き確率の期待値・分散
- 全分散の公式の導出
- 2段サンプリングの分散の公式導出
●2変数の同時確率質量関数については、関連記事で解説しています。ご確認ください。
2変数の確率分布関数(同時確率質量関数)がわかる 2変数の確率分布関数(同時確率質量関数)が説明できますか?本記事では、2変数の確率分布関数の基礎をわかりやすく解説します。サンプリングの分散、全分散の公式導出に必須です。 |
➁【何度も復習しよう!】離散型確率分布の場合(その1で解説)
●まず、わかりやすい「離散型」の場合で、数列∑を使った計算を解説します。関連記事で確認ください。
同時確率分布の分散、共分散の導出がわかる(その1 離散系の場合) 2変数の確率分布関数(同時確率質量関数)の期待値・分散が簡単に求められますか? 本記事では、2変数の確率分布関数(離散系)の期待値・分散をわかりやすく解説します。 期待値・分散の計算が結構難しいので、復習がとても大事です。また、サンプリングの分散、全分散の公式導出に必須です。 |
本記事は、(その1)より難し目なので、まず(その1)を読んでから、本記事を読み進めてください。
➂【何度も復習しよう!】連続型確率分布の場合
●「連続型」の場合で、積分を使った計算を解説します。
例題
2次元の確率変数(X,Y)の同時確率密度関数が
\(f(x,y)=\frac{1}{4}(x+2y)\) (0 ≤ \(x\) ≤ 2, 0 ≤ \(y\) ≤ 1)
で表されている。
(1)X,Yの周辺確率密度関数\(f_X(x)\), \(f_Y(y)\)を求めよ。
(2)期待値E[X]、E[Y]、E[X+Y]、E[XY]を求めよ。
(3)分散V[X]、V[Y]、共分散Cov[X,Y]を求めよ。
(1)は関連記事で解説済なので、そちらで確認しましょう。
2変数の確率分布関数(同時確率質量関数)がわかる 2変数の確率分布関数(同時確率質量関数)が説明できますか?本記事では、2変数の確率分布関数の基礎をわかりやすく解説します。サンプリングの分散、全分散の公式導出に必須です。 |
本記事は、(2)(3)を解説します。
解法に必要な公式集
連続系の場合の期待値と分散の解法に慣れるために必要な公式集をまとめます。以下の式を使って、解いていきます。なお、離散系の場合は∫を∑に変えればOKです。
期待値の公式
●E[Y]=\(\int_0^1 yf_Y(y)dy\)
–
●E[X+Y]=E[X]+E[Y]
または、
●E[X+Y]=\(\int_0^2 \int_0^1 (x+y)f(x,y)dydx\)
–
●E[XY]=\(\int_0^2 \int_0^1 xyf(x,y)dydx\)
(E[XY]とE[X]E[Y]が一致しない場合もあるので注意!)
分散の公式
●E[Y2]=\(\int_0^1 y^2 f_Y(y)dy\)
–
●V[X]=E[X2]-E[X]2
●V[Y]=E[Y2]-E[Y]2
–
●Cov[X,Y]= E[XY]- E[X]E[Y]
解法(期待値)
では、解いていきましょう。
E[X]の解法
\(\begin{eqnarray}
\int_0^2 xf_X(x) dx \\
&= \frac{1}{4} \int_0^2 x(x+1) dx \\
&= \frac{1}{4} \left[ \frac{x^3}{3}+\frac{x^2}{2} \right]_0^2 dx\\
\end{eqnarray}\)
=\(\frac{7}{6}\)
となります。
E[Y]の解法
\(\begin{eqnarray}
\int_0^1 yf_Y(y) dy \\
&= \frac{1}{2} \int_0^1 y(1+2y) dy \\
&= \frac{1}{2} \left[ \frac{y^2}{2}+\frac{2y^3}{3} \right]_0^1 dy\\
\end{eqnarray}\)
=\(\frac{7}{12}\)
となります。
E[X+Y]の解法
E[X+Y]=E[X]+E[Y]=\(\frac{7}{4}\)
この解法でもいいですが、せっかくなので積分からでも算出しましょう。
\(\begin{eqnarray}
\int_0^2 \int_0^1 (x+y)f(x,y)dydx \\
&= \frac{1}{4} \int_0^2 \int_0^1 (x+y)(x+2y)dydx \\
\end{eqnarray}\)
=\(\frac{7}{4}\)
となります。
(途中経過は計算してみてください)
積分の計算の詳細はここをご覧ください。
E[XY]の解法
\(\begin{eqnarray}
\int_0^2 \int_0^1 xyf(x,y)dydx \\
&= \frac{1}{4} \int_0^2 \int_0^1 xy(x+2y)dydx \\
\end{eqnarray}\)
=\(\frac{2}{3}\)
となります。
(途中経過は計算してみてください)
積分の計算の詳細はここをご覧ください。
期待値をまとめると、
E[X]=7/6、E[Y]=7/12、E[X+Y]=7/4、E[XY]=2/3
となります。
また、
E[X+Y]= E[X]+ E[Y] は成り立ちますが、
E[XY]= E[X] E[Y] は成り立ちません。
X,Yは互いに独立ではないからですね。
解法(分散)
V[X]の解法
●ここで、分散V[X]の式をおさえましょう。
まず、E[X2]が必要です。
\(\begin{eqnarray}
\int_0^2 x^2 f_X(x) dx \\
&= \frac{1}{4} \int_0^2 x^2 (x+1) dx \\
&= \frac{1}{4} \left[ \frac{x^4}{4}+\frac{x^3}{3} \right]_0^2 dx\\
\end{eqnarray}\)
=\(\frac{5}{3}\)
となります。
よって、
V[X]=E[X2]-E[X]2
=\(\frac{5}{3}\)-\((\frac{7}{6})^2\)
=11/36
V[Y]の解法
●ここで、分散V[Y]の式をおさえましょう。
まず、E[Y2]が必要です。
\(\begin{eqnarray}
\int_0^1 y^2 f_Y(y) dy \\
&= \frac{1}{2} \int_0^1 y^2 (1+2y) dy \\
&= \frac{1}{2} \left[ \frac{y^3}{3}+\frac{y^4}{2} \right]_0^1 dy\\
\end{eqnarray}\)
=\(\frac{5}{12}\)
となります。
よって、
V[Y]=E[Y2]-E[Y]2
=\(\frac{5}{12}\)-\((\frac{7}{12})^2\)
=11/144
共分散COV[X,Y]の解法
●ここで、共分散COV[X,Y]の式をおさえましょう。
COV[X,Y]=E[XY]-E[X]E[Y]
=\(\frac{2}{3}\)-\(\frac{7}{6}\)・\(\frac{7}{12}\)
=\(\frac{-1}{72}\)
ちょっと難しいですが、解き方は1パターンなので、何度も復習しましょう。
積分の計算の詳細はここをご覧ください。
分散をまとめると、
V[X]=11/36、V[Y]=11/144、Cov[X,Y]=-1/72
となります。
まとめ
同時確率分布の分散、共分散の導出をわかりやすく解説しました。
- ①【共通】2段サンプリングの分散公式を導出するために知っておくべき内容
- ➁【何度も復習しよう!】離散型確率分布の場合(その1で解説)
- ➂【何度も復習しよう!】連続型確率分布の場合
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119