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調整型抜取検査の検査水準がわかる

抜取検査

「調整型抜取検査の検査水準がなぜ7つに分かれるのかがわからない」、「ロットの大きさごとにサンプルサイズが決まっている理由がわからない」など困っていませんか? 

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

調整型抜取検査の検査水準の背景が理解できる
  • ①検査水準の根拠がわからないことがわかる
  • ②調整型抜取検査の理論がわかりにくい理由
  • ③規格に頼らず、自力で抜取検査を設計すべき

自分で抜取検査の理論を理解して、抜取検査を先に自分で設計して、必要な値をJISや教科書を使うようにしたいです。

●You tube動画でも解説しています。ご確認ください。

①検査水準の根拠がわからないことがわかる

調整型抜取検査で、サンプルサイズを決めるために、必須な表が、検査水準表です。

4つの特別検査水準(S-1,S-2,S-3,S-4)と通常検査水準(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)の7つに区分され、
ロットサイズごとにサンプルサイズ(文字)が決まっています。

ロットサイズ 特別検査水準 通常検査水準
S-1 S-2 S-3 S-4
2~8 A A A A A A B
9~15 A A A A A B C
16~25 A A B B B C D
26~50 A B B C C D E
51~90 B B C C C E F
91~150 B B C D D F G
151~280 B C D E E G H
281~500 B C D E F H J
501~1200 C C E F G J K
1201~3200 C D E G H K L
3201~10000 C D F G J L M
10001~35000 C D F H K M N
35001~150000 D E G J L N P
150001~500000 D E G J M P Q
500001以上 D E H K N Q R

でも、この表に対して、いろいろ疑問に思いませんか?

  1. なぜ、4つの特別検査水準と3つの通常検査水準があるのか?
  2. 各検査水準の定義があいまい
  3. 「何も制約がなければ、通常検査水準Ⅱを使うこと」ってなぜ?
  4. 水準ごとのサンプルサイズが若干変わる根拠は何?
  5. ロットサイズとサンプルサイズの比は妥当なのか?

つっこみどころ満載です。学校の試験や資格試験では、素直に表を使って合格しましょう。でも、それじゃ、抜取検査がわかるとは十分言えません。

JIS・教科書・論文を調査しても、検査水準の各々気になる点がわかる根拠が明記していません。
では、使い方だけ暗記して使えばよいのか?
NGです!
検査は検査の妥当性を証明することが最重要なので、使う値や表は確実に納得して説明できるようにすべきです。

なぜ、JIS・教科書・論文を調査しても、わからないのかを次に解説します。

②調整型抜取検査の理論がわかりにくい理由

調整型抜取検査の理論がわかりにくい理由

調整型抜取検査の規格は米軍規格を直輸入した版の改良版
自分たちで考えて標準化する前に、強制的に規格導入となった。
1950年以前の米軍規格に関する知見が少ない。
これが、調整型抜取検査の理論がわかりにくい理由です。

QCプラネッツは知見が少ないため、抜取検査の理論のすべてを理解はできていません。その代わり、自分で仮説を立てて、論理に矛盾がない説明をしっかりブログで解説しています。

調整型抜取検査の歴史

品質管理の歴史と重なりますが、簡単に紹介します。

抜取検査の歴史

  1. 1945年まで日米が戦争
  2. 終戦後は米国が日本を統治するが、対戦相手だった日本を発展させる気は全くなかった
  3. どころが、1950年に、朝鮮戦争(冷戦)が勃発してしまった。
  4. 戦場に近い供給元が必要になった米国が日本を製造拠点に選択。
  5. ところが、当時の日本は品質管理レベルが低かった。
  6. 品質の悪い供給品では戦争に勝てないため、急遽デミングらを来日させた。
  7. 米国の秘伝のタレである品質管理や標準化・規格を日本企業に従わせた。
  8. 戦敗国は戦勝国に反発するのが常である。他国のテロ活動がその例。
  9. しかし、実際に、失業者が多く、経済がどん底だった日本は、供給品を爆買してくれる米国にうまく対応した。
  10. 明日を生き抜くだけで精一杯な日本と、冷戦に勝ちたい米国の利害関係がうまく一致した。
  11. 多くの品質管理や標準化の概念が日本に伝わり、日本企業の品質レベルが上がった。

よくある教科書では、
●日米友好のために、デミング博士が来日、
●日本の品質レベルが向上し、経済発展
と優しめに書いています。正しいけど、そんな理由で、簡単に変革が起こるかは疑問です。

もともと対戦国に対して、米国の秘伝のタレである「科学管理」、「品質管理」を教えるはずがありません。でも、「そうは言っていられない緊急事態が起きた」ため、早く日本に品質管理を教えなければならなくなった。とするのが自然です。

また、日本側も、焦土化された相手の要求に簡単には乗りません。本来は反発活動が増えて荒れるはずです。しかし、経済が冷え切っており、失業者が多い暗い時代に、突如爆買いする相手がいれば、ハングリー精神で、何でも吸収しますよね。生活が楽になるなら、何でも頑張る状況だったのです。

冷戦が日本の品質管理を高めるきっかけであったはずです。

その後、日本は戦後復興・経済発展して落ち着いてくると、
「いろいろ米国から伝わったものって、本当に正しいの? ルールの背景や理由が知りたい」
と本質的な研究が深まるようになります。

調整型抜取検査は、
1940年代に米軍規格としてスタートし、
1950年にMIL-STD-105Aが日本に直輸入されます。

その後、しばらく米軍の規格の改定が進み、
1971年に日本規格であるJISZ9015 1971が制定されます。

日本人が考えて作った規格ではなく、米国のものを改良した規格であるため、規格の背景や理由を調べてもなかなか知見が得られないのが現状です。
品質管理は技術に親和性が高いですが、意外と世界史・地政学も関係していきます。なぜなら、ルールづくりをするのが品質管理や標準化です。ルールづくりは国家間の思惑が入ってきます。

品質管理は世界史・地政学、経済・経営など幅広く俯瞰するとさらに面白さが広がります。

③規格に頼らず、自力で抜取検査を設計すべき

調整型抜取検査に話を戻します。,

調べてもわからないで終わらせずに、自分で考えて抜取検査を設計しましょう。JIS通り検査するより、検査内容を技術的に説明できることが重要です。

自分で抜取検査を設計する

抜取検査の設計ポイント

  1. OC曲線で抜取検査を設計するのが大前提
  2. 検査対象の消費者危険、生産者危険を品質コストや経営の影響から設定する
  3. 消費者危険、生産者危険の2点を通るOC曲線を描く
  4. OC曲線を決定するサンプル数nと合格判定数cを決める

この基本ができていれば、抜取検査は、検査対象の許容不良率から設計できるので、説明責任が十分果たせます。数値を早く求めるときに、JISの規格表を活用すればよいのです。

サンプル数はOC曲線を見ながら決める

消費者危険、生産者危険の2点を通るOC曲線は複数描ける。
そのうちのサンプル数nが最小のものを選ぶとよい。

サンプル数nと合格判定数cが異なっていても、OC曲線がぴったりであれば、合否判定基準は同じなので、サンプル数nを小さい方を選んでも、合否結果は同じです。

検査コストも考慮すれば、サンプル数nは小さくしたいですよね。

実際に近いOC曲線を描いてみましょう。
●n=50,c=2
●n=200,c=11
●n=2000,c=125

OC曲線

不良率の軸を拡大しているので、3本はややずれてはいますが、不良率1%,2%前後は許容範囲とすれば、
サンプル数をn=2000からn=50と1/40にサンプル数を減らしても
合否判定結果精度は変わらないといえます。

このように、OC曲線カーブと不良率を見て、検査コストも考慮しながら、サンプル数を決定してもよいです。

検査設計が面倒ならJISの検査水準表を見ればOKですが、
値を決める理由を説明できるなることも重要です。

まとめ

調整型抜取検査の検査水準と、自分で抜取検査を設計することの重要さを解説しました。

  • ①検査水準の根拠がわからないことがわかる
  • ②調整型抜取検査の理論がわかりにくい理由
  • ③規格に頼らず、自力で抜取検査を設計すべき


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