「抜取検査設計補助表の式や係数はどうやって求めているのかわからない」、「本当に正しい式なの?」など困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
抜取検査設計補助表(JISZ9002)に頼るな!(OC曲線で考える)
抜取検査設計補助表(JISZ9002)に頼るな!(OC曲線で考える)
- ①抜取検査設計補助表の導出式の意味はわからない
- ②自力でサンプル数n、合格判定数cは計算できる!
- ③計算機がない時代でも精度良い値を作れるのはすごい!
●You tube動画でも確認ください。
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QC検定®1級合格したい方、抜取検査の本質・理論をしっかり学びたい方におススメです。
①抜取検査設計補助表の導出式の意味はわからない
抜取検査設計補助表(JISZ9002)
試験に頻出である抜取検査設計補助表を解説します。
ロット合格率L(p)=1-α(第1種の誤りα)なpをp0
ロット合格率L(p)=β(第2種の誤りβ)なpをp1
として、
比 p1/p0の値が大きすぎる場合、小さすぎる場合に抜取検査設計補助表を使いますね。

抜取検査設計補助表のモデル式
サンプル数n,合格判定数c、係数\(a_0\),\(a_1\)を使って、
\(n=\frac{a_0}{p_0}+\frac{a_1}{p_1}\)
と計算でき、係数\(a_0\),\(a_1\)が表の通りとなっています。
\(p_1/p_0\) |
c |
\(n=\frac{a_0}{p_0}+\frac{a_1}{p_1}\) |
17以上 |
0 |
2.56/\(p_0\)+115/\(p_1\) |
16~7.9 |
1 |
17.8/\(p_0\)+194/\(p_1\) |
7.8~5.6 |
2 |
40.9/\(p_0\)+266/\(p_1\) |
5.5~4.4 |
3 |
68.3/\(p_0\)+334/\(p_1\) |
4.3~3.6 |
4 |
98.5/\(p_0\)+400/\(p_1\) |
3.5~2.8 |
6 |
164/\(p_0\)+527/\(p_1\) |
2.7~2.3 |
10 |
308/\(p_0\)+770/\(p_1\) |
2.2~2.0 |
15 |
502/\(p_0\)+1065/\(p_1\) |
1.99~1.86 |
20 |
704/\(p_0\)+1350/\(p_1\) |
抜取検査設計補助表(JISZ9002)のここがわからない
古書や論文を調査しましたが、次の2点がわかりません。
- サンプル数nのモデル式がわからない。なぜ、p1,p0の逆数の和なのかがわからない
- 係数の求め方が分からない。どうやって値が決まったのかわからない
もし、知っている方は教えてください。どの文献見ても、式と値の引用だけで、式の導出は書いていません。
②自力でサンプル数n、合格判定数cは計算できる!
抜取検査設計補助表を使わないとしたら、どうするか?
自分でOC曲線を描いて、(n,c)を求めたらOKです。
OC曲線の描き方については、関連記事があります。Excel VBAでOC曲線が作れます。
●OC曲線(二項分布、ポアソン分布)を描こう
③計算機がない時代でも精度良い値を作れるのはすごい!
計算機がない時代でも精度良い値を作れるのはすごい
今は、Excelで簡単に計算ができるからJIS規格表はそれほど必要ない。
けど、計算機がほとんど無かった1950年代から精度が高い抜取検査設計補助表がある。
計算機がないのに、精度が出せる!
昔の先輩方はすごいと思いませんか?
計算機がない時代は、近似式を駆使して、値を取りに行っていました。
しかし、今は計算機(Excel)があるので、値自体の価値は下がり、むしろ、理論・理由・本質を理解する方が重要になります。
計算機がない時代の方が、抜取検査の良書は多い。
時代が進み、現在は値の求め方より、抜取検査の理論や考えが重要になっている。
しかし、抜取検査の理論や考えを解説した良書が無いのが現状
なので、QCプラネッツは研究して理論を解説しています。
では、どれくらい精度がよいか調べてみましょう。
抜取検査設計補助表とExcelの値の比較
抜取検査設計補助表を再掲します。
抜取検査設計補助表のモデル式
サンプル数n,合格判定数c、係数\(a_0\),\(a_1\)を使って、
\(n=\frac{a_0}{p_0}+\frac{a_1}{p_1}\)
と計算でき、係数\(a_0\),\(a_1\)が表の通りとなっています。
\(p_1/p_0\) |
c |
\(n=\frac{a_0}{p_0}+\frac{a_1}{p_1}\) |
17以上 |
0 |
2.56/\(p_0\)+115/\(p_1\) |
16~7.9 |
1 |
17.8/\(p_0\)+194/\(p_1\) |
7.8~5.6 |
2 |
40.9/\(p_0\)+266/\(p_1\) |
5.5~4.4 |
3 |
68.3/\(p_0\)+334/\(p_1\) |
4.3~3.6 |
4 |
98.5/\(p_0\)+400/\(p_1\) |
3.5~2.8 |
6 |
164/\(p_0\)+527/\(p_1\) |
2.7~2.3 |
10 |
308/\(p_0\)+770/\(p_1\) |
2.2~2.0 |
15 |
502/\(p_0\)+1065/\(p_1\) |
1.99~1.86 |
20 |
704/\(p_0\)+1350/\(p_1\) |
Excelで計算するOC曲線も再掲します。

では、個々のcの値に対して、Excelと抜取検査設計補助表のそれぞれから求めたサンプル数nを比較します。
c=0の場合
●近似式 2.56/\(p_0\)+115/\(p_1\)
n(Excel) |
20 |
50 |
100 |
500 |
1000 |
c |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
p0 |
0.26 |
0.1 |
0.05 |
0.01 |
0.01 |
p1 |
10.88 |
4.5 |
2.28 |
0.47 |
0.24 |
p1/p0 |
42.42 |
43.87 |
42.97 |
34.28 |
27.3 |
n'(近似式) |
20.56 |
50.5 |
98.81 |
435.69 |
767.13 |
Excelから求めたサンプル数nと
抜取検査設計補助表から求めたサンプル数n’はほぼ一致します。
n=500,1000の場合はちょっとずれていますね。
c=1の場合
●近似式 17.8/\(p_0\)+194/\(p_1\)
n(Excel) |
20 |
50 |
100 |
500 |
600 |
c |
1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
p0 |
1.81 |
0.71 |
0.35 |
0.06 |
0.04 |
p1 |
18.1 |
7.56 |
3.83 |
0.78 |
0.65 |
p1/p0 |
10.02 |
10.57 |
10.83 |
13.93 |
15.67 |
n'(近似式) |
20.57 |
50.57 |
100.84 |
567.34 |
725 |
Excelから求めたサンプル数nと
抜取検査設計補助表から求めたサンプル数n’はほぼ一致します。
n=500,600の場合はちょっとずれていますね。
c=2の場合
●近似式 40.9/\(p_0\)+266/\(p_1\)
n(Excel) |
20 |
50 |
100 |
500 |
900 |
c |
2 |
2 |
2 |
2 |
2 |
p0 |
4.22 |
1.65 |
0.82 |
0.15 |
0.08 |
p1 |
24.48 |
10.3 |
5.24 |
1.06 |
0.59 |
p1/p0 |
5.8 |
6.22 |
6.37 |
6.9 |
7.42 |
n'(近似式) |
20.57 |
50.56 |
100.6 |
515.06 |
961.07 |
Excelから求めたサンプル数nと
抜取検査設計補助表から求めたサンプル数n’はほぼ一致します。
n=900の場合はちょっとずれていますね。
c=3の場合
●近似式 68.3/\(p_0\)+334/\(p_1\)
n(Excel) |
20 |
50 |
100 |
500 |
1000 |
c |
3 |
3 |
3 |
3 |
3 |
p0 |
7.14 |
2.78 |
1.38 |
0.27 |
0.13 |
p1 |
30.42 |
12.88 |
6.56 |
1.33 |
0.67 |
p1/p0 |
4.26 |
4.63 |
4.76 |
5 |
5.38 |
n'(近似式) |
20.55 |
50.52 |
100.54 |
506.16 |
1042.47 |
Excelから求めたサンプル数nと
抜取検査設計補助表から求めたサンプル数n’はほぼ一致します。
c=4の場合
●近似式 98.5/\(p_0\)+400/\(p_1\)
n(Excel) |
20 |
50 |
100 |
500 |
1000 |
c |
4 |
4 |
4 |
4 |
4 |
p0 |
10.41 |
4.02 |
1.99 |
0.39 |
0.19 |
p1 |
36.07 |
15.36 |
7.84 |
1.59 |
0.8 |
p1/p0 |
3.47 |
3.82 |
3.94 |
4.05 |
4.09 |
n'(近似式) |
20.55 |
50.53 |
100.55 |
501.55 |
1006.39 |
Excelから求めたサンプル数nと
抜取検査設計補助表から求めたサンプル数n’はほぼ一致します。
c=6の場合
●近似式 164/\(p_0\)+527/\(p_1\)
n(Excel) |
20 |
50 |
100 |
500 |
1000 |
c |
6 |
6 |
6 |
6 |
6 |
p0 |
17.73 |
6.76 |
3.33 |
0.65 |
0.32 |
p1 |
46.73 |
20.11 |
10.29 |
2.1 |
1.06 |
p1/p0 |
2.64 |
2.98 |
3.09 |
3.21 |
3.28 |
n'(近似式) |
20.53 |
50.47 |
100.44 |
502.17 |
1008.73 |
Excelから求めたサンプル数nと
抜取検査設計補助表から求めたサンプル数n’はほぼ一致します。
c=10の場合
●近似式 308/\(p_0\)+770/\(p_1\)
n(Excel) |
100 |
500 |
1000 |
1500 |
2000 |
c |
10 |
10 |
10 |
10 |
10 |
p0 |
6.29 |
1.23 |
0.61 |
0.41 |
0.31 |
p1 |
14.99 |
3.07 |
1.54 |
1.03 |
0.78 |
p1/p0 |
2.38 |
2.48 |
2.51 |
2.53 |
2.54 |
n'(近似式) |
100.32 |
500.48 |
1001.28 |
1501.82 |
2000.61 |
Excelから求めたサンプル数nと
抜取検査設計補助表から求めたサンプル数n’はほぼ一致します。
c=15の場合
●近似式 502/\(p_0\)+1065/\(p_1\)
n(Excel) |
100 |
500 |
1000 |
1500 |
2000 |
c |
15 |
15 |
15 |
15 |
15 |
p0 |
10.3 |
2.02 |
1 |
0.66 |
0.5 |
p1 |
20.61 |
4.23 |
2.13 |
1.42 |
1.07 |
p1/p0 |
2 |
2.1 |
2.11 |
2.15 |
2.13 |
n'(近似式) |
100.4 |
500.64 |
1000.67 |
1508.83 |
1996.61 |
Excelから求めたサンプル数nと
抜取検査設計補助表から求めたサンプル数n’はほぼ一致します。
c=20の場合
●近似式 704/\(p_0\)+1350/\(p_1\)
n(Excel) |
500 |
1000 |
1500 |
2000 |
2500 |
c |
20 |
20 |
20 |
20 |
20 |
p0 |
2.83 |
1.41 |
0.93 |
0.7 |
0.55 |
p1 |
5.37 |
2.7 |
1.8 |
1.36 |
1.08 |
p1/p0 |
1.9 |
1.91 |
1.93 |
1.93 |
1.97 |
n'(近似式) |
500.14 |
1000.29 |
1505.15 |
1996.41 |
2523.37 |
Excelから求めたサンプル数nと
抜取検査設計補助表から求めたサンプル数n’はほぼ一致します。
計算機がほとんど無かった1950年代から精度が高い抜取検査設計補助表があるのはすごいことですね。
公式や解法の暗記だけではなく、実際に計算して比較することが重要です。
まとめ
抜取検査設計補助表(JISZ9002)の式の意味がわからないけど、ExcelからOC曲線を描くと、抜取検査設計補助表の精度が高く、すごい表であることを解説しました。
- ①抜取検査設計補助表の導出式の意味はわからない
- ②自力でサンプル数n、合格判定数cは計算できる!
- ③計算機がない時代でも精度良い値を作れるのはすごい!
抜取検査