「なみ検査、ゆるい検査、きつい検査の主抜取表のAc,Reの値の求め方がわからない」、「なみ検査、ゆるい検査、きつい検査の違いがわからない」など困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
なみ検査、ゆるい検査、きつい検査の主抜取表(一回抜取方式)の作り方がわかる
- ①なみ検査、ゆるい検査、きつい検査の違いがわかる
- ②ゆるい検査、きつい検査の合格判定個数をOC曲線から導出
- ③なみ検査、ゆるい検査、きつい検査を選ぶ時の注意点
自分で抜取検査の理論を理解して、抜取検査を先に自分で設計して、必要な値をJISや教科書を使うようにしたいです。
●You tube動画でも解説しています。
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①なみ検査、ゆるい検査、きつい検査の違いがわかる
結論
JISZ9015-1では、AQL(合格品質水準)とサンプル数nを標準数\(10^{0.2}\)=1.58倍ずつずらしたものと定義。
1つずつずらしたものと定義しただけです。どんな抜取検査でも、なみ検査、ゆるい検査、きつい検査の違いはJISの定義と同一にする必要はありません。
主抜取表で比較
– |
– |
– |
0.65 |
1 |
1.5 |
2.5 |
4 |
6.5 |
10 |
… |
検査 |
サイズ |
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Ac,Re |
Ac,Re |
Ac,Re |
Ac,Re |
Ac,Re |
Ac,Re |
Ac,Re |
… |
… |
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… |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
ゆるい |
20 |
… |
… |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
4,5 |
6,7 |
… |
なみ |
20 |
… |
… |
… |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
5,6 |
… |
きつい |
20 |
… |
… |
… |
… |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
… |
ゆるい |
32 |
… |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
4,5 |
6,7 |
8,9 |
… |
なみ |
32 |
… |
… |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
5,6 |
7,8 |
… |
きつい |
32 |
… |
… |
… |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
5,6 |
… |
ゆるい |
50 |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
4,5 |
6,7 |
8,9 |
10,11 |
… |
なみ |
50 |
… |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
5,6 |
7,8 |
10,11 |
… |
きつい |
50 |
… |
… |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
5,6 |
8,9 |
… |
ゆるい |
80 |
… |
2,3 |
3,4 |
4,5 |
6,7 |
8,9 |
10,11 |
… |
… |
なみ |
80 |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
5,6 |
7,8 |
10,11 |
14,15 |
… |
きつい |
80 |
… |
… |
1,2 |
2,3 |
3,4 |
5,6 |
8,9 |
12,13 |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
… |
同じ色を見ると、対角線に1つずつずれているのがわかりますね。
数式で比較
OC曲線の式で、なみ検査、ゆるい検査、きつい検査の違いを比較します。
詳細は関連記事に解説しています。
●【簡単】AQL(合格品質水準)がすぐわかる
検査のきびしさを変えても同じAQLにするために、ゆるい検査ときつい検査では、OC曲線の式を一部補正しています。
補正変数mは、主抜取表のAQLの1列のずれを考慮して、標準数\(10^{0.2}\)を入れます。
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (なみ検査) (m=1)
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (ゆるい検査) (m=\(10^{-0.2}\))
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (きつい検査) (m=\(10^{0.2}\))


上の図では、
●なみ検査 (n,Ac)=(20,3)
●ゆるい検査 (n,Ac)=(13,3)
●きつい検査 (n,Ac)=(32,3)
について、ゆるい検査ときつい検査の曲線を補正し、なみ検査 (n,Ac)=(20,3)のOC曲線に近づけて、AQL=6.5%と求めました。
なお、サンプル数どおしを比較すると
32/20=1.6≒\(10^{0.2}\)
20/13=1.53≒\(10^{0.2}\)
の関係があります。不思議ですが、そうなるように主抜取表を作ったのでしょう。すごいですね。
②ゆるい検査、きつい検査の合格判定個数をOC曲線から導出
ゆるい検査、きつい検査のOC曲線を定義
もう一度書きますが、下の3つの式からOC曲線を描いて、合格判定個数を求めます。
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (なみ検査) (m=1)
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (ゆるい検査) (m=\(10^{-0.2}\))
●\(L(p)\)=\(\sum_{r=0}^{c} {}_nCr (pm)^r (1-pm)^{n-r}\) (きつい検査) (m=\(10^{0.2}\))
ゆるい検査、きつい検査の合格判定個数を導出
OC曲線を描いて合格判定個数を求めます。
サンプル数n=20を固定し、合格判定個数c=Acを0から20まで変化させます。
なみ検査、ゆるい検査、きつい検査でそれぞれ
c=Acを0から20まで変化させた場合のOC曲線を描きます。

AQLとAcの関係をまとめてみましょう。
AQL |
0.15 |
0.25 |
0.4 |
0.65 |
1 |
1.5 |
2.5 |
4 |
6.5 |
10 |
15 |
25 |
40 |
65 |
100 |
ゆるい |
0 |
1 |
1 |
1 |
1 |
2 |
2 |
3 |
4 |
6 |
8 |
12 |
16 |
20 |
20 |
なみ |
0 |
0 |
1 |
1 |
1 |
1 |
2 |
2 |
3 |
4 |
6 |
8 |
12 |
16 |
19 |
きつい |
0 |
0 |
0 |
1 |
1 |
1 |
1 |
2 |
2 |
3 |
4 |
6 |
8 |
12 |
16 |
OC曲線からAcを導出して抜取表を作ると、なみ検査、ゆるい検査、きつい検査では合格判定個数Acが1つずつずれていることがわかります。
主抜取表の作り方がわかると、JISが提供する魔法の表ではなく、自力でも作れる身近な表になりますね。
主抜取表の使い方を勉強して終わるのではなく、
主抜取表をどのように作るのかを考えることが抜取検査をマスターする上で重要です
③なみ検査、ゆるい検査、きつい検査を選ぶ時の注意点
あなたが抜取検査する対象の、「なみ、ゆるい、きつい」の定義と
JISが定義する「なみ、ゆるい、きつい」の定義は一致しない
点に注意が必要
JISが定義する「なみ検査、ゆるい検査、きつい検査」
JISには明記していない点が、わかりにくくしていますが、
JISの定義は、AQLを1つずらしたもので定義しているようです。
また、AQLは公比が標準数\(10^{0.2}\)=1.58の等比数列として、JISの主抜取表があります。
あなたが抜取検査する対象の「なみ検査、ゆるい検査、きつい検査」
一方、あなたが検査する対象では、検査対象によって、「なみ、ゆるい、きつい」の程度が変わるはずです。
次の3点に注意しましょう。
- 「なみ、ゆるい、きつい」の差はJISの定義(標準数\(10^{0.2}\)=1.58)と同じとは限らない
- あなたの「なみ検査」はJISの「なみ検査」と同じとは限らない
- JIS規格だからそのまま活用しても良いとは限らない
JIS規格の表だから何でも正しいではなく
あなたが実施したい抜取検査の合否判定基準や調整したい幅(ゆるさ、きつさ)を自分で考えることが重要です。
あなたが抜取検査すべき「なみ検査、ゆるい検査、きつい検査」
まとめると、
- あなたの「なみ検査」の合否判定基準を設計する
- あなたの抜取検査の調整の幅(ゆるさ、きつさ)を自分で定義して設計する
- JIS規格に合う検査条件ならJIS規格を活用する
あなたの「なみ検査」の合否判定基準を設計する
検査の合否判定基準を、製品出荷後の品質コストや経営リスクを考慮して、決める必要があります。そこから、消費者危険(p0,1-α)、生産者危険(p1,β)をいくらにすべきか?がわかります。
消費者危険(p0,1-α)、生産者危険(p1,β)が決まると、そこを通るOC曲線を引くと、サンプル数n,合格判定個数cの候補がいくつか出てきます。(n,c)によって、同じ点を通るOC曲線が複数描けるからです。
サンプル数n、合格判定個数cを1つに絞ります。
あなたの抜取検査の調整の幅(ゆるさ、きつさ)を自分で定義して設計する
調整型抜取検査を実施したいならば、調整の幅をJISの表を見る前に、自分で考える必要があります。
出荷実績が少なく、初期流動管理が必要なら、最初は、きつい検査とし、半年経過して、品質に問題がなければ、なみ検査とするなど考えます。
初期流動管理の場合の、製品不良率が、工程管理が成熟した場合の不良率と比較して、どの程度違うのか?を検討します。それをカバーできる、きつい条件を設定して、きつい検査と定義します。
品質はどの工程でも、「なぜそうしたか?」を自分で説明できる責任があります。自分で考えて設計し、それがOKならそのままでも良く、NGなら改善していけばよいです。そして、自分で改善案を考えることができます。
JISに頼ると、なぜかもわからず、検査し続けることになってしまいます。
JIS規格は、調整の幅をAQLの公比(標準数)として、さまざまなサンプル数とAQLにおける合格判定個数を定義しています。ただ、どんな調整型抜取検査にするかは、あなたが考える必要があります。
抜取検査対象となる製品で、JIS規格に従って検査したら、
「なぜ、サンプル数n,合格判定個数Acを決めたのか?」と品質監査で聞かれて時に
「JISどおりにやったから」としか回答できず、監査で不適合と言われる可能性があります。
JISの調整型抜取検査の主抜取表を使う前に、抜取検査を自分で考える力を身につけましょう。
まとめ
調整型抜取検査(1回方式)の主抜取表(なみ検査、ゆるい検査、きつい検査)の作り方について解説しました。
- ①なみ検査、ゆるい検査、きつい検査の違いがわかる
- ②ゆるい検査、きつい検査の合格判定個数をOC曲線から導出
- ③なみ検査、ゆるい検査、きつい検査を選ぶ時の注意点
抜取検査