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【必読】計量値管理図の群内変動と群間変動の分散が推定できる

管理図

「群内変動と群間変動の分散の推定がわからない」、「QC検定®1級で頻出な群内変動と群間変動の問題が解けない」と困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

計量値管理図の群内変動と群間変動の分散が推定できる
  • ①R管理図ではσ=R/d2でいい理由
  • ②群内変動と群間変動の分散を推定する公式
  • ③群内変動と群間変動の分散を推定する演習問題1
  • ④群内変動と群間変動の分散を推定する演習問題2

記事の信頼性

記事を書いている私は、QC検定®1級合格しましたが、管理図の係数表、群内変動・群間変動の解き方に疑問が残りました。そこで、管理図の理論を研究しました。その成果をブログで解説します。

●商標使用について、
①QC検定®と品質管理検定®は、一般財団法人日本規格協会の登録商標です。
➁このコンテンツは、一般財団法人日本規格協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。
➂QCプラネッツは、QC検定®と品質管理検定®の商標使用許可を受けています。

①R管理図ではσ=R/d2でいい理由

R管理図に準拠した確率密度関数からσが推定できる

R管理図の確率密度関数や係数\(d_2\),\(d_3\)の導出については、関連記事で詳細に解説しています。

【必読】R管理図の変数d2,d3の導出が(半分)わかる
R管理図の係数d2,d3はどうやって求めるか説明できますか?本記事では、範囲Rの確率密度関数を順序統計量の同時分布を使って導出し、途中までですが、d2,d3の導出方法を解説します。管理図をマスターしたい方は必見です。

●R管理図は、順序統計量の同時分布を確率密度関数としている
●R管理図からE[R]=\(d_2\)σ、D[R]= \(d_3\)σと導出できるため、
R/\(d_2\)=σと推定してよい

R管理図のデータは確率密度関数に従うと仮定するため、
データによらず、σ=R/\(d_2\)と推定してよいのです。
単なる便利な式ではないことに注意しましょう。

なお、s管理図の場合は、E[s]=\(c_4\)σですね。
σ=s/\(c_4\)で推定してよいとなります。

R管理図の管理範囲内だけ使える

\(\bar{X}\)-R管理図を使うことが多いですが、R管理図の中だけ
σ=R/\(d_2\)が使えます。

全体変動=群内変動+群間変動
で計算しますが、
R管理図で見ている群内変動だけです。

\(σ_T^2\)= \(σ_w^2\)+ \(σ_b^2\)
\(σ_w\)=R/\(d_2\)

群間変動、全変動はデータから別途から求めます。QC検定®1級なら、値が与えられています。

②群内変動と群間変動の分散を推定する公式

全体変動で、全体Xと全体平均\(\bar{X}\)の2つがあります。

全体Xの場合

全体変動=群内変動+群間変動
\(σ_T^2\)= \(σ_w^2\)+ \(σ_b^2\)
\(σ_w\)=R/\(d_2\)

全体平均\(\bar{X}\)の場合

全体変動=群内変動+群間変動
\(σ_\bar{T}^2\)= \(\frac{σ_w^2}{n}\)+ \(σ_b^2\)
\(σ_w\)=R/\(d_2\)
n:群内のデータ数

この区別が混合すると、わけがわからなくなります。
実際に演習問題で練習しましょう。見て⇒慣れて⇒ものにしましょう!

③群内変動と群間変動の分散を推定する演習問題1

演習問題1

2台の工作機X,Yで切削加工をしている。この切削した製品の長さ特性を調べるべく、各工作機から4個ずつ計8個のデータを取り、\(\bar{X}\)-R管理図で調査した。これまでの実績は、\(\bar{\bar{X}}\)=26.3,\(\bar{R}\)=4.3、σ=2.2である。
データを層別して工作機X,Yごとに、n=4の\(\bar{X}\)-R管理図を描いた。その結果次になった。
●\(\bar{\bar{X_A}}\)=25.8,\(\bar{R_A}\)=3.0
●\(\bar{\bar{X_B}}\)=26.8,\(\bar{R_B}\)=2.4
(1)工作機内変動\(σ_W^2\)を求めよ。
(2)工作機間変動\(σ_M^2\)を求めよ。
(3)ロット間変動\(σ_L^2\)を求めよ。
X Y
X1 X2 X3 X4 Y1 Y2 Y3 Y4
1 24 23 25 26 24 25 23 20
2 27 22 24 25 26 26 21 24
3 28 23

解法

推定すべき変動の関係式をまず書きます。
\(σ^2\)=\(σ_W^2\)+\(σ_M^2\)+\(σ_L^2\)

(1)
●R管理図から、工作機内変動\(σ_W^2\)が公式で求められます。
\(\widehat{σ_w^2}\)=\((\frac{\bar{R}}{d_2 (n=4)})^2\)
=\((\frac{3.0+2.4}{2×2.059})^2\)=\(1.311^2\)=1.720

(2)
●R管理図から、工作機内変動と工作機間変動の和が公式で求められます。
\(\widehat{σ_w^2}\)+\(\widehat{σ_M^2}\)=\((\frac{R}{d_2 (n=8)})^2\)
(右辺)= \((\frac{R}{d_2})^2\)= \((\frac{4.3}{2.847})^2\)=\(1.510^2\)=2.281

工作機間変動\(σ_M^2\)は、
\(σ_M^2\)=2.281-1.720=0.5612

(3)
ロット間変動は、残りになります。
\(σ_L ^2\)=\(σ^2\)-\(σ_M^2\)-\(σ_L^2\)
\(σ_L ^2\)=\(2.2^2\)-1.720-0.5616=2.556

●まとめると、
(1)工作機内変動\(σ_W^2\)=1.720
(2)工作機間変動\(σ_M^2\)=0.5616
(3)ロット間変動\(σ_L^2\)=2.556

慣れるまで、何回も見てポイントを身に着けていきましょう。

④群内変動と群間変動の分散を推定する演習問題2

演習問題1と解き方は同じですが、もう1問見て、ポイントをおさえましょう。

演習問題2

ある製品の特性Aについて、分散成分を検討するために、納入品からランダムに10ロットを選び、各ロットからランダムに2個の製品をサンプリングして、各製品を3回測定して特性Aのデータを得た。サンプリングとデータについては下の図表に示す。
\(\bar{X}\)-R管理図を利用して各種分散成分を推定する。
●ロット間変動\(σ_L^2\)
●サンプル間変動\(σ_S^2\)
●測定誤差分散\(σ_M^2\)
(1) 測定誤差分散の推定値\(\widehat{σ_M^2}\)を求めよ。
(2-A) サンプル間変動の推定値\(\widehat{σ_S^2}\)を求めよ。
(2-B) サンプル間平均変動の推定値\(\widehat{σ_\bar{S}^2}\)を求めよ。
(3-A) ロット間変動の推定値\(\widehat{σ_L^2}\)を求めよ。
(3-B) ロット間平均変動の推定値\(\widehat{σ_\bar{L}^2}\)を求めよ。
(4-A) 全変動\(σ_T^2\)を求めよ。
(4-B) 全成分の平均変動\(σ_\bar{T}^2\)を求めよ。
管理図
ロット サンプル 測定値 \(\bar{x_{ij●}}\) \(R_{ij}\) \(\bar{x_{i●●}}\) \(R_{i}\) \(\bar{\bar{x}}\) R
M1 M2 M3
L1 S1 7.6 8.4 7.7 7.9 0.8 7.5 0.8 7.3 5
S2 6.7 7.2 7.4 7.1 0.7
L10 S1 8 7.2 7.6 7.6 0.8 7.25 0.7
S2 7.1 6.4 7.2 6.9 0.8
合計 145 15 72 8 7.3 5

変動の計算で、全体の場合と、全体平均の場合があります。この例題として演習問題を解いてみましょう。違いを意識して解きましょう。

全体Xの場合

全体変動=群内変動+群間変動
\(σ_T^2\)= \(σ_w^2\)+ \(σ_b^2\)
\(σ_w\)=R/\(d_2\)

全体平均\(\bar{X}\)の場合

全体変動=群内変動+群間変動
\(σ_\bar{T}^2\)= \(\frac{σ_w^2}{n}\)+ \(σ_b^2\)
\(σ_w\)=R/\(d_2\)
n:群内のデータ数

●(1) 測定誤差分散の推定値\(\widehat{σ_M^2}\)は、
\(\widehat{σ_M^2}\)=\((\frac{R_{ij}}{2×10×d2(n=3)})^2\)
=\((\frac{15}{20×1.693})^2\)=0.1963

●(2-A) サンプル間変動の推定値\(\widehat{σ_S^2}\)は、
\(\widehat{σ_S^2}\)=\((\frac{R_i}{10×d2(n=2)})^2\)-\(\widehat{σ_M^2}\)
=\((\frac{8}{10×1.128})^2\)-0.1963=0.3067

●(2-B) サンプル間平均変動の推定値\(\widehat{σ_\bar{S}^2}\)は、
\(\widehat{σ_\bar{S}^2}\)=\((\frac{R_i}{10×d2(n=2)})^2\)-\(\frac{1}{3} \widehat{σ_M^2}\)
=\((\frac{8}{10×1.128})^2\)-0.1963/3=0.4376

●(3-A) ロット間変動の推定値\(\widehat{σ_L^2}\)は、
\(\widehat{σ_L^2}\)=\((\frac{R}{d2(n=10)})^2\)-\((\widehat{σ_S^2}+\widehat{σ_M^2})\)
=\((\frac{5}{3.078})^2\)-(0.3067+0.1963)=2.136

●(3-B) ロット間平均変動の推定値\(\widehat{σ_\bar{L}^2}\)は、
\(\widehat{σ_\bar{L}^2}\)=\((\frac{R}{d2(n=10)})^2\)-\(\frac{1}{2}(\widehat{σ_\bar{S}^2}+\frac{1}{3}\widehat{σ_M^2})\)
=\((\frac{5}{3.078})^2\)-\(\frac{1}{2}(0.4376+\frac{1}{3}\)0.1963)=2.387

●(4-A) 全変動\(σ_T^2\)は、
\(σ_T^2\)=\(σ_M^2\)+\(σ_S^2\)+\(σ_L^2\)
=0.1963+0.3067+2.136
=2.639

●(4-B) 全成分の平均変動\(σ_\bar{T}^2\)は、
\(σ_\bar{T}^2\)=\(σ_M^2\)+\(σ_\bar{S}^2\)+\(σ_\bar{L}^2\)
=0.1963+0.4376+2.387
=3.021

公式を活用して、それぞれの変動を導出できました。

QC検定®1級対策(管理図)

\(σ_T^2\)=\(σ_M^2\)+\(σ_S^2\)+\(σ_L^2\)
の3種類の和がよく出題され、
R/\(d_2\)を使って個々のσを計算します。
注意なのが、平均の変動か、そうでないかの違いで、公式の使い分けが必要。
●\(σ_T^2\)= \(σ_w^2\)+ \(σ_b^2\)
●\(σ_\bar{T}^2\)= \(\frac{σ_w^2}{n}\)+ \(σ_b^2\)
過去30回分の過去問を研究し、マスターすべきポイントを本記事の2つの演習問題に集約しました。是非習得してください。対策本はここまで丁寧に解説していません。

まとめ

計量値管理図の群内変動と群間変動の分散が推定できる方法を解説しました。

  • ①R管理図ではσ=R/d2でいい理由
  • ②群内変動と群間変動の分散を推定する公式
  • ③群内変動と群間変動の分散を推定する演習問題1
  • ④群内変動と群間変動の分散を推定する演習問題2


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