【信頼性工学】二項正規分布がわかる
「二項分布からどうやって故障率を求めるかがが、よくわからない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①確率密度関数を導出するモデルを理解する
- ➁二項分布から故障率を考える例題
- ➂故障率λの計算
- ➃二項分布の期待値と分散の計算
- ➄故障率曲線との関係
①確率密度関数を導出するモデルを理解する
故障率は指数分布だけではない
特に信頼性工学の入門を解説している教科書やサイトは、
とインプットされがちです。
故障分布に合わせた確率密度関数を作る
例えば、寿命試験結果が以下のヒストグラムになったとします。
この図よく見ると、
なのに、
分布の種類
よく使う、確率密度関数で良いです。
- 一様分布
- 指数分布
- 正規分布
- ワイブル分布
- ガンマ分布
大事なのは、
例えば、2次関数とかでも使ってもいいと思います。
では、個々の分布関数を見ていきます。
➁二項分布から故障率を考える例題
二項分布は他の分布よりは簡単で扱いやすいですよね。でも、信頼性工学の故障率について二項分布からどう求めたらよいか?を考えましょう。
イメージは、 横軸が故障数\(x\)で整数で考え、縦軸は発生確率Prです。
例題
確率密度関数\(f(x)\)=\( {}_nC_x p^x (1-p)^{n-x}\)
に従うとする。
(1) 分布関数\(F(x)\)を求めよ。
(2) 確率密度関数\(f(x)\)の期待値と分散を計算せよ。
(3) 故障率\(λ(x)\)を求め、故障率曲線について考察せよ。
信頼性工学の観点で二項分布をどう扱うかを解説します。
分布関数\(F(x)\)
いつもなら、積分すればよいですよね。
\(F(x)\)=\( \displaystyle \int_{-∞}^{∞} f(x) dx\)
でも、それは\(x\)が実数の場合です。
今回は、\(x\)が自然数の場合ですから、
∫ではなく∑を使います。よって、
\(F(x)\)=\( \sum_{x=0}^{x} f(x) \)
\(F(x)\)=\( \sum_{x=0}^{x} {}_nC_x p^x (1-p)^{n-x} \)
なお、
\( \sum_{x=0}^{n} {}_nC_x p^x (1-p)^{n-x} \)
はいくらか?すぐわかりますか? 全区間の確率なので、1ですよ。
➂故障率λの計算
故障率とは、\(f(x)\)と\(R(x)\)との比で計算します。二項分布の場合、
機械的に
\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)をします。
このあとの導出結果も、関連記事で解説しています。
\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)
=\( {}_nC_x p^x (1-p)^{n-x}\)/\( \sum_{x=0}^{x} {}_nC_x p^x (1-p)^{n-x} \)
という式になりますね。
\(λ(t)\)によって、故障率曲線の特徴が3つに分けられます。これはあとで解説します。
➃確率密度関数の平均と分散の計算
二項分布の期待値と分散の導出は有名です。折角なので導出しましょう。
期待値E[\(x\)]の計算
期待値E[\(x\)]は
●\(x\)が実数の場合⇒期待値E[\(x\)]=\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x f(x) dx\)
●\(x\)が自然数の場合⇒期待値E[\(x\)]=\(\sum_{x=0}^{n} x f(x) dx\)
ですね。今回は∑を使います。
E[\(x\)]
=\(\sum_{x=0}^{n} x {}_nC_x p^x (1-p)^{n-x} dx\)
=\(\sum_{x=0}^{n} x \frac{n!}{x!(n-x)!} p^x (1-p)^{n-x} dx\)
=\(\sum_{x=0}^{n} \frac{n!}{(x-1)!(n-x)!} p^x (1-p)^{n-x} dx\)
=\(\sum_{x=0}^{n} n・ \frac{(n-1)!}{(x-1)!(n-x)!} p・p^{x-1} (1-p)^{n-x} dx\)
=\(np・\sum_{x=0}^{n} \frac{(n-1)!}{(x-1)!(n-x)!} p^{x-1} (1-p)^{n-x} dx\)
=\(np\)
できましたね!
まとめると、
E[\(x\)]=\(np\)
分散の計算
分散も計算が大変そうですが、期待値が計算できたら、意外と簡単にできます。
分散V[\(x\)]の計算
分散V[\(x\)]は
分散V[\(x\)]= E[\(x^2\)]- E[\(x\)]2
で計算します。
期待値E[\(x^2\)]は
●\(x\)が実数の場合⇒期待値E[\(x\)]=\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x^2 f(x) dx\)
●\(x\)が自然数の場合⇒期待値E[\(x\)]=\(\sum_{x=0}^{n} x^2 f(x) dx\)
ですね。今回は∑を使います。
ちょっと1つトリックを使います。
まず、E[\(x(x-1)\)]を計算します。
E[\(x(x-1)\)]
=\(\sum_{x=0}^{n} x(x-1) {}_nC_x p^x (1-p)^{n-x} dx\)
=\(\sum_{x=0}^{n} x(x-1) \frac{n!}{x!(n-x)!} p^x (1-p)^{n-x} dx\)
=\(\sum_{x=0}^{n} \frac{n!}{(x-2)!(n-x)!} p^x (1-p)^{n-x} dx\)
=\(\sum_{x=0}^{n} n(n-1)・ \frac{(n-2)!}{(x-2)!(n-x)!} p^2・p^{x-2} (1-p)^{n-x} dx\)
=\(n(n-1)p^2・\sum_{x=0}^{n} \frac{(n-2)!}{(x-2)!(n-x)!} p^{x-2} (1-p)^{n-x} dx\)
=\(n(n-1)p^2\)
また、
E[\(x^2\)]=E[\(x^2-x+x\)]= E[\(x(x-1)\)]+ E[\(x\)]より、
E[\(x^2\)]=\(n(n-1)p^2\)+\(np\)
分散V[\(x\)]は
分散V[\(x\)]= E[\(x^2\)]- E[\(x\)]2
=\(n(n-1)p^2\)+\(np\)-\((np)^2\)
=\(np-np^2\)
=\(np(1-p)\)
できましたね!
まとめると、
以上、まとめると、
●期待値E[\(x\)]=\(np\)
●分散V[\(x\)]=\(np(1-p)\)
とおなじみの値になりました。
➄故障率曲線との関係
故障率λの計算
➂で計算した通り、二項分布の場合、
\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)
=\( {}_nC_x p^x (1-p)^{n-x}\)/\( \sum_{x=0}^{x} {}_nC_x p^x (1-p)^{n-x} \)
という式になりますね。
この式でわかることは\(λ\)の値の範囲です。
●\(λ\)は確率の比なので、0 ≤ \(λ\)
●\(F(x)\)は\(f(x)\)の和なので、\(F(x)\) >\(f(x)\)より\(λ\) ≤ 1
よって、
0 ≤ \(λ\) ≤ 1
とみてよさそうです。
本来はλの値によって、故障率曲線の特徴が3つに分けられますが、二項分布の場合は、常に初期故障期に分類される結果になります。でもちょっとぴんと来ませんね。別に偶発・摩耗になる場合もあってもよい気がします。
- \(λ\) < 1 ⇒ 初期故障期(DFR)
- \(λ\) =1⇒ 偶発故障期(CFR)
- \(λ\) > 1 ⇒ 摩耗故障期(IFR)
バスタブ曲線との関係を考えましょう。
まとめ
「【信頼性工学】二項分布がわかる」を解説しました。
- ①確率密度関数を導出するモデルを理解する
- ➁二項分布から故障率を考える例題
- ➂故障率λの計算
- ➃二項分布の期待値と分散の計算
- ➄故障率曲線との関係
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