信頼度の点推定と区間推定がわかる(正規分布)
「寿命分布が正規分布の場合の点推定と区間推定がうまく計算できない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①分布関数
- ➁尤度関数(ゆうど)を作る
- ➂最尤推定量(さいゆう)を導出
- ➃点推定の導出
- ➄区間推定の導出
①分布関数
3つの分布関数を解説!
今回は、指数分布を取り上げますが、QCプラネッツでは以下の3つの分布関数についても解説します。
- 指数分布
- ワイブル分布
- 正規分布
そして、3つの分布関数に対して、共通の解法で解説していきます。
1回目の指数分布については、関連記事で解説していますので、ご確認ください。
信頼度の点推定と区間推定がわかる(指数分布)
信頼度の点推定と区間推定が計算できますか。本記事では指数分布における点推定と区間推定をわかりやすく解説します。信頼性工学を勉強したい方は必読です。
2回目のワイブル分布については、関連記事で解説していますので、ご確認ください。
信頼度の点推定と区間推定がわかる(ワイブル分布)
信頼度の点推定と区間推定が計算できますか。本記事ではワイブル分布における点推定と区間推定をわかりやすく解説します。信頼性工学を勉強したい方は必読です。
今回は正規分布
正規分布関数の確率密度関数を定義します。
正規分布については、関連記事で解説していますので、ご確認ください。
正規分布の導出がよくわかる
正規分布の導出ができますか? 本記事では専門書を読んでも理解できない正規分布の導出をわかりやすく解説しています。統計学、品質管理に関わる人は必読です。意味不明な式を暗記する前に導出やグラフのイメージを理解しましょう。
➁尤度関数(ゆうど)を作る
尤度関数とは?
Wikipedia から引用すると、
尤度関数とはある前提条件に従って結果が出る場合に、逆に観察結果からみて前提条件が「何々であった」と推測する尤もらしさ(もっともらしさ)を表す数値を、変数とした関数。
尤度関数って何?
簡単に言うと、
とにかくやってみましょう。
いい加減に定義した関数が、良い加減な条件を作るので不思議です。
➂最尤推定量(さいゆう)を導出
正規分布の尤度関数を定義
こんな関数を尤度関数として定義します。理由はテキトーで、指数なので掛け算とlogを使いこなしたいから
(\(f(t_i)\)=\(\frac{1}{\sqrt{2π}σ} exp(-\frac{(t_i-μ)^2}{2σ^2}) \))
とにかく尤度関数をテキトーに設定して、微分=0となる条件式を作ります。
尤度関数はとにかく「微分して0」を作る
\( L(σ,μ)\)= \(\displaystyle \prod_{i=1}^n (\frac{1}{\sqrt{2π}σ} exp(-\frac{(t_i-μ)^2}{2σ^2}) \)
=\((\frac{1}{\sqrt{2π}σ})^n\)\(exp(-\frac{1}{2σ^2} \sum_{i=1}^{n} (t_i-μ)^2)\)
ここで、両辺をlogをとって、両辺を\(σ、μ\)それぞれで微分して、
●\(\displaystyle \frac{\partial log(L(σ,μ))}{\partial σ} \)=0
●\(\displaystyle \frac{\partial log(L(σ,μ))}{\partial μ} \)=0
の式を作ります。
最尤推定量は何が出るの?
とりあえず、尤度関数を微分して0になる条件式を作ります。
●(式1):
●\(\displaystyle \frac{\partial log(L(σ,μ))}{\partial σ} \)
=-\(\frac{n}{σ}\)+\(2σ^3 \sum_{i=1}^{n} \frac{(t_i-μ)^2}{2}\)=0
まとめると
\(σ^2\)=\(\frac{\sum_{i=1}^{n}(t_i-μ)^2}{n}\)
●(式2):
●\(\displaystyle \frac{\partial log(L(σ,μ))}{\partial μ} \)
=-\(\sum_{i=1}^{n} \frac{(μ-t_i)}{σ^2}\)=0
まとめると
\(nμ\)=\(\sum_{i=1}^{n} t_i\)
\(μ\)=\(\frac{\sum_{i=1}^{n} t_i }{n}\)
➃点推定の導出
尤度関数を微分して0になる条件式から、
●(式1):\(σ^2\)=\(\frac{\sum_{i=1}^{n}(t_i-μ)^2}{n}\)
●(式2):\(μ\)=\(\frac{\sum_{i=1}^{n} t_i }{n}\)
が出ました。
これって、
それっぽい尤度関数を勝手に定義して、強制的に微分=0すると、平均と分散が出るので不思議ですね。
よって、点推定は
\(\bar{σ^2}\)=\(\frac{\sum_{i=1}^{n}(t_i-μ)^2}{n}\)
となります。
➄区間推定の導出
区間推定は正規分布表から計算できる
指数分布やワイブル分布は、とにかくχ2乗分布に直して区間推定しましたが、
正規分布は正規分布表から区間を推定すればOKです。
例題で確認すれば簡単にわかる!
信頼性工学とはいえ、ただの正規分布の問題と思えば、難しい例題ではありません。
ある材料の引張強度を測定したら以下の10個のデータを得た。
179,190,193,194,198,201,204,210,211,220
(1) 平均μと標準偏差σの最尤推定値を求めよ。
(2) 部材に220の引張強度をかけた時の信頼度(部材が壊れない確率)を求めよ。
(3) 仮にσが既知で15とすると、(2)の220の引張強度をかけた時の信頼度(部材が壊れない確率)を求めよ。
一見、難しそうですが、正規分布と信頼性工学を組み合わせた問題で良問です。
例題の解法
(1)の最尤推定値
(1)の最尤推定値は、
\(\bar{σ^2}\)=\(\frac{\sum_{i=1}^{n}(t_i-μ)^2}{n}\)
計算して、
\(\bar{μ}\)=2000/10=200
\(\bar{σ^2}\)=\(\sqrt{1268/10}\)=11.26
です。
(2)の信頼度
正規分布はZ値を使いますよね。
\(Z=\frac{x-μ}{σ/\sqrt{n}}\)
代入して
\(Z=\frac{220-200}{11.26}\)=1.776
正規分布表からZ=1.776以上となる確率は、Pr=0.0384。
引張強度が強すぎると壊れると考えると、信頼度は、
R=1-0.0384=0.9616
となります。
(3)の信頼度
参考に下図から問を考えます。
正規分布はZ値を使いますよね。(2)と同じです。
\(Z=\frac{x-μ}{σ/\sqrt{n}}\)
代入して
\(Z=\frac{220-200}{15}\)=1.333
正規分布表からZ=1.333以上となる確率は、Pr=0.0918。
引張強度が強すぎると壊れると考えると、信頼度は、
R=1-0.0918=0.9082
となります。
まとめ
「信頼度の点推定と区間推定がわかる(正規分布)」を解説しました。
- ①分布関数
- ➁尤度関数(ゆうど)を作る
- ➂最尤推定量(さいゆう)を導出
- ➃点推定の導出
- ➄区間推定の導出
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