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直列モデルを使った累積ハザード法がよくわかる

信頼性工学

「直列モデルを使った累積ハザード法がわからない」、と困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

直列モデルを使った累積ハザード法がよくわかる
  • ①累積ハザード法の基礎を理解する
  • ➁直列モデルとは
  • ➂直列モデルを使った累積ハザード法の例題
  • ➃直列モデルを使って累積ハザード法を解いてみる
直列モデルを使った累積ハザード法は
相当マニアックですが、折角なので解説します!

①累積ハザード法の基礎を理解する

関連記事で復習

まずは、関連記事を読んでください。この記事をベースに本記事は解説しています。

累積ハザード法がよくわかるし、自分で作れる!
累積ハザード法を使って、信頼度が計算できますか? 本記事は、累積ハザード法を使ったワイブル分布のフィッティングをわかりやすく解説します。確率紙を使わずに、簡単なグラフから求めるコツを伝授します! 信頼性工学を学ぶ人は必読です。

復習すべき大事なポイント

関連記事から、復習すべき大事なポイントは、

  1. 順序統計量に従ってx軸データを大きさ順に並べる
  2. ハザードλと、その和である累積ハザードHを計算
  3. 累積ハザードHから信頼度Rを計算

の3つですね。さらに、

  1. ワイブル確率紙と累積ハザード法の違いがわかること
  2. カプランマイヤー法と累積ハザード法の違いがわかること

の3者の区別も大事ですね。

➁直列モデルとは

図で理解する

不良原因が2つあり、それが直列につながったモデルを想定して、それを累積ハザード法で解析する方法です。

直列モデル

数式で理解する

指数分布でもワイブル分布でもよいですが、単体が次のモデルで表現できるとします。

信頼度Rを
●単体A: \(R_A(t)=exp(-H_A(t))\)
●単体B: \(R_B(t)=exp(-H_B(t))\)
と定義する。
(\(H(t)\)は指数分布、ワイブル分布などが入る

単体AとBを直列につなぐと、信頼度は

信頼度\(R_{AB} (t)\)は、
\(R_{AB}(t)=exp(-H_A(t))×exp(-H_B(t))\)
\(R_{AB}(t)=exp(-(H_A(t)+H_B(t)))\)
(\(H_A(t)\)と(\(H_B(t)\)の和で考えればOK!

なので、累積ハザードHのA,Bの和と、A,Bそれぞれの累積ハザードHを求めてみましょう。

➂直列モデルを使った累積ハザード法の例題

直列モデルでかつ、打切り有る、全盛りパターンを解いてみましょう。

ある金属材料が破断するが、互いに独立な不良モデルA,Bであることがすでに分かっているとする。そこで、試験材料38個をサンプルし、破断時間を測定した。不良モデルA,B単体および直列モデルA+Bについて、累積ハザード法で解析せよ。

データ

サンプル番号
(A)
データti
(D)
故障モードM 打切り有無
○:未故障(打切り有)
×故障(打切り無)
1 18 A ×
2 70 B ×
3 6 A ×
4 35 A ×
5 19 B ×
6 95 B ×
7 67 A ×
8 37 A ×
9 38 A ×
10 14 A ×
11 2 B ×
12 40 B ×
13 88 B ×
14 41 A ×
15 76 B ×
16 4 B
17 22 A ×
18 25 A ×
19 58 B ×
20 29 A ×
21 21 B ×
22 12 B ×
23 16 A ×
24 45 A ×
25 24 B ×
26 49 A ×
27 80 B ×
28 51 A
29 55 A
30 27 B
31 28 B ×
32 57 A ×
33 32 B ×
34 15 B ×
35 84 A ×
36 60 A ×
37 63 A ×
38 73 A

解いてみましょう。

➃直列モデルを使って累積ハザード法を解いてみる

順序統計量に従って小さい順に並び替える

データを並び替えましょう。累積ハザード法の解法の基本ですね。

サンプル番号
(A)
順位i
(B)
逆順位K=n-i+1
(n=20)
(C)
データti
(D)
故障モードM 打切り有無
○:未故障(打切り有)
×故障(打切り無)
11 1 38 2 B ×
16 2 37 4 B
3 3 36 6 A ×
22 4 35 12 B ×
10 5 34 14 A ×
34 6 33 15 B ×
23 7 32 16 A ×
1 8 31 18 A ×
5 9 30 19 B ×
21 10 29 21 B ×
17 11 28 22 A ×
25 12 27 24 B ×
18 13 26 25 A ×
30 14 25 27 B
31 15 24 28 B ×
20 16 23 29 A ×
33 17 22 32 B ×
4 18 21 35 A ×
8 19 20 37 A ×
9 20 19 38 A ×
12 21 18 40 B ×
14 22 17 41 A ×
24 23 16 45 A ×
26 24 15 49 A ×
28 25 14 51 A
29 26 13 55 A
32 27 12 57 A ×
19 28 11 58 B ×
36 29 10 60 A ×
37 30 9 63 A ×
7 31 8 67 A ×
2 32 7 70 B ×
38 33 6 73 A
15 34 5 76 B ×
27 35 4 80 B ×
35 36 3 84 A ×
13 37 2 88 B ×
6 38 1 95 B ×

各モードについて累積ハザードHを計算する

単体については、その単体名がある行だけ計算し、直列モデルはまとめて計算します。式は下表のように計算していきます。

順位i
(B)
逆順位
K=n-i+1
(n=38)
(C)
故障モードM 打切り有無
○:打切有
×打切無
不良率hi
1/(逆順位)
(E)
累積
ハザード値
Hi(A)
累積
ハザード値
Hi(B)
累積
ハザード値
Hi(A+B)
1 38 B × 1/38 1/38 1/38
2 37 B 1/38 1/38+1/37
3 36 A × 1/36 1/36 1/38+1/37+1/36
4 35 B × 1/35 1/38+1/35 1/38+…+1/35
5 34 A 1/36 1/38+…+1/34
6 33 B × 1/33 1/38+1/35+1/33 1/38+…+1/33
7 32 A × 1/32 1/36+1/32 1/38+…+1/32
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

計算のポイントは、

  1. 各順位における不良率を計算するが、打切り有だと計算しない
  2. A,B各モード単体に分けて計算する
  3. 直列モードA+Bは全順位について計算する

実際のデータは下表になります。一度計算すると理解が深まります。

順位i
(B)
逆順位
K=n-i+1
(n=38)
©
故障モードM 打切り有無
○:打切有
×打切無
不良率hi
1/(逆順位)
(E)
累積
ハザード値
Hi(A)
累積
ハザード値
Hi(B)
累積
ハザード値
Hi(A+B)
1 38 B × 0.026 0.026 0.026
2 37 B 0.026 0.026
3 36 A × 0.028 0.028 0.054
4 35 B × 0.029 0.055 0.083
5 34 A × 0.029 0.057 0.112
6 33 B × 0.03 0.085 0.142
7 32 A × 0.031 0.088 0.174
8 31 A × 0.032 0.121 0.206
9 30 B × 0.033 0.119 0.239
10 29 B × 0.034 0.153 0.274
11 28 A × 0.036 0.156 0.309
12 27 B × 0.037 0.19 0.346
13 26 A × 0.038 0.195 0.385
14 25 B 0.19 0.385
15 24 B × 0.042 0.232 0.427
16 23 A × 0.043 0.238 0.47
17 22 B × 0.045 0.277 0.516
18 21 A × 0.048 0.286 0.563
19 20 A × 0.05 0.336 0.613
20 19 A × 0.053 0.389 0.666
21 18 B × 0.056 0.333 0.721
22 17 A × 0.059 0.447 0.78
23 16 A × 0.063 0.51 0.843
24 15 A × 0.067 0.577 0.909
25 14 A 0.577 0.909
26 13 A 0.577 0.909
27 12 A × 0.083 0.66 0.993
28 11 B × 0.091 0.424 1.084
29 10 A × 0.1 0.76 1.184
30 9 A × 0.111 0.871 1.295
31 8 A × 0.125 0.996 1.42
32 7 B × 0.143 0.566 1.563
33 6 A 0.996 1.563
34 5 B × 0.2 0.766 1.763
35 4 B × 0.25 1.016 2.013
36 3 A × 0.333 1.329 2.346
37 2 B × 0.5 1.516 2.846
38 1 B × 1 2.516 3.846

各モードにデータを分けてグラフ化する

単体Aの場合

上表でAについての行だけ取り出します。

A データti
(D)
累積ハザード値H(A) log(ti) logH(A)
1 6 0.028 1.792 -3.584
2 14 0.057 2.639 -2.862
3 16 0.088 2.773 -2.426
4 18 0.121 2.891 -2.115
5 22 0.156 3.091 -1.855
6 25 0.195 3.219 -1.636
7 29 0.238 3.368 -1.434
8 35 0.286 3.556 -1.252
9 37 0.336 3.611 -1.091
10 38 0.389 3.638 -0.945
11 41 0.447 3.714 -0.804
12 45 0.51 3.807 -0.674
13 49 0.577 3.892 -0.551
14 51 0.577 3.932 -0.551
15 55 0.577 4.008 -0.551
16 57 0.66 4.043 -0.416
17 60 0.76 4.095 -0.275
18 63 0.871 4.144 -0.138
19 67 0.996 4.205 -0.004
20 73 0.996 4.291 -0.004
21 84 1.329 4.431 0.285

単体Bの場合

上表でBについての行だけ取り出します。

B データti
(D)
累積ハザード値H(B) log(ti) logH(B)
1 2 0.026 0.693 -3.638
2 4 0.026 1.386 -3.638
3 12 0.055 2.485 -2.903
4 15 0.085 2.708 -2.463
5 19 0.119 2.945 -2.133
6 21 0.153 3.045 -1.877
7 24 0.19 3.178 -1.661
8 27 0.19 3.296 -1.661
9 28 0.232 3.333 -1.462
10 32 0.277 3.466 -1.283
11 40 0.333 3.689 -1.101
12 58 0.424 4.061 -0.859
13 70 0.566 4.249 -0.568
14 76 0.766 4.331 -0.266
15 80 1.016 4.382 0.016
16 88 1.516 4.478 0.416
17 95 2.516 4.554 0.923

直列モデルA+Bの場合

A+B データti
(D)
累積ハザード値H(A+B) log(ti) logH(A+B)
1 2 0.026 0.693 -3.638
2 4 0.026 1.386 -3.638
3 6 0.054 1.792 -2.917
4 12 0.083 2.485 -2.493
5 14 0.112 2.639 -2.189
6 15 0.142 2.708 -1.949
7 16 0.174 2.773 -1.751
8 18 0.206 2.891 -1.581
9 19 0.239 2.945 -1.431
10 21 0.274 3.045 -1.296
11 22 0.309 3.091 -1.173
12 24 0.346 3.178 -1.06
13 25 0.385 3.219 -0.955
14 27 0.385 3.296 -0.955
15 28 0.427 3.333 -0.852
16 29 0.47 3.368 -0.755
17 32 0.516 3.466 -0.663
18 35 0.563 3.556 -0.574
19 37 0.613 3.611 -0.489
20 38 0.666 3.638 -0.407
21 40 0.721 3.689 -0.327
22 41 0.78 3.714 -0.248
23 45 0.843 3.807 -0.171
24 49 0.909 3.892 -0.095
25 51 0.909 3.932 -0.095
26 55 0.909 4.008 -0.095
27 57 0.993 4.043 -0.007
28 58 1.084 4.061 0.08
29 60 1.184 4.095 0.169
30 63 1.295 4.144 0.258
31 67 1.42 4.205 0.35
32 70 1.563 4.249 0.446
33 73 1.563 4.291 0.446
34 76 1.763 4.331 0.567
35 80 2.013 4.382 0.699
36 84 2.346 4.431 0.853
37 88 2.846 4.478 1.046
38 95 3.846 4.554 1.347

結果をグラフ化

A,B単体と、直列モデルA+Bを累積ハザード法で計算しました。グラフはこうなります。

累積ハザード法

まとめ

「直列モデルを使った累積ハザード法がよくわかる」を解説しました。

  • ①累積ハザード法の基礎を理解する
  • ➁直列モデルとは
  • ➂直列モデルを使った累積ハザード法の例題
  • ➃直列モデルを使って累積ハザード法を解いてみる


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