【信頼性工学】ワイブル分布がわかる
「ワイブル分布が難しくて、よくわからない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①確率密度関数を導出するモデルを理解する
- ➁ワイブル分布とは
- ➂故障率λの計算
- ➃ワイブル分布の期待値と分散の計算
- ➄故障率曲線との関係
①確率密度関数を導出するモデルを理解する
故障率は指数分布だけではない
特に信頼性工学の入門を解説している教科書やサイトは、
とインプットされがちです。
故障分布に合わせた確率密度関数を作る
例えば、寿命試験結果が以下のヒストグラムになったとします。
この図よく見ると、
なのに、
分布の種類
よく使う、確率密度関数で良いです。
- 一様分布
- 指数分布
- 正規分布
- ガンマ分布
- ワイブル分布
ガンマ分布とワイブル分布は無理矢理感がありますが、信頼性工学でよく使います。
大事なのは、
例えば、2次関数とかでも使ってもいいと思います。
では、個々の分布関数を見ていきます。
➁ワイブル分布とは
ワイブル分布の確率密度関数の考え方
ワイブル分布とは、
●信頼度\(R(t)\)=\(exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
●確率密度関数\(f(t)\)=\(\frac{α}{β}(\frac{t}{β})^{α-1}exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
で表現される難しい関数
ワイブル分布は指数分布から考えるとわかりやすい
いきなり、
●\(R(t)\)=\(exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
●\(f(t)\)=\(\frac{α}{β}(\frac{t}{β})^{α-1}exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
と出されても、「何じゃこりゃ!」、「どこから出てきたん?」と思考停止になりますよね。
なので、式のパーツをよく見ると
●\(exp(-t)\) (指数関数)
⇒●\(exp(-(\frac{t}{β})\) (定数\(β\)を導入して)
⇒●\(exp(-(\frac{t}{β})^α)\) (定数\(α\)乗も追加)
と式を発展させていったと考えましょう。
ワイブル分布の定数\(α\),定数\(β\)の意味
\(f(t)\)=\(\frac{α}{β}(\frac{t}{β})^{α-1}exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
の定数\(α\),定数\(β\)が
●\(α\)=1
●\(β\)=1
のとき、
\(R(t)\)=\(exp(-t)\)
と指数分布になります。
定数\(α\)の意味
では、定数\(β\)=1を固定して、定数\(α\)の値を変えて、\(R(t)\)のグラフを見てみましょう。
定数\(α\)は指数乗に入る定数なので、
信頼度を一気に下げるか、上げるかの調整をする定数と考えるとよいでしょう。
定数\(β\)の意味
では、定数\(α\)=1を固定して、定数\(β\)の値を変えて、\(R(t)\)のグラフを見てみましょう。
定数\(β\)は変数\(t\)との比として扱う定数なので、
変数\(t\)の(主に時間の変化)と信頼度の値を調整するときに使う定数として考えるとよいでしょう。
信頼度\(R(x)\)と不信頼度\(F(x)\)の関係
これ混同しがちなので、きちっと整理しましょう。
信頼度はReliabilityと英語で書くので、信頼度\(R(x)\)と書きます。
不信頼度は失敗のFailureを英語で使って、不信頼度(故障度) \(F(x)\)と書きます。
そして大事な関係式があります。簡単です!
\(\displaystyle \frac{dR(x)}{dx} \)=-\(\displaystyle \frac{dF(x)}{dx} \)
(\(\)R(x)=1-\(F(x)\)の式を両辺\(x\)で微分)
また、
も成り立ちます。よく使いますが、頭が混乱しやすいので整理して理解しましょう。
➂故障率λの計算
故障率とは、\(f(x)\)と\(R(x)\)との比で計算します。ワイブル分布の場合、
●信頼度\(R(t)\)=\(exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
●確率密度関数\(f(t)\)=\(\frac{α}{β}(\frac{t}{β})^{α-1}exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
で表現される難しい関数
機械的に
\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)をします。
\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)
=\(\frac{α}{β}(\frac{t}{β})^{α-1}exp(-(\frac{t}{β})^α)\)/ \(exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
=\(\frac{α}{β}(\frac{t}{β})^{α-1}\)
となります。
ここで、定数\(α\)の値によって、故障率曲線の特徴が3つに分けられます。これはあとで解説します。
➃確率密度関数の平均と分散の計算
ガンマ関数は名脇役!
先に書いて復習しましょう。関連記事でも解説しています。ご確認下さい。
ガンマ関数がよくわかる(その2_大学数学編) ガンマ関数がさらっと解けますか?本記事では、ガンマ関数の性質とベータ関数との関係式を高校数学を駆使してわかりやすく解説しています。ガンマ関数に慣れずに苦戦している人は必読です。 |
大事なのは、
期待値E[\(x\)]の計算
期待値E[\(x\)]は
期待値E[\(x\)]=\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x f(x) dx\)
です。積分範囲は正になるので、[0,∞]でOKです。
さて、問題なのが、\(f(x)\)
\(f(t)\)=\(\frac{α}{β}(\frac{t}{β})^{α-1}exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
に\(x\)をかけて積分するのが大変! っていうか積分できるの?
やってみましょう。
●E[\(x\)]=\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x f(x) dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x f(x) dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x \frac{α}{β}(\frac{x}{β})^{α-1}exp(-(\frac{x}{β})^α) dx\)
=(式1)
結構しんどそうな式ですね。
よく見ると、
\( x exp(-x)dx\)で、\(exp\)の中が\((\frac{t}{β})^α\)と厄介なので、\(u=(\frac{t}{β})^α\)と丸ごと置換してしまおう!作戦で積分します。
\(t\)=\((\frac{x}{β})^α\)とおくと、
\(\displaystyle \frac{dt}{dx} \)=\(\frac{α t^{α-1}}{β^α}\)より、
\(\displaystyle dt\)=\(\frac{α t^{α-1}}{β^α}\displaystyle dx\)より、
を(式1)に代入します。
(式1)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x exp(-t) dt\)
=(式2)
とすっきりしますが、\(x\)が1つ残ってしまいます。
\(x\)⇒\(t\)に変えるため、
\(t\)=\((\frac{x}{β})^α\)
から
\(x\)=\(βt^{1/α}\)
として(式2)へ代入します。
(式2)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} βt^{1/α} exp(-t) dt\)
はΓ関数を使うと、
=\(βΓ(\frac{1}{α}+1)\)
となります。
できましたね!
結果は、
期待値E[\(x\)]=\(βΓ(\frac{1}{α}+1)\)
分散の計算
分散も計算が大変そうですが、期待値が計算できたら、意外と簡単にできます。
期待値E[\(x^2\)]の計算
期待値E[\(x^2\)]は
\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x^2 f(x) dx\)
です。
期待値E[\(x\)]と同様に置換積分で攻略します!
●E[\(x^2\)]=\(\displaystyle \int_{-∞}^{∞} x^2 f(x) dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 f(x) dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 \frac{α}{β}(\frac{x}{β})^{α-1}exp(-(\frac{x}{β})^α) dx\)
=(式1)
\(t\)=\((\frac{x}{β})^α\)とおくと、
\(\displaystyle \frac{dt}{dx} \)=\(\frac{α t^{α-1}}{β^α}\)より、
\(\displaystyle dt\)=\(\frac{α t^{α-1}}{β^α}\displaystyle dx\)より、
を(式1)に代入します。
(式1)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} x^2 exp(-t) dt\)
=(式2)
とすっきりしますが、\(x^2\)が1つ残ってしまいます。
\(x\)⇒\(t\)に変えるため、
\(t\)=\((\frac{x}{β})^α\)
から
\(x^2\)=\(β^2 t^{2/α}\)
として(式2)へ代入します。
(式2)
=\(\displaystyle \int_{0}^{∞} β^2 t^{2/α} exp(-t) dt\)
はΓ関数を使うと、
=\(β^2 Γ(\frac{2}{α}+1)\)
となります。
できましたね!
分散V[\(x\)]の計算
分散V[\(x\)]は
分散V[\(x\)]= E[\(x^2\)]- E[\(x\)]2
より、
V[\(x\)]= E[\(x^2\)]- E[\(x\)]
=\(β^2 Γ(\frac{2}{α}+1)\)-\((βΓ(\frac{1}{α}+1))^2\)
=\(β^2 (Γ(\frac{2}{α}+1)- Γ(\frac{1}{α}+1))\)
となります。
できましたね!
以上、まとめると、
●期待値E[\(x\)]=\(βΓ(\frac{1}{α}+1)\)
●分散V[\(x\)]=\(β^2 (Γ(\frac{2}{α}+1)- Γ(\frac{1}{α}+1))\)
➄故障率曲線との関係
故障率λの計算
➂で計算した通り、ワイブル分布の場合、
\(λ(t)\)=\(f(t)/R(t)\)
=\(\frac{α}{β}(\frac{t}{β})^{α-1}exp(-(\frac{t}{β})^α)\)/ \(exp(-(\frac{t}{β})^α)\)
=\(\frac{α}{β}(\frac{t}{β})^{α-1}\)
となります。
ここで、定数\(α\)の値によって、故障率曲線の特徴が3つに分けられます。変数\(t\)の指数が\(α-1\)なので、以下の3つに分けられます。
- \(α-1\) < 0 ⇒ 初期故障期(DFR)
- \(α-1\) = 0 ⇒ 偶発故障期(CFR)
- \(α-1\) > 0 ⇒ 摩耗故障期(IFR)
バスタブ曲線との関係を考えましょう。
ここで、バスタブ曲線のタイプを3つに分けると
- \(α\) < 1 ⇒ 初期故障期(DFR)
- \(α\) =1⇒ 偶発故障期(CFR)
- \(α\) > 1 ⇒ 摩耗故障期(IFR)
と分けることができます。
まとめ
「【信頼性工学】ワイブル分布がわかる」を解説しました。
- ①確率密度関数を導出するモデルを理解する
- ➁ワイブル分布とは
- ➂故障率λの計算
- ➃ワイブル分布の期待値と分散の計算
- ➄故障率曲線との関係
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119