品質工学、動特性、誤差因子1つの場合がわかる
「品質工学の動特性がよくわからない」などと困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
おさえておきたいポイント
- ①繰り返しのある単回帰分析から始める
- ➁データの構造式
- ➂2乗和の分解(数式)
- ➃2乗和の分解(事例)
- ➄よく使う公式の導出
- ⑥SN比
ロバストパラメータ設計
タグチメソッド
手法に溺れるな!
数式と理論で理解しよう!
品質工学、ロバストパラメータ設計、タグチメソッド
結局わからない!
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品質工学の動特性=回帰分析
なのに、わざわざ違うものとして扱っている
品質工学の独自性を出したいんでしょうけど、むしろ品質工学を理解しにくくしている!
品質工学の動特性は回帰分析と同じですよ! 回帰分析の公式をそのまま使えばいいんですよ。
①繰り返しのある単回帰分析から始める
品質工学、動特性、誤差因子1つの場合
誤差因子が1つある動特性のデータとは、誤差因子N(水準\(i\)=1,…n)に対してそれぞれ動特性データ(\(x,y\))があるイメージです。下表と下図にイメージを載せます。本記事では、わかりやすく説明するため、誤差因子は2水準(n=2)で考えます。
\(N_i\)/\(x_j\) | \(x_1\) | \(x_2\) | … | \(x_k\) |
\(N_1\) | \(y_{11}\) | \(y_{12}\) | … | \(y_{1k}\) |
\(N_2\) | \(y_{21}\) | \(y_{22}\) | … | \(y_{2k}\) |
繰り返しのある単回帰分析から始める
上表をよく見ると、
と同じなんです!
データ表で比較すると、
動特性 | \(x_1\) | \(x_2\) | … | \(x_k\) |
\(N_1\) | \(y_{11}\) | \(y_{12}\) | … | \(y_{1k}\) |
\(N_2\) | \(y_{21}\) | \(y_{22}\) | … | \(y_{2k}\) |
単回帰 | \(x_1\) | \(x_2\) | … | \(x_k\) |
– | \(y_{11}\) | \(y_{12}\) | … | \(y_{1k}\) |
– | \(y_{21}\) | \(y_{22}\) | … | \(y_{2k}\) |
さらに、
の回帰直線は
動特性の\(\hat{y_j}\)=\(βx_j\)です。
なので、繰り返しのある単回帰分析でいいじゃん!でOKなんですけど
品質工学の動特性を解説します。
繰り返しのある単回帰分析については関連記事で解説していますので、確認ください。
繰返しのある単回帰分析の分散分析がよくわかる 繰返しのある単回帰分析の分散分析や当てはまりの悪さが何かが説明できますか?本記事では繰返しのある単回帰分析と実験計画法の一元配置実験を使って、分散分析をわかりやすく解説します。回帰分析をマスターしたい方は必読です。 |
➁データの構造式
繰り返しのある単回帰分析
繰り返しのある単回帰分析のデータの構造式は
誤差因子1つの動特性
誤差因子1つの動特性のデータの構造式は
繰り返しのある単回帰分析から動特性への導出
繰り返しのある単回帰分析から
誤差因子1つの動特性のデータの構造式へは、
下図の①➁➂の手順で変形していけば、導出できます。
誤差因子1つの動特性は同じだと
データの構造式からわかりますよね。
➂2乗和の分解(数式)
2乗和の分解を解説
誤差因子1つの動特性のデータの構造式は
\(y_{ij}\)=\(\hat{y_j}\)+\((\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})+(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)
ですから、
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}y_{ij}^2\)=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}\hat{y_j}^2\)+\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} (\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})^2\)+\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} (y_{ij}-\hat{y_{ij}})^2\)
となりますが、実際に証明してみましょう。
なんでもそうですが、
- モデル式(データの構造式)を立てる
- 2乗和の分解、直交性を実際解いて確かめる
- 分散分析に持ち込む
がQCの基本です。
2乗和の分解を証明
実際に導出してみましょう。機械的に2乗して展開します。
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} y_{ij}^2\)=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}(\hat{y_j}\)+\((\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})+(y_{ij}-\hat{y_{ij}}))^2\)
=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}(\hat{y_j}^2\)+\((\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})^2\)+\((y_{ij}-\hat{y_{ij}})^2\)
+2\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})\)
+2\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)
+2\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\))
●\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})\)=0
●\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)=0
●\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)=0
と3項とも0になることを証明します。
ここで、回帰から2つの制約条件を使います。
- \(β\)=\(\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} β_i\)
- 回帰直線は必ず平均を通るので、
回帰直線上のy座標の値の合計は
測定データy座標の合計と等しい。
全回帰の傾き\(β\)は各回帰\(β_i\)の平均
全回帰の傾き\(β\)と各回帰の傾き\(β_i\)はもともと、
\(\frac{S_{xy}}{S_{xx}}\)
の式で表現できます。
●全回帰の傾き\(β\)
\(β\)=\(\frac{S_{xy}}{S_{xx}}\)
=\(\frac{\sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{k}(x_j-\bar{x})(y_{ij}-\bar{y})}{\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}(x_j-\bar{x})^2}\)
=\(\frac{\sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{k}(x_j-\bar{x})((y_{1j}-\bar{y})+…+(y_{nj}-\bar{y}))}{n \sum_{j=1}^{k}(x_j-\bar{x})^2}\)
=\(\frac{\sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{k}(x_j-\bar{x})((y_{1j}-\bar{y_1})+…+((y_{nj}-\bar{y_n})}{n \sum_{j=1}^{k}(x_j-\bar{x})^2}\)
=\(\frac{S_{xy1}+…+S_{xyn}}{nS_{xx0}}\)
=\(\frac{1}{n}(β_1+…+β_n)\)
となり、平均になりますね。
●各回帰の傾き\(β_i\)
\(β_i\)=\(\frac{S_{xyi}}{S_{xxi}}\)
=\(\frac{\sum_{j=1}^{k}(x_j-\bar{x})(y_{ij}-\bar{y_i})}{\sum{j=1}^{k}(x_j-\bar{x})^2}\)
=\(\frac{S_{xyi}}{S_{xx0}}\)
回帰分析の良い演習にもなりますね。結構ハードな式導出です。
回帰直線は必ず平均を通る条件を使う
回帰直線は、必ず平均を通ります。
つまり、平均×個数=総和ですから、
回帰直線上の全点数の\(\hat{y_i}\)座標の合計は
計測データ\(y_i\)の合計と同じになります。
この条件を使うと、
●全回帰において、 \(\hat{y_j}\)=\(βx_j\) は平均(\(\bar{y},\bar{x}\))を通るので、
データ個数倍すると、 (平均)×(個数)=(総和)より
\(\sum_{j=1}^{k}\hat{y_j}\)=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} y_{ij}\)が成り立つし、
●各\(i\)回帰において、 \(\hat{y_{ij}}\)=\(β_i x_j\) は平均(\(\bar{y_i},\bar{x}\))を通るので、
データ個数倍すると、 (平均)×(個数)=(総和)より
\(\sum_{j=1}^{k}\hat{y_{ij}}\)=\(\sum_{j=1}^{k} y_{ij}\)が成り立つ
この性質を使って、さっきのマーカ部の和が0になる事を証明します。
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})\)=0の証明
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})\)
=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})\)
ここで、\(β\)=\(\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} β_i\)を使います。
=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(β_i x_j-β x_j)\)
=\(\sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}((β_1+…+β_n) x_j-nβ x_j)\)
=\(\sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(0)\)
=0
となります。
残り2つの式は、回帰直線は平均値を通る性質を使って証明します。
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)=0の証明
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)
=\( \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}\sum_{i=1}^{n} (y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)
=\( \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j} 0\)
=0
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)=0の証明
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)
=\(\sum_{i=1}^{n} (\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})\sum_{i=1}^{n} (y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)
=0×0
=0
以上まとめると、
●\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})\)=0
●\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} \hat{y_j}(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)=0
●\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}(\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})(y_{ij}-\hat{y_{ij}})\)=0
より、
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}y_{ij}^2\)=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}\hat{y_j}^2\)+\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} (\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})^2\)+\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} (y_{ij}-\hat{y_{ij}})^2\)
となります。
結構大変な計算ですが、端折らず一回は計算しましょう。ここを端折ると品質工学の動特性の式の意味を理解できません。
➃2乗和の分解(事例)
上の2乗和を証明しましたが、関連記事にて、実データを使って、2乗和の分解ができることを確認しています。ここやれば大丈夫! 是非確認ください。
品質工学、動特性、誤差因子1つの変動の分解がわかる 品質工学、動特性、誤差因子1つの場合を使いこなせますか? 本記事では、 動特性で誤差因子が1つの場合において、データの構造式、変動の分解、公式を丁寧に導出し、実データを使って実際に公式が成り立つことを確認できます。教科書では端折りがちな大事な導出部分をしっかり理解しましょう。 |
➄よく使う公式の導出
有効除数、線形式、傾きの導出
すでに回帰分析手法から導出していますが、動特性でよく使う公式を上げておきます。全部回帰分析から導出できるので、一緒に理解しておくと、混乱しないし、効率よく覚えられますよね。
- 有効除数\(r_i\)=\(r\)(共通)=\(S_{xx0}\)=\(\sum_{j=1}^{k}x_j^2\)
- 線形式\(L_j\)=\(S_{xyi}\)=\(\sum_{j=1}^{k} x_j y_{ij}\)
- 傾き\(β_i\)=\(\frac{S_{xyi}}{S_{xx0}}\)=\(\frac{L_i}{r}\)
- 傾き\(β\)=\(\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}β_i\)
変動
先の2乗和の分解式を再掲すると、
\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}y_{ij}^2\)=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}\hat{y_j}^2\)+\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} (\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})^2\)+\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} (y_{ij}-\hat{y_{ij}})^2\)
となります。
●(左辺)= \(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}y_{ij}^2\)=\(S\)
●(右辺)第1項=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} (\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})^2\)\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k}\hat{y_j}^2\)=\(S_β\) (比例項の変動)
●(右辺)第2項=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} (\hat{y_{ij}}-\hat{y_j})^2\)=\(S_{N×β}\) (誤差因子Nの変動)
●(右辺)第3項=\(\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{k} (y_{ij}-\hat{y_{ij}})^2\)=\(S_e\)(誤差変動)
にそれぞれ分解すると、
\(S\)=\(S_β\)+\(S_{N×β}\)+\(S_e\)
と変動を分解することができます。
また自由度を入れて分散分析表を入れると下表になります。実験計画法と自由度が若干異なる点に注意しましょう。
変動 | 自由度 | |
比例項 | \(S_β\) | 1 |
誤差因子N | \(S_{N×β}\) | \(n-1\) |
誤差変動 | \(S_e\) | \(nk-n\) |
総変動 | \(S\) | \(nk\) |
⑥SN比
SN比は定義式通り当てはめるよりは、
●有効成分
●有害成分
がそれぞれどの変動に該当するかを吟味して比をとればOKです。
例えば
●SN比 η=\(\frac{S_β}{S_e}\)
とか、logをつけるとかいろいろ使いやすい値にカスタマイズしてください。
まとめ
「品質工学、動特性、誤差因子1つの場合がわかる」を解説しました。
- ①繰り返しのある単回帰分析から始める
- ➁データの構造式
- ➂2乗和の分解(数式)
- ➃2乗和の分解(事例)
- ➄よく使う公式の導出
- ⑥SN比
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119