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逐次抜取検査の合格判定線を作るときの注意点

抜取検査

「逐次抜取検査で注意すべき点があるのか、わからない」、など困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

逐次抜取検査の注意点がわかる

結論

合格判定線の導出モデルの精度が良くない点に注意が必要!

以上です!

としたいですが、詳細に解説します。

  • ①合格判定線の導出モデルの精度が良くない点に注意
  • ②計数逐次抜取検査(二項分布)の場合
  • ③計数逐次抜取検査(ポアソン分布)の場合
  • ④計量逐次抜取検査(σ既知&σ未知)の場合

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計数値逐次抜取検査、計量値の抜取検査の基礎についての関連記事を紹介します。併せて読んでください。




②計数逐次抜取検査(二項分布)の場合

合格判定線の導出過程

計数値の抜取検査はすべて、OC曲線から考えます。

OC曲線を描きます

OC曲線

赤枠はロットの不合格領域で、青枠がロットの合格領域です。

生産者危険を示す不良率p0、消費者危険を示す不良率p1とロット不良率について図から読むと
q0n=1-α、1-q0n
q1n=β、1- q1n=1-β
となります。

q0nとq1nの式を作ります。
\(q_{0n}\)=\({}_nC_d p_0^d(1-p_0)^{n-d}\)
\(q_{1n}\)=\({}_nC_d p_1^d(1-p_1)^{n-d}\)
注意として、不良品数dに限定します。通常はロットの合格率はΣの和となりますが、今回はΣを入れません(強引な感じがしますけど)

下の関連記事に、導出の詳細な過程を解説しています。

次に、問題点を指摘します。

合格判定線の導出過程の問題点

\(q_{0n}\),\(q_{1n}\)は本来、
\(q_{0n}\)=\(\sum_{r=1}^{d} {}_nC_r p_0^r(1-p_0)^{n-r}\)
\(q_{1n}\)=\(\sum_{r=1}^{d} {}_nC_r p_1^r(1-p_1)^{n-r}\)
とすべきだが、
\(q_{0n}\)=\({}_nC_d p_0^d(1-p_0)^{n-d}\)
\(q_{1n}\)=\({}_nC_d p_1^d(1-p_1)^{n-d}\)
と簡略化して点が問題。

なぜ、簡略化するかというと、

比 \(\frac{q_{1n}}{q_{0n}}\)を計算しやすくするために、
\(q_{0n}\)=\(\sum_{r=1}^{d} {}_nC_r p_0^r(1-p_0)^{n-r}\)
\(q_{1n}\)=\(\sum_{r=1}^{d} {}_nC_r p_1^r(1-p_1)^{n-r}\)
ではなく、
\(q_{0n}\)=\({}_nC_d p_0^d(1-p_0)^{n-d}\)
\(q_{1n}\)=\({}_nC_d p_1^d(1-p_1)^{n-d}\)
としている。

確かに、
比\(\frac{q_{1n}}{q_{0n}}\)=\(\frac{\sum_{r=1}^{d} {}_nC_r p_1^r(1-p_1)^{n-r}}{\sum_{r=1}^{d} {}_nC_r p_0^r(1-p_0)^{n-r}}\)
とすると、これ以上、式の導出が難しいです。

一方、
比\(\frac{q_{1n}}{q_{0n}}\)=\(\frac{ {}_nC_d p_1^d(1-p_1)^{n-d}}{ {}_nC_d p_0^d(1-p_0)^{n-d}}\)
とすると、式の導出がしやすいです。

ただし、Σを無視して比\(\frac{q_{1n}}{q_{0n}}\)を計算しているため、比の値の精度は低下したものを使って、合格判定線を導出している点に注意が必要です。

③計数逐次抜取検査(ポアソン分布)の場合

二項分布の場合と同様の結果ですが、式が異なるため詳細に解説します。

合格判定線の導出過程

q0nとq1nの式を作ります。
\(q_{0n}\)=\(e^{-np_0}\frac{(np_0)^d}{d!}\)
\(q_{1n}\)=\(e^{-np_1}\frac{(np_1)^d}{d!}\)
です。

注意として、不良品数dに限定します。通常はロットの合格率はΣの和となりますが、今回はΣを入れません(強引な感じがしますけど)

下の関連記事に、導出の詳細な過程を解説しています。

次に、問題点を指摘します。

合格判定線の導出過程の問題点

\(q_{0n}\),\(q_{1n}\)は本来、
\(q_{0n}\)=\(\sum_{r=1}^{d} e^{-np_0}\frac{(np_0)^r}{r!}\)
\(q_{1n}\)=\(\sum_{r=1}^{d} e^{-np_1}\frac{(np_1)^r}{r!}\)
とすべきだが、
\(q_{0n}\)=\(e^{-np_0}\frac{(np_0)^d}{d!}\)
\(q_{1n}\)=\(e^{-np_1}\frac{(np_1)^d}{d!}\)
と簡略化して点が問題。

なぜ、簡略化するかというと、

比 \(\frac{q_{1n}}{}q_{0n}\)を計算しやすくするために、
\(q_{0n}\)=\(\sum_{r=1}^{d} e^{-np_0}\frac{(np_0)^r}{r!}\)
\(q_{1n}\)=\(\sum_{r=1}^{d} e^{-np_1}\frac{(np_1)^r}{r!}\)
ではなく、
\(q_{0n}\)=\(e^{-np_0}\frac{(np_0)^d}{d!}\)
\(q_{1n}\)=\(e^{-np_1}\frac{(np_1)^d}{d!}\)
としている。

確かに、
比\(\frac{q_{1n}}{q_{0n}}\)=\(\frac{\sum_{r=1}^{d} e^{-np_1}\frac{(np_1)^r}{r!}}{ \sum_{r=1}^{d} e^{-np_0}\frac{(np_0)^r}{r!}}\)
とすると、これ以上、式の導出が難しいです。

一方、
比\(\frac{q_{1n}}{q_{0n}}\)=\(\frac{ e^{-np_0}\frac{(np_1)^d}{d!}}{ e^{-np_1}\frac{(np_0)^d}{d!}}\)
とすると、式の導出がしやすいです。

ただし、Σを無視して比\(\frac{q_{1n}}{q_{0n}}\)を計算しているため、比の値の精度は低下したものを使って、合格判定線を導出している点に注意が必要です。

④計量逐次抜取検査(σ既知&σ未知)の場合

計量値の場合の問題点を提示します。

σ既知、σ未知の両方に共通しています。

合格判定線の導出過程

確率変数xは、母平均μ、母標準偏差σとする正規分布に従っており、その確率密度関数を定義します。

\(f(x)\)=\(\frac{1}{σ\sqrt{2π}} exp(-\frac{1}{2}(\frac{x-μ}{σ})^2)\)

次に、ロットから大きさn個を抜き取ったときの確率密度関数を定義します。

●母平均μが未知で、母標準偏差σが既知の場合

●母平均値が\(μ_0\)の場合、
\(p_{0n}\)=\(f(x_1)f(x_2)…f(x_n)\)
=\((\frac{1}{σ\sqrt{2π}})^n exp(-\frac{1}{2σ^2} \sum_{i=1}^{n}(x_i-μ_0)^2)\)

●母平均値が\(μ_1\)の場合
\(p_{1n}\)=\(f(x_1)f(x_2)…f(x_n)\)
=\((\frac{1}{σ\sqrt{2π}})^n exp(-\frac{1}{2σ^2} \sum_{i=1}^{n}(x_i-μ_1)^2)\)

●母平均μが既知で、母標準偏差σが未知の場合

●母標準偏差が\(σ_0\)の場合
\(p_{0n}\)=\(f(x_1)f(x_2)…f(x_n)\)
=\((\frac{1}{σ_0 \sqrt{2π}})^n exp(-\frac{1}{2σ_0^2} \sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2)\)

●母標準偏差が\(σ_1\)の場合
\(p_{1n}\)=\(f(x_1)f(x_2)…f(x_n)\)
=\((\frac{1}{σ_1\sqrt{2π}})^n exp(-\frac{1}{2σ_1^2} \sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2)\)

確率密度関数の積を定義して、計算するところが、無理矢理な感じがしますが、合格判定線を導出に必要なためです。

下の関連記事に、導出の詳細な過程を解説しています。

次に、問題点を指摘します。

合格判定線の導出過程の問題点

\(p_{0n}\),\(p_{1n}\)は本来、
OC曲線を与える関数式から作る
とすべきだが、
確率密度関数の積の式を作って、合格判定線を作る
点が問題。
計量抜取検査のOC曲線の関数を導出ができないため、
代わりに合格判定線を作れる関数を持ってくる必要があった。
結果的に確率密度関数の積
\(p_{0n}\)=\(f(x_1)f(x_2)…f(x_n)\)
=\((\frac{1}{σ_0 \sqrt{2π}})^n exp(-\frac{1}{2σ_0^2} \sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2)\)
を使うことになっている。

合格判定線を導出する過程で、精度が保証していない点に注意が必要です。

【まとめると】
合格判定線の精度は怪しいです。
けど、わかりやすくて使いやすいです。
合格判定線を引いて、実際に検査をしながら、
判定線の傾きと切片を調整していくのが実情なのでしょう。

理論を理解することは大切です。
実際の精度は検査結果や実績を見ながら調整しましょう。

まとめ

逐次抜取検査で注意すべき点について解説しました。

  • ①合格判定線の導出モデルの精度が良くない点に注意
  • ②計数逐次抜取検査(二項分布)の場合
  • ③計数逐次抜取検査(ポアソン分布)の場合
  • ④計量逐次抜取検査(σ既知&σ未知)の場合

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