2回抜取検査の第1サンプルの合格判定数acが導出できる
「JISZ9015 AQL指標型抜取検査方式の2回抜取検査の第1サンプルのac,reはどう決まっているのか?」、「なぜ全合格判定個数の半分程度になっているのかがわからない」など困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
2回抜取検査の第1サンプルの合格判定数acが導出できる
- ①2回抜取検査のメリットは平均検査量が少ないこと
- ②2回抜取検査は1回抜取検査と同じOC曲線であること
①①2回抜取検査のメリットは平均検査量が少ないこと
1回目の抜取検査で終了できれば平均検査量は減らせる
2回抜取検査のメリットは、平均検査量が減らせることですが、
デメリットは、検査回数が増えて手間であることです。
●検査個数
・2回抜取方式で検査する場合: 1回目はn1個、2回目はn2個を検査
・1回抜取方式で検査する場合: n1+n2個を検査
●検査終了の場合分け
・2回抜取方式において、1回目で検査終了する確率をp1,2回目まで検査する確率をp2とします。
●期待値の平均検査量Iを導出
・2回抜取方式の平均検査量I2=n1p1+n2p2
・1回抜取方式の平均検査量I1=n1+n2
●平均検査量の差分
I1– I2
=(n1+n2)-(n1p1+n2p2)
=n1(1-p1)+n2(1-p2)
> 0
((1-p1) > 0かつ (1-p2) > 0)
数式で証明しましたが、1回目の検査で終了する場合があるため、2回抜取検査の平均検査量は1回抜取検査より少なくできます。
詳細は、関連記事に解説しています。
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ポアソン分布についても解説しています。
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1回目、2回目の検査量と合格判定数の配分方法
と思いますよね。
平均検査量を減らすには、なるべく1回目の検査で終わらせて、2回目の検査は無しで済ませたい!と考えますよね。
1回目の検査数は少なく、合格判定数ac1は多く(ac2以下に注意して)すればよい!
そこで、次のクイズを考えます。
平均検査量が少ないのはどれ?
(a) (JISZ9015 AQL指標型抜取検査方式のなみ検査 AQL=1.5%の場合)
1回目試料数50個、合格判定1個、不合格判定3個
2回目試料数50個、合格判定4個、不合格判定5個
しかし、平均検査量を下げたいので、次の2条件を考えた。
(b)1回目の試料数を減らし、合格判定数を増やす場合
1回目試料数20個、合格判定3個、不合格判定4個
2回目試料数80個、合格判定4個、不合格判定5個
(c) 1回目の試料数を増やし、合格判定数を減らす場合
1回目試料数80個、合格判定0個、不合格判定4個
2回目試料数20個、合格判定1個、不合格判定5個
どの方法が最も平均検査量が少ないか?
1回目の検査数は少なく、合格判定数ac1は多く(ac2以下に注意して)すればよい!
わけですから、クイズの正解は、「b」ですね。
実際に3条件の平均検査量をプロットしましょう。
確かに、(b)の条件が平均検査量Iは少ないですね。
でも、ここで、疑問が1つあります。
なぜ、
1回目試料数50個、合格判定1個、不合格判定3個
2回目試料数50個、合格判定4個、不合格判定5個
なのでしょうか?
平均検査量Iをもっと減らした方が、検査の効率がいいですよね。
実は、平均検査量だけで判断するのは、不十分です。それを次で解説します。
②2回抜取検査は1回抜取検査と同じOC曲線であること
抜取検査回数に関係しないし、してはいけません。
つまり、
1回抜取検査と2回抜取検査の合否判断は同じでなければなりません。
1回抜取検査と2回抜取検査のOC曲線はほぼ等しくなければなりません。
平均検査量を減らした場合のOC曲線を比較
上の例の3条件をOC曲線で描いてみましょう。
(a) (JISZ9015 AQL指標型抜取検査方式のなみ検査 AQL=1.5%の場合)
1回目試料数50個、合格判定1個、不合格判定3個
2回目試料数50個、合格判定4個、不合格判定5個
しかし、平均検査量を下げたいので、次の2条件を考えた。
(b)1回目の試料数を減らし、合格判定数を増やす場合
1回目試料数20個、合格判定3個、不合格判定4個
2回目試料数80個、合格判定4個、不合格判定5個
(c) 1回目の試料数を増やし、合格判定数を減らす場合
1回目試料数80個、合格判定0個、不合格判定4個
2回目試料数20個、合格判定1個、不合格判定5個
ここで、1回抜取方式では(n,c)=(100,4)のOC曲線を描いています。
黒線の1回抜取方式のOC曲線に近いことが、2回抜取方式で求められます。
条件(b)(c)は1回抜取方式のOC曲線から大きく外しています。
これでは、平均検査量を変えても意味が無いとわかります。
黒線の1回抜取方式のOC曲線に近いのは、条件(a)の
1回目試料数50個、合格判定1個、不合格判定3個
2回目試料数50個、合格判定4個、不合格判定5個
まとめると、2回抜取方式で検査する条件は
①平均検査量Iをなるべく減らすこと
②1回抜取方式のOC曲線から外さないこと
であるとわかります。
1回目、2回目の検査量と合格判定数の配分(JIS抜取表)
1回抜取方式 (n,c)=(100,4)のOC曲線に近い
2回抜取方式はどれかを考えます。
JISの抜取表にある
1回目試料数50個、合格判定1個、不合格判定3個
2回目試料数50個、合格判定4個、不合格判定5個
の決め方を見ましょう。
なお、2回抜取方式では、
n1=50,n2=50,ac2=4,re5=5は固定し、
ac1,re1をいろいろ振ってOC曲線を比較します。
そこで、次のクイズを考えます。
1回抜取検査OC曲線に最も近いのはどれ?
条件
条件 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
n1 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
ac1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 4 |
re1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 2 | 3 | 4 | 5 | 3 | 4 | 5 | 4 | 5 | 5 |
n2 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
ac2 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
re2 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 |
OC曲線を描きます。
1回抜取OC曲線と距離を評価するために、各条件のある不良率pにおけるロット不良率L(p)との差分の2乗和で評価します。つまり、
S(各条件)=\(\sum (L(p)_{1回抜取}-L(p)_{各条件})^2\)
S(各条件)の小さい順に順位をつけると下表のようになりました。
条件 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
n1 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
ac1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 4 |
re1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 2 | 3 | 4 | 5 | 3 | 4 | 5 | 4 | 5 | 5 |
n2 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
ac2 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
re2 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 |
順位 | 14 | 11 | 6 | 1 | 2 | 10 | 3 | 4 | 5 | 7 | 8 | 9 | 12 | 13 | 15 |
JISの抜取表の値は条件(7)で順位は3位でした。1位ではありませんでした。
実際は1回抜取検査のOC曲線に近いパターンを選んで、合格判定個数を少し調整して
JIS規格の値を決めたように考えられます。
順位1~5位のOC曲線を描くと、1回抜取検査の場合(黒実線)と近いですし、
JIS規格の曲線(赤点線)は黒実線とほぼ同じことがわかります。
OC曲線を駆使していくと、抜取検査が設計できて、JIS規格の値や式の決まり方がわかるようになります。
まとめ
JISZ9015 AQL指標型抜取検査方式の2回抜取検査の第1サンプルのac,reを決める方法を、平均検査量とOC曲線を使って解説しました。
- ①2回抜取検査のメリットは平均検査量が少ないこと
- ②2回抜取検査は1回抜取検査と同じOC曲線であること
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119