JISZ9004計量抜取検査(標準偏差未知)で上下限規格値が既知の抜取方式の理論
「計量抜取検査(標準偏差未知) (JISZ9004)がよくわからない」、「サンプル数n,合格判定係数kはどうやって求めるの?」、「標準偏差既知(JISZ9003)と何が違う?」など困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
JISZ9004計量抜取検査(標準偏差未知)で上下限規格値が既知の抜取方式の理論がわかる
- ①上限規格値Uと合否判定基準
- ②上限規格値の分散の仮定方法(JISと自己流)
- ③サンプル数n,合格判定係数kの導出(JISZ9004準拠)
- ④サンプル数n,合格判定係数kの導出(自己流)
- ⑤下限規格値Lが既知の場合のn,kの導出
①上限規格値Uと合否判定基準
標準偏差が既知(σ)の場合の関係式
●ロットの平均値\(\bar{x}\)
●上限規格値U
●上限合格判定値\(X_U\)
●合格判定係数k
を使います。
上限合格判定値\(X_U\)=U-kσ
として、
●ロットの平均値\(\bar{x}\) ≤ \(X_U\)=U-kσ ならばロットは合格
●ロットの平均値\(\bar{x}\) > \(X_U\)=U-kσ ならばロットは不合格
つまり、
●\(\bar{x}\) +kσ ≤ Uならばロットは合格
●\(\bar{x}\) +kσ > Uならばロットは不合格
とします。
標準偏差が未知(s)の場合の関係式
σ⇒s
k⇒k’に
に書き換えます。
●\(\bar{x}\) +k’s ≤ Uならばロットは合格
●\(\bar{x}\) +k’s > Uならばロットは不合格
とします。
●\(\bar{x}\) +k’s < Uならばロットは不合格
とします。
②上限規格値の分散の仮定方法(JISと自己流)
\(\bar{x}\) +k’sの分散を求める
ここで、変数xは、正規分布N(μ,\(σ^2\))に従うとすると、
ロットの平均値\(\bar{x}\)は、正規分布N(μ,\(\frac{σ^2}{n}\))に従います。
\(\bar{x}\) +k’sの分散において、
統計量sの分散の仮定の仕方が2通りあります。
JISZ9004に準拠する場合
なぜこう近似できるかは、よくわかりませんが、この仮定でJISは規定しています。理由がわかる方、教えてください
JISZ9004に準拠する場合をまとめると、
自己流の場合
JISZ9004の仮定の仕方がよくわからない(納得いかない)ので、QCプラネッツは自己流で仮定します。
統計量sの分散は \(σ^2/n\)の\(m^2\)倍と置くことにします。
この方が理解しやすいと考えます。
よって、
JISZ9004の方法と自己流でサンプル数nと合格判定係数k’を導出します。
③サンプル数n,合格判定係数kの導出(JISZ9004準拠)
上限規格値Uの立式
JISの方法でn,kを導出します。
モデル図からUの関係式を導出します。
U=\(μ_0\)+k’σ+\(K_α\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
U=\(μ_1\)+k’σ-\(K_β\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
と導出できます。
変数\(K_{p0}\)と\(K_{p1}\)の導出
変数\(K_{p0}\)と\(K_{p1}\)は図より、
\(K_{p0}\)=\(\frac{U-μ_0}{σ}\)
\(K_{p1}\)=\(\frac{U-μ_1}{σ}\)
となります。
U=\(μ_0\)+k’σ+\(K_α\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
U=\(μ_1\)+k’σ-\(K_β\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
を変形して
U-\(μ_0\)=σ(k’+\(K_α\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\))
U-\(μ_1\)=σ(k’-\(K_β\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\))
とします。
\(K_{p0}\)=,\(K_{p1}\)=の式に変形します。
\(K_{p0}\)= k’+\(K_α\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
\(K_{p1}\)= k’-\(K_β\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
となります。
合格判定係数k’の導出
\(K_{p0}\)= k’+\(K_α\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
\(K_{p1}\)= k’-\(K_β\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
の\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)に注目して変形します。
\(\frac{K_{p0}-k’}{K_α}\)=\(\frac{k’-K_{p1}}{K_β}\)
となり、k’の式に変形します。
となり、標準偏差既知の場合と同じ式になります。
標準偏差が既知の場合の合格判定係数kの導出については、関連記事で確認ください。
JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で上限規格値が既知の抜取方式 JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で上限規格値が既知の抜取方式について解説します。サンプル数n、合格判定個数k、上限合格判定値の導出やOC曲線の描き方を解説します。計量抜取検査をマスターしたい方は必見です。 |
サンプル数nの導出
近似します。n-1≒nとして変形します。ちょっと強引?
\(K_{p0}\)= k’+\(K_α\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
をn-1≒nとして
\(K_{p0}\)= k’+\(K_α\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2n}}\)
にして変形します。うーん強引ですけど。
\(K_{p0}\)= k’+\(K_α\)\(\frac{1}{\sqrt{n}}\)\(\sqrt{1+\frac{k’^2}{2}}\)
\(\sqrt{n}\)(\(K_{p0}-k’\))=\(K_α\)\(\sqrt{1+\frac{k’^2}{2}}\)
n=\((\frac{K_α}{K_{p0}-k’})^2(1+\frac{k’^2}{2}\))
k’=\(\frac{K_β K_{p0}+K_α K_{p1}}{K_α + K_β}\)を代入して、
となります。
\((\frac{K_α+K_β}{K_{p0}-K_{p1}})^2\)は標準偏差既知の場合もありましたが、
それに、\((1+\frac{k’^2}{2}\))が追加される形になります。
サンプル数n、合格判定係数k’の導出のまとめ
n=\((\frac{K_α+K_β}{K_{p0}-K_{p1}})^2 (1+\frac{k’^2}{2}\))は標準偏差既知の場合から\((1+\frac{k’^2}{2}\))が追加された式
になる。
④サンプル数n,合格判定係数kの導出(自己流)
U=\(μ_0\)+k’σ+\(K_α\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
U=\(μ_1\)+k’σ-\(K_β\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2}{2(n-1)}}\)
を、自己流の導出方法
U=\(μ_0\)+k’σ+\(K_α\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\)
U=\(μ_1\)+k’σ-\(K_β\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\)
に変形します。
変数\(K_{p0}\)と\(K_{p1}\)の導出
JISZ9004の導出方法と同じで、
\(K_{p0}\)=\(\frac{U-μ_0}{σ}\)
\(K_{p1}\)=\(\frac{U-μ_1}{σ}\)
となります。
U=\(μ_0\)+k’σ+\(K_α\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\)
U=\(μ_1\)+k’σ-\(K_β\)σ\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\)
を変形して
U-\(μ_0\)=σ(k’+\(K_α\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\))
U-\(μ_1\)=σ(k’-\(K_β\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\))
とします。
\(K_{p0}\)=,\(K_{p1}\)=の式に変形します。
\(K_{p0}\)= k’+\(K_α\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\)
\(K_{p1}\)= k’-\(K_β\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\)
となります。
合格判定係数k’の導出
\(K_{p0}\)= k’+\(K_α\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\)
\(K_{p1}\)= k’-\(K_β\)\(\sqrt{\frac{1}{n}+\frac{k’^2 m^2}{n}}\)
の\(\sqrt{\frac{k’^2 m^2}{n}}\)に注目して変形します。
\(\frac{K_{p0}-k’}{K_α}\)=\(\frac{k’-K_{p1}}{K_β}\)
となり、k’の式に変形します。
となり、標準偏差既知の場合でも、JISZ9004の方法でも同じ式になります。
サンプル数nの導出
\(K_{p0}\)= k’+\(K_α\)\(\frac{1}{\sqrt{n}}\)\(\sqrt{1+k’^2 m^2}\)
\(\sqrt{n}\)(\(K_{p0}-k’\))=\(K_α\)\(\sqrt{1+k’^2 m^2}\)
n=\((\frac{K_α}{K_{p0}-k’})^2(1+k’^2 m^2\))
k’=\(\frac{K_β K_{p0}+K_α K_{p1}}{K_α + K_β}\)を代入して、
となります。
\((\frac{K_α+K_β}{K_{p0}-K_{p1}})^2\)は標準偏差既知の場合もありましたが、
それに、\((1+k’^2 m^2\))が追加される形になります。
サンプル数n、合格判定係数k’の導出のまとめ
n=\((\frac{K_α+K_β}{K_{p0}-K_{p1}})^2 (1+k’^2 m^2\))は標準偏差既知の場合から\((1+k’^2 m^2\))が追加された式
になる。
⑤下限規格値Lが既知の場合のn,kの導出
結果だけまとめます。
サンプル数n,合格判定係数kの導出(JISZ9004準拠)
n=\((\frac{K_α+K_β}{K_{p0}-K_{p1}})^2 (1+\frac{k’^2}{2}\))は標準偏差既知の場合から\((1+\frac{k’^2}{2}\))が追加された式
になる。
サンプル数n,合格判定係数kの導出(自己流)
n=\((\frac{K_α+K_β}{K_{p0}-K_{p1}})^2 (1+k’^2 m^2\))は標準偏差既知の場合から\((1+k’^2 m^2\))が追加された式
になる。
まとめ
JISZ9004計量抜取検査(標準偏差未知)で上限限規格値が既知の抜取方式について、サンプル数n、合格判定個数kの導出方法とその理論について解説しました。
- ①上限規格値Uと合否判定基準
- ②上限規格値の分散の仮定方法(JISと自己流)
- ③サンプル数n,合格判定係数kの導出(JISZ9004準拠)
- ④サンプル数n,合格判定係数kの導出(自己流)
- ⑤下限規格値Lが既知の場合のn,kの導出
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119