信頼性工学に使う経験分布関数がわかる
「経験分布関数って何?、QCではどこで使うの?」と疑問に思っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①経験分布関数とは
- ➁経験分布関数を描いてみよう
- ➂経験分布関数の期待値と分散を導出
①経験分布関数とは
経験分布関数とは
変数\(X\)=(\(X_1,X_2,…,X_n\))を連続な独立同一分布\(F(x)\)に従うとし、\(X_1\),\(X_2\),…,\(X_n\)を順序統計量とします。
簡単にいうと、
\(X_1\) < \(X_2\) <…, <\(X_n\)
という順番が成り立っている
このとき、以下の式を経験分布関数と定義します。
\(F_n(x)\)=\(\frac{x以下となるX_iの個数}{n}\)
=0 (\(x\) < \(X_1\))
=\(\frac{i}{n}\) (\(X_i\) < \(x\) < \(X_{i+1}\),i=1,2,…,n-1)
=1(\(x\) > \(X_n\)
グラフ描いてみると、理解しやすい。
実際に描いてみましょう。百聞は一見に如かず!
データを用意します。
x | y |
0 | 0 |
1 | 0.1 |
2 | 0.3 |
3 | 0.3 |
4 | 0.45 |
5 | 0.6 |
6 | 0.6 |
7 | 0.8 |
8 | 0.8 |
9 | 1 |
10 | 1 |
グラフに描くと下図になりますね。
こんな感じの関数です。
信頼性工学で経験分布関数を使う
この変な関数をどこで使うか?
●信頼性工学は、実データである離散データ(経験分布関数)をモデル化した連続系の指数分布モデルをよく使う。
●信頼性工学では、打切りデータを取り扱う必要がある。打切りデータの考え方のベースになるのが経験分布関数
なので、信頼性工学を究めるには、経験分布関数を理解しておく必要があります。
➁経験分布関数を描いてみよう
基本は簡単
上のグラフを再掲しますが、
- x,yのデータを用意する
- 連続性はなく、階段みたいな関数
信頼性工学で経験分布関数を使いたい
いろんなx,yのパターンがあってもよいですが、信頼性工学で扱いたいので、指数分布関数に近いデータを考えます。
指数分布関数
指数分布関数として、以下を用意します。
\(F(x)\)=1-\(e^{-x}\)
経験分布関数と指数分布関数を比較しましょう。
指数分布関数に遠いデータ
先ほどのデータを指数分布関数\(F(x)\)=1-\(e^{-x}\)と比較します。
経験分布関数には、自由にx,yのデータを入れてよいですが、この場合は、指数分布関数から離れているので、信頼性工学では、指数分布関数としてモデル化することができません。
指数分布関数に近いデータ
次に、不良個数が次のようなデータが取れたとしましょう。
x | y |
0 | 0 |
1 | 0.6 |
2 | 0.9 |
3 | 0.91 |
4 | 0.91 |
5 | 0.95 |
6 | 0.95 |
7 | 0.95 |
8 | 0.99 |
9 | 1 |
10 | 1 |
先ほどのデータを指数分布関数\(F(x)\)=1-\(e^{-x}\)と比較します。
この場合は、指数分布関数に近いので、信頼性工学では、指数分布関数としてモデル化できます。
これと指数分布関数が近いからOK,遠いからNGではありません。
データから何を考えるか?が一番大事です。何も考えずに、近似や計算処理しても何も得られません。
➂経験分布関数の期待値と分散を導出
離散系な分布関数ですが、期待値と分散を導出します。
経験分布関数の確率密度関数\(f(x)\)
経験分布関数は
\(F_n(x)\)=\(\frac{i}{n}\) (\(X_i\) < \(x\) < \(X_{i+1}\),i=1,2,…,n-1)
ですね。
これを微分すればよいので、確率密度関数\(f(x)\)は、
\(f(x)\)=\(\frac{1}{n}\)
です。
経験分布関数の期待値を導出
期待値E[X]=\(\sum_{i=1}^{n} x_i f(x)\)より、
期待値E[X]=\(\sum_{i=1}^{n} x_i f(x)\)
=\(\sum_{i=1}^{n} x_i \frac{1}{n}\)
=\(\frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i \)
となります。
具体的には、先ほどの例でいうと、
期待値E[X]= \(\frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i \)
=\(\frac{1}{10} \)(0+1+2+3+4+5+6+7+8+9+10)
=5.5
経験分布関数の分散を導出
分散V[X]=\(\sum_{i=1}^{n} (x_i -μ)^2 f(x)\)より、
分散V[X]=\(\sum_{i=1}^{n} (x_i -μ)^2 f(x)\)
=\(\sum_{i=1}^{n} (x_i -μ)^2 \frac{1}{n}\)
=\(\frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i -μ)^2\)
となります。
具体的には、先ほどの例でいうと、
分散V[X]= \(\frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i -μ)^2\)
=\(\frac{1}{10} \)(\((0-5.5)^2\)+\((1-5.5)^2\)+…\((10-5.5)^2\))
=11.28
となります。
計算はできますが、「ふーん」とピンと来ませんが、それが経験分布関数です。
まとめ
「信頼性工学に使う経験分布関数がわかる」を解説しました。
- ①経験分布関数とは
- ➁経験分布関数を描いてみよう
- ➂経験分布関数の期待値と分散を導出
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119