【必読】寿命計算の信頼区間にχ2乗分布を使う理由がよくわかる
「指数分布モデルなのに、寿命計算の信頼区間はなんでχ2乗分布で計算するの?」、「しかもχ2乗分布で自由度がnでなく2nなのはなんで?」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①MTBFの信頼区間はχ2乗分布から求める
- ➁指数分布モデルなのに、信頼区間はχ2乗を使う理由
昨日5分で解決した!
①MTBFの信頼区間はχ2乗分布から求める
MTBFの信頼区間の例題
寿命分布が指数分布に従う場合、\(n\)個のアイテムの寿命試験を時刻\(t_0\)で定時に打ち切りした寿命データ\(t_1\),\(t_2\),…,\(t_r\)が得られているとする。このときのMTBFの点推定値は、総試験時間Tをr回で割った\(\frac{T}{r}\)で求める。このときのMTBFの(100-\(α\))%の信頼区間は
●MTBFU=\(\frac{2r}{χ^2(2r,1-α/2)}\)×\(\frac{T}{r}\)
●MTBFL=\(\frac{2r}{χ^2(2(r+1),α/2)}\)×\(\frac{T}{r}\)
で与えられる。
と、MTBFの信頼区間を求める例題ですが、
ここで、謎が2つあります。長年苦労しました。
なんでχ2乗分布が来て、しかも自由度が2nなのか意味不明?
- ●寿命分布が指数分布に従うのに、なんで寿命はχ2乗分布で計算するの?
- ●何で自由度はrでなく、2rなの?
最初は公式丸暗記して臨みました。当然、応用問題が出題されたらイチコロな状態でした。
でも、この謎の解明は意外と簡単です!
自分で導出できる!
この謎の解明はお任せください!
➁指数分布モデルなのに、信頼区間はχ2乗を使う理由
知っておくべき数学
統計学、数学にちょっと自信がなくても大丈夫です。次の点が理解できればOKです。
- 指数分布関数は自力で理解できるはず
- 複数の指数分布関数をまとめるとガンマ分布に変身する
- ガンマ分布とχ2乗との意外な接点
指数分布関数は高校数学で十分理解できる範囲なので、頑張りましょう。
指数分布モデルが複数あるとガンマ分布モデルに変身する
指数分布モデルが複数あるとガンマ分布モデルに変身します。詳細は関連記事に書いています。
ガンマ分布がよくわかる
ガンマ分布が導出できますか?本記事では、直接、関数の式を見るのは危険なガンマ分布を指数分布からわかりやすく導出し、期待値・分散も途中過程を端折らず解説します。信頼性工学で必須なガンマ分布なので、必読な記事です。
ポイントは、
この場合、時刻\(t=t_1 +t_2+…+t_n\)における確率密度関数は
\(f_n (t)\)=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
である。
畳み込み積分と、数学的帰納法でガンマ分布の確率密度関数
\(f_n (t)\)=\(\frac{λ^n t^{n-1}}{(n-1)!} e^{-λt}\)
は導出できます。
もちろん\(n=1\)を代入すると
\(f_1 (t)\)=\(λ e^{-t}\)
と典型的な指数分布関数になっていますね。
ガンマ分布とχ2乗との意外な接点
では、本記事の本題に入りましょう。
2つの分布の確率密度関数を用意します。
(ii)χ2乗分布:\(g_n (t)\)=\(\frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})} t^{\frac{n}{2}-1} e^{-\frac{1}{2}t}\)
一見、全然違う関数ですよね。
変形方法は次の通りです。
- (ii)の方を\(n\)⇒\(2n\)とおく
- (ii)の方を\(t\)⇒\(2t\)とおく
(ii)の方を\(n\)⇒\(2n\)とおく
\(g_n (t)\)=\(\frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})} t^{\frac{n}{2}-1} e^{-\frac{1}{2}t}\)
\(g_{2n} (t)\)=\(\frac{1}{2^{\frac{2n}{2}}Γ(\frac{2n}{2})} t^{\frac{2n}{2}-1} e^{-\frac{1}{2}t}\)
=\(\frac{1}{2^n Γ(n)} t^{n-1} e^{-\frac{1}{2}t}\)
=(式1)
(ii)の方を\(t\)⇒\(2t\)とおく
(式1)に代入します。
(式1)= \(g_{2n} (2t)\)
=\(\frac{1}{2^n Γ(n)} (2t)^{n-1} e^{-\frac{1}{2}・2t}\)
=\(\frac{1}{2^n Γ(n)} 2^{n-1}・t^{n-1} e^{-t}\)
=\(\frac{1}{2 Γ(n)}・t^{n-1} e^{-t}\)
=(式2)
ガンマ分布とχ乗分布(式2)の確率密度関数を比較しましょう。
(ii)χ2乗分布:\(g_{2n} (2t)\) = \(\frac{ t^{n-1}}{2 Γ(n)} e^{-t}\)
よーくみると、
となり、関数の形が\(\frac{ t^{n-1}}{Γ(n)} e^{-t}\)と合致することがわかりますね。
まとめると、
自由度2n、変数2tのχ2乗分布は同じ関数形になる!
なので、
というわけです。
- ●寿命分布が指数分布に従うのに、なんで寿命はχ2乗分布で計算するの?
⇒ガンマ分布とχ2乗分布の関数形が一致する場合があるから - ●何で自由度はrでなく、2rなの?
⇒χ2乗分布の自由度を2倍にすると、ガンマ分布とχ2乗分布の関数形が一致するから
謎が解明できましたね。
当然、寿命の信頼区間はガンマ分布から求めてもOK
当然、ガンマ分布とχ2乗分布の確率密度関数を合致する場合を使うので、
●ガンマ分布でも
●χ2乗分布でも
どちらの確率密度関数を使っても信頼区間は計算できます。
χ2乗分布の確率密度関数を使う理由
では、何で、わざわざχ2乗分布を使って信頼区間を計算するか?わかりますか?
実際、χ2表がJISなどから与えられていますよね。これは、χ2乗分布がよく使われるからです。
便利な方をお使いください。
まとめ
「【必読】寿命計算の信頼区間にχ2乗分布を使う理由がよくわかる」を解説しました。
- ①MTBFの信頼区間はχ2乗分布から求める
- ➁指数分布モデルなのに、信頼区間はχ2乗を使う理由
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