【簡単】データの構造式から母平均の点推定が導出できる
「母平均の点推定値を計算公式が複雑で覚えられない」、「有効反復数、田口の式や伊奈の式がうまく使いこなせない」などで困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
データの構造式から母平均の点推定が導出できる
- ➀データの構造式から母平均の点推定を求める方法は1つ
- ②多元配置実験の母平均の点推定の導出方法
- ③直交表を使った多因子実験の母平均の点推定の導出方法
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データの構造式から実験計画法はすべて解けます。
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さっそく見ていきましょう。
➀データの構造式から母平均の点推定を求める方法は1つ
【重要】母平均の点推定の導出方法
(B)(左辺)に調べたい効果の平均μを、(右辺)に調べたい効果を含む項をデータの構造式から残す。
(C)(B)の式の主効果・交互作用の項をすべて\(x\)についての項に直す。
(D)残った項を\(\widehat{μ+●}\) の項に変える。
二元配置実験の場合
(A)データの構造式を用意します。
\(x_{ijk} =μ+α_i+β_j+(αβ)_{ij}\)+\(e_{ijk}\)
とします。
(B)最適条件\(μ(A_i B_j)\)の点推定値を求めましょう。
データ構造式のうち、ABを含む項だけ残します。
\(μ(A_i B_j)\)=\(μ+α_i+β_j+ (αβ)_{ij}\)
(C) 主効果・交互作用の項をすべて\(x\)についての項に直します。
\(μ\)=\(\bar{\bar{x}}\)
\(α_i\)=\(\bar{x_{i‥}}-\bar{\bar{x}}\)
\(β_j\)=\(\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}}\)
\( (αβ)_{ij}\)=\(\bar{x_{ij・}}\)-\(\bar{x_{i‥}}\)-\(\bar{x_{・j・}}\)+\(\bar{\bar{x}}\)
を代入します。
\(μ(A_i B_j)\)
=\(μ+α_i+β_j+ (αβ)_{ij}\)
=\(\bar{\bar{x}}\)+(\(\bar{x_{i‥}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{ij・}}\)-\(\bar{x_{i‥}}\)-\(\bar{x_{・j・}}\)+\(\bar{\bar{x}}\))
=\(\bar{x_{ij・}}\)
(D)残った項を\(\widehat{μ+●}\) の項に変えます。
\(\bar{x_{ij・}}\)=\(\widehat{μ+a_i+b_j+(ab)_{ij}}\)
を代入します。
\(μ(A_i B_j)\)
=\(\bar{x_{ij・}}\)
=(\(\widehat{μ+a_i+b_j+(ab)_{ij}}\))
初めて見ると難しそうと思いますが、この(A)から(D)の方法で、全実験パターンで使えます。
以下応用事例を挙げますが、同じ方法で解説します。
②多元配置実験の母平均の点推定の導出方法
【重要】母平均の点推定の導出方法
(B)(左辺)に調べたい効果の平均μを、(右辺)に調べたい効果を含む項をデータの構造式から残す。
(C)(B)の式の主効果・交互作用の項をすべて\(x\)についての項に直す。
(D)残った項を\(\widehat{μ+●}\) の項に変える。
三元配置実験の場合
(A)データの構造式を用意します。
\(x_{ijk} =μ+α_i+β_j+γ_k\)+\(e_{ijk}\)
とします。
(B)最適条件\(μ(A_i B_j C_k)\)の点推定値を求めましょう。
データ構造式のうち、ABCを含む項だけ残します。
\(μ(A_i B_j C_k)\)=\(μ+α_i+β_j+γ_k\)
(C) 主効果・交互作用の項をすべて\(x\)についての項に直します。
\(μ\)=\(\bar{\bar{x}}\)
\(α_i\)=\(\bar{x_{i‥}}-\bar{\bar{x}}\)
\(β_j\)=\(\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}}\)
\(γ_k\)=\(\bar{x_{‥k}}-\bar{\bar{x}}\)
を代入します。
\(μ(A_i B_j C_k)\)
=\(μ+α_i+β_j+γ_k\)
=\(\bar{\bar{x}}\)+(\(\bar{x_{i‥}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{‥k}}-\bar{\bar{x}}\))
=\(\bar{x_{i‥}}+\bar{x_{・j・}}\)+\(\bar{x_{‥k}}-2\bar{\bar{x}}\)
(D)残った項を\(\widehat{μ+●}\) の項に変えます。
\(\bar{x_{i‥}}=\widehat{μ+a_i}\)
\(\bar{x_{・j・}}=\widehat{μ+b_j}\)
\(\bar{x_{‥k}}=\widehat{μ+c_k}\)
\(\bar{\bar{x}}=\widehat{μ}\)
を代入します。
\(μ(A_i B_j C_k)\)
=\(\bar{x_{i‥}}\)+\(\bar{x_{・j・}}\)+\(\bar{x_{‥k}}\)-2\(\bar{\bar{x}}\)
=(\(\widehat{μ+a_i}\))+(\(\widehat{μ+b_j}\))+(\(\widehat{μ+c_k}\))-2\(\widehat{μ}\)
問:次のような、データの構造式を定義した場合、母平均の点推定を導出せよ。
\(x_{ijk} =μ+α_i+β_j+(αβ)_{ij}\)+\((βγ)_{jk}+e_{ijk}\)
母平均の点推定 \(μ(A_i B_j)\)
詳細な解説は、演習問題集にあります。
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③直交表を使った多因子実験の母平均の点推定の導出方法
どんどん、複雑なデータの構造式にしますが、導出方法は同じです。
【重要】母平均の点推定の導出方法
(B)(左辺)に調べたい効果の平均μを、(右辺)に調べたい効果を含む項をデータの構造式から残す。
(C)(B)の式の主効果・交互作用の項をすべて\(x\)についての項に直す。
(D)残った項を\(\widehat{μ+●}\) の項に変える。
データの構造式は
x=μ+a+b+c+d+f+(ab)+(cd)+e (eは誤差)
とする。この時、ABCDFの水準組み合わせで母平均を推定する。
\( \widehat{μ(ABCDF)}\)を導出せよ。
(A)から(D)の方法で導出します。全く同じ方法で攻略できるので大丈夫です。
(A)データの構造式を用意します。
x=μ+a+b+c+d+f+(ab)+(cd)+e
(B)最適条件μ(ABCDF)の点推定値を求めましょう。
直交表に多因子を割り付けているので、添字は簡略化します。
データ構造式のうち、ABCDFを含む項だけ残します。
μ(ABCDF)= μ+a+b+c+d+f+(ab)+(cd)
(C) 主効果・交互作用の項をすべて\(x\)についての項に直します。
ここで、直交表に多因子を割り付けているので、添字は簡略化します。
\(μ\)=\(\bar{\bar{x}}\)
a=\(\bar{x_a}-\bar{\bar{x}}\)
b=\(\bar{x_b}-\bar{\bar{x}}\)
c=\(\bar{x_c}-\bar{\bar{x}}\)
d=\(\bar{x_d}-\bar{\bar{x}}\)
f=\(\bar{x_f}-\bar{\bar{x}}\)
ab=\(\bar{x_{ab}}-\bar{x_a}-\bar{x_b}+\bar{\bar{x}}\)
cd=\(\bar{x_{cd}}-\bar{x_c}-\bar{x_d}+\bar{\bar{x}}\)
を代入します。
μ(ABCDF)
=μ+a+b+c+d+f+(ab)+(cd)
=\(\bar{\bar{x}}\)+(\(\bar{x_a}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_b}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_c}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_d}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_f}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{ab}}-\bar{x_a}-\bar{x_b}+\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{cd}}-\bar{x_c}-\bar{x_d}+\bar{\bar{x}}\))
=\(\bar{x_{ab}}\)+\(\bar{x_{cd}}\)+\(\bar{x_f}\)-2\(\bar{\bar{x}}\)
(D)残った項を\(\widehat{μ+●}\) の項に変えます。
\(\bar{x_{ab}}=\widehat{μ+a+b+(ab)}\)
\(\bar{x_{cd}}=\widehat{μ+c+d+(cd)}\)
\(\bar{x_f}=\widehat{μ+f}\)
\(\bar{\bar{x}}=\widehat{μ}\)
を代入します。
μ(ABCDF)
=\(\bar{x_{ab}}\)+\(\bar{x_{cd}}\)+\(\bar{x_f}\)-2\(\bar{\bar{x}}\)
=(\(\widehat{μ+a+b+(ab)}\))+(\( \widehat{μ+c+d+(cd)}\))+(\( \widehat{μ+f}\))-2\(\widehat{μ}\)
以下の演習問題もちょっと考えてみてください。
問:次のデータの構造式において、母平均の点推定を導出せよ。
直交表L16(215)に因子R(反復),A,B,D,Fと交互作用A×D,eを割り付けた。
分割法を適用しており、1次単位がR,A,B、2次単位がD,F,A×Dである。
(1)データの構造式を作れ。
(2)最適条件の母平均の点推定μ(ABDF)を導出せよ。
最強に難しいですが、データの構造式をたてて、(A)から(D)の流れで解けば必ず導出できます。
答えだけ書いておきます。
(1) x=μ+r+a+b+\(e_{(1)}\)+d+f+\(e_{(2)}\)
(2) μ(ABDF)=(\(\widehat{μ+a+d+(ad)}\))+(\(\widehat{μ+b}\))+(\(\widehat{μ+f}\))-2\(\widehat{μ}\)
詳細な解説は、演習問題集にあります。
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まとめ
データの構造式から母平均の点推定の導出ができます。導出方法は1つだけなので、何度も読んで確実に身につけてください。
- ➀データの構造式から母平均の点推定を求める方法は1つ
- ②多元配置実験の母平均の点推定の導出方法
- ③直交表を使った多因子実験の母平均の点推定の導出方法
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