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【重要】データの構造式から有効反復数が導出できる

実験計画法

「分散分析から有効反復数を求める方法がわからない」、「田口の式や伊奈の式がうまく暗記できない」など困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

【簡単】データの構造式から有効反復数が導出できる

データの構造式から有効反復数が導出できる

  • ➀データの構造式から有効反復数を導出する方法
  • ②田口の式、伊奈の式の紹介
  • ③有効反復数の導出事例

記事の信頼性

記事を書いている私は、実験計画法に磨きをかけていますので、わかりやすく解説します。

本記事で扱う、データの構造式や点推定は、関連記事にあります。計算の流れを理解するために先に読んでください。

➀データの構造式から有効反復数を導出する方法

導出方法が理解できたら、公式暗記は不要になります。
田口の式、伊奈の式を使えば有効反復数はすぐ求まりますが、
自力で有効反復数を求めることができます

【重要】有効反復数の導出方法

  • (A)データの構造式を用意する(関連記事)
  • (B)母平均の式を作る(関連記事)
  • (C)母平均の式に含まれる項を再度データの構造式に戻す
  • (D)戻したデータの構造式の分散を求める

(A)(B)は、関連記事にあります。(C)(D)は本記事です。

この4つの流れで、多元配置実験、直交表、乱塊法、分割法、多水準法などすべてのパターンに適応できます。

4つの流れを理解して、速く計算したくなったら、田口の式や伊奈の式に代入でしましょう。

二元配置実験の場合

(A)データの構造式を用意する(関連記事)
\(x_{ijk} =μ+α_i+β_j+(αβ)_{ij}\)+\(e_{ijk}\)
とします。因子A,Bと繰り返しの自由度はそれぞれa,b,cとします。
最適条件\(μ(A_i B_j)\)の点推定値の有効反復数を求めます。
ここで、\((αβ)_{ij}\)を無視した場合を紹介します。
その方が導出過程が理解しやすいからです。

(B)母平均の式を作る(関連記事)
\(μ(A_i B_j)\)
=\(μ+α_i+β_j\)
=\(\bar{\bar{x}}\)+\((\bar{x_{i‥}}-\bar{\bar{x}})\)+\((\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}})\)
=\(\bar{x_{i‥}}+\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}}\)

(C)母平均の式に含まれる項を再度データの構造式に戻す
\(μ(A_i B_j)\)
=\(\bar{x_{i‥}}+\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}}\)
=(\(μ+α_i+\bar{e_{i‥}}\))
+(\(μ+β_j+\bar{e_{・j・}}\))
-(\(μ+\bar{\bar{e}}\))
=(\(μ+α_i+β_j+\bar{e_{i‥}}+\bar{e_{・j・}}-\bar{\bar{e}}\))

(D)戻したデータの構造式の分散を求める
V[\(μ(A_i B_j)\)]
=V[(\(μ+α_i+β_j+\bar{e_{i‥}}+\bar{e_{・j・}}-\bar{\bar{e}}\))]
=V[(\(\bar{e_{i‥}}+\bar{e_{・j・}}-\bar{\bar{e}}\))]
= \((\frac{1}{bc}+\frac{1}{ac}-\frac{1}{abc})σ_e^2\)
=\(\frac{a+b-1}{abc}σ_e^2\)

初めて見ると難しそうと思いますが、この(A)から(D)の方法で、全実験パターンで使えます。
以下応用事例を挙げますが、同じ方法で解説します。

②田口の式、伊奈の式の紹介

田口の式、伊奈の式の紹介

田口の式、伊奈の式

(A) 田口の式
\(\frac{1}{n_e}\)=\(\frac{1+(無視しない要因の自由度の和)}{全実験回数}\)
(B) 伊奈の式
\(\frac{1}{n_e}\)=点推定量の式で、各合計にかかっている係数の和

二元配置実験の場合を田口の式で導出

\(\frac{1}{n_e}\)=\(\frac{1+(無視しない要因の自由度の和)}{全実験回数}\)
\(\frac{1}{n_e}\)=\(\frac{1+(a-1)+(b-1))}{abc}\)
=\(\frac{a+b-1}{abc}\)
となり、データの構造式から導出した結果と一致します。

二元配置実験の場合を伊奈の式で導出

\(\frac{1}{n_e}\)=点推定量の式で、各合計にかかっている係数の和
\(\frac{1}{n_e}\)=\((\frac{1}{bc}+\frac{1}{ac}-\frac{1}{abc})\)
=\(\frac{a+b-1}{abc}\)
となり、データの構造式から導出した結果と一致します。

田口の式、伊奈の式を使わずにデータの構造式から導出する理由

公式暗記ではなく、導出過程を理解してほしいから

田口の式、伊奈の式は便利です。でも、
(i)式を理解せず、暗記公式しても、実験計画法はマスターできない。
(ii)データの構造式から実験計画法はすべてがわかることが本質。
(iii)分割法、多水準法など応用事例になると公式が増加。
に注意しましょう。

また、
田口の式:無視しない要因の自由度の和
伊奈の式:点推定量の式で、各合計にかかっている係数の和
が日本語を式にするのは、慣れるまでは結構ミスります。

ならば、遠回りしてもデータの構造式から有効反復数を
1パターンの解法でどんな応用事例も対処できます。

次に、複雑にした応用事例を解説します。

③有効反復数の導出事例

どんどん、複雑なデータの構造式にしますが、導出方法は同じです。もう一度、書いておきます。

【重要】有効反復数の導出方法

  • (A)データの構造式を用意する(関連記事)
  • (B)母平均の式を作る(関連記事)
  • (C)母平均の式に含まれる項を再度データの構造式に戻す
  • (D)戻したデータの構造式の分散を求める

多因子を割り当てた直交表の事例

直交表\(L_{16} 2^{15}\)に因子A,B,C,D,Fと交互作用A×B,C×Dを割り付けた。
データの構造式は
x=μ+a+b+c+d+f+(ab)+(cd)+e (eは誤差)
とする。この時、ABCDFの水準組み合わせで母平均を推定する。
この母平均の有効反復数を導出します。

同じデータの構造式は、関連記事にあります。

(A)から(D)の方法で導出します。全く同じ方法で攻略できるので大丈夫です。

(A)データの構造式を用意する(関連記事)
x=μ+a+b+c+d+f+(ab)+(cd)+e

(B)母平均の式を作る(関連記事)
μ(ABCDF)
=μ+a+b+c+d+f+(ab)+(cd)
=\(\bar{\bar{x}}\)+(\(\bar{x_a}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_b}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_c}-\bar{\bar{x}}\))
+(\(\bar{x_d}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_f}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{ab}}-\bar{x_a}-\bar{x_b}+\bar{\bar{x}}\))
+(\(\bar{x_{cd}}-\bar{x_c}-\bar{x_d}+\bar{\bar{x}}\))
=\(\bar{x_{ab}}\)+\(\bar{x_{cd}}\)+\(\bar{x_f}\)-2\(\bar{\bar{x}}\)

(C)母平均の式に含まれる項を再度データの構造式に戻す

慣れると、変量因子や残差項のみを書きましょう。
主効果や交互作用の項は書いても、分散を導出する時は0になるので、
最初から書かなくてもOKです。

μ(ABCDF)
=\(\bar{x_{ab‥}}+\bar{x_{cd‥}}+\bar{x_{f・‥}}-2\bar{\bar{x}}\)
=\(\bar{e_{ab‥}}+\bar{e_{cd‥}}+\bar{x_{e・‥}}-2\bar{\bar{e}}\)

直交表L16は添字4種類ですが、a,b,c,d,fの5種類を割当てています。
4種類から割り当てた種類を引いた分を・で表記します。

(D)戻したデータの構造式の分散を求める
V[μ(ABCDF)]
=V[\(\bar{e_{ab‥}}+\bar{e_{cd‥}}+\bar{x_{e・‥}}-2\bar{\bar{e}}\)]
= \((\frac{4}{16}+\frac{4}{16}+\frac{2}{16}-2\frac{1}{16})σ_e^2\)
=\(\frac{1}{2}σ_e^2\)

(E)田口の式、伊奈の式からも導出

田口の式で導出

\(\frac{1}{n_e}\)=\(\frac{1+(無視しない要因の自由度の和)}{全実験回数}\)
=\(\frac{1+φ_A+φ_B+φ_C+φ_D +φ_F+φ_AB +φ_CD}{16}\)
=\(\frac{1+1+1+1+1+1+1+1}{16}\)=\(\frac{1}{2}\)
となり、データの構造式から導出した結果と一致します。

伊奈の式で導出

\(\frac{1}{n_e}\)=点推定量の式で、各合計にかかっている係数の和
V[μ(ABCDF)]=V[μ+a+b+c+d+f+(ab)+(cd)]
=8×\(\frac{1}{16}σ_e^2\)
\(\frac{1}{n_e}\)=\(\frac{1}{2}\)
となり、データの構造式から導出した結果と一致します。

乱塊法と分割法を使った事例

乱塊法と分割法(2分割)を考える。データ構造式を
\(x_{ijk}=μ+γ_k+α_i+e_{(1)ik}+β_j+e_{(2)ijk}
とする。γは反復(変量因子)、α、βは主効果とする。
自由度はα→a,β→b,γ→cとする。
この時、AiBj母平均と有効反復数を導出せよ。

同じデータの構造式は、関連記事にあります。

乱塊法と分割法のセットとなる、応用事例です。難しそうですが、
(A)から(D)の方法で導出します。全く同じ方法で攻略できるので大丈夫です。

(A)データの構造式を用意する(関連記事)
\(x_{ijk}\)=μ+\(γ_k+α_i+e_{(1)ik}+β_j+e_{(2)ijk}\)

(B)母平均の式を作る(関連記事)
μ(AiBj)
=\(μ+α_i+β_j\)
=\(\bar{\bar{x}}\)+(\(\bar{x_{i‥}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}}\))
=\(\bar{x_{i‥}}+\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}}\)

(C)母平均の式に含まれる項を再度データの構造式に戻す
μ(AiBj)
=\(\bar{x_{i‥}}+\bar{x_{・j・}}-\bar{\bar{x}}\)
=\((μ+\bar{r}+α_i+\bar{e_{(1)i・}}+\bar{e_{(2)i・・}})\)
+\((μ+\bar{r}+\bar{\bar{e_{(1)}}}+β_j+\bar{e_{(2)・j・}})\)
-\((μ+\bar{r}+\bar{\bar{e_{(1)}}}+\bar{ e_{(2)}})\)
=\((μ+\bar{r}+α_i+β_j+\bar{e_{(1)i・}})\)
+\((\bar{e_{(2)i・・}}+\bar{e_{(2)・j・}}-\bar{ e_{(2)}})\)

(D)戻したデータの構造式の分散を求める
V[μ(AiBj)]
=V[\((μ+\bar{r}+α_i+β_j+\bar{e_{(1)i・}})\)
+\((\bar{e_{(2)i・・}}+\bar{e_{(2)・j・}}-\bar{ e_{(2)}})\)]
= V[\((\bar{r} +\bar{e_{(1)i・}})\)
+\((\bar{e_{(2)i・・}}+\bar{e_{(2)・j・}}-\bar{ e_{(2)}})\)]
=\(\frac{1}{c}\widehat{σ_R^2}+\frac{1}{c}\widehat{σ_{e(1)}^2}+(\frac{a+b-1}{abc})\widehat{σ_{e(2)}^2}\)

ここで、分散分析表を作ります。必要なのは、効果、自由度、分散の期待値E[V]です。
さっと作れますか? 関連記事を確認しましょう。

分散分析表

φ E[V]
R c-1 \(σ_{e(2)}^2\)+\(bσ_{e(1)}^2\)+\(abσ_R^2\)
A a-1 \(σ_{e(2)}^2\)+\(bσ_{e(1)}^2\)+\(bcσ_A^2\)
e(1) (a-1)(c-1) \(σ_{e(2)}^2\)+\(bσ_{e(1)}^2\)
B b-1 \(σ_{e(2)}^2\)+\(acσ_B^2\)
A×B (a-1)(b-1) \(σ_{e(2)}^2\)+\(cσ_{A×B}^2\)
e(2) a(b-1)(c-1) \(σ_{e(2)}^2\)
T abc-1

分散分析表から分散の推定値を導出します。

V
R VR=\(\widehat{σ_{e(2)}^2}\)+\(\widehat{bσ_{e(1)}^2}\)+\(\widehat{abσ_R^2}\)
e(1) Ve(1)=\(\widehat{σ_{e(2)}^2}\)+\(\widehat{bσ_{e(1)}^2}\)
e(2) Ve(2)=\(\widehat{σ_{e(2)}^2}\)

から、次を導出します。
\(\widehat{σ_{e(2)}^2}\)= Ve(2)
\(\widehat{σ_{e(1)}^2}\)=\(\frac{1}{b}\)( Ve(1)– Ve(2))
\(\widehat{σ_R^2}\)=\(\frac{1}{ab}\)( VR– Ve(1))

まとめると
V[μ(AiBj)]
=\(\frac{1}{c}\widehat{σ_R^2}+\frac{1}{c}\widehat{σ_{e(1)}^2}+(\frac{a+b-1}{abc})\widehat{σ_{e(2)}^2}\)

=\(\frac{1}{abc}\) VR+\(\frac{a-1}{abc}\) Ve(1)+\(\frac{b-1}{abc}\) Ve(2)

分割法の有効反復数の導出は、慣れるまでは大変かもしれません。
なので、田口の式、伊奈の式から導出しましょう。

(E)田口の式、伊奈の式からも導出

田口の式で導出

乱塊法+分割法になると変量因子Rや残差eの種類が増えるため、田口の式を拡張する必要があります。
これも結構、ややこしい話ですけど。

田口の式を拡張
(i)反復因子Rを無視しない場合
V[μ(AiBj)]
=\(\frac{1}{全実験回数}\)VR+\(\frac{(無視しない要因の自由度の和)}{全実験回数}\) Ve(1)
+\(\frac{(無視しない要因の自由度の和)}{全実験回数}\) Ve(2)

(ii) 反復因子Rを無視する場合
V[μ(AiBj)]
=\(\frac{1+(無視しない要因の自由度の和)}{全実験回数}\) Ve(1)
+\(\frac{(無視しない要因の自由度の和)}{全実験回数}\) Ve(2)
(ややこしい)

反復因子Rを無視しないので、
V[μ(AiBj)]
=\(\frac{1}{全実験回数}\) VR+\(\frac{1+(無視しない要因の自由度の和)}{全実験回数}\) Ve(1)
+\(\frac{1+(無視しない要因の自由度の和)}{全実験回数}\) Ve(2)

=\(\frac{1}{abc}\) VR+\(\frac{1+(無視しない要因の自由度の和=a-1)}{全実験回数}\) Ve(1)
+\(\frac{1+(無視しない要因の自由度の和=b-1)}{全実験回数}\) Ve(2)
=\(\frac{1}{abc}\) VR+\(\frac{a-1}{abc}\) Ve(1)+\(\frac{b-1}{abc}\) Ve(2)
と一致します。

伊奈の式で導出

伊奈の式は適用できないので割愛します。

分割法になると、データの構造式からの有効反復数の導出が大変です。
なので、田口の式や伊奈の式に頼りたいですが、公式も乱塊法や分割法によって
式を変形する必要があります。

分割法の有効反復数はデータの構造式から導出しても、
公式暗記しても難しいです。
ですから、導出過程をよく見て、本質を理解してください。

まとめ

データの構造式から有効反復数の導出方法を解説しました。田口の式、伊奈の式も活用できますが、実験計画法はすべてデータの構造式の変形で解けます。有効反復数の導出方法は1つだけなので、何度も読んで確実に身につけてください。

  • ➀データの構造式から有効反復数を導出する方法
  • ②田口の式、伊奈の式の紹介
  • ③有効反復数の導出事例


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