管理図の各係数値の極限値(n⇒∞)がわかる
「計量値管理図の係数の極限値っていくらか知りたい」と思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①管理図各係数の関係
- ②c4,d2,d3をプログラムで計算
- ③管理図係数の極限値
記事の信頼性
記事を書いている私は、管理図の係数表、群内変動・群間変動の解き方に疑問が残りました。そこで、管理図の理論を研究しました。その成果をブログで解説します。
●Youtube動画でも解説しています。ご覧ください。
①管理図各係数の関係
詳細は関連記事で解説していますが、一覧表を確認しましょう。
【重要】管理図(計量値)の変数の導出がわかる シューハートの管理図の計量値の各係数表の求め方を解説します。A,B,D,d2とかいっぱい変数がありますが、すべて期待値±倍数×標準偏差で表記できます。シューハートの管理図をマスターしたい方は必見です。 |
JISZ9020-2の表2「管理限界線を計算するための係数」から変数一覧を出します。
管 理 限 界 の 係 数 |
\(\bar{X}\) 管 理 図 |
A | = | \(\frac{k}{\sqrt{n}}\) |
\(A_2\) | = | \(\frac{k}{d_2 \sqrt{n}}\) | ||
\(A_3\) | = | \(\frac{k}{c_4 \sqrt{n}}\) | ||
s 管 理 図 |
\(B_3\) | = | \(max(0,1-\frac{k}{c_4}\sqrt{1-c_4^2})\) | |
\(B_4\) | = | \(1+\frac{k}{c_4}\sqrt{1-c_4^2}\) | ||
\(B_5\) | = | \(max(0,c_4-k\sqrt{1-c_4^2})\) | ||
\(B_6\) | = | \(c_4+k\sqrt{1-c_4^2}\) | ||
R 管 理 図 |
\(D_1\) | = | \(max(0,d_2-kd_3)\) | |
\(D_2\) | = | \(d_2+kd_3\) | ||
\(D_3\) | = | \(max(0,1-\frac{kd_3}{d_2})\) | ||
\(D_4\) | = | \(1+\frac{kd_3}{d_2}\) | ||
中 心 線 の 係 数 |
s | \(c_4\) | = | \(\frac{Γ(\frac{n}{2})\sqrt{\frac{2}{n-1}}}{Γ(\frac{n-1}{2})}\) |
R | \(d_2\) | = | \(\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} [1-(1-φ(x))^n-(φ(x))^n]dx\) | |
– | \(d_3\) | = | \(\sqrt{2\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \displaystyle \int_{-\infty}^{y}f(x,y)dxdy-d_2^2 }\) \(f(x,y)=1-φ(y)^n-(1-φ(x))^n+(φ(y)-φ(x))^n\) |
上の表を、c4,d2,d3の観点でまとめ直しましょう。下表のような関係になるのがわかります。
係数 | なし | \(c_4\) | \(d_2\) | \(d_3\) |
\(\bar{X}\)管理図 | A | \(A_3\) | \(A_2\) | – |
s管理図 | – | \(B_3\),\(B_4\), \(B_5\),\(B_6\) |
– | – |
R管理図 | – | – | \(D_1\),\(D_2\), \(D_3\),\(D_4\) |
\(D_1\),\(D_2\), \(D_3\),\(D_4\) |
ここで、よく見ると、すべての係数は、c4,d2,d3,k=3,nで計算できますことがわかります。
興味本位ですが、係数の特性がわかると管理図も作りやすくなります。
②c4,d2,d3をプログラムで計算
R言語をインストール
Googleで「R言語 インストール」を検索して、お使いのPCのOSに合う「R」をインストールします。
活用できるものはどんどん活用しましょう!何でもかんでも自分で作る必要はありません。
●関連記事にインストール方法がありますので紹介します。
【R言語インストール(2020年 Windows)】
●インストーラーダウンロードも確認ください。
【R言語インストール(2020年 Windows)】
●お使いのPCによってLinux,macOS,Windoewsを選択ください。
●Windowsの場合は「Subdirectories」のところで「base」を選択してダウンロードします。
d2,d3計算プログラム
R言語がPC上で起動できたら、d2,d3計算プログラムを走らせます。
すでに、プログラムを作っている方がいらっしゃるので、それを使いましょう。個人使用限定でお願いしますね。
【シューハート管理図係数の計算】
d2,d3,A2,D3,D4の解析プログラムを先ほどインストールした「R」に貼り付けてください。
下図の赤枠から入力してください。
nについては、デフォルト1から50となっていますが、50を好きな数字に変えましょう。ただし、nを増やすと当然計算時間は増えます。2000にすると数分かかり、それ以上だと、もっとかかります。
③管理図係数の極限値
c4,d2,d3の極限値
c4はエクセルで、
d2,d3はR言語で解析しました。
結果は下図のとおりです。
\(c_4\)の極限値は1っぽい
●c4を構成するΓ関数ですが、nを増やすとΓも大きくなり、Excelで計算するとn=344以上は、「#NUM!」となってしまいました。
●\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n-1}}\)\(\frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)ですが、Γ関数の関係式を見ると\(c_4\)は1に収束するようです。
\(\frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)⇒\(\sqrt{\frac{n}{2}}\)になるようですね。Γ関数を復習しましょう。
\(c_4\)⇒\(\sqrt{\frac{2}{n-1}}\)×\(\sqrt{\frac{n}{2}}\)=\(\frac{1}{\sqrt{1-\frac{1}{n}}}\)⇒1
\(d_2\),\(d_3\)は収束しない
R言語を使ってn=2000くらいまで計算しても、ある値に収束しません。
\(d_2\),\(d_3\)の極限値は「?」です。
極限値のまとめ
係数c4,d2,d3のnによる変化を見て、極限値を算出しました。
●d2⇒?
●d3⇒?
係数値A,B,Dはどうなるのでしょうか?
A,\(A_2\),\(A_3\)
●A=\(\frac{k}{\sqrt{n}}\)⇒0
●\(A_2\)=\(\frac{k}{d_2 \sqrt{n}}\)⇒?
●\(A_3\)=\(\frac{k}{c_4 \sqrt{n}}\)⇒0
\(A_2\)は、Aと\(A_3\)と同様に0に収束するかもしれません。
Aは\(\bar{X}\)についての値なので、正規分布N(0,1)を考えると0に収束するのかもしれません。
\(B_3\),\(B_4\),\(B_5\),\(B_6\)
●\(B_3\)=\(max(0,1-\frac{k}{c_4}\sqrt{1-c_4^2})\)⇒1
●\(B_4\)=\(1+\frac{k}{c_4}\sqrt{1-c_4^2}\)⇒1
●\(B_5\)=\(max(0,c_4-k\sqrt{1-c_4^2})\)⇒1
●\(B_6\)=\(c_4+k\sqrt{1-c_4^2}\)⇒1
Bは標準偏差sについての値なので、正規分布N(0,1)を考えると1に収束するのかもしれません。
\(D_1\),\(D_2\),\(D_3\),\(D_4\)
●\(D_1\)=\(max(0,d_2-kd_3)\)⇒?
●\(D_2\)=\(d_2+kd_3\)⇒?
●\(D_3\)=\(max(0,1-\frac{kd_3}{d_2})\)⇒?
●\(D_4\)=\(1+\frac{kd_3}{d_2}\)⇒?
Dは範囲Rについての値です。範囲Rはサンプル数nが極限値になっても、ある一定の値を持ちます。だから、係数Dはどこに収束するかわかりません。
まとめ
計量値管理図の係数の極限値について解説しました。
- ①管理図係数表一覧
- ②管理図係数の公式
- ③管理図係数が負になる場合も計算
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