対数正規確率紙がよくわかる
「対数正規確率紙がよくわからない」、と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①現在、対数正規確率紙は不要
- ➁対数正規確率紙を理解することは大事
- ➂対数正規確率紙から平均、標準偏差を見つける方法
- ➃対数正規確率紙の使い方1(データをそのまま打点する場合)
- ➄対数正規確率紙の使い方2(度数分布表のデータを打点する場合)
①現在、対数正規確率紙は不要
対数正規分布を復習
対数正規分布の式は、
\(f(x)\)= \(\frac{1}{\sqrt{2π}σx} exp(-\frac{(log x-μ)^2}{2σ^2})\)
関連記事に解説していますので、ご確認ください。
対数正規分布がよくわかる 信頼性工学で使う対数正規分布が説明できますか? 本記事では、正規分布から対数正規分布を導出し、期待値・分散、故障率の変化をわかりやすく解説します。信頼性工学をマスターしたい方は必読です。 |
Excelで計算できる
対数正規確率紙を使わなくても、Excelで計算できますね。
使う関数は、LOGNORM.INV(確率,平均,標準偏差)で簡単に計算できます。平均0、標準偏差1の場合では、
x | log x | y1 |
0.1 | -1 | 0.011 |
0.2 | -0.699 | 0.054 |
0.3 | -0.523 | 0.114 |
1 | 0 | 0.5 |
1.1 | 0.041 | 0.538 |
1.9 | 0.279 | 0.74 |
2 | 0.301 | 0.756 |
3 | 0.477 | 0.864 |
9 | 0.954 | 0.986 |
10 | 1 | 0.989 |
11 | 1.041 | 0.992 |
12 | 1.079 | 0.994 |
グラフで描くと
と縦軸の確率を等間隔で描くと、違和感がありますね。実際の確率紙は縦の間隔をうまく設定して、プロットすると直線になるようにしていますね。
➁対数正規確率紙を理解することは大事
現在、不要ですが、考え方や理解は必須です。使い方の手段より、目的・意図は理解しておきましょう。
確率紙でおさえておきたい考え方
以下の疑問は説明できますか?
- 対数正規確率紙にプロットすると直線になる理由
- 何で横軸は小さい順に並び替えるのか?
解説します。
対数正規確率紙にプロットすると直線になる理由
当たり前!なんですが、わかりますか?
2次元グラフとは、本来、横軸と縦軸は独立した変数ですね。
でも、確率紙は変換前後の関係を見たいので、横軸も縦軸も同じ変数です。
何で横軸は小さい順に並び替えるのか?
もちろん、確率紙で直線に並べると見やすいからですが、
大事なのは、
ということは理解しておいてください。
では、実際に使ってみて、理解を深めましょう。
データをそのまま打点する場合と、度数分布表のデータを打点する場合がありますので、紹介します。
➂対数正規確率紙から平均、標準偏差を見つける方法
対数正規分布
対数正規分布の式は、
\(f(x)\)= \(\frac{1}{\sqrt{2π}σx} exp(-\frac{(log x-μ)^2}{2σ^2})\)
なお、期待値と分散は下の式になります。積分で計算できますが、今回は結果のみにしましょう。
●\(E\)=\(exp(μ+\frac{σ^2}{2})\)
●\(V\)=\(exp(2μ+σ^2)(exp(σ^2)-1)\)
ここにある平均\(μ\)、標準偏差\(σ\)は下の対数正規確率紙から求めます。
対数正規確率紙から平均、標準偏差を見つける方法
3つあります。
- 平均\(μ\)は横軸\(log X_{0.5}\)の値
- 標準偏差\(σ\)はあてはめ線の傾きで 縦軸の\(σ\) (34.1%)分とする
- 縦軸の確率は、メジアンランク法などの別の方法から求める
平均、標準偏差を変えた場合の対数正規確率プロット
対数正規確率紙において、平均\(μ\)を変えた場合と、標準偏差\(σ\)を変えた場合のグラフの違いを確認しましょう。
平均\(μ\)を変えた場合
下図のように、平行移動しているのがわかりますね。
平均\(μ\)は横軸の値とすればよいとわかります。
標準偏差\(σ\)を変えた場合
下図のように、傾きが変わるのがわかりますね。
標準偏差\(σ\)はあてはめ線の傾きとすればよいとわかります。
➃対数正規確率紙の使い方1(データをそのまま打点する場合)
データ
19個のデータを用意します。
32,90,150,240,160,110,53,70,45,180,
120,360,100,300,60,260,80,130,190
これを正規確率紙にプロットして。
平均\(μ\)、標準偏差\(σ\)を求めます。
対数正規確率紙へプロット
平均と標準偏差を求めるためのプロット方法は以下です。
- data \(x_i\)は小さい順に並べる
- メジアンランク法から確率を求めるために、度数\(f_i\)と累積度数\(C_i\)を求める
- data \(x_i\)の対数\(log_e x_i\)をとる
- メジアンランク法から\(F_i\)=\(\frac{i-0.3}{n+0.4}\)で確率を求める
- 対数正規確率紙に横軸\(log_e x_i\)、縦軸\(F_i\)でプロットする
表を作ります。
順位 | 観測値\(x_i\) | 度数\(f_i\) | 累積度数\(C_i\) | \(log_e x\) | メジアン ランク法\(F_i\) |
1 | 32 | 1 | 1 | 3.466 | 0.036 |
2 | 45 | 1 | 2 | 3.807 | 0.088 |
3 | 53 | 1 | 3 | 3.971 | 0.139 |
4 | 60 | 1 | 4 | 4.095 | 0.191 |
5 | 70 | 1 | 5 | 4.249 | 0.242 |
6 | 80 | 1 | 6 | 4.382 | 0.294 |
7 | 90 | 1 | 7 | 4.5 | 0.345 |
8 | 100 | 1 | 8 | 4.606 | 0.397 |
9 | 110 | 1 | 9 | 4.701 | 0.448 |
10 | 120 | 1 | 10 | 4.788 | 0.5 |
11 | 130 | 1 | 11 | 4.868 | 0.552 |
12 | 150 | 1 | 12 | 5.011 | 0.603 |
13 | 160 | 1 | 13 | 5.076 | 0.655 |
14 | 180 | 1 | 14 | 5.193 | 0.706 |
15 | 190 | 1 | 15 | 5.248 | 0.758 |
16 | 240 | 1 | 16 | 5.481 | 0.809 |
17 | 260 | 1 | 17 | 5.561 | 0.861 |
18 | 300 | 1 | 18 | 5.704 | 0.912 |
19 | 360 | 1 | 19 | 5.887 | 0.964 |
結果をプロットします。
平均\(μ\)、標準偏差\(σ\)を求めます。
●平均\(μ\)=4.788
●標準偏差\(σ\)=0.723
こんな感じで作ります。
Excelなどのツールが無い時代は、確率紙は重宝されていました。今は、理論をしっかり引き継いでおく必要があります。
期待値\(E\)と分散\(V\)の計算
●\(E\)=\(exp(μ+\frac{σ^2}{2})\)
=\(exp(4.788+\frac{0.723^2}{2})\)
=155.84
●\(V\)=\(exp(2μ+σ^2)(exp(σ^2)-1)\)
=\(exp(2×4.788+0.723^2)(exp(0.723^2)-1)\)
=16673.6
➄正規確率紙の使い方1(度数分布表のデータを打点する場合)
データ
度数分布表用のデータを233個用意します。
233個の度数分布表は次の通りとします。
級の番号 | x上限 | fi |
1 | 10 | 5 |
2 | 20 | 20 |
3 | 30 | 48 |
4 | 40 | 44 |
5 | 50 | 51 |
6 | 60 | 30 |
7 | 70 | 21 |
8 | 80 | 9 |
9 | 90 | 5 |
– | 合計 | 233 |
度数分布表を作成
分布の区分は、スタージェスの公式があるので、使ってみましょう。よくデータ数の平方根にしますよね!
スタージェスの公式は関連記事で紹介します。
スタージェスの公式がよくわかる ヒストグラムの区分数を考える1つの方法として、スタージェスの公式を解説します。信頼性工学ではヒストグラムをよく使いますので、紹介します。 |
スタージェスの公式は
区分\(m\)≒\(1+\frac{log_{10} n}{log_{10} 2}\) で
\(m\)≒\(1+\frac{log_{10} 233}{log_{10} 2}\)
≒9
区分数9で度数分布表を作っています。各区分における確率を平均ランク法で求めると次の度数分布表にまとめられます。
級の番号 | x上限 | fi | Ci | Fi | – | log x | Fi |
1 | 10 | 5 | 5 | 0.021 | – | 1 | 0.021 |
2 | 20 | 20 | 25 | 0.107 | – | 1.301 | 0.107 |
3 | 30 | 48 | 73 | 0.312 | – | 1.477 | 0.312 |
4 | 40 | 44 | 117 | 0.5 | – | 1.602 | 0.5 |
5 | 50 | 51 | 168 | 0.718 | – | 1.699 | 0.718 |
6 | 60 | 30 | 198 | 0.846 | – | 1.778 | 0.846 |
7 | 70 | 21 | 219 | 0.936 | – | 1.845 | 0.936 |
8 | 80 | 9 | 228 | 0.974 | – | 1.903 | 0.974 |
9 | 90 | 5 | 233 | 0.996 | – | 1.954 | 0.996 |
– | 合計 | 233 | – | – | – | – | – |
ここで、累積度数\(C_i\)=\(\sum_{i=1}^{n}f_i\)
平均ランク法による確率の導出\(F(x_i)=C_i /(n+1)\)
を使って計算しています。
平均ランク法でなくても、他の方法でもOKです。例として紹介します。
対数正規確率紙へプロット
区分と平均ランク法で求めた確率をプロットします。
平均\(μ\)、標準偏差\(σ\)を求めます。
●平均\(μ\)=3.689
●標準偏差\(σ\)=0.406
こんな感じで作ります。
Excelなどのツールが無い時代は、確率紙は重宝されていました。今は、理論をしっかり引き継いでおく必要があります。
期待値\(E\)と分散\(V\)の計算
●\(E\)=\(exp(μ+\frac{σ^2}{2})\)
=\(exp(3.689+\frac{0.406^2}{2})\)
=43.42
●\(V\)=\(exp(2μ+σ^2)(exp(σ^2)-1)\)
=\(exp(2×3.689+0.406^2)(exp(0.406^2)-1)\)
=337.88
まとめ
「対数正規確率紙がよくわかる」を解説しました。
- ①現在、対数正規確率紙は不要
- ➁対数正規確率紙を理解することは大事
- ➂対数正規確率紙から平均、標準偏差を見つける方法
- ➃対数正規確率紙の使い方1(データをそのまま打点する場合)
- ➄対数正規確率紙の使い方2(度数分布表のデータを打点する場合)
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119