待機系の温予備系の信頼性・故障率がわかる
「待機系の信頼度・故障率・MTTFの計算がわからない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①待機系の種類
- ➁温予備系とは
- ➂温予備系の平均寿命の計算
①待機系の種類
待機系ではさらに3つに分類できます。信頼性工学の専門書レベルですが、比較すると理解が深まるので解説します。
- 熱予備
- 温予備
- 冷予備
3つの違いを表にします。
– | 種類 | 内容 |
① | 冷予備系 | 待機中は放置、稼働しない。 稼働しない分の信頼度は並列系より高くなる。 |
➁ | 温予備系 | 冷予備系と温予備系の間。 予備電源だけ入れて待機状態のイメージ。 |
➂ | 熱予備系 | 並列系と同じで、待機中も稼働し、 いつでも切り替えられる良さはあるが、 信頼度は並列系程度に低下する |
名前に、温度が関係する文字があるのは、対応する系の設備や施設と関連があるからです。
イメージは、
稼働しない分の信頼度は並列系より高くなる。
実は、下の待機系の記事は、冷予備系を前提に書いています。本記事はもう少し詳細に解説します。
また、信頼度\(R_s(t)\)の式も若干異なります。それぞれ解説記事があります。
●冷予備系:\(R_s(t)\)=\(R_1(t)+α\displaystyle \int_{0}^{t} f_1(τ)R_2(t-τ) dτ\)
●温予備系:\(R_s(t)\)=\(R_1(t)+α\displaystyle \int_{0}^{t} f_1(τ)R_2(t-τ+\frac{τ}{k}) dτ\)
●熱予備系:\(R_s(t)\)=\(R_1(t)+αR_2(t)(1-R_1(t))\)
➁温予備系とは
温予備系とは
●冷予備系が待機系より
●熱予備系に近いほど並列系の信頼性に近づく(低下する)
(本記事で実際に計算します。)
比較として冷予備系についての記事をリンクします。ご確認ください。
待機系の冷予備系の信頼性・故障率がわかる 待機系の冷予備系信頼度、故障率、平均寿命は計算できますか。本記事では、わかりやすく解説しています。基本的な内容ですが、信頼度、確率密度関数、MTTFの導出式を理解して、待機系、多数決系の応用パターンも理解していきましょう。 |
温予備系の信頼度\(R_s(t)\)
信頼度\(R_s(t)\)は、
●温予備系:\(R_s(t)\)=\(R_1(t)+α\displaystyle \int_{0}^{t} f_1(τ)R_2(t-τ+\frac{τ}{k}) dτ\)
(0 ≤ \(α\) ≤ 1)
(1 ≤ \(k\) )
ですが、式の意味を解説すると、
待機中に要素を使用状態にするため、少し時間が経過しているという意味を持たせるために\( R_2(+\frac{τ}{k})\)がある
その分、計算は煩雑になりますが、いい計算練習にはなります。
実例として、\(α\) =1、\(R_1(t)\)=\(e^{-λ_1 t}\)、\(R_2(t)\)=\(e^{-λ_2 t}\)として、\(R_s(t)\)を求めましょう。
まず、計算が大変そうな\(\displaystyle \int_{0}^{t} f_1(τ)R_2(t-τ+\frac{τ}{k}) dτ\)を計算すると、
\(\displaystyle \int_{0}^{t} f_1(τ)R_2(t-τ+\frac{τ}{k}) dτ\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{t} λ_1 e^{-λ_1 t} e^{λ_2 (t-(1-\frac{1}{k})τ)} dτ\)
=\(\frac{λ_1 e^{-λ_2 t}}{λ_1 – λ_2(1-\frac{1}{k})} (1- e^{-(λ_1 – λ_2(1-\frac{1}{k}))t})\)
よって、\(R_s(t)\)は
\(R_s(t)\)= \(\frac{λ_1 e^{-λ_2 t}}{λ_1 – λ_2(1-\frac{1}{k})} (1- e^{-(λ_1 – λ_2(1-\frac{1}{k}))t})\)
以降、\(λ\)=\(λ_1\)=\(λ_2\)について計算すると、
\(R_s(t)\)= \(\frac{λe^{-λt}}{λ – λ(1-\frac{1}{k})} (1- e^{-(λ– λ(1-\frac{1}{k}))t})\)
=\(e^{-λt} (1+k(1-e^{-\frac{λ}{k}t}))\)
とシンプルになります。
温予備系の信頼度\(R_s(t)\)と並列系の信頼度\(R_p(t)\)の比較
温予備系の信頼度\(R_s(t)\)は並列系の信頼度\(R_p(t)\)より
高いかどうか確認しましょう。
並列系の信頼度\(R_p(t)\)の導出
関連記事にありますので、ご確認ください。
並列系の信頼性・故障率がよくわかる 並列系の信頼度、故障率、平均寿命は計算できますか。本記事では、わかりやすく解説しています。基本的な内容ですが、信頼度、確率密度関数、MTTFの導出式を理解して、待機系、多数決系の応用パターンも理解していきましょう。 |
\(R_p(t)\)=\(R_1+R_2-R_1 R_2\)より
\(R_p(t)\)=\(e^{-λ_1 t}\)+\(e^{-λ_1 t}\)-\(e^{-λ_1 t}\)\(e^{-λ_1 t}\)
=\(2e^{-λt}\)+\(e^{-2λt}\)
温予備系の信頼度\(R_s(t)\)と並列系の信頼度\(R_p(t)\)の比較
\(R_s(t)\)- \(R_p(t)\)
=\(e^{-λt} (1+k(1-e^{-\frac{λ}{k}t})\)-(\(2e^{-λt}\)+\(e^{-2λt}\))
=\( e^{-λt}(k(1- e^{-\frac{λ}{k}t})-(1- e^{-λt}))\)
ここで指数関数を2次項までテーラー展開した結果を代入すると、
=\( e^{-λt}(k(1-1+\frac{λ}{k}-\frac{λ^2}{2k^2}t^2)-(1-1+λt-\frac{λ^2}{2}t^2)\)
=\( e^{-λt} \frac{λ^2 t^2}{2}(1-\frac{1}{k})\) > 0
(1 ≤ \(k\) )
より、確かに、
温予備系の信頼度\(R_s(t)\)は並列系の信頼度\(R_p(t)\)より
高いことが確認できた!
温予備系の確率密度関数\(f_s(t)\)
次に確率密度関数\(f_s(t)\)を計算します。導出方法が2つあります。
- 信頼度\(R_s(t)\)の微分から
- 1系、2系の確率密度関数の関係式から
2つ目の「1系、2系の確率密度関数の関係式から」は大変なので、
信頼度\(R_s(t)\)の微分から計算しましょう。
信頼度\(R_s(t)\)の微分から導出
\(f_s(t)\)=\(-\displaystyle \frac{dR_s(t)}{dt} \)
=\(λ(k+1)e^{-λt}(1-e^{-\frac{λ}{k}t})\)
少し複雑な微分ですが、良い計算練習にはなります。
➂温予備系の平均寿命の計算
平均寿命μの導出
μ= \(\displaystyle \int_{0}^{∞}t f_s(t) dt\)
で計算できます。複雑な式をがんばって部分積分しましょう。
μ= \(\displaystyle \int_{0}^{∞}t f_s(t) dt\)
=\(λ(k+1) \displaystyle \int_{0}^{∞} t e^{-λt} (1-e^{-\frac{λ}{k}t})dt \)
部分積分すると、
\(\displaystyle \int_{0}^{∞} t e^{-λt} dt \)
=\( \left[ -\frac{1}{λ}t e^{-λt}-\frac{1}{λ^2} e^{-λt} \right]_0^∞ \)
\(\displaystyle \int_{0}^{∞} t e^{-λ(1+\frac{1}{k})t} dt \)
=\( \left[ -\frac{1}{λ(1+\frac{1}{k})}t e^{-λ(1+\frac{1}{k})t}+\frac{1}{λ^2 (1+\frac{1}{k})^2} e^{-λ(1+\frac{1}{k})t} \right]_0^∞ \)
部分積分の結果を代入すると
μ=\(λ(k+1)( \left[ -\frac{1}{λ}t e^{-λt}-\frac{1}{λ^2} e^{-λt} \right]_0^∞ \)- \( \left[ -\frac{1}{λ(1+\frac{1}{k})}t e^{-λ(1+\frac{1}{k})t}+\frac{1}{λ^2 (1+\frac{1}{k})^2} e^{-λ(1+\frac{1}{k})t} \right]_0^∞ )\)
=\(λ(k+1) (\frac{1}{λ^2}-\frac{k^2}{λ^2 (k+1)^2})\)
=\(\frac{2k+1}{λ(k+1)}\)
=\(\frac{1}{λ}(1+\frac{k}{1+k})\)
まとめると、
平均寿命μ=\(\frac{1}{λ}(1+\frac{k}{1+k})\)
冷予備系と温予備系の平均寿命μの比較
●冷予備系の平均寿命\(μ_1\)=\(\frac{1}{λ_1}+\frac{1}{λ_2}\)
=μ=\(\frac{2}{λ}\)
●温予備系の平均寿命\(μ_2\)=\(\frac{1}{λ}(1+\frac{k}{1+k})\)
平均寿命を比較すると、
\(μ_1\)-\(μ_2\)
=\(\frac{2}{λ}\)-\(\frac{1}{λ}(1+\frac{k}{1+k})\)
=\(\frac{1}{λ(k+1)}\) > 0
より、確かに、
温予備系と熱予備系を見て、待機系の3つの違いを比較して理解しましょう。
まとめ
「待機系の温予備系の信頼性・故障率がわかる」を解説しました。
- ①待機系の種類
- ➁温予備系とは
- ➂温予備系の平均寿命の計算
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