★ 本記事のテーマ
- ①分布関数を必要とする理由を理解する
- ➁正規分布、カイ二乗分布、t分布、F分布の関係性
- ➂分布関数を導出するために必要な数学手法
- ➃分布関数の学ぶ順番
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①分布関数を必要とする理由を理解する
なんで、いろいろ分布関数があるの?
分布関数が必要な理由を最初に理解しましょう。
それは、
解析したい変数に合わせて分布関数がある
私たちが知りたい変数の情報は主に3つです。
- 変数Xそのもの
- 変数Xのばらつき(平方和)
- 変数Xの分散の変化(分散比)
つまり、
- データxの値そのものをまず調べて
- その値が妥当かどうかを見たいために、分散・平方和を求める
- また、条件変化によるデータxの変化も分散比から求めたい
という3つの情報があります。
4つの分布関数がありますが、関係性は下表のとおりです。
| 変数 | 分布 |
| 変位x | 正規分布(またはt分布) |
| 平方和S 分散(V) |
χ2乗分布 |
| 分散比 | F分布 |
ここまでの内容は大丈夫でしょうか?わかりやすいはずですが、結構重要なエッセンスです。
この重要なエッセンスを主に、実際数式を解いていきます。数式が複雑なだけで考え方はここまで理解できればOKです。
➁正規分布、カイ二乗分布、t分布、F分布の関係性
関係性は図で理解する
図を見ましょう。

勉強する順番は、
- 変数Xそのもの
- 変数Xのばらつき(平方和)
- 変数Xの分散の変化(分散比)
ですから、
- 最初に変位Xを表現する正規分布
- 正規分布の2乗和を表現するχ2乗分布で平方和・分散を評価します。
- 分散の変化があれば、分散比を使ってF分布を使います。
- t分布はおまけ
ここで、t分布は (t分布)=(正規分布)×1/√(χ2乗分布/n(自由度))な変換で導出します。イメージは

t分布が何者かわかりにくいですが、これで少しイメージが付いたと思います。
QC検定®では、
①正規分布
➁t分布
➂χ2乗分布
➃F分布
の順番ですが、
数学的には、
①正規分布
➁χ2乗分布
➂F分布
➃t分布
の順番の方が理解しやすいです。
➂分布関数を導出するために必要な数学手法
ここは、QC検定®1級以上のレベルなので、初めて確率密度関数を学ぶ人はスキップしてもOKです。
でも、導出過程を知らないと、わけのわからない関数のままです。
分布関数を導出するために必要な数学は以下です。すべて関連記事に書いていますのでご覧ください。
- ベータ関数、ガンマ関数
(正規分布の積分に必要) - 確率変数の変換
(\(Y=X^2\)のχ2乗分布を作るときに必要) - 畳み込み積分
(自由度1からnのχ2乗分布を作るときに必要) - 確率変数の変換
(F分布を作るときに必要)
難しい式を並べず、高校数学の復習をしてから解説しているので、理解しやすいです。1つずつ何度も読んで理解を深めてください。一読でわかるものではないので注意です!
ベータ関数、ガンマ関数
ベータ関数
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ベータ関数がよくわかる 本記事ではベータ関数の導出方法や性質、ガンマ関数との関係をわかりやすく解説します。大学の数学のような難解な説明は一切していません。大学受験で頻出問題となるベータ関数は受験でも重要です。 |
ガンマ関数
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ガンマ分布がよくわかる 信頼性工学で必須なガンマ分布の特徴・期待値・分散などをわかりやすく解説します。 |
確率変数の変換
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2変数の確率変数の変換がよくわかる(1変数の積の場合) 2変数の確率変数の変換の基礎をわかりやすく解説します。 |
畳み込み積分
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【まとめ】畳み込み積分がよくわかる 本記事では畳み込み積分を高校数学を使ってわかりやすく解説し、 さらに一様分布、指数分布、正規分布、ポアソン分布、χ2乗分布を組み合わせた畳み込み積分の計算を途中経過を一切端折らずに解説しています。 |
➃分布関数の学ぶ順番
何度も書いていますが、
- 変数Xの分布は正規分布からスタートする
- ばらつきを調べたいので平方和を表現するχ2乗分布が欲しくなる
- ばらつきの変化を調べたいので分散比を表現するF分布が欲しくなる
- t分布はおまけ
を理解しましょう。ここからは、実際に数学を駆使して確率密度関数を導出しています。関連記事を見てください。
変数Xの分布は正規分布からスタートする
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正規分布の導出がよくわかる 本記事では専門書を読んでも理解できない正規分布の導出をわかりやすく解説しています。統計学、品質管理に関わる人は必読です。 |
大事なポイントは、
なぜ、\(e^{-x^2}\)型を正規分布は使うのかを理解することです! この理由を考えながら関連記事を読んでください。
ばらつきを調べたいので平方和を表現するχ2乗分布が欲しくなる
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★リンク QCプラネッツプレミアムテキスト 「F分布、χ2乗分布の導出がよくわかる」で確認ください |
大事なポイントは、
①確率変数変換\(Y=X^2\)で2乗の変数を作る事です。1つの解法でどんな変換もイケます!実際に使う式は
\(g(y)\) =\(\frac{1}{2\sqrt{y}}(f(\sqrt{y})+f(-\sqrt{y}))\)
暗記せず、導出過程も理解していきましょう。
➁2乗の変換ができたら、次は、2乗和して平方和・分散の確率密度関数を作ることです。
和は「畳み込み積分」で表現します。
\(Z=X_1^2+X_2^2\)⇒ \( g(z)= \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} f_1(x)f_2(z-x)dx \)
ですね。これをくりかえします。
\(Z=(X_1^2+X_2^2)+X_3^2\)⇒ \( g(z)= \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} f_{1,2}(x)f_3(z-x)dx \)
…
\(Z=(X_1^2+…+X_{n-1}^2)+X_n^2\)⇒ \( g(z)= \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} f_{1,…,n-1}(x)f_n(z-x)dx \)
こうやってχ2乗分布の確率密度関数を導出します!
ばらつきの変化を調べたいので分散比を表現するF分布が欲しくなる
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★リンク QCプラネッツプレミアムテキスト 「F分布、χ2乗分布の導出がよくわかる」で確認ください |
大事なポイントは、
\(X,Y⇒Z=X/Y,W=Y\)と確率変数を変換して、
2変数の同時確率密度関数を導出します。
そして、変数を1つ減らすために、積分した周辺確率密度関数からF分布の確率密度関数が導出できます。
t分布はおまけ
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t分布の確率密度関数の導出がよくわかる t分布の確率密度関数は導出できますか?本記事では、2つの確率変数の変換の解法パターンでわかりやすく丁寧にt分布の確率密度関数を導出します。統計学を学んでいる方は必読です。 |
大事なポイントは、
\(X,Y⇒Z=X/\sqrt{\frac{Y}{n}},W=Y\)と確率変数を変換して、
2変数の同時確率密度関数を導出します。
そして、変数を1つ減らすために、積分した周辺確率密度関数からt分布の確率密度関数が導出できます。
t分布の導出を最後として、F分布の導出の後にした理由は
F分布と導出方法が同じで、変換する変数が異なるだけだからです。
まとめ
「【まとめ】正規分布、カイ二乗分布、t分布、F分布の関係性がよくわかる」を解説しました。
- ①分布関数を必要とする理由を理解する
- ➁正規分布、カイ二乗分布、t分布、F分布の関係性
- ➂分布関数を導出するために必要な数学手法
- ➃分布関数の学ぶ順番








