【必見!】検出力がよくわかる

本記事のテーマ

【必見!】検出力がよくわかる
  • ①検出力とは
  • ②検出力(母平均の検定)がわかる
  • ③検出力(母分散の検定)がわかる
  • ④検出力(母平均の検定)の演習問題が解ける
  • ⑤検出力(母分散の検定)の演習問題が解ける

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①検出力とは

検出力とは

検出力は
第1種の誤り(消費者危険)と第2種の誤り(生産者危険)
に出て来る!
消費者危険と生産者危険をプロットしたのが
抜取検査のOC曲線だから、
検出力がわかれば
「検定と推定」も「抜取検査」も理解できる!

大事ですね。

よく下表のように書いてあり、
主張したい対立仮説H1
「真」と判断できる確率を
「検出力 1-β」
と書きます。

H0が正しい H1が正しい
H0が真 1-α α(有意水準)
H1が真 β 1-β(検出力)

検出力は計量抜取検査の基本

計量抜取検査の理論は検出力の導出がベースです。しっかりここでマスターして計量抜取検査もマスターしましょう。QCプラネッツは計量抜取検査をしっかりまとめています。ご確認ください。

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②検出力(母平均の検定)がわかる

有意水準αと検出力1-βを図示する

検出力を導出する上で、大事になるのが、
有意水準αと検出力1-βの関係図です。

関係図は下図になります。これ、結構大事です!
第1種の誤りも第2種の誤りも、
確率なので、正規分布の面積に該当します。

検出力

有意水準αと検出力1-βの関係式を作る

上図で理解したら、具体的な式を入れて来ます。

検出力

ここで、\(u(α),u(β)\)は平均から標準偏差\(σ/\sqrt{n}\)の何倍離れているかを定義する倍数と定義します。

上図の点Aの位置は
●A=\(μ_0+u(α)\frac{σ}{\sqrt{n}}\)
●A=\(μ-u(β)\frac{σ}{\sqrt{n}}\)
と2通り表現できますね。

まとめると、
\(μ_0+u(α)\frac{σ}{\sqrt{n}}\)=\(μ-u(β)\frac{σ}{\sqrt{n}}\)
からβについてとnについての式をそれぞれ変形します。
実際、\(μ_0,μ\)の大小はどちらかが大きくなるので、差分に絶対値を付けます。

●\(β\): \(u(β)\)=\(\frac{|μ-μ_0|}{σ/\sqrt{n}}-u(α)\)
●\(n\): \(n\)=\((\frac{σ}{μ-μ_0})^2 (u(α)+u(β))^2\)
と解けます。

大事なのは、

●\(β\): \(u(β)\)=\(\frac{|μ-μ_0|}{σ/\sqrt{n}}-u(α)\)
●\(n\): \(n\)=\((\frac{σ}{μ-μ_0})^2{u(α)+u(β)}^2\)
自力で導出できる!
ですね。

グラフから検出力の性質を理解する

実際可視化して見てみましょう。

  1. \(μ-μ_0\)が変化すると検出力はどうなるか?
  2. \(σ\)が変化すると検出力はどうなるか?
  3. \(n\)が変化すると検出力はどうなるか?

Excelでグラフを描きますが、下図のように検出力は
=NORM.DIST(ABS($F6)/SQRT(G$2^2/G$3)-NORM.INV(1-G$4,0,1),0,1,TRUE)
として計算します。
NORM.DISTはTRUEより累積確率をもとめており、
NORM.INVは\(u(β)\)を\(β\)に戻す計算をしています。

検出力

\(μ-μ_0\)が変化すると検出力はどうなるか?

下図のグラフのx軸を見るとわかりますが、

検出力

\(|μ-μ_0|\)が0に近づくと一気に検出力は低下する

図を描けば、この理由がよくわかります。
2つの正規分布が近づくと赤い面積(検出力)は削られているのがわかります。これが理由です。

検出力

\(σ\)が変化すると検出力はどうなるか?

\(σ\)が大きいと検出力は低下する

検出力

\(n\)が変化すると検出力はどうなるか?

\(σ\)が大きいと検出力は低下する

検出力

理解を深めたいならば、Excelで1回描いてみてください。式だけではイメージしにくいのでグラフを描いて理解するのが良いでしょう。

③検出力(母分散の検定)がわかる

次に、「母分散の検定」の検出力を導出しましょう。

検出力の関係式を導出

母分散の検定における検出力
はイメージしにくいんですよね。。。

真の母分散\(σ^2\)と帰無仮説における母分散\(σ_0^2\)の比を使って
検出力とサンプル数を決定します。

同じ自由度\(n-1\)において、比較する2つの比を用意します。
式についての基礎は関連記事で確認ください。

【簡単】χ2乗分布がすぐ使いこなせる【初心者向け】
χ2乗分布を使うときに注意すべきポイントをわかりやすく解説します。χ2乗分布をすぐ使いこなせたい方は必見です。

●\(\frac{S}{σ_0^2}\)=\(χ^2(n-1,Φ_0)\)
●\(\frac{S}{σ^2}\)=\(χ^2(n-1,Φ)\)

ここで、\(S\)は平方和、\(Φ_0とΦ\)に有意水準\(α\)や検出力\(1-β\)が入りますが、下表のような関係で代入します。でもここが難しいですけど。

片側検定 両側検定
\(σ\) > \(σ_0\) \(Φ_0\) \(α\) \(α\)/2
\(Φ\) 1-\(β\) 1-\(β\)
\(σ\) < \(σ_0\) \(Φ_0\) 1-\(α\) 1-\(α\)/2
\(Φ\) \(β\) \(β\)

関係式
●\(\frac{S}{σ_0^2}\)=\(χ^2(n-1,Φ_0)\)
●\(\frac{S}{σ^2}\)=\(χ^2(n-1,Φ)\)
から
●「\(S\)= 」の式に変形します。

\(S\)=\( σ_0^2 χ^2(n-1,Φ_0)\)= \(σ^2 χ^2(n-1,Φ)\)

ここで、\(λ^2\)=\(\frac{σ^2}{σ_0^2}\)とおくと、
\(λ^2\)=\(\frac{σ^2}{σ_0^2}\)=\(\frac{χ^2(n-1,Φ_0)}{χ^2(n-1,Φ)}\)
という関係式ができます。

\(λ^2\)=\(\frac{σ^2}{σ_0^2}\)=\(\frac{χ^2(n-1,Φ_0)}{χ^2(n-1,Φ)}\)
から、\(σ、n\)が既知なら、\(Φ\)の比較により検出力が計算できて
\(σ、Φ\)が既知なら、サンプル数\(n\)が計算できます。

検出力の関係式を図示

\(λ^2\)=\(\frac{σ^2}{σ_0^2}\)=\(\frac{χ^2(n-1,Φ_0)}{χ^2(n-1,Φ)}\)
の式がイメージしにくいので
図示しましょう。

母分散の検定の検出力

上図で、わかりやすい図を作ったのですが、
母分散の検定における検出力はイメージしにくいですね。

④検出力(母平均の検定)の演習問題が解ける

3問あります。確認しましょう。

演習問題1

問題

製品Aの強度特性の現状の母平均は60である。強度向上する対策を施し、その効果があったかを確認したい。母分散は工程を変更しても従来通りσ2=42とする。有意水準5%で差を検定する。
(1) n=16のデータとする。向上後の母平均が62とする。この時、検定統計量が棄却域に入る確率を求めよ。
(2) 向上後の母平均が64の場合、検出力を0.95にするために必要なサンプル数は最低いくらか。

問題文から、「母平均の検出力」の問題とわかりますね。

(1)の解法

検定棄却域\(u\)は両側検定として正規分布表から1.645です。
別の式で書くと、
\(\frac{u-u_0}{σ/\sqrt{n}}\)=\(\frac{u-60}{4/\sqrt{16}}\)=1.645
より
\(u\)=61.645となります。

母平均62が棄却域に入る確率は、
\(\frac{u-u_0}{σ/\sqrt{n}}\)=\(\frac{62-61.645}{4/\sqrt{16}}\)=0.355
0.355となる確率は正規分布表からP=0.3594 より、
求めたい確率1-P=1-0.3594=0.64
となります。

(2)の解法

母平均の検定の検出力の式を使います。

\(\frac{u-u_0}{σ/\sqrt{n}}\)=\(K_α+K_β\)から
\(\frac{64-60}{4/\sqrt{n}}\)=1.645+1.645
\(\sqrt{n}\)=3.29から\(n\)=11
となります。

演習問題2

問題

ある製品の強度は母平均50.0であるが、製造方法の改善により強度向上させたい。改善後の強度の母平均が51.0であれば新しい製造方法に切り替えたい。なお、強度は正規分布に従い、改造変後でも母標準偏差はσ=1.0とする。新しい製造方法の効果を判断するために、次の母平均に関する仮説検定を考える。
帰無仮説:H0:\(μ_0\) =\(μ_1\)
対立仮説:H1:\(μ_0\) > \(μ_1\)
(1) 新製造方法による\(n\)個の製品をランダムに抽出し、その製品の強度の平均値を\(\bar{x}\)とする。この検定の統計量\(u_0\)を\(\bar{x}\), \(μ_0\),\(σ\),\(n\)で表せ。また、有意水準\(α\)と\(u_0\)、\(K_α\)で表せ。ただし、\(K_α\)は標準正規分布の上側100P%点とする。
(2) また、\(u=\frac{\bar{x}-μ_0}{σ/\sqrt{n}}\)とする。\(u_0\)と\(u\)の関係式を作れ。また、この検出力\(1-β\)とすると、\(1-β\)はどこの確率に相当するかを示せ。
(3) \(K_α\)と\(K_β\)の関係式を作れ。
(4) 有意水準\(α\)=0.05のもとで、\(μ\)=51.0の場合に、検出力\(1―β\)が0.90でH0を棄却するために必要なサンプル数\(n\)を求めよ。

解法

母平均の検定の検出力の関係式を導出しながら解く問題です。公式暗記だけだと、この問題はむしろ解きにくいはずです。しっかり練習しましょう。

(1)の解法

●\(\frac{μ-x}{σ/\sqrt{n}}\)=\(K_α\)
●\(α\)=Pr{\(u_0\) ≥ \(K_α\)}

(2)の解法

●\(\frac{x-μ_0}{σ/\sqrt{n}}\)=\(K_β\)
●\(1-β\)=Pr{\(u\) ≥ \(K_α-\frac{μ-μ_0}{σ/\sqrt{n}}\)}

(3)の解法

●\(\frac{μ-μ_0}{σ/\sqrt{n}}\)=\(K_α\)+\(K_β\)

(4)の解法

●\(\frac{μ-μ_0}{σ/\sqrt{n}}\)=\(\frac{51.0-50.0}{1/\sqrt{n}}\)=1.645+1.282
\(\sqrt{n}\)=2.927より、\(n\)=8.42⇒9となります。

演習問題3

問題

ある製品において、品質特性の母集団からランダムに16個をサンプリングした。その場合の平均\(μ_0\)は30.0で標準偏差は2.0である。製品を改良し、母平均\(μ_1\)になったとする。ただし、改良による標準偏差の変化ないとする。母平均が変化したかどうかを有意水準α=5%で検定する場合の検出力1―βについて以下を求めよ。
(1) \(μ_1\)が30.0のままの場合、検出力1―βはいくらになるか。
(2) \(μ_1\)が60.0などの極端に離れた場合、検出力1―βはいくらになるか。
(3) \(μ_1\)が30.9,31,31.3,31.8の場合における検出力1―βを求め、検出力曲線(縦軸は検出力1―β、横軸は (\(μ_1\)-\(μ_0\))/σ)をプロットせよ。
(4) サンプル数を増加すると検出力曲線はどう変化するか。

検出力曲線がプロットできる大事な問題です。

(1)の解法

●\(K_β\)=(30-30)/(2.0/\(\sqrt{16}\))-1.645=-1.645
正規分布表からβ=0.95
よって、検出力1-β=0.05

(2)の解法

1となります。

(3)の解法

同じ計算を繰り返していきます。
●\(K_β\)=(30.9-30)/(2.0/\(\sqrt{16}\))-1.645=0.155
●\(K_β\)=(31-30)/(2.0/\(\sqrt{16}\))-1.645=0.355
●\(K_β\)=(31.3-30)/(2.0/\(\sqrt{16}\))-1.645=0.955
●\(K_β\)=(31.8-0)/(2.0/\(\sqrt{16}\))-1.645=1.955

\(K_β\)から正規分布表を使って確率βを求めて、検出力1―βを計算します。結果を表にまとめます。

\(μ_1\) (\(μ_1\)-\(μ_0\))/σ \(K_β\) β 検出力1-β
30.9 0.45 0.155 0.438 0.562
31 0.5 0.355 0.361 0.639
31.3 0.65 0.955 0.169 0.831
31.8 0.9 1.955 0.025 0.975

プロットすると、下図になります。

検出力

(4)の解法

関連記事にもあるように、サンプル数を増やすと検出力は上がります。実際に試してみてください。

⑤検出力(母分散の検定)の演習問題が解ける

演習問題1

問題

ある部品の特性のばらつき低減をしたい。既存部品と新規部品のばらつきを評価する。検定の有意水準は5%とする。既存部品の母標準偏差は14であり、既存部品も新規部品もそれぞれ30個のサンプルを用いる。
(1) 新規部品の母標準偏差が10の場合、検出力はいくらか。
(2) 新規部品の母標準偏差が既存部品の半分の7になった場合、検出力を99%以上にするためにはサンプルサイズはいくら以上必要か。

問題文読んでもチンプンカンプンになりがちですが、丁寧に公式代入練習していきましょう。

(1)の解法

\(χ^2(n-1,β)\) ≤ \(\frac{χ^2(n-1,1-α)}{σ^2/σ_0^2}\)から
\(χ^2(29,β)\) ≤ \(\frac{χ^2(29,0.95)}{10^2/14^2}\)=34.73
ここで、分布表から
●\(χ^2(29,0.75)\)=33.7
●\(χ^2(29,0.90)\)=39.1

\(χ^2(29,0.75)\) < \(χ^2(29,β)\) < \(χ^2(29,0.90)\)
と挟めるので、よって、
0.75以上0.9未満となります。

(2)の解法

\(\frac{1}{4}\) ≤ \(\frac{χ^2(n-1,0.95)}{χ^2(n-1,0.99)}\)
を満たす\(n\)を分布表から探しましょう。
\(n-1\)=17がこの条件を満たすので、\(n=18\)となります。

ピンと来ないですが、公式代入で慣れていきましょう。

演習問題2

問題

ある特性のばらつきが従来の標準偏差\(σ_0\)=25から変化したかどうかを調べるために、ランダムにn=10個のサンプルを選び、帰無仮説H0:\(σ^2\)=\(σ_0^2\)、対立仮説H1:\(σ^2\)≠\(σ_0^2\)を設定して、有意水準α=5%で母分散における検定を実施する。
(1) 新たな母標準偏差が15に変化しているときの検出力1-βを求めよ。
(2) (1)のもとで検出力1-β=0.90を満足するサンプル数を求めよ。

問題文読んでもチンプンカンプンになりがちですが、丁寧に公式代入練習していきましょう。

(1)の解法

\(λ^2\)=\(\frac{σ^2}{σ_0^2}\)=\(\frac{χ^2(n-1,1-α)}{χ^2(n-1,β)}\)
から
\(λ^2\)=\(\frac{15^2}{25^2}\)=\(\frac{χ^2(10,0.95)}{χ^2(9,β)}\)
として、\(β\)の範囲を絞ります。

計算すると
\(χ^2(9,β)\)=9.25となり、
分布表を見ると、 0.25 < \(β\) < 0.50
より、
0. 5 < 1-\(β\) < 0.75

(2)の解法

\(λ^2\)=\(\frac{σ^2}{σ_0^2}\)=\(\frac{χ^2(n-1,1-α)}{χ^2(n-1,β)}\)
\(λ^2\)=\(\frac{15^2}{25^2}\)=\(\frac{χ^2(n-1,1-0.05)}{χ^2(n-1,0.1)}\)
を満たす\(n\)を探します。
\(n\)=24となります。

演習問題3

問題

ある製品の特性の標準偏差は0.40で安定していた。今回この製品に使用する材料を変えたい。特性の標準偏差が0.26より小さくなれば、材料変更を採用したい。この変更が採用されるかを有意水準α=0.05、母分散の標準偏差が0.26のときの検出力1-β=0.90となるようにサンプルサイズを設計したうえで検討する。
(1) ここで、
●帰無仮説:H0: \(σ^2\)=\(σ_0^2\)=\(0.40^2\),
●対立仮説:H1: \(σ^2\) < \(σ_0^2\)
●検定統計量:\(χ_0^2\)=\(S/σ_0^2\)
●棄却域:\(χ_0^2\) < \(χ^2 (n-1,0.95)\)
とする。検出力1―βを確率Pr,\(χ_0^2,χ^2,σ,λ,n\)で表せ。
(2) \(λ^2\)を\(χ^2,n\)で表せ。
(3) 母分散の標準偏差が0.26のときの検出力1-βが0.90となる最小のサンプルサイズを求めよ。

演習問題1,2を合わせた問題です。まとめの問題として取り組みましょう。

(1)の解法

1-β=Pr{\(\frac{S}{σ^2}\) ≤ \(\frac{χ^2(n-1,0.95)}{λ^2}\)}

(2)の解法

\(λ^2\)=\(\frac{χ^2(n-1,0.95)}{ χ^2(n-1,0.10)}\)

(3)の解法

\(λ^2\)=\(\frac{0.26^2}{0.40^2}\)=\(\frac{χ^2(n-1,0.95)}{ χ^2(n-1,0.10)}\)
から、\(n\)=26

検出力ができる(母分散の検定)は
不慣れなχ2乗分布を使うので、
分かったような、分からないような感じですね。

以上、母分散の検定における検出力の演習問題を解説しました。

これだけ検出力を学べば十分ですね!

まとめ

「【必見!】検出力がよくわかる」を解説しました。

  • ①検出力とは
  • ②検出力(母平均の検定)がわかる
  • ③検出力(母分散の検定)がわかる
  • ④検出力(母平均の検定)の演習問題が解ける
  • ⑤検出力(母分散の検定)の演習問題が解ける

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