多くの因子を直交表に割り当てると分散の期待値が導出できない
「直交表は多くの因子を割り当てられるから便利!、でも大丈夫なの?」と疑問に思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
多くの因子を直交表に割り当てると分散の期待値が導出できない
- ➀直交表はデータの構造式から作るもの
- ②多因子割付は交絡が前提
- ③他の因子にならって分散の期待値を書く
記事の信頼性
記事を書いている私は、実験計画法に磨きをかけていますので、わかりやすく解説します。本記事は、どこに書いていない、私が研究して見つけた本記事限定の内容です。
実験計画法の肝なので、必読です!
➀直交表はデータの構造式から作るもの
データの構造式の各項から直交表の各列が作られる
例えば、2水準系で4因子からなる場合、データの構造式は下の式になります。
xijkl=μ+αi+βj+γk+δl
+(αβ) ij+(αγ) ik+(αδ) il
+(βγ) jk+(βδ) jl+(γδ) kl
+(αβγ) ijk+(αβδ)ijl+(αγδ)ikl+(βγδ)jkl
+εijkl
μを除けば、15個の項から構成されます。4因子の2水準系に合う直交表はL16(215)ですね。直交表の各列とデータの構造式の各項を比較すると、全く同じとわかります。
列番 | データの構造式 | 直交表成分 | |||
1 | α | a | |||
2 | β | b | |||
3 | γ | c | |||
4 | δ | d | |||
5 | αβ | a | b | ||
6 | αγ | a | c | ||
7 | αδ | a | d | ||
8 | βγ | b | c | ||
9 | βδ | b | d | ||
10 | γδ | c | d | ||
11 | αβγ | a | b | c | |
12 | αβδ | a | b | d | |
13 | αγδ | a | c | d | |
14 | βγδ | b | c | d | |
15 | αβγδ | a | b | c | d |
分散の期待値はデータの構造式から求める
2水準系4因子のデータの構造式からは、15種類の効果の分散の期待値が計算できます。
例えば、
SA=\(\sum_{i=1}^{a}\sum_{j=1}^{b}\sum_{k=1}^{c}\sum_{l=1}^{d}\)
\( (\bar{x_{i・・・}}-\bar{\bar{x}})^2\)
SA×B=\(\sum_{i=1}^{a}\sum_{j=1}^{b}\sum_{k=1}^{c}\sum_{l=1}^{d}\)
\( (\bar{x_{ij‥}}-\bar{x_{i・・・}}-\bar{x_{・j‥}}+\bar{\bar{x}})^2\)
など式を立てて計算できます。
データの構造式に無い変数の分散の期待値は計算できない
2水準系4因子のデータの構造式は、4因子以外の効果については、分散の期待値は計算できません。
xijkl=x(a,b,c,d)
にa,b,c,d以外の効果(fとか、gとか)は無いため、SF,SGは計算できません。構成に含まれていないから計算ができないのは当然ですよね。
しかし、直交表ではそれができるのように割当てられるのです。
②多因子割付は交絡が前提
直交表L16に6因子を割当てる場合を考えます。
効果 | 列番 | 直交表成分 | |||
A | 1 | a | |||
B | 2 | b | |||
C | 3 | c | |||
D | 4 | d | |||
A×B | 5 | a | b | ||
A×C | 6 | a | c | ||
A×D | 7 | a | d | ||
B×C | 8 | b | c | ||
F | 9 | b | d | ||
G | 10 | c | d | ||
e | 11 | a | b | c | |
A×F | 12 | a | b | d | |
A×G | 13 | a | c | d | |
e | 14 | b | c | d | |
e | 15 | a | b | c | d |
黄色枠が、F,Gと4因子以上の効果を含む場合です。直交表としては違和感のない割当てです。しかし、もともと2水準4因子の16回の実験を構成する表です。
つまり、F,Gについてはもともと他の効果と交絡が前提で配置しています。
F→交互作用B×Dに交絡(9列)
G→交互作用C×Dに交絡(10列)
A×F→交互作用A×B×Dに交絡(12列)
A×G→交互作用A×C×Dに交絡(13列)
交絡は、関連記事【簡単】実験計画法の交絡(別名)とはキャラがかぶっていることに解説したように、キャラがかぶっています。
つまり、Fの平方和を求めても、それは交互作用B×Dの平方和に過ぎません。
では、多因子を割り当てた場合、分散の期待値はどのように計算するのでしょうか?
③他の因子にならって分散の期待値を書く
データの構造式に含まれない変数を直交表に交絡前提で割当てるので、計算から分散の期待値E[V]は計算できません。
しかし、それでも多くの教科書は分散分析表に期待値E[V]を下表のように、当たり前のごとく書いています。
– | φ | E[V] | 備考 |
A | 1 | 8\(σ_A^2+σ_e^2\) | 8=bcd |
B | 1 | 8\(σ_B^2+σ_e^2\) | 8=acd |
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
F | 1 | 8\(σ_F^2+σ_e^2\) | 8=??? |
G | 1 | 8\(σ_G^2+σ_e^2\) | 8=??? |
A×B | 1 | 4\(σ_{A×B}^2+σ_e^2\) | 4=cd |
A×C | 1 | 4\(σ_{A×C}^2+σ_e^2\) | 4=bd |
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
A×F | 1 | 4\(σ_{A×F}^2+σ_e^2\) | 4=?? |
A×G | 1 | 4\(σ_{A×G}^2+σ_e^2\) | 4=?? |
e | 3 | \(σ_e^2\) | – |
T | 15 | – | – |
因子AのE[V]の係数8はbcd=2×2×2=8でわかりますが、因子F,Gの係数8はどう求めたかわかりません。
交互作用A×BのE[V]の係数4はcd=2×2=4でわかりますが、交互作用A×F,A×Gの係数4はどう求めたかわかりません。
因子A,B,Cに合わせて、因子F,GのE[V]を求めただけです。
8\(σ_A^2+σ_e^2\)→8\(σ_F^2+σ_e^2\)
4\(σ_{A×B}^2+σ_e^2\)→4\(σ_{A×F}^2+σ_e^2\)
と係数を置けば良いです。
まとめ
多くの因子を直交表に割り当てると分散の期待値が導出できない内容を詳細に解説しました。
- ➀直交表はデータの構造式から作るもの
- ②多因子割付は交絡が前提
- ③他の因子にならって分散の期待値を書く
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