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【必読】s管理図の変数c4と管理限界の導出がわかる

管理図

「s管理図の変数c4の導出がわからない」、「χ2乗分布の確率密度関数が変形できない」など困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

【必読】s管理図の変数c4の導出がわかる
  • ①s管理図の変数c4について
  • ②不偏標準偏差vと母標準偏差σはχ2乗分布でつなぐ
  • ③s管理図の変数c4の導出(χ2乗分布に慣れよう!)
  • ④s管理図の管理限界の期待値E[v]と標準偏差D[v]がわかる

本記事でわかること

●χ2乗分布の関数に慣れる!
●不偏標準偏差vと標準偏差sによって、s管理図の係数の式が若干変わること

記事の信頼性

記事を書いている私は、管理図の係数表、群内変動・群間変動の解き方に疑問が残りました。そこで、管理図の理論を研究しました。その成果をブログで解説します。

困ったときは、最新のJIS規格を見ましょう。ちょっと高価ですが。

●Youtube動画でも解説しています。ご確認ください。

①s管理図の変数c4について

関連記事のように、管理図の管理限界は、
●E(a)±kD(a)
で表現され、aに変数、kに倍数を入れて管理します。

s管理図の変数aは不変標準偏差vです。不偏標準偏差vの確率密度関数から、期待値E(v),標準偏差D(v)を導出します。

その時に必要な変数が、c4です。

s管理図の変数c4

●\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n-1}}\frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\) (v:不偏標準偏差の場合)
●\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n}}\frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\) (s:標準偏差の場合)

訳が分からない式ですが、導出できます。

②不偏標準偏差vと母標準偏差σはχ2乗分布でつなぐ

関連記事のように、s,vとσの関係はχ2乗分布でつなぎます。χ2乗分布に慣れていく重要な式です。

\(χ^2\)=\(\frac{S(平方和)}{σ^2}\)
=\(\frac{v^2(不偏標準偏差)(n-1)}{σ^2}\)
から、vとσがつながります。

なお、標準偏差sの場合は、
\(χ^2\)=\(\frac{S(平方和)}{σ^2}\)
=\(\frac{s^2(標準偏差)(n)}{σ^2}\)
から、sとσがつながります。

χ2乗分布の確率分布関数を出しましょう。これが複雑ですが、そういう式と思ってください。簡単に説明すると、正規分布(\(e^{-x^2}\))の2乗和した関数がχ2乗分布ですね。

正規分布、χ2乗分布、t分布、F分布の関係も復習しましょう。関連記事で確認ください。

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χ2乗分布の確率分布関数

χ2乗分布は2変数用意します。自由度nと変数xですね。

●\(χ^2(x)\)=\(\frac{1}{2^{n/2}Γ(\frac{n}{2})} x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}}\)
Γ(z)=\(\displaystyle \int_{0}^{\infty} t^{z-1} e^{^t}dt\)

そういう関数だという理解でOKですし、変数c4の導出には、χ2乗分布の確率分布関数の一部を使って式変形するだけなので、慌てずに読み進めてください。

難しい式は、
①乗っかる
②自分で変形できるものをいくつか作る
③慣れてきたら、式の意味を考える
④自分のものにする

本記事は、①の「乗っかる」だけで行けます!

③s管理図の変数c4の導出(χ2乗分布に慣れよう!)

s管理図の管理限界の期待値E(s)は、
E(s)=c4σ
と書けます。このc4を導出してみましょう。

導出のポイント

  1. 不偏標準偏差vとσをχ2乗分布でつなぐ

x=\(\frac{S(平方和)}{σ^2}\)
=\(\frac{v^2(不偏標準偏差)(n-1)}{σ^2}\)
とすると、
xは自由度(n-1)のχ2乗分布に従います。

よって、
v(不偏標準偏差)=\(\sqrt{\frac{x}{n-1}}σ\)
と書けます。
(ちなみに、s(標準偏差)= \(\sqrt{\frac{x}{n}}σ\)
とも書けます。)

また、準備として、自由度(n-1)のχ2乗分布の確率分布関数の式を用意します。
\(χ_{n-1}^2(x)\)=\(\frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}}Γ(\frac{n-1}{2})} x^{\frac{n-1}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}}\)

期待値E[v]の立式

期待値E[v]は定義では、
●E[v]= \(\displaystyle \int_{0}^{\infty} vf(v) dv \)
*f(v)にχ2乗分布を代入
*積分区間:χ2乗分布は2乗だけに負はないため、[0,∞]で積分です。

期待値と分散の公式

E[X]= \(\displaystyle \int v f(v) dv\)
E[\(X^2\)]=\(\displaystyle \int v^2 f(v) dv\)
V[X]= E[\(X^2\)]-\(E[X]^2\)
でしたね。

よって、E[v]は
●E[v]= \(\displaystyle \int_{0}^{\infty} vf(v) dv\)
=E[\(\sqrt{\frac{x}{n-1}}σ\)]
= \(\displaystyle \int_{0}^{\infty} \sqrt{\frac{x}{n-1}}σ \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}}Γ(\frac{n-1}{2})} x^{\frac{n-1}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} dx\)

ちなみに、標準偏差sについて立式すると n-1⇒nに代わります。
●E[s]= \(\displaystyle \int_{0}^{\infty} sf(s) ds\)
=E[\(\sqrt{\frac{x}{n}}σ\)]
= \(\displaystyle \int_{0}^{\infty} \sqrt{\frac{x}{n}}σ \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}}Γ(\frac{n-1}{2})} x^{\frac{n-1}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} dx\)
標準偏差sと不偏標準偏差vで区別します。ややこしいですが。

期待値E[v]の導出

●E[v] =\(\displaystyle \int_{0}^{\infty} \sqrt{\frac{x}{n-1}}σ \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}}Γ(\frac{n-1}{2})} x^{\frac{n-1}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} dx\) (式1)
の定数項を積分の外に出しましょう。

(式1)= \(\sqrt{\frac{1}{n-1}}σ\displaystyle \int_{0}^{\infty} \sqrt{x} \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}}Γ(\frac{n-1}{2})} x^{\frac{n-1}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} dx\) (式2)

次にxをまとめます。

(式2)= \(\sqrt{\frac{1}{n-1}}σ\displaystyle \int_{0}^{\infty} \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}}Γ(\frac{n-1}{2})} x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} dx\) (式3)

ここでよく積分の中を見ると、複雑な式ですが、元のχ2乗分布の式に似ていることがわかります。つまり、すべて計算せずに、χ2乗分布の関数をそのまま使えばよいのです。

(式3)= \(\sqrt{\frac{1}{n-1}}σ \frac{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})}\displaystyle \int_{0}^{\infty} \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}}Γ(\frac{n-1}{2})} x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} dx\) (式4)

(式4)のように、分母分子に同じ \(2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})\)を入れます。
分母にある、\(2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})\)と\(2^{\frac{n-1}{2}}Γ(\frac{n-1}{2})\)を入れ替えます。

(式4)= \(\sqrt{\frac{1}{n-1}}σ \frac{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})}{2^{\frac{n-1}{2}}Γ(\frac{n-1}{2})}\displaystyle \int_{0}^{\infty} \frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})} x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} dx\) (式5)

(式5)の
●\(\frac{2^{\frac{n}{2}}}{2^{\frac{n-1}{2}}}\)=\(\sqrt{2}\)
●\(\displaystyle \int_{0}^{\infty} \frac{1}{2^{\frac{n}{2}}Γ(\frac{n}{2})} x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} dx\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{\infty} χ_n^2(x) dx\)
=1
となります。よって、

(式5)= \(\sqrt{\frac{2}{n-1}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)σ (式6)

まとめると、

E[v] =\(\sqrt{\frac{2}{n-1}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)σ
E[v]=\(c_4\)σ
\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n-1}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)

ちなみに、標準偏差sについて解くと、

E[s] =\(\sqrt{\frac{2}{n}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)σ
E[s]=\(c_4\)σ
\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)

χ2乗分布の式が複雑ですが、ゆっくり導出を読めば、難しくないことがわかりますね。数式の見た目でビビらないことも重要です。

④s管理図の管理限界の期待値E[v]と標準偏差D[v]がわかる

導出のポイント

E[v] =\(\sqrt{\frac{2}{n-1}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)σ
E[v]=\(c_4\)σ
\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n-1}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)

より期待値E[v]がわかりました。D[v]も導出しましょう。

期待値と分散の公式をもう一度確認しましょう。複雑な式でも公式通り代入しているだけです。

期待値と分散の公式

E[X]= \(\displaystyle \int v f(v) dv\)
E[\(X^2\)]=\(\displaystyle \int s^2 f(s) ds\)
V[X]= E[\(X^2\)]-\(E[X]^2\)
でしたね。

D[v]の式を作ります。

期待値D[s]の導出

D[v]は、
D[s]= E[\(v^2\)]-\(E[v]^2\)
です。

期待値E[\(v^2\)]の導出

さて、E[\(v^2\)]はどうしましょうか?

vはそもそも不偏標準偏差の期待値は母分散σとみてよいでしょう。
よって,
E[\(v^2\)]=\(σ^2\)

ちなみに、標準偏差sの場合のE[\(s^2\)]は、
もともと
\(χ^2\)=\(\frac{S(平方和}{σ^2}\)
から
\(χ^2\)=\(\frac{s(標準偏差)^2 n}{σ^2}\)=\(\frac{v(不偏標準偏差)^2 (n-1)}{σ^2}\)
の関係が成り立つので、
\(s^2\)=\(\frac{n-1}{n} v^2\)
となります。

なお、E[\(v^2\)]=\(σ^2\)より、
E[\(s^2\)]=\(\frac{n-1}{n} \) E[\(v^2\)]=\(\frac{n-1}{n} σ^2\)
となります。

まとめると

不偏標準偏差vの場合は、
D[v]= E[\(v^2\)]-\(E[v]^2\)
=\(σ^2-c_4^2 σ^2\)
=\((1-c_4 ^2 )σ^2\)
(\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n-1}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\))

標準偏差sの場合は、
D[v]= E[\(v^2\)]-\(E[v]^2\)
=\(\frac{n-1}{n}σ^2-c_4^2 σ^2\)
=\((\frac{n-1}{n}-c_4 ^2 )σ^2\)
(\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)

c4,期待値E、標準偏差Dのまとめ

s管理図における管理限界の導出を解説しました。

標準偏差sと不偏標準偏差vによって、式が若干異なります。
なお、JISZ9020では不偏標準偏差vの場合の値が管理限界の係数表に載っています。

教科書やwebサイトによっては、標準偏差sと不偏標準偏差vの両方が書いていますので、両方解説しました。

c4

●不偏標準偏差v:\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n-1}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)
●標準偏差s:\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)

E

●不偏標準偏差v:E[v]=\(c_4\)σ
\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n-1}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)
●標準偏差s:E[s]=\(c_4\)σ
\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)

D

●不偏標準偏差v:D[v] =\((1-c_4 ^2 )σ^2\)
\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n-1}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)
●標準偏差s:D[s] =\((\frac{n-1}{n}-c_4 ^2 )σ^2\)
\(c_4\)=\(\sqrt{\frac{2}{n}} \frac{Γ(\frac{n}{2})}{Γ(\frac{n-1}{2})}\)

まとめ

s管理図の管理限界線の係数の導出を解説しました。

  • ①s管理図の変数c4について
  • ②不偏標準偏差vと母標準偏差σはχ2乗分布でつなぐ
  • ③s管理図の変数c4の導出(χ2乗分布に慣れよう!)
  • ④s管理図の管理限界の期待値E[v]と標準偏差D[v]がわかる


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