要素の故障が非独立な系の信頼性がわかる(非修理系)
「要素の故障が非独立な系の信頼度が計算できない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①独立な場合と非独立な場合の違い
- ➁非独立な系の信頼性でおさえたい3つのパターン
- ➂解法パターン
- ➃非修理系を学ぶ
①独立な場合と非独立な場合の違い
独立系とは
中学生でも理解できるほど、簡単なのは、
要素間の信頼性は独立だからです。
- 要素間の故障は独立している
- 全体系の信頼度は要素の信頼度の積で計算できる
- 簡単に計算できる
例題
次の信頼度はどう計算しますか?
単純に、R×R×R×…×R=Rnと掛け算すれば出ますよね。
この単純さは、各要素が独立して一定の信頼度(故障率)をもっていると仮定しているからです
非独立系とは
では、各要素が互いに影響し合うと、全体の信頼度はどうやって計算しますか?
イメージは、
難しそうですよね。
- 要素間の故障は独立できない
- 全体系の信頼度は要素間の関係式から求めないと算出できない
- 計算が一気に難しくなる
要素の故障も故障の状態や時間によって、信頼度が変化するので、微分方程式を立てて、全体の信頼度を
計算する必要があります。
非独立系の計算になって、大人とみなす
そんな感じです。
➁非独立な系の信頼性でおさえたい3つのパターン
本記事では、その1の「非修理系」を解説します。最もシンプルな系です。
QCプラネッツでは次の3つの非独立系の信頼度を解説します。
- 非修理系
- 不完全修理系
- 完全修理系
➂解法パターン
どのパターンも次の3つの流れで解いていきます。同じ解法なので、安心して理解できます!
- シャノン線図を描く
- 微分方程式を作る
- ラプラス変換して計算
では、「非修理系」を解説します!
➃非修理系を学ぶ
例題
下図のように各状態\(S_i\)を以下のように定義する。
●\(S_0\):どの要素も故障していない状態
●\(S_1\):1個故障した状態
●・・・
●\(S_n\):n個すべて故障した状態
(1)各要素の故障率\(P_i(t)\)を求めよ。
(2)系全体の信頼度\(R_s(t)\)を求めよ。
どうですか? 一気に難しくなりましたね。
解法
3つの流れで解きます。
- シャノン線図を描く
- 微分方程式を作る
- ラプラス変換して計算
1.シャノン線図を描く
シャノン線図といいますが、別に何でもよく、
各要素の関係性がわかる図であればOKです。
上図のとおりですね。
2. 微分方程式を作る
ある時刻\(t\)から\(t+dt\)だけ時間が経つと、各要素の故障率\(Pi(t)\)はどう変化するか、図を見ながら関係式を作ります。
1つ丁寧に考えます。
\(P_0(t)\)は状態が0の場合の故障率なので、状態が変化すると\(P_0(t)\)は変化します。
ある時刻\(t\)から\(t+dt\)だけ時間が経つと、
●(A)状態0のままの確率⇒\(P_0(t+dt)\)
●(B)状態1に移動する確率⇒\(μ_0 P_0(t)dt\)
の2つがあるので、
\(P_0(t+dt)\)は次の式で表現できます。
\(P_0(t+dt)\)= \(P_0(t)\)-\(μ_0 P_0(t)dt\)
両辺を\(dt\)で割ると、
\(\displaystyle \frac{dP_0}{dt} \)=-\(μ_0 P_0(t)\)
微分方程式になりましたね!
もう1つ丁寧に考えます。
\(P_1(t)\)は状態が1の場合の故障率なので、状態が変化すると\(P_1(t)\)は変化します。
ある時刻\(t\)から\(t+dt\)だけ時間が経つと、
●(A)状態1のままの確率⇒\(P_1(t+dt)\)
●(B)状態0から移動する確率⇒\(μ_0 P_0(t)dt\)
●(C)状態2に移動する確率⇒\(μ_1 P_1(t)dt\)
の3つがあるので、
\(P_1(t+dt)\)は次の式で表現できます。
\(P_1(t+dt)\)= \(P_1(t)\)+\(μ_0 P_0(t)dt\)-\(μ_1 P_1(t)dt\)
両辺を\(dt\)で割ると、
\(\displaystyle \frac{dP_1}{dt} \)=\(μ_0 P_0(t)\)-\(μ_1P_1(t)\)
微分方程式になりましたね!
この式は\(i=1,…,n-1\)で同様となります。図で言うと端でない真ん中のところです。
そして、さいごの\(n\)も丁寧に考えます。
\(P_n(t)\)は状態がnの場合の故障率なので、状態が変化すると\(P_n(t)\)は変化します。
ある時刻\(t\)から\(t+dt\)だけ時間が経つと、
●(A)状態1のままの確率⇒\(P_n(t)\)
●(A)状態\(n-1\)から来る確率⇒\(μ_{n-1} P_{n-1}(t)dt\)
の2つだけです。図では端にあるので、ちょっと式が異なります。
\(P_n(t+dt)\)は次の式で表現できます。
\(P_n(t+dt)\)= \(P_n(t)\)- \(μ_{n-1} P_{n-1}(t)dt\)
両辺を\(dt\)で割ると、
\(\displaystyle \frac{dP_n}{dt} \)=\(-μ_{n-1}P_{n-1}(t)\)
微分方程式になりましたね!
以上まとめると、
\(\displaystyle \frac{dP_0}{dt} \)=\(-μ_0 P_0(t)\)
\(\displaystyle \frac{dP_1}{dt} \)=\(μ_0 P_0(t)\)-\(μ_1 P_1(t)\)
…
\(\displaystyle \frac{dP_{n-1}}{dt} \)=\(μ_{n-2} P_{n-2}(t)\)-\(μ_{n-1} P_{n-1}(t)\)
\(\displaystyle \frac{dP_n}{dt} \)=\(-μ_{n-1}P_{n-1}(t)\)
なお、初期条件は
\(P_0(0)\)=1
\(P_i(0)\)=0 (\(i=1,…n\))
連立微分方程式ができました。
3. ラプラス変換して計算
ラプラス変換については関連記事で解説しています。
QCに必要なラプラス変換がわかる QCに必要なラプラス変換を解説します。信頼性工学で微分方程式が連発するので、ラプラス変換で処理すると楽チンです。QCに必要なところだけ解説します |
\(P_0(t)\)を計算しましょう。
\(\displaystyle \frac{dP_0}{dt} \)=\(-μ_0 P_0(t)\)をラプラス変換すると
\(sP_0-P_0(0)\)= \(-μ_0 P_0\)
\(P_0\)=\(\frac{1}{s+μ}\)
逆ラプラス変換すると、
\(P_0(t)\)=\(e^{-μ_0t}\)
\(P_1(t)\)を計算しましょう。
\(\displaystyle \frac{dP_1}{dt} \)=\(μ_0 P_0(t)\)-\(μ_1 P_1(t)\)をラプラス変換すると
\(sP_1-P_1(0)\)= \(μ_0 P_0\) -\(μ_1 P_1\)
\(P_1\)=\(\frac{μ_0 P_0}{s+μ_1}\)
\(P_1\)=\(μ_0 \frac{1}{s+μ_0}\frac{1}{s+μ_1}\)
\(P_1\)=\(μ_0 \frac{1}{μ_1-μ_0}(\frac{1}{s+μ_0}-\frac{1}{s+μ_1})\)
逆ラプラス変換すると、
\(P_1(t)\)=\( \frac{μ}{μ_1-μ_0}(e^{-μ_0t}-e^{-μ_1t})\)
と言う感じで解けます。
i=2以上は複雑なので割愛しますが、同じ解法で解けます。是非やってみてください。
まとめ
「要素の故障が非独立な系の信頼性がわかる(非修理系)」を解説しました。
- ①独立な場合と非独立な場合の違い
- ➁非独立な系の信頼性でおさえたい3つのパターン
- ➂解法パターン
- ➃非修理系を学ぶ
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119