QCプラネッツ 品質のプロフェッショナルを育成するサイト

【必読】MTBF,MTTFの点推定と推定区間の式がよくわかる

信頼性工学

「MTBF,MTTFの点推定と推定区間の式の意味や導出過程がわからない」、と困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

【必読】MTBF,MTTFの点推定と推定区間の式がよくわかる
  • ①MTBF,MTTFの点推定と推定区間の式は暗記するな!
  • ➁点推定(打切り有り無し両方)の導出がわかる
  • ➂推定区間は、2Tを自由度2nのχ2乗分布で割る理由がよくわかる
  • ➃定時打切りと定数打切りではχ2乗分布の自由度が異なる理由がわかる
QC検定®1級受験者は必読!
公式暗記より導出過程を理解せよ!
自力で導出できない式は公式でも使うな!

公式にもてあそばれないよう、ちゃんと式の導出を解説します!

●商標使用について、
①QC検定®と品質管理検定®は、一般財団法人日本規格協会の登録商標です。
➁このコンテンツは、一般財団法人日本規格協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。
➂QCプラネッツは、QC検定®と品質管理検定®の商標使用許可を受けています。

①MTBF,MTTFの点推定と推定区間の式は暗記するな!

QC検定®1級必須の公式

本記事で対象とする公式です。

打切り無し 定数打切り 定時打切り
点推定 \(\frac{1}{n} (\sum_{i=1}^{n}t_i) \) \(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_r)\) \(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_c)\)
信頼下限 \(\frac{2T}{χ^2(2n,\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2r,\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2(r+1),\frac{α}{2})}\)
信頼上限 \(\frac{2T}{χ^2(2n,1-\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2r,1-\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2r,1-\frac{α}{2})}\)

全公式は自力で導出できますか?
区間推定の式で何で「Tではなく、2Tなの?」
区間推定の式で何で「自由度がr,nでなく、2r,2nなの?」
定時と定数打ち切りの区間推定の式で何で「自由度が2rと2(r+1)と違う値を使うの?」
全部解説します!QCプラネッツにお任せください!

①点推定(打切り有り無し両方)の導出がわかる

1つの式で導出できる

再掲しますが、

打切り無し 定数打切り 定時打切り
点推定 \(\frac{1}{n} (\sum_{i=1}^{n}t_i) \) \(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_r)\) \(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_c)\)

と3つ式が書いています。よく教科書では、

\(\frac{1}{n} (\sum_{i=1}^{n}t_i) \)
を最初に説明して、その変形版として、
\(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_r)\)

\(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_c)\)
を解説していますね。

でも、この流れだと、

\(\frac{1}{n} (\sum_{i=1}^{n}t_i) \)
から
\(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_r)\)
には変形できません。

やってみればわかります。やってみてわかったことは、

導出過程が逆です!

つまり、

点推定は1つの式
\(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_r)\)
でよい。
打切りが無い場合は\(r=n\)になるので、
\(\frac{1}{n} (\sum_{i=1}^{n}t_i) \)
と変形できるってことです。
公式暗記は厳禁! QC検定®1級くらい目指すならなおさら!

1つずつ詳しくみてきましょう。

(i)打切りデータ無しの場合

打切りデータが無い場合は、下図のように、\(t_1\),\(t_2\),…, \(t_n\)と各故障時間を見ていきます。

打切り無し

MTBF,MTTFの点推定は公式

MTBF,MTTFの点推定は1つの式
\(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_r)\)
が基本形で、
打切りが無い場合は\(r=n\)となるので、
\(\frac{1}{n} (\sum_{i=1}^{n}t_i) \)
と変形できる!

となります。

(ii)定時打切りの場合

定時打切りの場合は、下図のように、ある時刻\(t_c\) (故障が\(r\)回と\(r+1\)回の間に到達する時間とします。)で区切ります。

定時打切り

MTBF,MTTFの点推定は公式

MTBF,MTTFの点推定は1つの式
\(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_r)\)
が基本形で、
は\( t_r \)を\(t_c\)と変えると、
\(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_c)\)
と変形できる!

となります。

(iii)定数打ち切りの場合

定数打切りの場合は、下図のように、\(r回\)で故障する時刻\(t_r\) で区切ります。

定数打切り

MTBF,MTTFの点推定は公式

MTBF,MTTFの点推定は1つの式
\(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_r)\)
が基本形でよいです。

となります。

点推定の求め方を再掲すると

打切り無し 定数打切り 定時打切り
点推定 \(\frac{1}{n} (\sum_{i=1}^{n}t_i) \) \(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_r)\) \(\frac{1}{r} (\sum_{i=1}^{r}t_i +(n-r) t_c)\)

と3つ式がありますが、1つの考え方で3パタ―ンの式になることが良くわかりますね。

➂推定区間は、2Tを自由度2nのχ2乗分布で割る理由がよくわかる

次に推定区間を求める式を解説します。これ、式の意味がわからないと暗記は正直キツイ。私もQC検定®1級試験時は思い出せなかった! なので、導出過程を理解しましょう。

推定区間の導出式の表を再掲します。

打切り無し 定数打切り 定時打切り
信頼下限 \(\frac{2T}{χ^2(2n,\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2r,\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2(r+1),\frac{α}{2})}\)
信頼上限 \(\frac{2T}{χ^2(2n,1-\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2r,1-\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2r,1-\frac{α}{2})}\)

指数分布、ガンマ分布、χ2乗分布の関係性を理解する

指数関数なのに、区間はχ2乗分布でしかも、2Tなり、自由度2nだったり、定時打切りと定数打切りでは自由度が若干違うなど、訳が分からないですよね!

全部解説します!QCプラネッツにお任せください!

ほな、解説行きます!

2Tを自由度2nのχ2乗分布で割る理由がよくわかる

この理由は、

数学で証明できます。

関連記事で詳しく解説しています。ご確認ください。

信頼度の点推定と区間推定がわかる(指数分布)
信頼度の点推定と区間推定が計算できますか。本記事では指数分布における点推定と区間推定をわかりやすく解説します。信頼性工学を勉強したい方は必読です。

【必読】寿命計算の信頼区間にχ2乗分布を使う理由がよくわかる
指数分布に従う製品の寿命の信頼区間を計算するのに、何で自由度倍のχ2乗分布を使うか理由がわかりますか?本記事では理由を丁寧に解説します。単なる公式暗記ではなく、理由を理解することが大事です

理解するポイント

下図のように、

MTBF
  1. 指数関数をn回畳み込み積分するとガウス分布になる(数学的帰納法で証明できる)
  2. ガンマ分布の変数を変換するとχ2乗分布の確率密度関数と一致する

となります。

ここで、χ2乗分布の確率密度関数
\(f(t,n)\)=\(\frac{1}{2^{n/2} Γ(n/2)} t^{n/2 -1} e^{-t/2}\)
に対して、
\(t=2λx\),\(n=2m\)と変換すると
\(f(2λx,2m)\)= \(\frac{1}{2^{m} Γ(m)} (2λx)^{m -1} e^{-λx}\)
=\(\frac{λ^{m-1}}{2Γ(m)} λ^{m-1} e^{-λx}\)
=\(\frac{1}{2λ} g(x)\)
(ここで\(g(x)\)はガンマ分布の確率密度関数)
となります。

ここで、変数\(x\)を総時間\(T\)に、
指数関数の場合の MTBF=\(\frac{1}{λ}\)の関係を代入すると、
\(f(2λx,2m)\)= \(\frac{1}{2λ} g(x)\)から
\(f(\frac{2T}{MTBF},2n)\)= \(\frac{1}{2λ} g(T)\)

つまり、総時間\(T\)は指数分布の畳み込み積分から成る、
ガンマ分布\(g(T)\)に従うが、
これはχ2乗分布\(f(\frac{2T}{MTBF},2n)\)の定数倍の関係になるので、
2Tは自由度2nのχ2乗分布に従って計算してよいとなります!

よって、

\(\frac{2T}{MTBF}\)=\(χ^2(2n,α)\)
と使ってよく、変形すると、
MTBF=\(\frac{2T}{χ^2(2n,α)}\)
という式が成り立ちます。
超難しいけど、ちゃんと式が導出できた!。

➃定時打切りと定数打切りではχ2乗分布の自由度が異なる理由がわかる

自由度を2n,2(n+1)と異なる理由

この理由は簡単です。

●定数の場合はr個の時で打ち切るので、自由度は2n
●定時の場合は時間で区切るので、故障数がr個とr+1個の間になるので、定数打切りと区別するために自由度2(r+1)としている。

これがわかれば、表を再掲しますが、随分、区間推定しやすくなったはずです。

打切り無し 定数打切り 定時打切り
信頼下限 \(\frac{2T}{χ^2(2n,\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2r,\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2(r+1),\frac{α}{2})}\)
信頼上限 \(\frac{2T}{χ^2(2n,1-\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2r,1-\frac{α}{2})}\) \(\frac{2T}{χ^2(2r,1-\frac{α}{2})}\)

実務上は自由度2nでもOK

でも、

定時と定数で区間の式は1つでもいいんじゃないの? 自由度2nで統一しちゃ、ダメなの?

と疑問に思いませんか?

その答えは、

実務上はOK。むしろ自由度2nの方がベター。でも試験は自由度を分けた方がいい。

実務上はOKな理由

区間下限値の\(\frac{1}{χ^2(2(n+1),α)}\)より、\(\frac{1}{χ^2(2n,α)}\)の方が大きくなり、区間が短くなり厳しい条件となるから。

χ2乗分布の値の表をみると、
\(χ^2(2(n+1),α)\) > \(χ^2(2n,α)\)です。
この逆数を考えたら、大小関係がわかりますね。

でも、試験の時は、求められる公式が使えるかどうかを確かめているので、個別の公式を使ってください。

MTBFの区間推定の式の謎が解明しました!

まとめ

「【必読】MTBF,MTTFの点推定と推定区間の式がよくわかる」を解説しました。

  • ①MTBF,MTTFの点推定と推定区間の式は暗記するな!
  • ➁点推定(打切り有り無し両方)の導出がわかる
  • ➂推定区間は、2Tを自由度2nのχ2乗分布で割る理由がよくわかる
  • ➃定時打切りと定数打切りではχ2乗分布の自由度が異なる理由がわかる


Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119

    Warning: Invalid argument supplied for foreach() in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 122
error: Content is protected !!