打切りデータがある場合の信頼度の計算がわかる
「打切りデータがある場合の信頼度の計算がわからない」と困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①カプランマイヤー法で計算する
- ➁打切り方は4つある
- ➂信頼度が計算できるプログラムを公開!
- ➃打切りデータの有無による信頼度の影響
①カプランマイヤー法で計算する
故障試験は、本来は故障するまで待つべきですが、その時間が数カ月と数年になると、故障試験は現実的ではありません。そこで、どこかで打ち切って推測する必要があります。
打切りデータが無い場合の信頼度の計算
最初は、打切りデータが無い場合、どうやって実測から信頼度を計算するか?を考えます。
下のグラフのように、横軸を時間、縦軸を故障率とすると、階段状に上がっていくのが分かります。
この階段状を表現するのが経験分布関数ですね。
経験分布関数については関連記事で確認ください。
信頼性工学に使う経験分布関数がわかる 経験分布関数は説明できますか?本記事では経験分布関数の基本を解説し、QC(品質管理)の信頼性工学で経験分布関数が必要であることが理解できます。信頼性工学などで何となく公式暗記代入するのではなく、本質を理解しましょう |
打切りデータが有る場合の信頼度の計算
実際は、有限な時間内で故障試験をするので、打ち切ります。そのときの信頼度を次の式から求めます。
- 中途打切りデータも含めた観測データを、\(t_1\) > \(t_2\) > …> \(t_n\)で並べる。
- \(i\)番目のデータ\(t_i\) が故障データか、中途打切りデータによって、変数\(δ_i\)を
\(δ_i\)=1 (故障データの時)
\(δ_i\)=0 (中途打切りデータの時)
とする。 - 信頼度\(R(t)\)を以下の式とする
\(R_n(t)\)= \(\displaystyle \prod_{l=1}^i (\frac{n-l}{n-l+1})^{δ_l}\)
この、\(R_n(t)\)= \(\displaystyle \prod_{l=1}^i (\frac{n-l}{n-l+1})^{δ_l}\)をカプランマイヤー法
と言って、分数の掛け算で簡単に計算できるので、皆が使う公式となっていますね。
カプランマイヤー法の導出
公式は使う前に、導出過程を見て、どういうものなのか? くらいは見ておきましょう。関連記事にありますので、ご確認ください。
カプランマイヤー法が理解できる(その1) 信頼性工学で「打切りデータ」を扱う際、カプランマイヤー法を使いますが、カプランマイヤーの式は導出できますか? 本記事では、公式暗記しがちなカプランマイヤーの式を丁寧に導出します。信頼性工学を学ぶ人は必読です。 |
カプランマイヤー法が理解できる(その2) 信頼性工学で「打切りデータ」を扱う際、カプランマイヤー法を使いますが、カプランマイヤーの式は導出できますか? 本記事では、公式暗記しがちなカプランマイヤーの式を丁寧に導出します。信頼性工学を学ぶ人は必読です。 |
➁打切り方は4つある
教科書的には、次の4つのパターンがあります。
- 完全データ
- 定時打切データ
- 定数打切データ
- ランダム打切データ
特徴をまとめると、
2.定時打切データは、ある一定の時間が経過したら打ち切る場合
3.定数打切データは、ある故障数まで行ったら打ち切る場合
4.ランダムは時と場合によって打切りを判断する場合
4つ方法がありますが、実は、
時間と個数で打ち切るが、信頼度の計算式に直接関与しないので、1つの式で計算できる!
ならば、プログラム作れば簡単に計算ができる!ので、作ってみました! Excel VBAですが。
➂信頼度が計算できるプログラムを公開!
1つの計算方法で信頼度は計算できる
1つの方法で計算できるので、プログラムでいろいろ計算して理解を深めましょう。
信頼度が計算できるプログラム
\(R_n(t)\)= \(\displaystyle \prod_{l=1}^i (\frac{n-l}{n-l+1})^{δ_l}\)
をそのままプログラムに入れます。入力はn,i,lで、出力はR(t)です。
1. Sub R_t()
2.Dim num As Long, delta(1 To 100) As Variant
3.num = Cells(1, 4)
4.seki = 1
5.
6.For i1 = 1 To num ‘打切り有=0,打切り無=1
7.delta(i1) = Cells(5 + i1, 4)
8.Next i1
9.
10.For i1 = 1 To num ‘信頼度R(t)の計算
11. For k1 = 1 To i1
12.seki = seki * ((num – k1) / (num – k1 + 1)) ^ delta(k1)
13.Next k1
14.Cells(5 + i1, 5) = seki ‘R(t)の出力
15.seki = 1
16.Next i1
17.
18.End Sub
これを使って、打切りデータが有る場合の信頼度を計算してみましょう。
➃打切りデータの有無による信頼度の影響
例題
解法
プログラムでは一瞬で出て、
t | i | 打切り | 信頼度 |
0 ≤ t < 5.5 | 0 | – | 1 |
5.5 ≤ t < 10.8 | 1 | 1 | 0.8 |
10.8 ≤ t < 15.4 | 2 | 0 | 0.8 |
15.4 ≤ t < 18.9 | 3 | 1 | 0.533 |
18.9 ≤ t < 20.6 | 4 | 0 | 0.533 |
20.6 ≤ t | 5 | 1 | 0 |
と出ますが、計算式も書いておきます。
●0 ≤ t < 5.5:R(t)=1
●5.5 ≤ t < 10.8:R(t)=1×\((\frac{4}{5})^1\)=0.8
●10.8 ≤ t < 15.4:R(t)=1×\((\frac{4}{5})^1\)×\((\frac{3}{4})^0\)=0.8
●15.4 ≤ t < 18.9:R(t)=1×\((\frac{4}{5})^1\)×\((\frac{3}{4})^0\)×\((\frac{2}{3})^1\)=0.53
●18.9 ≤ t < 20.6:R(t)=1×\((\frac{4}{5})^1\)×\((\frac{3}{4})^0\)×\((\frac{2}{3})^1\)×\((\frac{1}{2})^0\)=0.53
●20.6 ≤ t:R(t)=1×\((\frac{4}{5})^1\)×\((\frac{3}{4})^0\)×\((\frac{2}{3})^1\)×\((\frac{1}{2})^0\)×\((\frac{0}{1})^1\)=0
分数の長い掛け算で計算できますね。
さらに、
計算方法は同じ1つの方法でOK
時間と個数で打ち切るが、信頼度の計算式に直接関与しないので、1つの式で計算できる!
➃打切りデータの有無による信頼度の影響
打切りデータの有無による信頼度の影響
プログラムを作ると次の疑問が沸いたので、一緒に解いてみましょう。
打切りデータが多い場合と、少ない場合では信頼度R(t)の変化はどう変わるか?
打切りデータが多いとR(t)の精度は低下するんだろうか?
どう思いますか?
例題を使って確かめる
次のような例題を使って、この疑問を調べてみましょう。
サンプルデータn=10がある。以下の4つの場合における信頼度R(t)を計算せよ。表で1は故障データ(打切り無し),0は打ち切りデータ(打切り有り)とする。
i | 打切り(1) | 打切り(2) | 打切り(3) | 打切り(4) |
1 | 1 | 1 | 0 | 0 |
2 | 1 | 1 | 0 | 0 |
3 | 1 | 1 | 0 | 0 |
4 | 1 | 1 | 0 | 0 |
5 | 1 | 1 | 0 | 0 |
6 | 1 | 0 | 1 | 0 |
7 | 1 | 1 | 0 | 0 |
8 | 1 | 1 | 0 | 0 |
9 | 1 | 0 | 1 | 0 |
10 | 1 | 1 | 0 | 0 |
打切り(1)は打ち切り無し場合で、(2)(3)(4)に連れて打ち切りを増やしていきます。
計算結果
プログラムから計算させて、グラフにすると下図になります。
結果は以下の通りです。
i | 打切り(1) | 打切り(2) | 打切り(3) | 打切り(4) |
0 | 1 | 1 | 1 | 1 |
1 | 0.9 | 0.9 | 1 | 1 |
2 | 0.8 | 0.8 | 1 | 1 |
3 | 0.7 | 0.8 | 0.875 | 1 |
4 | 0.6 | 0.686 | 0.875 | 1 |
5 | 0.5 | 0.571 | 0.875 | 1 |
6 | 0.4 | 0.571 | 0.7 | 1 |
7 | 0.3 | 0.429 | 0.7 | 1 |
8 | 0.2 | 0.286 | 0.7 | 1 |
9 | 0.1 | 0.286 | 0.35 | 1 |
10 | 0 | 0 | 0.35 | 1 |
グラフからわかることは、
打切りが多くなると信頼度は高く、過大評価される傾向がある。
打切りデータが有る場合は信頼度は甘めに出ると考えておく必要がある。
打切りデータを含むと、信頼度の精度は低下することを理解しておきましょう。
まとめ
「打切りデータがある場合の信頼度の計算がわかる」を解説しました。
- ①カプランマイヤー法で計算する
- ➁打切り方は4つある
- ➂信頼度が計算できるプログラムを公開!
- ➃打切りデータの有無による信頼度の影響
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119