JISZ9010計量値逐次抜取検査(σ未知)の場合がわかる
「計量値逐次抜取検査(JISZ9010)がよくわからない」、「標準偏差σが未知の場合の合格判定線の求め方がわからない」など困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
計量逐次抜取検査は
①標準偏差σが既知で、母平均値μが未知の場合
②標準偏差σが未知で、母平均値μが既知の場合
の2種類を考えます。
①については、関連記事にあります。ご覧ください。
JISZ9010計量値逐次抜取検査(σ既知)の場合がわかる 計量値逐次抜取検査(JISZ9010)の理論がわかる(標準偏差σが既知)場合の理論を解説します。確率密度関数を定義して、合格判定条件式を作り、逐次抜取検査における合格判定線の導出が理解できます。計量値の逐次抜取検査をマスターしたい方は必見です。 |
JISZ9010計量値逐次抜取検査(σ既知)の事例演習 JISZ9010計量値逐次抜取検査(σ既知)の事例演習を解説します。合格判定線の作り方を実際の演習問題を解きながら解説します。逐次抜取検査をマスターしたい方は必見です。 |
計量値逐次抜取検査(JISZ9010)の理論がわかる(標準偏差σが未知)
- ①逐次抜取検査は合格判定線で判断
- ②合格判定線の導出方法がわかる
- ③上限の標準偏差が与えられている場合の合格判定線の導出方法がわかる
- ④下限の標準偏差が与えられている場合の合格判定線の導出方法がわかる
逐次抜取検査の関連記事
計数値逐次抜取検査、計量値の抜取検査の基礎についての関連記事を紹介します。併せて読んでください。
【0】計量抜取検査がわかる関連記事
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●JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で上限規格値が既知の抜取方式
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●JISZ9004計量抜取検査(標準偏差未知)で上下限規格値が既知の抜取方式の理論
●JISZ9004計量抜取検査(標準偏差未知)で上限規格値が既知の抜取方式
【1】計数逐次抜取検査がわかる関連記事
●計数逐次抜取検査(JISZ9009)の理論がわかる
①逐次抜取検査は合格判定線で判断
● X ≥ sn + h1 :不合格(検査終了)
● X ≤ sn-h0 :合格(検査終了)
● sn-h0 < X < sn+h1 :検査続行
Xとsの一次式を作られる直線で、検査結果を分けると
わかりやすい。
上の3つの不等式を作ることが本記事の目標となります。
②合格判定線の導出方法がわかる
確率を定義
計量値は、ある正規分布に従っていると仮定します。
確率変数xは、母平均μは既知、母標準偏差σは未知とする正規分布に従っており、その確率密度関数を定義します。
\(f(x)\)=\(\frac{1}{σ\sqrt{2π}} exp(-\frac{1}{2}(\frac{x-μ}{σ})^2)\)
次に、ロットから大きさn個を抜き取ったときの確率密度関数を定義します。
●母標準偏差が\(σ_0\)の場合
\(p_{0n}\)=\(f(x_1)f(x_2)…f(x_n)\)
=\((\frac{1}{σ_0 \sqrt{2π}})^n exp(-\frac{1}{2σ_0^2} \sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2)\)
●母標準偏差が\(σ_1\)の場合
\(p_{1n}\)=\(f(x_1)f(x_2)…f(x_n)\)
=\((\frac{1}{σ_1\sqrt{2π}})^n exp(-\frac{1}{2σ_1^2} \sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2)\)
確率密度関数の積を定義して、計算するところが、無理矢理な感じがしますが、合格判定線を導出に必要なためです。
合格判定式
OC曲線を見ながら、合否判定条件式を作ります。
合格判定条件式
● \(\frac{p_{1n}}{p_{0n}}\) ≤ \(\frac{β}{1-α}\):合格
● \(\frac{β}{1-α}\) < \(\frac{p_{1n}}{p_{0n}}\) < \(\frac{1-β}{α}\) :検査続行
ここで、
\(\frac{p_{1n}}{p_{0n}}\)=\(\frac{(\frac{1}{σ_1\sqrt{2π}})^n exp(-\frac{1}{2σ_1^2} \sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2)}{ (\frac{1}{σ_0\sqrt{2π}})^n exp(-\frac{1}{2σ_0^2} \sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2)}\)
log(底はe(自然対数))を取って変形します。
\(log \frac{p_{1n}}{p_{0n}}\)=\(log (\frac{σ_0}{σ_1})^n\)+\(\frac{1}{2}\sum_{i=1}^{n}(\frac{x_i-μ}{σ_0})^2\)-\(\frac{1}{2}\sum_{i=1}^{n}(\frac{x_i-μ}{σ_1})^2\)
もう少し変形します。
\(log \frac{p_{1n}}{p_{0n}}\)=-n\(log (\frac{σ_1}{σ_0})\)+\(\frac{1}{2}(\frac{1}{σ_0^2}-\frac{1}{σ_1^2})\sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2\)
合格判定条件式
● \(log \frac{p_{1n}}{p_{0n}}\) ≤ \(log \frac{β}{1-α}\):合格
● \(log \frac{β}{1-α}\) < \( log \frac{p_{1n}}{p_{0n}}\) < \( log\frac{1-β}{α}\) :検査続行
変数を置き換えます
● t=\(log \frac{σ_1}{σ_0}\)
● m=\(\frac{1}{2}(\frac{1}{σ_0^2}-\frac{1}{σ_1^2})\)
● X=\(\sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2\)
● a=\( log\frac{1-β}{α}\)
● b=\(log \frac{1-α}{β}\), (-b=\(log \frac{β}{1-α}\))
変数を置き換えます。
\(log \frac{p_{1n}}{p_{0n}}\)=-n\(log (\frac{σ_1}{σ_0})\)+\(\frac{1}{2}(\frac{1}{σ_0^2}-\frac{1}{σ_1^2})\sum_{i=1}^{n}(x_i-μ)^2\)
=-nt+\(\frac{1}{2}mX\)
合格判定条件式
● \(log \frac{p_{1n}}{p_{0n}}\) ≤ \(log \frac{β}{1-α}\):合格
● \(log \frac{β}{1-α}\) < \( log \frac{p_{1n}}{p_{0n}}\) < \( log\frac{1-β}{α}\) :検査続行
変数を置き換えます。
合格判定条件式
● -nt+\(\frac{1}{2}mX\) ≤ -b:合格
● -b < -nt+\(\frac{1}{2}mX\) < a :検査続行
③上限の標準偏差が与えられている場合の合格判定線の導出方法がわかる
\(σ_0\) < \(σ_1\)の場合です。
つまり、
m=\(\frac{1}{2}(\frac{1}{σ_0^2}-\frac{1}{σ_1^2})\) > 0の場合です。
合格判定条件式
● -nt+\(\frac{1}{2}mX\) ≤ -b:合格
● -b < -nt+\(\frac{1}{2}mX\) < a :検査続行
m > 0 に注意して、合格判定条件式をX=の式に直します。
● \(X\) ≤ \(\frac{2t}{m}n\)-\(\frac{2b}{m}\):合格
● \(\frac{2t}{m}n\)-\(\frac{2b}{m}\) < \(X\) < \(\frac{2t}{m}n\)+\(\frac{2a}{m}\) :検査続行
さらに変数を置き換えます。
● \(h_0\)=\(\frac{2b}{m}\)
● \(h_1\)=\(\frac{2a}{m}\)
● s=\(\frac{2t}{m}\)
合格判定式は以下のようにまとめることができます。
● \(X\) ≤ sn-\(h_0\):合格
● sn-\(h_0\) < \(X\) < sn+\(h_1\) :検査続行
まとめ
入力変数一覧
a | =\(log \frac{1-β}{α}\) | X | =\(\sum_{i=1}^{n} (x_i-μ)^2 \) |
b | =\(log \frac{1-α}{β}\) | h0 | =\(\frac{2b}{m}\) |
-b | =\(log \frac{β}{1-α}\) | h1 | =\(\frac{2a}{m}\) |
t | =\(log\frac{σ_1}{σ_0}\) | s | =\(\frac{2t}{m}\) |
m | =\(\frac{1}{σ_0^2}-\frac{1}{σ_1^2}\) | – | – |
合格判定式
● \(X\) ≤ sn-\(h_0\):合格
● sn-\(h_0\) < \(X\) < sn+\(h_1\) :検査続行
④下限の標準偏差が与えられている場合の合格判定線の導出方法がわかる
\(σ_0\) > \(σ_1\)の場合です。
つまり、
m=\(\frac{1}{2}(\frac{1}{σ_0^2}-\frac{1}{σ_1^2})\) > 0の場合です。
ここで、
-m=m’ (m’ > 0 )
と置きます。
m’について式を整理していきます。
合格判定条件式
● -nt+\(\frac{1}{2}mX\) ≤ -b:合格
● -b < -nt+\(\frac{1}{2}mX\) < a :検査続行
-m=m’ > 0 に注意して、合格判定条件式をX=の式に直します。
● -nt-\(\frac{1}{2}m’X\) ≤ -b:合格
● -b < -nt-\(\frac{1}{2}m’X\) < a :検査続行
両辺を-1で割りますが、不等号の向きが変わります。
● nt+\(\frac{1}{2}m’X\) ≥ b:合格
● -a < nt+\(\frac{1}{2}m’X\) < b :検査続行
X=の式に直します。
● \(X\) ≤ \(\frac{2t}{m’}n\)-\(\frac{2b}{m’}\):合格
● \(\frac{2t}{m’}n\)-\(\frac{2b}{m’}\) < \(X\) < \(\frac{2t}{m’}n\)+\(\frac{2a}{m’}\) :検査続行
さらに変数を置き換えます。
● \(h_0\)=\(\frac{2b}{m’}\)
● \(h_1\)=\(\frac{2a}{m’}\)
● s=\(\frac{2t}{m’}\)
合格判定式は以下のようにまとめることができます。
● \(X\) ≤ sn-\(h_0\):合格
● sn-\(h_0\) < \(X\) < sn+\(h_1\) :検査続行
まとめ
入力変数一覧
a | =\(log \frac{1-β}{α}\) | X | =\(\sum_{i=1}^{n} (x_i-μ)^2 \) |
b | =\(log \frac{1-α}{β}\) | h0 | =\(\frac{2b}{m’}\) |
-b | =\(log \frac{β}{1-α}\) | h1 | =\(\frac{2a}{m’}\) |
t | =\(log\frac{σ_1}{σ_0}\) | s | =\(\frac{2t}{m’}\) | m | =\(\frac{1}{σ_0^2}-\frac{1}{σ_1^2}\) | m’ | =\(\frac{1}{σ_1^2}-\frac{1}{σ_0^2}\) |
合格判定式
● \(X\) ≤ sn-\(h_0\):合格
● sn-\(h_0\) < \(X\) < sn+\(h_1\) :検査続行
合格判定式を使った実際の例は関連記事で解説します。
まとめ
計量値逐次抜取検査(JISZ9010)の理論がわかる(標準偏差σが未知)について、合格判定線の導出方法について解説しました。
- ①逐次抜取検査は合格判定線で判断
- ②合格判定線の導出方法がわかる
- ③上限の標準偏差が与えられている場合の合格判定線の導出方法がわかる
- ④下限の標準偏差が与えられている場合の合格判定線の導出方法がわかる
逐次抜取検査の関連記事
計数値逐次抜取検査、計量値の抜取検査の基礎についての関連記事を紹介します。併せて読んでください。
【0】計量抜取検査がわかる関連記事
●計量抜取検査がすべてわかる【まとめ】
●JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で上限規格値が既知の抜取方式
●JISZ9003計量抜取検査(標準偏差既知)で下限規格値が既知の抜取方式
●JISZ9004計量抜取検査(標準偏差未知)で上下限規格値が既知の抜取方式の理論
●JISZ9004計量抜取検査(標準偏差未知)で上限規格値が既知の抜取方式
【1】計数逐次抜取検査がわかる関連記事
●計数逐次抜取検査(JISZ9009)の理論がわかる
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119