分散分析の比較(完全配置実験と分割法)がわかる【必見】
「分割法は分割数によって何が違うの?」、「分割法を使うと何が変わるの?」など、分割法を学ぶ中で疑問に思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
分散分析の比較(完全配置実験と分割法)がわかる
- ➀分割法を使う場合と使わない場合で比較
- ②データの構造式を比較(分割法vs完全配置実験)
- ③分散分析を比較(分割法vs完全配置実験)
- ④比較してわかる分割法の特徴
記事の信頼性
記事を書いている私は、実験計画法に磨きをかけていますので、わかりやすく解説します。本記事は、どこに書いていない、私が研究して見つけた本記事限定の内容です。
実験計画法の肝なので、必読です!
➀分割法を使う場合と使わない場合で比較
分割法の特徴を理解するには、分割法と他法との比較がオススメです。本記事では3パターンの実験データを比較しましょう。
- 分割法を使わない場合(完全配置実験)
- 分割法を使う場合(分割数少なめ)
- 分割法を使う場合(分割数多め)
扱うデータは同じとしますが、上の3つの方法で分散分析します。扱うデータはわかりやすくするために2水準の4因子、計24=16個とします。
B1 | B2 | ||||
D1 | D2 | D1 | D2 | ||
A1 | C1 | x1 | x5 | x9 | x13 |
C2 | x2 | x6 | x10 | x14 | |
A2 | C1 | x3 | x7 | x11 | x15 |
C2 | x4 | x8 | x12 | x16 |
②データの構造式を比較(分割法vs完全配置実験)
完全配置実験と分割法で比較
3パターンを比較します。因子は4種類(A,B,C,D)で考えます。
- 四元配置実験
- 因子C,Aを1次単位、因子B,Dを2次単位とする分割法
- 因子C,Aを1次単位、因子Bを2次単位、因子Dを3次単位とする分割法
それぞれの手法について、習得に不安がある方は、関連記事の解説をご覧ください。
四元配置実験:関連記事四元配置実験(繰り返し有り)の分散分析・区間推定が解ける【必見】
分割法:関連記事分割法(3因子2段分割)の分散分析・区間推定が解ける【必見】
データの構造式を作る
データの構造式を作りましょう。ただし、式の項が16個あり、長いので、表にまとめました。
項 | 四元配置実験 | 分割法(2分割) | 分割法(3分割) |
x | \(x_{ijkl}\)= | \(x_{ijkl}\)= | \(x_{ijkl}\)= |
平均 | μ+ | μ+ | μ+ |
C | \(γ_k\)+ | \(γ_k\)+ | \(γ_k\)+ |
A | \(α_i\)+ | \(α_i\)+ | \(α_i\)+ |
AC | \((αγ)_{ik}\)+ | \(e_{(1)ik}\)+ | \(e_{(1)ik}\)+ |
B | \(β_j\)+ | \(β_j\)+ | \(β_j\)+ |
AB | \((αβ)_{ij}\)+ | \((αβ)_{ij}\)+ | \((αβ)_{ij}\)+ |
BC | \((βγ)_{jk}\)+ | \((βγ)_{jk}\)+ | \((βγ)_{jk}\)+ |
ABC | \((αβγ)_{ijk}\)+ | \((αβγ)_{ijk}\)+ | \(e_{(2)ijk}\)+ |
D | \(δ_l\)+ | \(δ_l\)+ | \(δ_l\)+ |
AD | \((αδ)_{il}\)+ | \((αδ)_{il}\)+ | \((αδ)_{il}\)+ |
BD | \((βδ)_{jl}\)+ | \((βδ)_{jl}\)+ | \((βδ)_{jl}\)+ |
CD | \((γδ)_{kl}\)+ | \((γδ)_{kl}\)+ | \((γδ)_{kl}\)+ |
ABD | \((αβδ)_{ijl}\)+ | \((αβδ)_{ijl}\)+ | \((αβδ)_{ijl}\)+ |
ACD | \((αγδ)_{ikl}\)+ | \((αγδ)_{ikl}\)+ | \((αγδ)_{ikl}\)+ |
BCD | \((βγδ)_{jkl}\)+ | \((βγδ)_{jkl}\)+ | \((βγδ)_{jkl}\)+ |
ABCD(e) | \(e_{ijkl}\) | \(e_{(2)ijkl}\) | \(e_{(3)ijkl}\) |
実は、分割法する・しないの違いは、交互作用(A×C、A×B×C、A×B×C×D)を残差eに変えているだけの違いなのです。
完全配置実験と分割法は全く別物と思いがちですが、一部の効果を残差に変えているだけです。分割法の難しいハードルが一気に下がったと思います。
③分散分析を比較(分割法vs完全配置実験)
データの構造式を比較すると、一部の効果を残差に変えているだけの違いであるとわかりました。
分散分析を比較すると次の違いがわかります。
平方和S、自由度φと平均平方(不偏分散)Vは変わらない。
ただし、平均平方(不偏分散)の期待値E[V]は変わる。
完全配置実験と分割法は全く別物と思いがちですが、一部の効果を残差に変えているだけなので、平方和、自由度を計算するために使うデータは同じです。ですから、分割法と完全配置実験のどちらでも平方和S、自由度φと平均平方(不偏分散)Vは変わりません。
つまり、完全配置実験の交互作用A×Cと分割法のe(1)の平方和、自由度、分散の値は同じです。
同様に交互作用A×B×C、A×B×C×Dについても同じです。
しかし、期待値だけは異なるので、実際に比較しましょう。
x | 四元配置実験 | 分割法(2分割) | 分割法(3分割) |
C | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | +d\(σ_{e(2)}^2\) | ||
\(σ_e^2\) | +bd\(σ_{e(1)}^2\) | +bd\(σ_{e(1)}^2\) | |
+abd\(σ_C^2\) | +abd\(σ_C^2\) | +abd\(σ_C^2\) | |
A | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | +d\(σ_{e(2)}^2\) | ||
\(σ_e^2\) | +bd\(σ_{e(1)}^2\) | +bd\(σ_{e(1)}^2\) | |
+bcd\(σ_A^2\) | +bcd\(σ_A^2\) | +bcd\(σ_A^2\) | |
A×C(e(1)) | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | +d\(σ_{e(2)}^2\) | ||
\(σ_e^2\) | +bd\(σ_{e(1)}^2\) | +bd\(σ_{e(1)}^2\) | |
+bd\(σ_{A×C}^2\) | |||
B | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | +d\(σ_{e(2)}^2\) | ||
\(σ_e^2\) | |||
+acd\(σ_B^2\) | +acd\(σ_B^2\) | +acd\(σ_B^2\) | |
A×B | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | +d\(σ_{e(2)}^2\) | ||
\(σ_e^2\) | |||
+cd\(σ_{A×B}^2\) | +cd\(σ_{A×B}^2\) | +cd\(σ_{A×B}^2\) | |
B×C | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | +d\(σ_{e(2)}^2\) | ||
\(σ_e^2\) | |||
+ad\(σ_{B×C}^2\) | +ad\(σ_{B×C}^2\) | +ad\(σ_{B×C}^2\) | |
A×B×C(e(2)) | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | +d\(σ_{e(2)}^2\) | ||
\(σ_e^2\) | |||
+d\(σ_{A×B×C}^2\) | +d\(σ_{A×B×C}^2\) | ||
D | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | |||
\(σ_e^2\) | |||
+abc\(σ_D^2\) | +abc\(σ_D^2\) | +abc\(σ_D^2\) | |
A×D | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | |||
\(σ_e^2\) | |||
+bc\(σ_{A×D}^2\) | +bc\(σ_{A×D}^2\) | +bc\(σ_{A×D}^2\) | |
B×D | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | |||
\(σ_e^2\) | |||
+ac\(σ_{B×D}^2\) | +ac\(σ_{B×D}^2\) | +ac\(σ_{B×D}^2\) | |
C×D | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | |||
\(σ_e^2\) | |||
+ab\(σ_{C×D}^2\) | +ab\(σ_{C×D}^2\) | +ab\(σ_{C×D}^2\) | |
A×B×D | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | |||
\(σ_e^2\) | |||
+c\(σ_{A×B×D}^2\) | +c\(σ_{A×B×D}^2\) | +c\(σ_{A×B×D}^2\) | |
A×C×D | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | |||
\(σ_e^2\) | |||
+b\(σ_{A×C×D}^2\) | +b\(σ_{A×C×D}^2\) | +b\(σ_{A×C×D}^2\) | |
B×C×D | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | |||
\(σ_e^2\) | |||
+a\(σ_{B×C×D}^2\) | +a\(σ_{B×C×D}^2\) | +a\(σ_{B×C×D}^2\) | |
e | \(σ_{e(3)}^2\) | ||
\(σ_{e(2)}^2\) | |||
\(σ_e^2\) | |||
3例の比較をよく見て、E[V]の係数の入れ方を理解しましょう。
④比較してわかる分割法の特徴
わざわざ交互作用を残差にして残差を分割するメリットは何でしょうか?
また分割するデメリットは何でしょうか?
デメリットは残差項が増えるため、検定結果が有意になりにくくなる。
実際は、特別ケアする因子があるために、全体の誤差とその部分の誤差を分けて考えるときに分割法を使います。計算手法が楽とか速く検定できるとかのメリットはないです。
まとめ
分割法の特徴を完全配置実験と分散分析を用いて解説しました。
- ➀分割法を使う場合と使わない場合で比較
- ②データの構造式を比較(分割法vs完全配置実験)
- ③分散分析を比較(分割法vs完全配置実験)
- ④比較してわかる分割法の特徴
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