直交表L16を使ったパラメータ設計がわかる
「直交表を使ったロバストパラメータ設計ができない」などと困っていませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
おさえておきたいポイント
- ①パラメータ設計にはどの直交表を使っても良い
- ➁実験計画法の復習
- ➂直交表L16を使ったパラメータ設計事例
- ➃SN比と感度の計算
- ➄最適条件の選定
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ロバストパラメータ設計
タグチメソッド
手法に溺れるな!
数式と理論で理解しよう!
品質工学、ロバストパラメータ設計、タグチメソッド
結局わからない!
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①パラメータ設計にはどの直交表を使っても良い
品質工学、ロバストパラメータ設計、タグチメソッドで扱う直交表について疑問に思うことが2つあります。
- 「品質工学=混合系直交表」じゃないとダメなのか?
- 「品質工学≠実験計画法」は正しいのか?
「品質工学=混合系直交表」は正しいのか?
品質工学、ロバストパラメータ設計、タグチメソッドって、最初から、特殊な直交表L12,L18が出て来ます。その理由は
でも、これが意味わからないんですよ!
データが決めるはずで、
我々ではないから
データは様々な要因が絡み合って数値化されます。であれば、ナチュラルに主効果、交互作用を含めて検討しても良いと考えます。
「品質工学≠実験計画法」は正しいのか?
同じ直交表を使うのに、
これもピンと来ません。同じで良いではないかと!
実験計画法の延長として品質工学を検討したり
一般の直交表を使ってパラメータ設計してみましょう。
で、おかしい結果になるか確かめてみましょう。
解析結果は
データが決めるはずで、
我々ではないよ!
品質工学に一般の直交表を使ってみる
QCプラネッツは長年にわたりこの疑問を抱いていましたので、実際に
●L8
●L16(本記事)
●L27
と混合系の
●L12
●L18
を取り上げてみます。
➁実験計画法の復習
QCプラネッツは
品質工学=実験計画法 という考えなので、
まず実験計画法を復習しましょう。
関連記事で、確認ください。
究める!実験計画法 QCプラネッツが解説する究める実験計画法。多くの教科書がある中、勉強してもどうしても分からない、苦労している難解な箇所をすべて解説します。多元配置実験、乱塊法、分割法、直交表などなど多くの手法を個別に公式暗記せず、データの構造式をみればすべて導出できる新しい実験計画法を解説します。 |
直交表L16の分散分析・区間推定が解ける【必見】 実験計画法の、直交表L16の分散分析、分散の期待値の導出、主効果・交互作用の区間推定の導出ができますか?公式暗記で済ませていませんか?本記事は、直交表L16の分散分析、分散の期待値の導出、区間推定の導出を解説します。分散分析、期待値の導出、区間推定をマスターしたい方は必見です。 |
➂直交表L16を使ったパラメータ設計事例
事例
次の問いを考えます。
あるデータから最適条件を直交表L16を使って求めたい。
(1) 分散分析表を作れ。
(2) 各因子の、各水準におけるSN比と感度を計算し、要因効果図を作れ。
(3) 最適条件を選び、その条件におけるSN比と感度を計算せよ。
直交表L16
各因子の平方和と分散分析を解析
直交表L16は2水準系なので、各列の平方和を計算する公式があります。関連記事で解説しています。
【本記事限定】直交表の各列の平方和の式は自力で導出できる【必見】 直交表の各列の平方和を導出する方法を知っていますか?公式暗記で済ませていませんか?本記事では、実験計画法の直交表の各列の平方和を導出する方法を詳しく解説します。本記事しか書いていない、直交表の知見を広げたい方は必見です。 |
これをもとに各列の平方和を計算すると、下表になります。
●分散分析表
L16 | 効果 | 平方和S | 自由度φ | 平均平方V |
1 | A | 42.25 | 1 | 42.25 |
2 | B | 182.25 | 1 | 182.25 |
3 | A×B | 6.25 | 1 | 6.25 |
4 | C | 81 | 1 | 81 |
5 | A×C | 4 | 1 | 4 |
6 | B×C | 25 | 1 | 25 |
7 | A×B×C | 9 | 1 | 9 |
8 | D | 169 | 1 | 169 |
9 | A×D | 9 | 1 | 9 |
10 | B×D | 49 | 1 | 49 |
11 | A×B×D | 0 | 1 | 0 |
12 | C×D | 12.25 | 1 | 12.25 |
13 | A×C×D | 2.25 | 1 | 2.25 |
14 | B×C×D | 20.25 | 1 | 20.25 |
15 | e | 110.25 | 1 | 110.25 |
合計 | T | 721.75 | 15 | – |
データの構造式
分散分析を扱うための最も重要なデータの構造式を定義します。今回は全列を成分に合わせた効果とするので、
\(x_{ijkl}\)=\(μ\)+\(a_i\)+\(b_j\)+\(c_k\)+\(d_l\)
+\(ab_{ij}\)+\(ac_{ik}\)+\(ad_{il}\)+\(bc_{jk}\)+\(bd_{jl}\)+\(cd_{kl}\)
+\(abc_{ijk}\)+\(abd_{ijl}\)+\(acd_{ikl}\)+\(bcd_{jkl}\)+\(e_{ijkl}\)
(\(i,j,k,l=1,2\))
➃SN比と感度の計算
SN比と感度Sの公式
関連記事にも公式導出過程を解説しています。
品質工学のSN比が導出できる 品質工学のSN比の式 η=10log (Sm-Ve)/Veがちゃんと導出できますか? 本記事はSN比を導出します。公式暗記に頼らず、式変形から意味を理解して、式を使うようにしましょう。 |
●SN比ηは
η=10\(log \frac{μ^2}{σ^2}\)=10\(log \frac{\frac{1}{n}(S_m-V_e)}{V_e}\)●感度Sは
S=10\(log μ^2\)=10\(log \frac{1}{n}(S_m-V_e)\)
ですが、今回簡略化のため、
●SN比ηは
η=\(\frac{μ^2}{σ^2}\)=\(\frac{\bar{x}^2}{s^2}\) (\(s\)は標準偏差)
●感度Sは
S=\(μ^2\)=\(\bar{x}^2\)
で計算します。
各効果の各水準における平均\(\bar{x}\)と標準偏差\(s\)
各効果の水準1,2に属するデータの平均と標準偏差を計算すると下表になります。
– | 水準1 | 水準2 | |||
No | 列 | 平均\(\bar{x}\) | 標準偏差\(s\) | 平均\(\bar{x}\) | 標準偏差\(s\) |
1 | A | 38.5 | 6.55 | 41.75 | 7.36 |
2 | B | 36.75 | 7.4 | 43.5 | 4.72 |
3 | A×B | 40.75 | 8.56 | 39.5 | 5.37 |
4 | C | 37.88 | 7.06 | 42.38 | 6.46 |
5 | A×C | 40.63 | 6.99 | 39.63 | 7.33 |
6 | B×C | 38.88 | 8.43 | 41.38 | 5.34 |
7 | A×B×C | 39.38 | 5.42 | 40.88 | 8.51 |
8 | D | 43.38 | 5.34 | 36.88 | 7.1 |
9 | A×D | 40.88 | 6.92 | 39.38 | 7.35 |
10 | B×D | 41.88 | 4.29 | 38.38 | 8.81 |
11 | A×B×D | 40.13 | 7.83 | 40.13 | 6.47 |
12 | C×D | 39.25 | 4.33 | 41 | 9.09 |
13 | A×C×D | 39.75 | 8.56 | 40.5 | 5.42 |
14 | B×C×D | 41.25 | 6.82 | 39 | 7.33 |
15 | e | 37.5 | 5.95 | 42.75 | 7.21 |
例えば、因子Aにおいて、
●水準1:35,29,48,31,44,39,43,39
●水準2:42,27,42,40,40,47,53,43
なので、それぞれ8個の平均と標準偏差を計算します。
それを因子Aから誤差eまでの15列分を計算します。
直交表L16の各列のSN比と感度
●SN比ηは
η=\(\frac{μ^2}{σ^2}\)=\(\frac{\bar{x}^2}{s^2}\) (\(s\)は標準偏差)
●感度Sは
S=\(μ^2\)=\(\bar{x}^2\)
で計算すると、下表になります。
– | 水準1 | 水準2 | |||
No | 列 | SN比 η | 感度S | SN比 η | 感度S |
1 | A | 34.55 | 1482.25 | 32.18 | 1743.06 |
2 | B | 24.66 | 1350.56 | 84.94 | 1892.25 |
3 | A×B | 22.66 | 1660.56 | 54.11 | 1560.25 |
4 | C | 28.79 | 1434.89 | 43.04 | 1796.06 |
5 | A×C | 33.79 | 1650.8 | 29.23 | 1570.54 |
6 | B×C | 21.27 | 1511.65 | 60.05 | 1712.3 |
7 | A×B×C | 52.79 | 1550.78 | 23.08 | 1671.17 |
8 | D | 65.99 | 1881.82 | 26.98 | 1360.13 |
9 | A×D | 34.9 | 1671.17 | 28.71 | 1550.78 |
10 | B×D | 95.3 | 1753.93 | 18.98 | 1473.02 |
11 | A×B×D | 26.27 | 1610.42 | 38.47 | 1610.42 |
12 | C×D | 82.17 | 1540.56 | 20.34 | 1681 |
13 | A×C×D | 21.56 | 1580.06 | 55.84 | 1640.25 |
14 | B×C×D | 36.58 | 1701.56 | 28.31 | 1521 |
15 | e | 39.72 | 1406.25 | 35.16 | 1827.56 |
よく 対数を取ってSN比や感度Sの値を計算しますが、別になくてもOKなので、対数にしていません。
要因効果図があると見やすいですが、数表からも確認できるので、割愛します。
➄最適条件の選定
ここで、因子A,B,Cの水準の高い方を選択します。
\(μ(A_i B_j C_k)\)の式を先に作ります。
関連記事で解説しています。
【簡単】データの構造式で実験計画法がわかる(必読) 実験計画法が難しい、多元配置実験、乱塊法、分割法、などたくさんの手法を学ぶのが大変など困っていませんか?本記事では、データの構造式さえ理解すれば実験計画法がすぐマスタできるように、わかりやすく解説します。早く実験計画法をマスターした方は必見です。 |
\(μ(A_i B_j C_k)\)
=\(μ\)+\(a_i\)+\(b_j\)+\(c_k\)+\(ab_{ij}\)+\(ac_{ik}\)+\(bc_{jk}\)+\(abc_{ijk}\)
=\(\bar{\bar{x}}\)+(\(\bar{x_{i・・・}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{・・j・}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{・・k・}}-\bar{\bar{x}}\))+\((\bar{x_{ij・・}}-\bar{x_{i・・・}}-\bar{x_{・j・・}}+\bar{\bar{x}})\)+\((\bar{x_{i・k・}}-\bar{x_{i・・・}}-\bar{x_{・・k・}}+\bar{\bar{x}})\)+\((\bar{x_{・jk・}}-\bar{x_{・j・・}}-\bar{x_{・k・・}}+\bar{\bar{x}})\)+\((\bar{x_{ijk・}}-\bar{x_{ij・・}}-\bar{x_{i・k・}}-\bar{x_{・jk・}}\)+\(\bar{x_{i・・・}}+\bar{x_{・j・・}}+\bar{x_{・・k・}}-\bar{\bar{x}}\))
=\((\bar{x_{ijk・}}-\bar{\bar{x}}\))
=(\(\widehat{μ+a_i+b_j+c_k}\))-\(μ\)
とすっきりした式になります。
暗記不要で、データの構造式からどんな組み合わせパターンも式が作れます!
●SN比において、
A,B,Cで値のSN比が大きい水準をみると
ABC_1なので、
\(μ(A_ i B_j C_k)\)= (\(\widehat{μ+abc_1}\))-\(μ\)
=52.79-40.014=12.776
●感度において、
A,B,Cで値の感度が大きい水準をみると
ABC_2なので、
\(μ(A_ i B_j C_k)\)= (\(\widehat{μ+abc_2}\))-\(μ\)
=1671.17-1613.235=57.93
と計算できました。
直交表L16を使って、SN比、感度の計算を実施しました。
まとめ
「直交表L16を使ったパラメータ設計がわかる」を解説しました。
- ①パラメータ設計にはどの直交表を使っても良い
- ➁実験計画法の復習
- ➂直交表L16を使ったパラメータ設計事例
- ➃SN比と感度の計算
- ➄最適条件の選定
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/qcplanets/qcplanets.com/public_html/wp-content/themes/m_theme/sns.php on line 119