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直交表L12がわかる

ロバストパラメータ設計

「直交表L12がわからない」などと困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

直交表L12がわかる

おさえておきたいポイント

  • ①直交表L12とは
  • ➁L12のデータの構造式
  • ➂L12の平方和の分解
  • ➃L12の分散の期待値と分散分析
  • ➄母平均の点推定と区間推定
データの構造式
実験計画法を理論的に理解してから
ロバストパラメータ設計に入ろう!

①直交表L12とは

直交表L12って例外パターンだよ!

ロバストパラメータ設計やタグチメソッドでは

突然変異型である
混合直交表や直交表L12などを使いたがります。
なぜかは、よくわかりません。

直交表を自分で作るとよくわかるのですが、

  1. データの構造式と直交表列は連動する
  2. 主効果、交互作用を網羅した直交表がスタンダート
  3. 8,16,9,27,などの素数のべき乗の方が網羅できる
  4. 混合直交表や直交表L12などは例外的にたまたま見つかったもの

という感情が出ます。実際に自力で直交表を作ってみてください。関連記事にもご参照ください。

【簡単】2水準の直交表のつくり方【必見】
実験計画法の直交表のつくり方や平方和の分解や水準の数の求め方をご存知ですか?本記事では、教科書では書いていない直交表の構成やデータの構造式から直交表が作れることをわかりやすく解説します。直交表を鵜呑みでわかった気で済ませているが不安な方は必見です。

さらに頭を悩ませるのが、

ロバストパラメータ設計や
タグチメソッドは
混合系直交表や直交表L12などが前提になる事が多いが
なぜなんだろう?
ちゃんと理論を理解した上で、
必要に応じて混合系など使った方がいい。
計算機が未熟な時代は
確かに必須な手法。
でも、今はExcelでも簡単に解析できる時代。
だから理論をしっかり理解したい!

まずは、直交表L12を攻略しましょう。

直交表L12とは

下表が直交表L12です。狙って設計するよりは、1,2全パターンを振ってたまたま出てきた表というイメージが強いです。

QCプラネッツはExcel VBAを使って、実際に直交表を作ったので、L12はたまたまできた副産物的なイメージがあります。

L12 A B C D E F G H I J K
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
2 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2
3 1 1 2 2 2 1 1 1 2 2 2
4 1 2 1 2 2 1 2 2 1 1 2
5 1 2 2 1 2 2 1 2 1 2 1
6 1 2 2 2 1 2 2 1 2 1 1
7 2 1 2 2 1 1 2 2 1 2 1
8 2 1 2 1 2 2 2 1 1 1 2
9 2 1 1 2 2 2 1 2 2 1 1
10 2 2 2 1 1 1 1 2 2 1 2
11 2 2 1 2 1 2 1 1 1 2 2
12 2 2 1 1 2 1 2 1 2 2 1

特徴的なのが、

交互作用が一切ないところ

L12について、
●データの構造式
●平方和の分解
●母平均の点推定と区間推定
を解いてみましょう。

本記事は、実験計画法ですが、L12はロバストパラメータ設計によく使うので、ロバストパラメータ設計の章で解説します。

なお、実験計画法については、しっかりまとめた関連記事がありますので、確認ください。70記事もある超大作です。

究める!実験計画法
QCプラネッツが解説する究める実験計画法。多くの教科書がある中、勉強してもどうしても分からない、苦労している難解な箇所をすべて解説します。多元配置実験、乱塊法、分割法、直交表などなど多くの手法を個別に公式暗記せず、データの構造式をみればすべて導出できる新しい実験計画法を解説します。

➁L12のデータの構造式

L12は交互作用がないので、全列独立した変数で表記します。これがL8,L9,L16の一般的な直交表と違う点ですね。

なので、データの構造式は

\(x\)=\(μ\)+\(a\)+\(b\)+…+\(j\)+\(ε\)
(11番目を\(ε\)とします)

もう少し詳細に書くと、

(\(x_i-\bar{\bar{x}}\))=(\(\bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{bi}}-\bar{\bar{x}}\))+…+(\(\bar{x_{ji}}-\bar{\bar{x}}\))
+(\(x_i –(\bar{x_{ai}}+…+\bar{x_{ji}})+9\bar{\bar{x}}\))

と書けますね。慣れないと難しいかもしれませんが、頑張っていきましょう。

➂L12の平方和の分解

データの構造式から平方和を計算

データの構造式を再掲すると、
(\(x_i-\bar{\bar{x}}\))=(\(\bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{bi}}-\bar{\bar{x}}\))+…+(\(\bar{x_{ji}}-\bar{\bar{x}}\))
+(\(x_i –(\bar{x_{ai}}+…+\bar{x_{ji}})+9\bar{\bar{x}}\))
ですね。

これを2乗和すると、各項の平方和とその合計が全体の平方和に一致します。
ただし、式で証明するのは、大変なので、直交表を使って後で証明します。

証明したい式は
\(\sum_{i=1}^{12}( x_i-\bar{\bar{x}})^2\)
=\(\sum_{i=1}^{12}( \bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}})^2\) (⇒直交表1列目の平方和\(S_1\)に相当)
+\(\sum_{i=1}^{12}( \bar{x_{bi}}-\bar{\bar{x}})^2\) (⇒直交表2列目の平方和\(S_2\)に相当)
+…
+\(\sum_{i=1}^{12}( \bar{x_{ji}}-\bar{\bar{x}})^2\) (⇒直交表10列目の平方和\(S_{10}\)に相当)
+\(\sum_{i=1}^{12} ((x_i –(\bar{x_{ai}}+…+\bar{x_{ji}})+9\bar{\bar{x}})^2\)
(⇒直交表10列目の平方和\(S_{11}\)に相当)
です。

直交表を使って各列の平方和を計算

2水準系の直交表各列の平方和を計算する公式があります。
もちろん自力で導出できます!関連記事で確認ください。

【本記事限定】直交表の各列の平方和の式は自力で導出できる【必見】
直交表の各列の平方和を導出する方法を知っていますか?公式暗記で済ませていませんか?本記事では、実験計画法の直交表の各列の平方和を導出する方法を詳しく解説します。本記事しか書いていない、直交表の知見を広げたい方は必見です。

公式は、

\(S_[k]\)=\(\frac{(T_{[k]1}-T_{[k]2})^2}{N}\)

この式を使って直交表の各列の平方和を計算します。

直交表L12の各列の平方和を計算

では、データを用意して、直交表各列の平方和を計算します。その結果は下表のとおりです。実際に計算してみてくださいね。

L12 A B C D E F G H I J e データ
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 8
2 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 12
3 1 1 2 2 2 1 1 1 2 2 2 14
4 1 2 1 2 2 1 2 2 1 1 2 16
5 1 2 2 1 2 2 1 2 1 2 1 8
6 1 2 2 2 1 2 2 1 2 1 1 10
7 2 1 2 2 1 1 2 2 1 2 1 9
8 2 1 2 1 2 2 2 1 1 1 2 6
9 2 1 1 2 2 2 1 2 2 1 1 3
10 2 2 2 1 1 1 1 2 2 1 2 10
11 2 2 1 2 1 2 1 1 1 2 2 6
12 2 2 1 1 2 1 2 1 2 2 1 18
1の和 68 52 63 62 55 75 49 62 53 53 56 120
2の和 52 68 57 58 65 45 71 58 67 67 64
120 120 120 120 120 120 120 120 120 120 120 平方和計
平方和 21.33 21.33 3 1.33 8.33 75 40.33 1.33 16.33 16.33 5.33 210

なお、全体の平方和は
S=\(\sum_{i=1}^{12}x_i^2-\frac{(\sum_{i=1}^{12}x_i)^2}{12}\)
=210
になりますから、確かに、
\(S_1\)+…+\(S_{11}\)=S=210
が成り立っています。

➃L12の分散の期待値と分散分析

平方和の分解を確認できたら、QCプラネッツのこだわりである、
分散の期待値と分散分析表を確認しましょう。

1列目の平方和は
\(S_1\)=\(\sum_{i=1}^{12}(\bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}})^2\)
と書けます。

概略的な式変形になりますが、期待値の平方和を計算すると
E[\(S_1\)]=E[\(\sum_{i=1}^{12}(\bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}})^2\)]
=E[\(\sum_{i=1}^{12}((\bar{x_{ai}}-\bar{x_{ea}})-\bar{\bar{x}})^2\)]

= E[\(\sum_{i=1}^{12}( \bar{x_{ai}}-\bar{x_{ea}}) ^2\)]+ E[\(\sum_{i=1}^{12}(\bar{\bar{x}}^2\))]
=1\(σ_A\)+1\(σ_e\)

分散の期待値は自由度が1なので、
E[\(V_1\)]=1\(σ_A\)+1\(σ_e\)
と計算できます。

直交表の全列も同様に解けるので、分散分析表は以下になります。

S Φ V F E[V]
A 21.33 1 21.33 4 \(σ_A+σ_e\)
B 21.33 1 21.33 4 \(σ_B+σ_e\)
C 3 1 3 0.56 \(σ_C+σ_e\)
D 1.33 1 1.33 0.25 \(σ_D+σ_e\)
E 8.33 1 8.33 1.56 \(σ_E+σ_e\)
F 75 1 75 14.06 \(σ_F+σ_e\)
G 40.33 1 40.33 7.56 \(σ_G+σ_e\)
H 1.33 1 1.33 0.25 \(σ_H+σ_e\)
I 16.33 1 16.33 3.06 \(σ_I+σ_e\)
J 16.33 1 16.33 3.06 \(σ_J+σ_e\)
e 5.33 1 5.33 \(σ_e\)
ST 11

➄母平均の点推定と区間推定

次の2つを考えましょう。

例題

次の母平均と区間推定を求めよ。
(i) \(μ_{A1}\)
(ii) \(μ_{A1B2C1}\)

データの構造式から母平均を計算

まず、データの構造式から母平均を計算します。
関連記事はここです。

【簡単】データの構造式から母平均の点推定が導出できる
実験計画法が難しい、分散分析した後、最適条件の母平均の点推定を求める式が、実験によって変わるため、公式暗記に困っていませんか?本記事では、データの構造式さえ理解すれば、すべての実験において、母平均の点推定値を求める式が導出できます。早く実験計画法をマスターした方は必見です。

●\(μ_{A1}\)=\(μ+a_1\)
=\(μ+(\bar{a_1})\)
=\(\bar{\bar{x}}\)+\((\bar{x_{a1}}-\bar{\bar{x}})\)
=\(\bar{x_{a1}}\)⇒(式1)
=68/6=11.33

●\(μ_{A1B2C1}\)=\(μ+a_1+b_2+c_1\)
=\(μ+\bar{a_1}+ \bar{b_2}+ \bar{c_1})\)
=\(\bar{\bar{x}}\)+(\(\bar{x_{a1}}-\bar{\bar{x}}\))
+(\(\bar{x_{b2}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{c1}}-\bar{\bar{x}}\))
=\(\bar{x_{a1}}\)+ \(\bar{x_{b2}}\)+ \(\bar{x_{c1}}\)-2\(\bar{\bar{x}}\) ⇒(式2)
=68/6+68/6+63/6-2×120/12
=13.17

データの構造式から有効繰返数と区間推定を計算

次に区間推定を求めたいので、有効繰返数をデータの構造式から計算します。関連記事はここです。

【重要】データの構造式から有効反復数が導出できる
実験計画法が難しく、分散分析した後、最適条件の母平均の点推定から有効反復数の導出方法がわからず、田口の式や伊奈の式を丸暗記していませんか?本記事では、データの構造式さえ理解すれば、すべての実験において、母平均の点推定値から有効反復数が導出できますことを解説します。早く実験計画法をマスターした方は必見です。

●\(μ_{A1}\)の場合は
\(μ_{A1}\)=\(μ+a_1\) ⇒((式1)より)
=\(μ+(\bar{a_1}+\bar{e_a})\)
V[\(μ_{A1}\)]=V[\(\bar{e_a}\)]
=\(\frac{1}{6}σ_e^2\)=0.89

●\(μ_{A1B2C1}\)の場合は
\(μ_{A1B2C1}\)=\(μ+a_1+b2+c1\)
=\(\bar{x_{a1}}\)+ \(\bar{x_{b2}}\)+ \(\bar{x_{c1}}\)-2\(\bar{\bar{x}}\) ⇒((式2)より)
=\(μ+a_1+\bar{e_a}\)+\(μ+b_2+\bar{e_b}\)+\(μ+c_1+\bar{e_c}\)-2\((μ+\bar{\bar{e}})\)
=\(μ+a_1+b_2+c_1\)+\((\bar{e_a}+\bar{e_b}+\bar{e_c}-2\bar{\bar{e}})\)
V[\(μ_{A1B2C1}\)]=V[\(μ+a_1+b_2+c_1\)+\((\bar{e_a}+\bar{e_b}+\bar{e_c}-2\bar{\bar{e}})\)]
=V[\((\bar{e_a}+\bar{e_b}+\bar{e_c}-2\bar{\bar{e}})\)]
=(\(\frac{1}{6}+\frac{1}{6}+\frac{1}{6}-2×\frac{1}{12})σ_e^2\)
=\(\frac{1}{3}σ_e^2\)=1.77

また、推定区間を求めるt(Φe,α=t(1,0.05)=12.7)より、
●\(μ_{A1B2C1}\)=13.17(=母平均)±12.7(=t(Φe,α))×0.94(=\(\sqrt{V}\))=-3.72,30.06
となります。

12.7(=t(Φe,α))の値が大きすぎるため、範囲が広すぎですが、求め方を理解することが大事です!

まとめ

「直交表L12がわかる」を解説しました。

  • ①直交表L12とは
  • ➁L12のデータの構造式
  • ➂L12の平方和の分解
  • ➃L12の分散の期待値と分散分析
  • ➄母平均の点推定と区間推定


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