神戸製鋼の品質不正を学ぶ
「神戸製鋼からなぜ、品質不正で学ぶケースなのか?」と疑問に思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
どの企業でも起こり得る!
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
外部環境をよく理解した上で、このケースを読むと、理解が深まります!
経営×品質の応用問題です。
品質不正をした相手への批判ではなく、表に出ない真因を考え抜く力を身に着けるためにブログ記事として解説していきます。
①品質マインド
●関連記事で解説しています。まず、こちらを読んでください。
【必読】品質不正を考える正しいマインドがわかる【褒めて応援すべし!】 品質不正の報道が出たら、その相手を叩こうとしていませんか?本記事では品質不正に対する正しいマインドを解説します。厳しい競争にさらされつつ、挑戦する社会では、失敗もつきものですよ。失敗をある程度許容して、反省して成功につなげやすいマインドが 必須です。 |
●大事な3つのマインドを再掲します。
- 品質不正を打ち明けた企業・組織を褒めよう!
- 対岸の火事ではない!
- 「失敗は成功のもと」につなげよう!
●悪い膿を出して、再生・復活する企業・組織を応援しましょう。もちろん、不正した相手の誠意が前提です。
➁品質不正の内容・被害
情報元
報告書があります。
●当社グループにおける不適切行為に関する報告書(2018/3/6)
大企業の事例なので、本にもよく取り上げられていますが、報告書で十分分析できます。
品質不正の内容
●簡潔にまとめます。
(2)検査せずに、換算表や計算によって検査したように捏造し、出荷。
いくつかの事業部門、グループ会社で不正があり、10年以上あるいは30年以上も不正があったことが判明。
被害状況
大きな被害は今のところありませんが、ユーザー側からのリコールが起こる可能性がありました。
➂発覚した経緯
全社的な自己点検で発覚。日産自動車の品質不正問題など、いくつもの優良企業の不正が取り上げられた時期も発覚につながった経緯があります。
自動車メーカが自社で品質不正をチェックしたら、「原料の鉄鋼も大丈夫か?」ってなりますよね。
➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
報告書に書かれた真因
報告書P44~を引用すると、しっかり書いています。
- 収益評価に偏った経営及び閉鎖的な組織風土
- バランスを欠いた工場運営
- 本件不適切行為を招く不十分な品質手続き
- 契約に定められた仕様の遵守に対する意識の低下
- 不十分な組織体制
と5つ原因分析を挙げており、さらに深い分析までしています。さらに引用します。
【直接的原因】
① 工程能力に見合わない顧客仕様に基づいて製品を受注・製造していたこと
② 検査結果等の改ざんやねつ造が容易にできる環境であったこと
③ 各拠点に所属する従業員の品質コンプライアンス意識が鈍麻していたこと
【根本的原因】
① 収益偏重の経営と不十分な組織体制
② バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下
③ 本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続
皆さん、どうですか? 「なるほど!」ですか?
一方、QCプラネッツの感想は
と不正に走らせた真犯人を特定したいところです。
企業の内外分析から、不正に入る真因を紐解いていきます。
そのために、次の3つの観点で分析しましょう。ここは経営分析、MBAの領域です。品質不正でも活用します!
- 外部環境の観点
- 組織の状況
- 担当レベルの動き
もう一度、不正の真因内容をみましょう。適宜ツッコみをいれます。
- 収益評価に偏った経営及び閉鎖的な組織風土⇒なぜ収益重視?
- バランスを欠いた工場運営⇒どんな偏った運営したか?
- 本件不適切行為を招く不十分な品質手続き⇒品質より何を優先した?
- 契約に定められた仕様の遵守に対する意識の低下⇒なぜ?
- 不十分な組織体制⇒なぜ?
他社事例の真因分析を見てきたQCプラネッツは、
フレームワーク「QCD」のQ,C,Dの観点から想像すると、
と、ピンと来ます。! あなたは、ピンと来たでしょうか?
ピンとこない場合は、解説しますのでもう少し本記事を読んでください!
外部環境の観点
これが無いと、分析の質が半減します。報告書では、この大事な外部環境分析が入っていません。
3C分析を使って、外部環境分析すると次になります。
●競合の鉄鋼メーカーの再編加速、規模の経済で単価低下傾向
●貿易摩擦などにより、国内メーカーが製造する鉄鋼製品の輸出量が影響を受けやすい
●鉄鉱石と石炭の価格が高騰化、鉄鋼メーカーの生産コストが上昇
●国内需要に関しても、今後の伸びは期待できない
どうですか? これを知ると、鉄鋼業界は結構大変です。
また、鉄鋼メーカでは、
ってご存じですか? 高炉の条件を変えてしまうと、生産の質も影響が出るため、高炉の温度、燃焼条件を一定する必要があります。
「高炉の火を止める」=「事業終了」くらい重要なのです。
だから、生産量は一定としたいのですが、当然受注量は変動するため、その調整が非常に難しいのです。
厳しい事業状況の中で、事業継続するには、何が必要ですか?
- 工場継続のための安定した受注確保
- 国内市場低迷、海外メーカとの熾烈な競争により、受注確保が困難
- 単価低下に耐えるためのコストカットと納期必達
- 国内メーカとしての高品質
結構厳しい事業をしていることがわかりますし、これらが、神戸製鋼に過剰な圧力がかかるとすると不正せざるを得ない状況が想像できるはずです。
別に神戸製鋼を擁護する気はありませんが、どの企業もいつ不正が起きてもおかしくない!状況の中、市場競争していることを理解してほしいのです。
組織の状況
報告書を引用すると、
- 本社による統制力の低下
- 事業部門における監査機能の弱さ
- バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下
- 閉鎖的な組織(人の固定化)
と書いています。
という解決策は、低レベルな解です!
業界は熾烈な競争の中、高炉を止めないために安定した受注が必要で、顧客のパワーが上がりやすくなりため納期必達の圧力がかかりやすくなっています。
そんな圧力が組織にかかるとどうなりますか?
- 本社から圧力もキツい。だから距離を置きたい
- 事業継続、収益が優先され、監査する気にならない
- 倫理観高い技術者が多くても、不正せざるを得ない状況に追い込まれる
- 大きな人事異動して改革しようという余裕もない
という、暗くて、しんどい仕事場がイメージできるはずです。
仕組みや、ルールの徹底、思い切った人事異動すると発表して、対外的な不正からの改善アピールができますが、根本の問題が除去できていないと、結局何も変わりません。
担当レベルの動き
担当をチェックする目的は、2つあります。
- 不正とわかっていながら、なぜちゃんと仕事しない?できない?
- なぜ何十年も不正が継続するのか?
なぜなら、技術者は
何もない状況では、悪意は働かない
そうせざるを得えない外圧が原因である
と多くの不正事例を分析してわかっているからです。
また、長年も不正が継続する理由は、
・周囲がやっているから
・上司がそれで評価されて昇進したから
・正しく改革しようという余裕はなく、目の前の業務で精一杯
ここに、社内教育の充実、報連相強化、風通しの改善と謳うと対外的には良いアピールですが、
根本の問題が除去できていないと、結局何も変わりません。
こう分析すると、結構根が深く、難しい問題です。外部環境からの影響が非常に強い場合、自社内を改善しても、その効果は限定的になるからです。
神戸製鋼の品質不正の原因は「QCDバランス」で紐解くことができます! ⑤でまとめます!
➄品質不正に至った真因
QCDバランスはどう崩れたか?
不正が起きた原因は、他社事例と同様に、おそらくQCDバランスの崩れではないかと推測します。QCプラネッツでは、分析結果をさらに、「QCD」を使って整理します。
●工程能力を十分に検証することなく受注をするといった生産至上主義が根付いた
●納期必達できないと、損害賠償請求や失注につながり、工場操業停止(リストラ)が怖い
●「機会があれば取りあえず受注する」、「できるだけ沢山の製品を生産して利益を上げる」
という圧力、つまり、 コストカット・受注確保の(C)と納期(D)の圧力が過度にかかっていたため、品質(Q)がおそろかになってしまったといえます。
⑥その後の結末
不正が発覚した製品の出荷先は500社以上。26日には子会社の一部製品のJIS認証が取り消し。
⑦とるべき対応策
●何社も品質不正の分析をすると、取るべき対策は1つに抽象化できます。
組織の経営そのものを是正・修正しないと再発する。
●対応策については、関連記事で詳しく解説しました。批判で終わらず、建設的な改善提案と成功へつなげましょう!
【必読】品質不正からの名誉挽回方法がわかる 品質不正に陥った組織をどうやって立て直すかわかりますか?本記事では、批判で終わる品質不正の記事とは違って、信頼回復・改革に何が組織には必要なのかをわかりやすく解説します。誰かに任せるのではなく、自分事として自らリーダーシップをとって良い組織に生き返らせましょう!社会は温かく見守るべきです。 |
がんばりましょう!
まとめ
「神戸製鋼の品質不正を学ぶ」を解説しました。
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
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